【6/11 追記】後半の記述に一箇所、誤認に基づく内容がありましたので、追記修正を行いました。
10日前にやってきたシャープの新ノートパソコン、PC-NJ70A。いわゆる“ネットブック”と呼ばれる、機能・性能に制限は付くものの安価なノートパソコンのカテゴリーに属するもので、スペックを見ると多くの部分は昨年から今春に発表発売された他社各種ネットブックと横並びである。
しかし、ネットブック最後発とも言えるシャープは PC-NJ70A に、他のネットブックにない特徴として、次の3点を取り入れている。
未だに Windows XP 搭載が主流のネットブックで Windows Vista 採用というのは少数派であるし、アドオンジャケットのような仕組みを用意したノートパソコンも事例はあるものの貴重な存在である。
さらに何といっても、光センサー液晶パッドの搭載。ネットブックのみならず初のことであり、これが PC-NJ7A 最大のポイントであろうことは言うまでもない。
シャープも、この光センサー液晶パッドに大きな自信を持っているのか、PC-NJ70A の販売価格は8万円弱、最近発表になったマイクロソフト・オフィス付きモデル PC-NJ80A はネットブックとしては破格の10万円と、同程度スペックの他社ネットブック製品と比べて2〜3万円高い価格に設定されている。
となれば、モニターする身からしても使う前から気になっていたのは、「光センサー液晶パッド」である。それも含めた PC-NJ70A 全体の素晴らしさが、強気の価格設定と製品発表時の「グローバル規模で100万台を目指す」という発言に繋がっているのだろう。
幸い、第1回目のモニターレポートは、PC-NJ70A を手にした時の第一印象とともに、光センサー液晶パッドを有効に生かした PC-NJ70A ならではのアプリケーション「手描きイラスト」を使った感想を書いて欲しいとのこと。
よって、インプレッションは後述するとして、まずは「手描きイラスト」を中心に光センサー液晶パッド用アプリケーションをいくつか使ってみた感想を書いてみたい。
PC-NJ70A では、光センサー液晶パッド下に通常の左右ボタンともう1つ、それら左右ボタンの間に通常のタッチパッド利用の「マウス操作」と光センサー液晶パッドを有効に使うためのアプリケーションを利用するための「タッチ操作」を切り替えるボタンがある。
これにより、Windows のスタートメニューから選ぶことなく、簡単に光センサー液晶パッド利用アプリケーションを使うことができる。また、この切り替えボタンは通常の左右ボタンと違って、上から意図的に押し込まないとボタンクリック動作しないようになっていて、誤動作を防ぐ配慮がなされている。
この切り替えボタンをクリックすると、光センサー液晶パッドを利用するアプリケーションへのメニュー画面が表示される。中央に大きく、電子辞書や電子ブック、フォトギャラリーやゲームを起動するボタンがあるが、上側には「手書き文字」「手書きイラスト」「電卓」の3つのボタンもある。
「手書きイラスト」を使う場合には、このメニュー画面中央上にある「手書きイラスト」ボタンをクリックするのだが、その前に「手書き文字」と「電卓」アプリケーションに是非触れておきたい。
「手書き文字」は、自筆入力した文字を認識して文字入力する IME パッドの光センサー液晶パッド版アプリケーションであるが、これがすこぶる認識率がよく、またスタイラスでパッドに書くことで紙に文字を書くのに近い自然な入力を行うことができるため、非常に使いやすい。上記写真のように、少し乱れた記述でも何事もなく正確に認識してくれる。
シャープの手書き入力といえば、一時期日本での電子手帳の代名詞であったザウルスも(Linux ザウルスを含め)何台か使った経験があるが、この PC-NJ70A の識字率の良さ、スムースさは時代の進歩を感じさせてくれた。一度このアプリケーションを使うと、マウスで文字を書く IME パッドは、とてもじゃないが使っていられないほどの快適さである。
ただ、文字を書いていく際に液晶パッドの反応がいささか悪いため、残念ながらタイピングの代わりになれるほどの存在ではない。もっとキビキビと液晶パッドが反応してスムースに文字を書いていくことができたなら、タイピングする代わりに液晶パッドで文章を書いていくことができたのに、と思う。その点は、つくづく残念である。
「電卓」も液晶パッドの有効性を気軽に感じさせてくれるアプリケーションである。特にテンキーのないノートパソコンだからこそ、このアプリケーションが有効になる場面は少なくない。貼り付けボタンも備わっているので、若干液晶パッドの反応の鈍さを除けば、使い勝手もすこぶる良い。
できれば、マウス操作→電卓ボタン選択といった2アクションではなく、1アクションで「電卓」アプリケーションが起動できる設定があれば尚更使いやすかったし、それは今後のサポートの中で、是非とも実現してほしいことでもある。
そんな「手書き入力」「電卓」といった液晶パッドを利用するアプリケーション以外にも、通常のマウス操作時には液晶パッド面にカレンダーを表示させておいたり(これは便利で愛用中)、常時スライドショーを表示させておいたり(サブフォルダーを辿って表示することもできないシンプルなものであるが)と多彩な機能を有していて、光センサー液晶搭載ということの便利さを感じることも、たまにある。
閑話休題。今回のモニターレポートのテーマ「手描きイラスト」に話を戻すと、タッチ操作のメニュー画面中央上の「手書きイラスト」ボタンを押せば、白紙状態の「手描きイラスト」画面が表示されるわけだが、絵心の全くない私としては正直、白紙状態から何か書けと言われては手も足も出ない。
右側のボタン群の上から2つ目、家の形をしたホームボタンの下にあるボタンを押すと、現在メインの液晶画面に表示されている内容の一部を取り込むことができるので、それをベースに始めても良いのだが、ここはやはり写真をベースにした方が良いかな?ということで、タッチ操作のメニュー画面に戻って「フォト」を選択して“ピクチャ”フォルダにある写真を表示させ、目的の写真が表示されたところで、写真の上にある「手書きイラスト」ボタンを押すと、その写真をベースにした状態で手書きイラスト画面が起動する。
「手書きイラスト」自体はシンプルなお絵かきアプリケーションで、筆の太さや色を変えつつ、スタイラスで自由に描いていくことが基本だが、スタンプ機能やフレーム機能があり、ちょっとしたプリクラ感覚で使える。「手書きイラスト」で手を加えた絵はワンクリックでデスクトップの背景にしたり、メール添付にしたり、保存できるようになっている。
私のように絵心のない人間の場合は、こうして写真にちょっと何かを加える程度しかできないが、こういった“ペンを持って絵が描ける”ことが、ノートパソコンの中で気軽に、簡単にできてしまうのは PC-NJ70A 最大の利点であるし、これに大きな付加価値を見出す人がいてもおかしくない。
ノートパソコンの場合には液晶タブレットは勿論、外付けマウスを使えない場面もあるし、わざわざ外付けマウスを持っていくのが面倒なことも多い。そういった環境で“ペンを持って絵が描ける”ことができるというのは、稀有な特長と言える。
ただ、それが現状では専用の「手書きイラスト」でしか実現できず、一般に使われているペイントソフト、グラフィックソフトで使えないというのは残念であるし、それを打開できないと、このハードウェア的な特長も宝の持ち腐れになりかねない。
また、先の「手書き文字」や「電卓」に対して触れた際にも書いたが、液晶パッドの反応がいささか鈍いため、この「手書きイラスト」を使う場合でも、慣れないと上手く描けない場合がある(慣れたつもりでも油断すると失敗する)。ポイントとして
という2点には、特に注意すべきだろう。もっとキビキビと反応するデバイスであれば、それこそ使い勝手は飛躍的に向上したであろうから、少々残念である。
また、「手書きイラスト」などの光センサー液晶パッド用アプリケーションを使う場合に限らず、この光センサー液晶パッドを使う場合には
ということがある。神経質になる必要はないが、外出時に使う場合などで指先が少し汗ばんだりしているとパッドの反応が極端に悪くなる場合があるので、その点は注意しておいた方が良いように思う(その場合はスタイラス操作がお勧め)。
ちなみに、スタイラスは良くできている。きちんと収納するところが用意されており(スタイラス使用を前提にしながら、スタイラスを収納できないデバイスが過去にありましたからね…)、スタイラス自身も伸縮式で、利用時には十分な長さがあるため、使いやすい。
以上、「手書きイラスト」および光センサー液晶パッドを使ういくつかのアプリケーションについて感想を述べたわけですが、モニター機が到着して10日間じっくり使ってきた中での光センサー液晶パッドに対する全体的な感想は、
というのが正直な思い。確かに絵心のない私でも「手書き文字」や「電卓」は便利に思うし、漢和辞典を引くときにスタイラスで手書き入力できるのは重宝する。
しかし、なければ困るか?と言われれば否であるし、これらがあるだけで+αの費用をかけても良いか?と言われると、私は yes と言うことはできない。他の比較要素が全く同列である場合に、+αとして光センサー液晶パッドが搭載されているなら利点の一つとして勘定できるが、これだけをもって大きな利点だとは、私には言い辛い。
特に、何度か前述したようにパッドに対する反応の遅さは、光センサー液晶パッド用アプリケーションのみならず、通常のパッド操作をしている時に操作状況により気になることがあり、光センサー液晶パッド用アプリケーションを含め、全体的な使い勝手という点で少なからず悪影響を及ぼしている。
その反応速度の改善と、光センサー液晶パッド用のアプリケーションが今のサンプルアプリケーションレベルではなく、真に光センサー液晶パッドの良さを引き出すキラーアプリケーションとなるようなものが出てくれば、この光センサー液晶パッドに対する魅力は大きく向上し、+αといったレベルではなく、強い推奨点として挙げることはできるだろう。
しかし現時点は残念ながら「あったら便利」的な、+α程度の魅力に留まっていると感じざるを得ない。更に言えば、“光センサー液晶パッドの良さを引き出すキラーアプリケーションとなるようなもの”が出てくるか?は、そう期待できるものでもないように思う。
それならば、最近流行の USB 接続ディスプレイのような、汎用デバイスとして使えるような方向性が望ましいのではないだろうか。
今後、光センサー液晶パッドを使った開発を行うのに向けた SDK を提供する用意があるということだが、光センサー液晶パッド専用のメールソフトや RSS リーダーといったアプリケーションを開発する(開発してもらう)よりは、セカンダリディスプレイとして使えるようにした方が、ユーザーのニーズには応えやすいだろうし、付加価値としても高まるように思う。
専用アプリケーションでしか光センサー液晶パッドを有効に生かせないというのは宝の持ち腐れに近いし、たかがノートパソコン、ネットブックの一機種に専用のアプリケーションは、たとえ SDK を無償で提供したとしても多くを望むべきもないことは火を見るよりも明らか。
ならば、汎用デバイスとして一般アプリケーションでも利用できるようなドライバソフトウェアの開発が望まれるのではないだろうか。たとえ、デバイス上の制約から描画速度や反応速度に問題があっても、専用ソフトウェアによる利用制約よりはずっと用途は広がるように思う。
ネットブックの制約からくる狭い画面解像度だからこそ、光センサー液晶パッドをセカンダリディスプレイとして使えれば大きな付加価値になるし、さらに中央ボタン切り替えでタッチパネルとして使うことができれば、ノートパソコンに光センサー液晶パッドを載せる大きな意味が出てくる。
そうなったならば、光センサー液晶パッドに+2〜3万円の付加価値を与えたとしても不思議ではないし、それでこそ理に適う。しかし、現状はそうではない。
光センサー液晶パッドがパソコンに搭載されるのは初めてだったとしても、光センサー液晶パッドというデバイスが世に発表されたのは既に2年近く前の話。それから今までの期間を考えれば、初めてパソコンに光センサー液晶パッドを搭載するといっても、準備期間が全くなかったとは思えない。
そのことを思うと、もう少しデバイスとしての完成度、実用度を高めた上で出てきて欲しかったな…というのが正直な思いであるし、光センサー液晶パッドを一般アプリケーションでも利用できるように汎用デバイス化してもらいたいものだと思う。
いささか脱線気味に私自身の光センサー液晶パッドへの期待を書き連ねてしまったが、以下は PC-NJ70A を手にした時から今日までの PC-NJ70A 全体の印象について、簡単に書いてみたい。
なお、今回 PC-NJ70A をモニターするにあたっては、きちんと PC-NJ70A を使い込まなければ正確な評価、感想が得られないと考え、モニター機到着から10日間、日常的に使っている EeePC 901-X と VAIO type P という2台の代わりに PC-NJ70A を使ってきた。
自宅内でリビングその他で気軽にネットブラウズしたり動画を見る場合に使ったり(いつもは EeePC 901-X がその用途に割り当てられている)、外出先で仕事をしない時に持ち歩いてカフェなどでネットブラウズやタイピング作業に使ったり(いつもは VAIO type P が活躍中)、毎日かなりの時間を PC-NJ70A と向き合ってきた。
ただ、これら2台と直接比較するつもりはなく、一般的なネットブック、ノートパソコンとして PC-NJ70A に対して感じた印象を以下、箇条書きにまとめました。
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10日前にやってきたシャープの新ノートパソコン、PC-NJ70A。いわゆる“ネットブック”と呼ばれる、機能・性能に制限は付くものの安価なノートパソコンのカテゴリーに属するもので、スペックを見ると多くの部分は昨年から今春に発表発売された他社各種ネットブックと横並びである。
しかし、ネットブック最後発とも言えるシャープは PC-NJ70A に、他のネットブックにない特徴として、次の3点を取り入れている。
- 光センサー液晶バッドの搭載
- アドオンジャケットという装飾用オプションの用意
- OS に Windows XP ではなく、Windows Vista の採用
未だに Windows XP 搭載が主流のネットブックで Windows Vista 採用というのは少数派であるし、アドオンジャケットのような仕組みを用意したノートパソコンも事例はあるものの貴重な存在である。
さらに何といっても、光センサー液晶パッドの搭載。ネットブックのみならず初のことであり、これが PC-NJ7A 最大のポイントであろうことは言うまでもない。
シャープも、この光センサー液晶パッドに大きな自信を持っているのか、PC-NJ70A の販売価格は8万円弱、最近発表になったマイクロソフト・オフィス付きモデル PC-NJ80A はネットブックとしては破格の10万円と、同程度スペックの他社ネットブック製品と比べて2〜3万円高い価格に設定されている。
となれば、モニターする身からしても使う前から気になっていたのは、「光センサー液晶パッド」である。それも含めた PC-NJ70A 全体の素晴らしさが、強気の価格設定と製品発表時の「グローバル規模で100万台を目指す」という発言に繋がっているのだろう。
幸い、第1回目のモニターレポートは、PC-NJ70A を手にした時の第一印象とともに、光センサー液晶パッドを有効に生かした PC-NJ70A ならではのアプリケーション「手描きイラスト」を使った感想を書いて欲しいとのこと。
よって、インプレッションは後述するとして、まずは「手描きイラスト」を中心に光センサー液晶パッド用アプリケーションをいくつか使ってみた感想を書いてみたい。
PC-NJ70A では、光センサー液晶パッド下に通常の左右ボタンともう1つ、それら左右ボタンの間に通常のタッチパッド利用の「マウス操作」と光センサー液晶パッドを有効に使うためのアプリケーションを利用するための「タッチ操作」を切り替えるボタンがある。
これにより、Windows のスタートメニューから選ぶことなく、簡単に光センサー液晶パッド利用アプリケーションを使うことができる。また、この切り替えボタンは通常の左右ボタンと違って、上から意図的に押し込まないとボタンクリック動作しないようになっていて、誤動作を防ぐ配慮がなされている。
この切り替えボタンをクリックすると、光センサー液晶パッドを利用するアプリケーションへのメニュー画面が表示される。中央に大きく、電子辞書や電子ブック、フォトギャラリーやゲームを起動するボタンがあるが、上側には「手書き文字」「手書きイラスト」「電卓」の3つのボタンもある。
「手書きイラスト」を使う場合には、このメニュー画面中央上にある「手書きイラスト」ボタンをクリックするのだが、その前に「手書き文字」と「電卓」アプリケーションに是非触れておきたい。
「手書き文字」は、自筆入力した文字を認識して文字入力する IME パッドの光センサー液晶パッド版アプリケーションであるが、これがすこぶる認識率がよく、またスタイラスでパッドに書くことで紙に文字を書くのに近い自然な入力を行うことができるため、非常に使いやすい。上記写真のように、少し乱れた記述でも何事もなく正確に認識してくれる。
シャープの手書き入力といえば、一時期日本での電子手帳の代名詞であったザウルスも(Linux ザウルスを含め)何台か使った経験があるが、この PC-NJ70A の識字率の良さ、スムースさは時代の進歩を感じさせてくれた。一度このアプリケーションを使うと、マウスで文字を書く IME パッドは、とてもじゃないが使っていられないほどの快適さである。
ただ、文字を書いていく際に液晶パッドの反応がいささか悪いため、残念ながらタイピングの代わりになれるほどの存在ではない。もっとキビキビと液晶パッドが反応してスムースに文字を書いていくことができたなら、タイピングする代わりに液晶パッドで文章を書いていくことができたのに、と思う。その点は、つくづく残念である。
「電卓」も液晶パッドの有効性を気軽に感じさせてくれるアプリケーションである。特にテンキーのないノートパソコンだからこそ、このアプリケーションが有効になる場面は少なくない。貼り付けボタンも備わっているので、若干液晶パッドの反応の鈍さを除けば、使い勝手もすこぶる良い。
できれば、マウス操作→電卓ボタン選択といった2アクションではなく、1アクションで「電卓」アプリケーションが起動できる設定があれば尚更使いやすかったし、それは今後のサポートの中で、是非とも実現してほしいことでもある。
そんな「手書き入力」「電卓」といった液晶パッドを利用するアプリケーション以外にも、通常のマウス操作時には液晶パッド面にカレンダーを表示させておいたり(これは便利で愛用中)、常時スライドショーを表示させておいたり(サブフォルダーを辿って表示することもできないシンプルなものであるが)と多彩な機能を有していて、光センサー液晶搭載ということの便利さを感じることも、たまにある。
閑話休題。今回のモニターレポートのテーマ「手描きイラスト」に話を戻すと、タッチ操作のメニュー画面中央上の「手書きイラスト」ボタンを押せば、白紙状態の「手描きイラスト」画面が表示されるわけだが、絵心の全くない私としては正直、白紙状態から何か書けと言われては手も足も出ない。
右側のボタン群の上から2つ目、家の形をしたホームボタンの下にあるボタンを押すと、現在メインの液晶画面に表示されている内容の一部を取り込むことができるので、それをベースに始めても良いのだが、ここはやはり写真をベースにした方が良いかな?ということで、タッチ操作のメニュー画面に戻って「フォト」を選択して“ピクチャ”フォルダにある写真を表示させ、目的の写真が表示されたところで、写真の上にある「手書きイラスト」ボタンを押すと、その写真をベースにした状態で手書きイラスト画面が起動する。
「手書きイラスト」自体はシンプルなお絵かきアプリケーションで、筆の太さや色を変えつつ、スタイラスで自由に描いていくことが基本だが、スタンプ機能やフレーム機能があり、ちょっとしたプリクラ感覚で使える。「手書きイラスト」で手を加えた絵はワンクリックでデスクトップの背景にしたり、メール添付にしたり、保存できるようになっている。
私のように絵心のない人間の場合は、こうして写真にちょっと何かを加える程度しかできないが、こういった“ペンを持って絵が描ける”ことが、ノートパソコンの中で気軽に、簡単にできてしまうのは PC-NJ70A 最大の利点であるし、これに大きな付加価値を見出す人がいてもおかしくない。
ノートパソコンの場合には液晶タブレットは勿論、外付けマウスを使えない場面もあるし、わざわざ外付けマウスを持っていくのが面倒なことも多い。そういった環境で“ペンを持って絵が描ける”ことができるというのは、稀有な特長と言える。
ただ、それが現状では専用の「手書きイラスト」でしか実現できず、一般に使われているペイントソフト、グラフィックソフトで使えないというのは残念であるし、それを打開できないと、このハードウェア的な特長も宝の持ち腐れになりかねない。
また、先の「手書き文字」や「電卓」に対して触れた際にも書いたが、液晶パッドの反応がいささか鈍いため、この「手書きイラスト」を使う場合でも、慣れないと上手く描けない場合がある(慣れたつもりでも油断すると失敗する)。ポイントとして
- 指ではなく、スタイラスを使う
- ゆっくりとスタイラスを動かす
- 書き出しは特にゆっくりとし、スタイラスを液晶パッドに置いてすぐに動かさない
という2点には、特に注意すべきだろう。もっとキビキビと反応するデバイスであれば、それこそ使い勝手は飛躍的に向上したであろうから、少々残念である。
また、「手書きイラスト」などの光センサー液晶パッド用アプリケーションを使う場合に限らず、この光センサー液晶パッドを使う場合には
- パッド面の汚れ(油脂汚れなど)があると反応が鈍ることがあるので、できれば綺麗にしてから使う
- スタイラスでなく指で操作する場合には、指の水分・汗・油脂も綺麗に取っておくと反応は良くなる
ということがある。神経質になる必要はないが、外出時に使う場合などで指先が少し汗ばんだりしているとパッドの反応が極端に悪くなる場合があるので、その点は注意しておいた方が良いように思う(その場合はスタイラス操作がお勧め)。
ちなみに、スタイラスは良くできている。きちんと収納するところが用意されており(スタイラス使用を前提にしながら、スタイラスを収納できないデバイスが過去にありましたからね…)、スタイラス自身も伸縮式で、利用時には十分な長さがあるため、使いやすい。
以上、「手書きイラスト」および光センサー液晶パッドを使ういくつかのアプリケーションについて感想を述べたわけですが、モニター機が到着して10日間じっくり使ってきた中での光センサー液晶パッドに対する全体的な感想は、
内包する機能や付属アプリ1つ1つに+αの魅力を感じるが
現時点では大きな付加価値に仕上がってない
現時点では大きな付加価値に仕上がってない
というのが正直な思い。確かに絵心のない私でも「手書き文字」や「電卓」は便利に思うし、漢和辞典を引くときにスタイラスで手書き入力できるのは重宝する。
しかし、なければ困るか?と言われれば否であるし、これらがあるだけで+αの費用をかけても良いか?と言われると、私は yes と言うことはできない。他の比較要素が全く同列である場合に、+αとして光センサー液晶パッドが搭載されているなら利点の一つとして勘定できるが、これだけをもって大きな利点だとは、私には言い辛い。
特に、何度か前述したようにパッドに対する反応の遅さは、光センサー液晶パッド用アプリケーションのみならず、通常のパッド操作をしている時に操作状況により気になることがあり、光センサー液晶パッド用アプリケーションを含め、全体的な使い勝手という点で少なからず悪影響を及ぼしている。
その反応速度の改善と、光センサー液晶パッド用のアプリケーションが今のサンプルアプリケーションレベルではなく、真に光センサー液晶パッドの良さを引き出すキラーアプリケーションとなるようなものが出てくれば、この光センサー液晶パッドに対する魅力は大きく向上し、+αといったレベルではなく、強い推奨点として挙げることはできるだろう。
しかし現時点は残念ながら「あったら便利」的な、+α程度の魅力に留まっていると感じざるを得ない。更に言えば、“光センサー液晶パッドの良さを引き出すキラーアプリケーションとなるようなもの”が出てくるか?は、そう期待できるものでもないように思う。
それならば、最近流行の USB 接続ディスプレイのような、汎用デバイスとして使えるような方向性が望ましいのではないだろうか。
今後、光センサー液晶パッドを使った開発を行うのに向けた SDK を提供する用意があるということだが、光センサー液晶パッド専用のメールソフトや RSS リーダーといったアプリケーションを開発する(開発してもらう)よりは、セカンダリディスプレイとして使えるようにした方が、ユーザーのニーズには応えやすいだろうし、付加価値としても高まるように思う。
専用アプリケーションでしか光センサー液晶パッドを有効に生かせないというのは宝の持ち腐れに近いし、たかがノートパソコン、ネットブックの一機種に専用のアプリケーションは、たとえ SDK を無償で提供したとしても多くを望むべきもないことは火を見るよりも明らか。
ならば、汎用デバイスとして一般アプリケーションでも利用できるようなドライバソフトウェアの開発が望まれるのではないだろうか。たとえ、デバイス上の制約から描画速度や反応速度に問題があっても、専用ソフトウェアによる利用制約よりはずっと用途は広がるように思う。
ネットブックの制約からくる狭い画面解像度だからこそ、光センサー液晶パッドをセカンダリディスプレイとして使えれば大きな付加価値になるし、さらに中央ボタン切り替えでタッチパネルとして使うことができれば、ノートパソコンに光センサー液晶パッドを載せる大きな意味が出てくる。
そうなったならば、光センサー液晶パッドに+2〜3万円の付加価値を与えたとしても不思議ではないし、それでこそ理に適う。しかし、現状はそうではない。
光センサー液晶パッドがパソコンに搭載されるのは初めてだったとしても、光センサー液晶パッドというデバイスが世に発表されたのは既に2年近く前の話。それから今までの期間を考えれば、初めてパソコンに光センサー液晶パッドを搭載するといっても、準備期間が全くなかったとは思えない。
そのことを思うと、もう少しデバイスとしての完成度、実用度を高めた上で出てきて欲しかったな…というのが正直な思いであるし、光センサー液晶パッドを一般アプリケーションでも利用できるように汎用デバイス化してもらいたいものだと思う。
いささか脱線気味に私自身の光センサー液晶パッドへの期待を書き連ねてしまったが、以下は PC-NJ70A を手にした時から今日までの PC-NJ70A 全体の印象について、簡単に書いてみたい。
なお、今回 PC-NJ70A をモニターするにあたっては、きちんと PC-NJ70A を使い込まなければ正確な評価、感想が得られないと考え、モニター機到着から10日間、日常的に使っている EeePC 901-X と VAIO type P という2台の代わりに PC-NJ70A を使ってきた。
自宅内でリビングその他で気軽にネットブラウズしたり動画を見る場合に使ったり(いつもは EeePC 901-X がその用途に割り当てられている)、外出先で仕事をしない時に持ち歩いてカフェなどでネットブラウズやタイピング作業に使ったり(いつもは VAIO type P が活躍中)、毎日かなりの時間を PC-NJ70A と向き合ってきた。
ただ、これら2台と直接比較するつもりはなく、一般的なネットブック、ノートパソコンとして PC-NJ70A に対して感じた印象を以下、箇条書きにまとめました。
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