【2009. 6.21 追記】この内容は既に古いものになっているので、ネットブックにおけるブラウザ比較については、改めて「ネットブックにおけるブラウザ表示比較 (2009年6月 with Vista) 」という記事を書いていますので、そちらを参考にして下さい。【追記ここまで】




鳴り物入りで Google Chrome が登場して半月ほどが経った。登場直後のニュースサイトは絶賛が大半で、でもすぐに懐疑派、批判派の意見が登場し、そしてセキュリティ的な懸念もあがり、でもそこそこ落ち着いてきつつも好意的な意見は少なくない、と言ったところだろうか。

私は色々思うところがありつつも、結局 Winodws 環境の全てに Chrome をインストールした。各種ブラウザでの動作確認をする必要がある、ということもあるが、ちょっと使ってみて色々な面で「なかなか良いな」と思ったこともある。元々レンダリングコアの表示品質としては、Gecko より WebKit の方が好みだし、Google が目指す方向が特徴的に表れたブラウザは、それはそれで悪くないと感じている。

インストール先が選択できず、Program Files じゃなく Documents and Settings の奥の方にインストールされる変態さは閉口するし、キャッシュ削除も簡単にできず、ブックマークバーを消すとブックマークにアクセスする手段がないなどの不満は多い。

ただ、起動速度の速さは Firefox がとにかく遅いだけに非常に魅力がある。レンダリング速度は大差ないようだが、JavaScript の処理速度は抜けているし(Firefox の次版がいくら速いとはいえ、現状パッケージとして手に入れられるものとしては最速だろう)、ブラウザのインターフェース・デザインとして、できるだけ画面を広く使えるようになっている。

となれば、一般的なデスクトップ機やノートパソコンより、Chrome がアドバンテージを得るのが EeePC のような廉価で処理性能も限られるネットブック。実際、EeePC 901 にインストールしてみて、最初はメインブラウザにするつもりはサラサラなかったのだが、最近は色々な不満がありつつも、EeePC 901 では Chrome を使うことが多い。

サクッと起動できて軽快にアクセスできる Chrome は EeePC にピッタリかも…


とすら思う。Firefox は良いのだけど、やっぱり起動が鈍重なのが、今も昔もネック。EeePC における全画面モードは最高に使いやすいし、長時間ブラウジングするのが最初から判っている時は Firefox にするけれど、サクッとブラウザを立ち上げたい時は Chrome になりがちな昨今だ。

ただ、何点か前述したように、Chrome にも不満はあるし、EeePC 901 で使う上では問題点もある。

  1. インストール先が C:¥Documents and Settings の奥の方でキャッシュ保存先を変更できないので、IE や Firefox のように RAMDISK 上にキャッシュを置けない(ので、たまに動作が停止するようなタイミングが発生する)。

  2. 個人的なことだが、GreaseMonkey が使えないので一部サイトでのキーボード・オペレーションの快適さに欠けたり、便利機能が使えない(Safari on Mac では同じ機能を果たす GreaseKit があるので、自分的には GreaseMonkey は必需品に近い)

  3. 標準状態では Chrome の画面の広さはどのブラウザよりも上だが、Firefox の全画面モードには到底敵わない。


このうち、1番目はCドライブの容量が少ない EeePC 901 では切実な問題。本体のインストール先がCドライブ固定でも構わないが、使っていくうちにキャッシュはどんどん増えていくので、このあたりは今後何とかして欲しいものだ。手動でキャッシュフォルダの中を削除する以外に手はないのだが、せめてキャッシュ削除ボタンくらい付けて欲しいと思う。

2番目も現時点ではどうしようもないが、これは個人的な趣向の問題で、我慢するしかない。GreaseMonkey が使えないこと以上の便利さが Chrome にあれば Chrome、なければ Firefox にするだけで、現状は起動速度の速さなどから Chrome を使いたくなる場面も実際に多い。将来的に GreaseMonkey 互換機能がアドオンで実現なんてことになれば良いが、当面は期待できそうにない。

そして3番目の、ブラウザ画面の広さだが、これは運用で少しはカバーできる。Chrome にはサイトのブックマーク以外にショートカット作成という機能がある。頻繁にアクセスするサイトについては、そのサイトのショートカットを作成することで、アドレスバーのない全画面モードに近い形の Chrome を立ち上げることができる。

ということで、EeePC 901 で実際にどうなるか、以下に Firefox と Chrome のブラウザ画面比較を掲載してみる。閲覧サイトは livedoor Reader で、以下の縮小画面をクリックすると原寸大の画面を見ることができる。

まずは Firefox と Chrome の通常モードでの比較。

FF3 on EeePC 901 (Normal Mode)
Firefox 3 通常モード時

Chrome 0.2 on EeePC 901 (Normal Mode)
Chrome 通常起動時


ステータスバーの有無、Gecko と WebKit のレンダリングの差異もあるが、Chrome の方がかなり縦に広く表示できている。Firefox はタブ表示がない状態でコレだから、複数タブを開くともう一段狭くなるので、その場合はさらに差異が大きくなる。Firefox のステータスバーを消しても、差は歴然としてある。

が、Firefox の全画面モードになると一気に広くなる。

FF3 on EeePC 901 (Maximum Mode)
Firefox 全画面モード時


これには Chrome も対抗できないが、前述のようにサイトのショートカットを作成して“livedoor Reader アプリ”的に起動すると、Chrome ももう少し広く取れる。

Chrome 0.2 on EeePC 901 (App Mode)
Chrome ショートカット起動時


これでも Firefox の全画面モードには到底敵わないが、1段少々?広くなる。頻繁に使うサイトで少しでも広く表示させたいサイトの場合は、Chrome のショートカットを作成するのも一つの手だ。実際、私は EeePC 901 上で、いくつかのサイトは Chrome のショートカットを作って、それを利用している。起動が迅速なので快適にブラウズできる。

ということで、この4つの画面を横に並べて比較してみる。

ブラウザ比較 on EeePC 901 第2回 (FF3 vs Chrome)
左から FF3 通常時、Chrome 通常起動時、Chrome ショートカット起動時、FF3 全画面モード


ついでに、前回 Internet Explorer 6 と Firefox 3、Safari 3 を比較した時の画面も4つ並べたものを掲載しておく。

ブラウザ比較 on EeePC 901 第1回 (IE, FF3, Safari)
左から IE6、FF3 通常時、Safari3、FF3 全画面モード時


これらを見ると FF3 の全画面モード時は圧倒的に広いが、それ以外では Chrome が検討している。特に通常時での画面の広さは Chrome にかなりアドバンテージがある。

これに加えて、何度も書いてるが起動時の速さは特筆すべきものだし(IE と同等以上)、各種ウェブサービス・サイトで JavaScript の負荷があるサイトでは、快適さも違ってくる。

ただ、EeePC 901 ではキャッシュが RAMDISK に展開できないことで、時々止まったような動作も起きるので、キャッシュがCドライブに溜っていくことと併せて、手放しで Chrome は薦めにくいのだが、それでも Chrome を試してみる価値はあると言える。



あと EeePC 901 には関係ないことだが、起動速度の速さ、JavaScript の処理速度の速さ(レンダリング速度も速い)、そしてショートカット起動時の画面構成などを併せて見ると、「Google が何を志向して Chrome を作ったか?」というのが本当に明確になる。例えば Gmail のショートカットを作って起動してみれば、それは実感できるだろう。

私自身が作ったウェブアプリ、特に ExtJS を使い倒した客先用のウェブアプリを Chrome のショートカットから起動してみると、(ネットワークにアクセスするという点を除けば)ネイティブアプリとの見た目の差はかなり小さくなる。

少なくとも Chrome のショートカットで起動したウェブアプリは、まるで Adobe Air で作ったアプリや、Silverlight で作ったアプリと印象的にはあまり差がない。

それを見ると、Google Chrome というのは単に alternative なブラウザを提供したというよりは、Air や Silverlight に対する Google の対抗策なのだろうと思う。Adobe や MS が独自仕様によるネイティブアプリ・ライクな“ネット・アプリ”を提供することを進めるのに対抗して、標準ウェブ技術で似たようなことが可能なことを明確に示すために作ったのではないか?そう思える。