明日は Jリーグが開幕して30年。あの日、TUBE による君が代、そしてJリーグのテーマ曲が流れて、レーザー光線が飛び交うド派手な演出の中、Jリーグキングが現れ、カズ、ラモスや木村和司、井原正巳ら今やレジェンドとなった選手たちが登場し、ラモンディアスのキックオフで始まったJリーグ。

開幕試合をテレビで見て、そしてスタジアムまで歩いていける超地元に誕生したクラブを応援する日々が始まり、あれから30年。

地元だからと応援し始めたクラブは、Jリーグ創設期から弱いクラブの代表のように言われ、タイトルなんて永遠に取れないように思っていた20世紀を過ぎ、Jリーグ創設から10年が過ぎてから黄金期を迎えた。

あの頃はサッカーに興味ない人間も「一度観に来なよ!絶対に面白いから!」と言える撃ち合いエンタメサッカーを展開し、強く(時に負けても)楽しく面白いサッカーを楽しむことができていた。お金を払う価値のあるサッカーと自信を持って言えた。

しかし栄枯盛衰、弱かった頃を忘れて自ら「ビッグクラブ」などと調子こいて、弱小チームに幾つものタイトルをもたらした監督をリーグ3位が不満で切って、結果J2転落。すぐ昇格して三冠を達成したはいいが、そこからチームは下り坂一方。

軽々しくエンブレムを変えて、マスコットも追加して銭儲けに勤しむ反面、チーム成績は J2 転落を回避するのが精一杯、弱いクラブにありがちな監督の毎年途中解任が発生する有様。

今季は特例で J2 への降格枠が1クラブしかないから建て直しに最適…と思っていたら、Jリーグ30周年を前にした、12〜14日の「30周年記念マッチ」で堂々と最下位に沈む体たらく。今季は(今季も)新しい監督の下で我慢のシーズンとは思っていたけれど、13節終わって1勝。今季も残留争い。

もっとも、Jリーグ30周年として振り返ってみれば、20世紀の頃と同じ弱いクラブに戻っただけ、元に戻っただけ、と言える。あの頃から見てきた分だけ、このクソ弱状況には耐性がある。たぶん。

そして、強かった、胸を張れた10年は、ひとときの楽しい夢だった、結局はこんなもんだと思って納得するしかない30年目。

とはいえ、シーズン前の期待感が徐々に不安と落胆に変わっていき、光明の見えない負けを毎回見させられるのは精神的にくるモノはあるね。もう、監督が悪い、だけが原因ではない現実を受け入れざるを得ない状況だし。

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とまぁ、贔屓のクラブに対してはポエムを垂れ流すくらいの思い入れはあるが、正直言って「Jリーグ30周年」自体には大した感慨はない。30周年と聞いて、疲れなんて感じなかった年代だった自分がこれだけ歳をとったことを改めて感じさせられるくらいである。

とはいえ、多少の紆余曲折はあったにせよ、これだけ続いて、これだけ拡大していったことには関係者の並々ならぬ尽力があったわけで、Jリーグを維持、発展に努力された方々には感謝し、敬服する。

が、この30周年というメモリアルイヤーに、コロナ禍前に一度は否決されたはずの Jリーグの秋春制移行への画策が再び起きているのは納得しかねる。

ただのド素人が何を言っても仕方ないが、1ファンとして。Jリーグの秋春制移行は反対、ということを「Jリーグ30周年の日」に記しておきたい。

日本の気候や社会習慣を無視して、単にタイムスケジュールだけを欧州に迎合しても、利を得るのは少数であり、そのために多くを犠牲にする。それは Jリーグが何故できたのか、ここまで大きくしたかの理由、理念からしても反するように思う。


オイルマネーで支配する西アジアの勢力が強くなったアジアサッカー連盟が ACL を秋春制に移行したことで、確かに春秋制のJリーグとは整合が取れなくなる。が、それに Jリーグを合わせたところで利を得るのは最大4クラブだけ。他の56クラブには利がないどころか、後述するように害しかない。

J選手の海外移籍がしやすくなる、海外の有力選手のJリーグ移籍がしやすくなる、というが、それも利を得るのは全体からすればごく少数の選手とクラブだけ。それが日本代表の強化に繋がるというが、むしろ後述する弊害の方が遥かに大きい、と思う。


秋春制で一番言われている弊害は日本の冬の問題、特に積雪である。欧州はいくら寒くても、一部地域を除けば積雪量はしれているが、日本は狭い国土の3分の1は多量の積雪に見舞われる可能性がある。

Jリーグ創設当初のように、日本海側や東北にクラブがないならば可能だったかもしれないが、今や各県にJリーグのクラブがある状況である(Jリーグクラブがない県は、むしろ西日本の方が多い)。

暫定案のように冬対策のためのウインターブレイクを入れた場合、開幕が7月末ないし8月上旬。その場合、秋春制で国内クラブが一番享受できるはずのメリット、「酷暑の夏に試合をしなくて済む」が実現できず、それでは何のための秋春制か分からない。

さらにウインターブレークを数ヶ月入れる場合、当然試合できる期間が短くなるから、シーズン終了から開幕までのオフシーズンが短くなるか、もしくは過密日程で試合を消化していくことになって、多くの選手にデメリットしかない。

クラブ側も積雪のある地域のクラブはウインターブレイクを2ヶ月入れたところで、積雪期間の試合開催の可能性はあり、除雪などのコストが増す(今もある)。

融雪装置やスタジアムへの暖房追加を補助で〜、なんていう意見もあるけれど、ハードウェアを追加する費用への補助はあっても維持費はどうするのだ?という問題を無視してはいけない。特定クラブの維持費に毎年多くのコストをリーグ全体で負担していくことに理解が得られるだろうか?


もっと言えば、クラブとしてお客さんの掻き入れ時はゴールデンウィークと夏休み。その夏休み期間の試合を減らす=集客を減らすことで、やっていけるのか?となる。夏休みにやるなら、先にも書いたように秋春制のメリットの一つはなくなる。

冬休みはウインターブレークに入るか、もし開催してもクソ寒い中にどれだけの人が来てくれるか。少なくとも夏休みと同じ集客は望めないだろう。冬休みは年末年始で他に忙しすぎるし、期間が短い、受験直前などマイナス要因は多すぎる。

となれば、(一部クラブでは)コストが増大し、逆にほとんど or 全部のクラブで収入が減る。客入りが減れば、当然スポンサー代、スタジアムの広告代にも影響してくる。それでも秋春制の方がメリットが大きいというのは、トップ of トップの一部クラブだけだろう。

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日本代表の、日本のサッカーの土台は誰が支えて、誰が作っているかと言えば、一部の金もチーム力もあるクラブじゃなく、全国のサッカークラブ、アマチュアも含めた組織だろう。そのボトムアップがあってこその、Jリーグであり、日本代表のはず。

日本代表が強くなったのも、Jリーグを作り、Jクラブを作り、クラブの下部組織を作り、さらにアマチュアの裾野を広げて、大きなピラミッドを作っていったからこそなのは、ド素人の私が言うまでもない話。

にも関わらず、このピラミッドを壊す、とまでは言わなくても真ん中付近で不整合を起こさせるようなことを目論んで、どうするんだろうと思う。

Jリーグだけ秋春制にしたところで、学校も社会も日本は春に始まり、春に終わる。
Jリーグだけ秋春制にしたところで、その下の JFL は春秋制のままで、じゃあ昇降格はどうするの?となる。
JFL まで秋春制にしても、その下は?その下は?社会人、高校や大学との整合性は?

利を得るのはごく一部な秋春制にしたところで、多くの人が不整合、不合理を受け入れることになる。

少子化でスポーツを楽しむ子供も取り合いになっているのに、プロへの道にスムースさを少しでも欠ける要因を作る、不安要素を作るのは将来の禍根にも成りかねない。

日本の社会構造を無視して、日本の気候を無視して、Jリーグだけを秋春制に強行するのは、どう考えても無理がある。納得できる対案もない。反対である。