先々月末に Z9 の正式発表と Z 100-400mm、Z 24-120mm f/4、FTZ II の発表、さらにテレコン内蔵ヨンニッパ Z 400mm f/2.8 TC VR S の開発発表が一気にあって、

今の情勢だと新製品発表発売しても供給が追いつかないし、今年の新製品発表は打ち止めだろ…個人的にもお腹いっぱいだし


みたいに思っていたのですが、師走になってさらにもう一発、2本のレンズが発表になりました。

Nikon | 報道資料:「ニコン Z マウントシステム」対応の超望遠単焦点レンズ「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」を開発
Nikon | 報道資料:「ニコン Z マウントシステム」対応の標準ズームレンズ「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」を発売
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8 - 概要 | NIKKORレンズ | ニコンイメージング

Z800mm_f6.3_Release


Z9 発表直後から「ニコンが一番じゃなきゃヤダヤダ〜」な方々の、いささか狂気じみた ワッショイヽ( ´∀`)ノワッショイヽ( ´∀`)ノ が続いているのを目にして、しばらくニコン関連から少し距離を置いていたので年内さらに新レンズが出るというのはビックリでした。

ちょっと前の Nikon Rumours に、海外のレンズラインナップシルエットにある未発表レンズの推定する記事があって、そこで初めて 800mm は F5.6 より暗いとか、400mm 単焦点は既に開発発表されたテレコン付きヨンニッパとは別にもう一本あるというのを知ったくらいですからね…

Nikon Z lens roadmap: telephoto apertures "measured" and calculated - Nikon Rumors

ちなみに個人的には、おそらく第2の PF Z レンズであろう、もう一つの 400mm 単焦点レンズが 400mm F4 であることを期待してるし、もしそうなら一刻も早く手に入れたいところです。

D5/D6 と比べると高感度画質が劣ることが確定してる Z9 用に 500mm f/5.6E PF より一段明るい Z 400mm f/4 PF S VR に置き換えてダメ高感度を少しでもカバーしたいところ。ただ、800mm が F6.3 になったのを見ると、400mm も F4 じゃなく F4.5 になっちゃったりしそうでねぇ…

NikonZLensLineUpSilhouette


ともあれ、今回発表&開発発表の Z 800mm f/6.3 VR S と Z 28-75mm f/2.8、ともに個人的に気になるレンズではありましたが、どちらも2つの注目点、評価の分かれるポイントがあると思っています。



【1】Z 800mm f/6.3 VR S


Z マウントでの 800mm 単焦点の本レンズは、プレスリリースで述べられているように、「小型・軽量化を可能にする PF レンズを Z レンズで初めて採用し、超望遠レンズでありながら優れた携行性を実現」して、高い描写力と機動力を両立するのが目的とされているレンズ。

上記のレンズラインナップ・シルエットの絵を見ても、800mm なのに 600mm(おそらくF4)より短く、口径も小さめ。(Fマウントのゴーヨンよりちょっと大きいくらい?)

その小型軽量化のために、本レンズでは以下の2点の仕様が採用されています。
  1. 開放F値は F5.6 ではなく 1/3段暗い F6.3
  2. 小型軽量化を可能にするが弱点もある PF レンズを使用

この2点はメリットもありますが、逆にネガティブに見る人、Fマウントの 800mm F5.6 から乗り換えるのを躊躇う人が出てくるのは止むを得ないでしょう。

デジタル一眼レフ時代の AF と違ってミラーレス機の AF では F5.6 の壁がないから、1/3段暗くして小型軽量化するのは問題ないのでは?
PF レンズも第1弾の 300mm f/4E PF の時は逆光や点光源による PF 独特のフレアが酷かったけど、500mm f/5.6E PF では随分改善されたから実用上問題ない or 小型軽量化のメリットが上回るのでは?


今回の Z 800mm f/6.3 VR S の仕様を是とする人、支持する人は、おそらくこういう思いでいるはずです。後者については 300mm f/4E PF、500mm f/5.6E PF の両 PF レンズを使ってきている私自身、実感としてそう思っています。

Z800mm_f6.3_Release2


とはいえ、小型軽量化よりも画質絶対主義の人たち(ニコンユーザーには多い印象)にとっては、開放F値の悪化も、特定条件で画質最優先の人には見過ごせない問題が出やすい PF レンズの採用も、ネガティブに捉えるのは理解できます。

ぶっちゃけ、PF レンズをずっと使っていて(主力レンズの一つです)、

300mm f/4E PF では酷かった逆光/点光源のフレアも、500mm f/5.6E PF では驚くほど改善されたけど、でもフレアの問題だけでなく逆光時のハイライト付近の滲みとか PF レンズの画質への影響は細かい部分である


と思っているので、私自身は小型軽量化のバーターとして受け入れられているものの、画質最優先の人にとっては購入を躊躇う要素になるのは当然だと思っています。

また、開放F値についても

最重量級レンズに PF レンズを採用して小型軽量化したのは理に適ってるけど、なのに何故 F5.6 から F6.3 に変えちゃったんだろ?


と私でも思いますしね。開放F値が F5.6 と F6.3 で(これを買う層を考えた上でサイズ的にもコスト的にも)そこまで違ったものなのだろうか?と。

レンズ単体で使う分には F6.3 でも問題ないでしょうが、鳥屋さんなどがさらに距離を伸ばしたくて x1.4 のテレコンを入れたら、F8 じゃなく F9 になりますから、そうなると随分と暗い印象を受けてしまいます。

Z800mm_f6.3_Release


ともあれ、本レンズではそうやって PF レンズを採用するだけでなく、開放F値をわざわざ F5.6 から F6.3 へと暗くしたわけですから、

どこまで小型軽量化できるのか?
どこまでお値段を下げられるのか?


という興味はありますね。

ニコンのミラーレスシステムは今までのところ他社と比べると、ボディもレンズも大して小型軽量化されていません。もちろん、Fマウントに比べれば多少小型軽量化されているものの、他社の目を見張る展開と比べれば(たとえ画質最優先というお題目があったとしても)いささか旧態依然、とまでは言いすぎでもコンサバな印象は拭えません。

特に望遠/超望遠レンズの軽量化においては、デジタル一眼レフ時代の最後の方で完全にソニーやキヤノンから置いていかれて周回遅れですから、テレコン付きヨンニッパとともに、本レンズがどこまで小型軽量化するのは楽しみにしています。

私自身、300mm f/4E PF、500mm f/5.6E PF の両レンズを使ってきて、多少の画質的問題はあったとしても、それを上回る小型軽量化のメリットは感じていますからね。(だからこそ、ゴーヨンとゴーゴーロクPFを使い分けていられるわけで)

加えて、開放F値をわざわざ F5.6 から F6.3 へと暗くしたことで、どこまで値段を抑えられるのか?というのも興味深いです。PF レンズ採用はコストアップですが、如何せん F6.3。

800mm F5.6 なら 150万出せるけど F6.3 ならそこまで出すようなもんでないでしょ、と思う人は結構いると思うんですよねぇ。

いずれにせよ、正式発表が(テレコン付きヨンニッパともども)待ち遠しい、興味深いレンズではあります。

ま、私が本当に待ち遠しいのは、先にも書いた PF レンズ採用 Z レンズ第2弾であろう Z 400mm f/4 or f/4.5。ですけど、テレコン付きヨンニッパや本レンズの次の超望遠レンズはロクヨン、そして廉価な 200-600mm ズームでしょうから、ヨンヨン PF は再来年になっちゃいますかねぇ…


Z28-75mm_f2.8_Release1

【2】Z 28-75mm f/2.8


設計的な負荷の大きな 24mm スタートではなく 28mm スタートにして、その分、小型軽量(かつ安価)なニッパチズームは昨今の流行のレンズと言ってもいいでしょう。

基本的に望遠〜超望遠に比重が大きく、それ以外のレンズについてはサイズ・重量的にも、金銭的にも負担の少ないレンズを望みたい私としても関心のあるものでした。

今までは、小型軽量で財布にも優しい標準ズームのある E マウントが羨ましい、なんて思っていましたから、Z 800mm f/6.3 だけでなく、流行りの 28-75mm f/2.8 も発売されると知って、思わず心の中で拍手。

おお、安くて小型軽量な 28-75 ズームを出すなら、Z9 に付ける標準ズームはとりあえずそれで良いかな?望遠系の Z レンズ購入の金銭的負担も辛いところだしなー


そう喜んだのも束の間…
  1. 28-75mm F2.8 って、絶対タムロン OEM だよねぇ
  2. でも新しい 28-75/2.8 G2 は評判良いし、実写画像見ても良さげだったから楽しみ
  3. ん?レンズ構成図が G2 と違うな?
  4. あれ?旧型の OEM ??
  5. おい、今さら旧型レンズを純正として高値で売りつけるのかよ…酷え

となって、超ガッカリモードなのは私だけではないでしょう。

Z28-75mm_f2.8_Release2
Z 28-75mm f/2.8 レンズ構成図

Tamron28-75mm_F2.8_A036
タムロン 28-75mm F2.8 旧型レンズ構成図

Tamron28-75mm_F2.8_A063
タムロン 28-75mm F2.8 G2 新型レンズ構成図


色々と大人の事情があったのだろうとは思いますが、さすがにこれはどうなんですかねぇ。タムロンが Z マウントに参入するから新型は売れねえ、というなら話はまだ判りますが、そんな噂もないですし…

レンズラインナップがまだ充実していない中、OEM で揃えるのは全然アリだと思いますが、巷の評価(周辺描写の圧倒的な差)はもちろん、タムロン自身が「G2 は旧型より全然良くなってるぜ」としっかり言ってるわけですからねぇ。最短撮影距離も違うし。

徹底解説!ソニー Eマウント用大口径標準ズームレンズ、タムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)の注目すべき5つのポイント! - タムロン公式ブログ

今さら描写が劣る旧型レンズを、いくら純正扱いとはいえ、本家の新型レンズより高く売りつけられてもねぇ、という感じ。開放F値は違いますが、先々月末に発表した Z 24-120mm f/4S と比べてもちょい安程度でしかないお値段は微妙すぎます。

Tamron28-75mm_F2.8_Compare
(タムロン新旧28-75/2.8 MTF比較図)


本製品発表で感じた問題点として、そんな「タムロンの旧型製品をより高い値段で売りつける商法」とは別に、もう一つ。

タムロンから OEM するなら、レンズラインナップ的に本数は揃いつつある標準ズームよりもっと他のレンズがあったのでは?


という点。

24-70mm の F2.8/F4 両レンズに、小型軽量な 24-50mm、高倍率の 24-200mm、先日発表された 24-120mm と、他のレンジに比べれば標準ズームレンズは既にそこそこ揃ってます。

それに比べると、フルサイズの望遠ズームレンズは 70-200mm F2.8 と 100-400mm だけ。廉価な望遠ズームがロードマップにすらない状況を思えば、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047) の方が相応しかったのではないかと思うのです。(自分が望遠志向ということを割り引いて考えても)

いずれにせよ、今回の Z 28-75mm f/2.8 については一瞬「買いたい」と思っただけに、ぬか喜びガッカリ感が強かったですね…ホント残念。

あとは、タムロンが新型引っ提げて Z マウント参入してくれることを期待……はできないと思ってますけど、どうですかねぇ。

タムロン 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) 製品情報 - TAMRON
タムロン 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063) 製品情報 - TAMRON


(タムロン新旧 28-75/2.8 の販売価格)