常に携帯するカメラ、自分が日常的に撮るためのカメラはもうスマートフォンに敵わない、画質とコンパクトさ、使いやすさのバランスが最高レベルにある GR を持ってしても無理だった…


7年前、そういう思いに至って、手放した初代 APS-C GR。もう二度とコンパクトデジカメは買わないと決意していたはずなのに、7年の月日が熱さ喉元をわするるの如く、再び手を出してしまったコンパクトデジカメ、そして GR。

この秋の買い物について考えるどうでもいい話 3 〜 GR IIIx 欲しい熱が意外としつこい問題
もう二度とコンデジは買わないと決めたはずなのに…買ってしまったリコー GR IIIx 〜心の中のせめぎ合いを制した理由、言い訳
リコー GR IIIx 購入前後のアレコレ

従来の画角 28mm というポリシーから外れる GR IIIx が発売され、そして手元に届いてから、ちょうど1ヶ月経ちました。

苦手な 28mm じゃなく 40mm 画角の GR が出た!これは 7年前の決意を覆してでも買うしか…。でも、またスマホに負けて使わなくなるだけなのに…


そんなことを思いながらの購入。この1ヶ月使ってみて、色々と思うところはありました。予想どおりなこと、予想とは違っていたこと。

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この1ヶ月、使っていて感じたことを都度メモしていたのですが、それを見返してみると結構いっぱい書き散らしていて、まとまるかどうかも判りませんが、ひとまず端的に1ヶ月の感想を列挙すると、以下のとおり。
  1. 私自身の日常お気楽撮影機としてスマホに一矢報いることができるか?という主目的については、7年経ってもやっぱり完敗

  2. ただ、どんな時にも持ち歩ける「カメラ」としては GR 以外の選択肢が私にはない、ということも改めて実感。

  3. カラーの絵作りは全くもって自分の感覚から遠くて戸惑うばかりだが、複数あるモノクロモードは好き。

  4. 2段階のクロップモードをボタンに割り当てることでステップズーム感覚で使えているのは本当に良い、が 2段階目のクロップは流石に画素数減りすぎなのがもどかしい。

  5. 画質の良さはもちろん、ボケも個人的には満足で、この点はさすが GR というしか。

  6. 28mm という画角が苦手で 35mm が好きで、40mm なら後者に近い感覚で使えるやろ!と思って買ったが、意外と 35mm と 40mm の画角感覚の差を思い知らされて、ちょっと狭いな…と思うことが多い。

  7. Wi-Fi 転送がかなり不安定で、外出先での転送成功率が低すぎてストレスしかない。

  8. プログラムラインのノーマルが割と開放に寄りがちで、光量が多い時を除いては開放優先と大差なく、深度優先になると F8 になって、中庸中間という意識がないんか?という印象。

  9. スマホに対抗すべく腰からぶら下げて速写性を上げる一環として Peak Desgin Capture を試してみたが、バッテリー蓋を使えなくしてまでやるほどメリットはなく、GR ほど小さなカメラなら腰からぶら下げたポーチから取り出すのと大差なかった…

こんなところでしょうか。良くも悪くも、買わないと判らなかったこと、忘れていたことは多かったなぁ、と思いますので、買ったこと自体には後悔はないです。

とりあえず、それぞれの点について、思うことを少々記しておきます。


1. 日常お気楽撮影機としてやはりスマホには勝てず、だが…

これは購入前から予想/覚悟していたことで、ある意味 40mm 画角の GR IIIx をキッカケに、改めてそれを実感するために買った、といっても良いでしょう。

他人はどうか知らないけど、自分にはやはりスマホの方がサッと出してサッと撮れるし、欲しいものが撮れる。横構図だと速写性としては大差ないけれど、撮り捨てる感覚で撮るものについては、やはりスマホの方が気楽。

いくら小さなカメラだと言っても、カメラで撮るとなると、どうしても構えてちゃんと撮ろうという意識が中途半端に働いて、逆に良くない。パッと目についたら、パッと止まって、サッと撮って、サッと歩き始める、的な感じにはならない。

それができて、なおかつ良い写真が撮れる人が GR に相応しい人なのだろうけど、私にはその両方ができないので、使っていてもどかしい。

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ただ、だからと言って、「やっぱり私の日常スナップカメラはスマホしかないわ、GR は要らねえわ」という気持ちにはならなかったですね。少なくとも、今のところは。自分でも少々不思議ですけど。

まぁなんというか、

「いざとなれば、高画質で写真らしく撮れる、撮ることのできるカメラが入ってる」
「ちゃんと写真を撮りたいと思ってスマホしかなかった…ということがない」

そういう安心感?自己満足感?は確かにあるんですよね。

自分の写真撮影機の中で足りないモノがコレだった、という感じもあります。日々持ち歩くことのできる小さなカメラ。

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ただ、持ち歩くことが目的になってる気もするわけで、そんな持ってるだけのカメラは本来好きじゃないんですが、これもスマホとミラーレス機の中間に存在するカメラとしての役割の一つなのかもしれないなぁ、と思ったり。(一応ちょこちょこ使ってはいますし)

などと言い訳していますが、そのためだけに十数万円のカメラというのは流石にどうか?と思うのは自覚しております…


2. 自分のコンパクトデジカメの選択肢は GR 以外になかったことも改めて実感

GR IIIx が発表されて購入を考え始めたとき、「今さらまたコンパクトデジカメ買うなら、もっと安いのにしとこうぜ」と思って、改めて今売られているコンパクトデジカメを調べたものの、手頃な価格で変えるのは「おい、いつまで売ってんだよ」という古いカメラばかり。(思い切って GoPro も考えましたが)

おまけに、最近ズームレンズはどうも慣れなくてねぇ…。スマホも(デジタルズームはできるけど)超広角、広角、標準または望遠のレンズをボタン一つで切り替えられる、いわば単焦点レンズの切り替えじゃないですか。それが心地よいんですよね。

そのあたり、GR IIIx は単焦点レンズであり、画角に関してはクロップモードを Fn ボタンに割り当てて切り替えて使っているので、画素数のことは別にして、ちょうどスマホと同じような単焦点レンズ切り替え的に使えていて、やはりそれが手に合います。

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手元に Powershot S100 だけはずっと残しているので、GR IIIx を買う前に使ってみたのですが、画質その他は別にしても、ズームレンズだとどうしても画角調整をしてしまうので撮影に時間がかかる。単焦点レンズで、はみ出すも余るもえいや、と割り切る方が、イラチな自分には性に合います。

どうせ撮るものは適当なお気楽日常スナップでしかないわけで、だからこそ割り切って使える単焦点レンズのコンパクトデジカメの方が心地よいなぁ、というのはあります。

だったら、そんなもんスマホで撮っとくのがお似合いだ、と言われれば全くその通りなのですけど。

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いずれにせよ、単焦点レンズで本当にコンパクトと言えるサイズのコンパクトデジカメ、サッと片手で持って心地良く撮れる、という点において、「やっぱり GR がベストだなぁ…」と、久しぶりに使ってみて改めて思います。手にしっくりくる単焦点コンパクトデジカメ。

もし、GR IIIx を手放して、また何年後かに懲りずにコンパクトデジカメを買うようなことがあっても、また GR を考えるだろうな、とは思いますね。お値段が高くなりすぎて、買えるのはこれがもう最後だと思いますけど。


3. カラーの絵作りは合わないが、GR のモノクロモードはやっぱり好き

買って撮り始めてから「そういや、GR の絵作りって、こんなだったよなぁ」と、思うような色が出てくれなくて、それは今に至るまでちょっとストレスです。撮って出し JPEG でしか使わないこと前提で買ったカメラだけに。

スマホの代わりの速写カメラ、と思うと印象色、記憶色な方向を求めてしまうのですが、GR の場合は渋い色合いになって、それはそれで悪くはないのですが、ちょっと求めていた方向とは違っていた、というか、忘れていました😓

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(GR IIIx と iPhone 11 Pro)


そもそも、富士フイルムの色が忘れられなくて富士フイルム機に戻ったくらいですから、GR とは逆に近い方向性。AWB も露出もちょっと自分のイメージと違っていて、撮る時にも少々苦労するし、撮ったものを見ても満足しにくいのが現実。(青色 LED をとことん白にしてしまうのも謎)

これはまぁ、好みの問題なので、良い悪いではないですが、同じお気楽スナップ用途の富士フイルム機と違いすぎて戸惑うことは未だ多いです。(富士フイルム機と GR を同時に持ち出すことはないですけど)

反面、モノクロは好みです。富士フイルム機のアクロスも他人の写真を見ると惚れ惚れすることが少なくないものの、自分で撮るとなると悪戦苦闘、思うように撮れないまま1年近く過ぎています。元々モノクロ写真が何たるかも判っていないド素人なので当然ですけど。

ただ、GR だと4種類のモノトーン系をあまりカスタムすることなくても、なんかイメージ通りのものが出てきます。イメージが貧困かつ技術的にも拙いので、どうしようもない写真しか撮れないですが、少なくともイメージに近ければ自己満足だけは得られます。

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あとは、ぶっちゃけ言えば、カラーで撮った写真が思うようにいかないことが多いので、モノトーンで撮ることが増えたこともあります。

とはいえ、カラーで適当に撮っていても、たまに凄い良い感じでハマります。ただ、漫然と景色を撮ったりするのには向かないカメラだなぁ、と思いながら漫然と撮ってます。


4. クロップモードをボタンに割り当てステップズーム感覚で使っている

2項前に書いたことと重複するので割愛。

2段階目のクロップ(71mm 相当)になると、さすがに画素数減りすぎ(600万画素少々)なのがもどかしいですが、仕方ないですね。

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5. 画質の良さはもちろん、ボケも個人的には満足

この点は今さら私如きが語るまでもないので割愛。

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6. 意外と 35mm と 40mm の画角感覚の差があった

28mm が苦手で、35mm が好き。だったら、40mm は割と良い感じに使えるやろ!と思っていたんですが、「もうちょい広い方が…」と思うことがあって、意外と 35mm と 40mm の画角差を思い知らされているのが実情。

被写界深度も浅めなので、そのあたり油断もできないなぁ、と色々学びながらの日々。

富士フイルムの色が好きで 35mm という画角が好きなら X-Pro シリーズ…だけど、あれは「コンパクト」デジカメじゃないしねぇ。


7. Wi-Fi 転送がかなり不安定

これはねぇ、過去に色々なメーカーのカメラを使ってきて、ストレスなく完璧にサクサク行くカメラ、メーカーはないと思うんだけど、それでも随分安定するようになった、実用的に使えるメーカーは多くなっているけれど…。GR はあかんね。

できる時もあるけど、できない時、できたとしても何度もリトライして5分以上かかってできる時が多い。というか、何度もリトライして5分以上かけてようやく数枚転送できる、なんていうのは「できる」とは言わないわけだが。

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(この画面で止まったままなのは見飽きた)


ある意味、条件/環境によって「できる時もある」「できたり、できなかったり」というのは一番タチが悪い。できるかも?と思って試してしまうから、時間を無駄ばかりにしてしまう。

リコーにこういうのを期待しちゃいけないと判っていても、付いてると使いたくなるからストレスになります。

iOS 用についてはサードパーティ製で評価が高いアプリがあるので、買うかどうか迷っているまま、1ヶ月が過ぎています。どうしようかな…(値段の問題ではないのだけど)


8. プログラムラインのアルゴリズム

購入当初、プログラム (P) モードをメインに使っていたのですが、どうもプログラムラインのノーマルだと開放に振りがちで、3桁分の1くらいのシャッターになってもあまり絞り込まない。

光量が多い時を除いては開放優先の設定と大差ないんじゃないか?という印象で、かといって深度優先に設定すると基本 F8 になるので、こう F5.6 前後の中庸中間という意識はないんか?と思ってしまって、結局は絞り優先モードで使うようになってしまった、という話。

せめて、プログラムライン変更をカスタムボタンに割り当てられることができれば良いのですけどねぇ。


9. Peak Desgin Capture は GR に合わない

小型軽量なミラーレスを使うときには、ちょくちょく使っている Peak Desgin Capture。



GR に使う場合は Peak Desgin のプレートが正方形で幅が広いので
  • GR のボディ厚みからはみ出る
  • バッテリーの蓋に被るので開かなくなる

という問題がありますが、それでも速射性が上がれば Capture で使う価値はあるだろ、と思って何回か試しました。

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が、GR ほどコンパクトなら、いちいち Capture を利用して使い勝手を落とすより、普通に小さなポーチに入れて同じように腰からぶら下げていても速写性は変わらないし、ボディ剥き出しにせずに済むし、メリットが多いことに気づいて Capture を使うのは止めました。

というだけの話でございます。

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GR IIIx を1ヶ月で使ってきて感じたのは、こんなところですかねぇ。

日々カバンに入れて持ち歩く割には
意外と撮影枚数は伸びない


というところが私の GR IIIx ライフを象徴しているかな、と思います。

ぶっちゃけ、

カメラが鞄に入ってる安心感
を得るだけのアリバイカメラ


という側面は否めません。

趣味のカメラですから、それで満足できているならそれで良いのでしょうけど、我ながらもどかしいですね。ちゃんと使えていない、使いこなせていないことが。(元が取れる気もしないしw)

ただまぁ、私の中で普段サッと出して撮るカメラとしてスマホに敵わないのは改めて痛感しました。街中でスマホ出して撮るのと、小さいとはいえカメラを出して撮る、その精神的ハードルの差がありますし。

だからと言って、Xperia PRO-I を見て「GR IIIx じゃなくて買うべきはこっちだったか?」なんて一瞬思ったところで、それを本気で思うことはないですね。いくらスマホカメラが高画質だとしても別物だし、やっぱりカメラはカメラ。どこかしら、持ってると、使うと落ち着くところがあります。

それだけに GR IIIx の、自分の中での評価、位置付けは悩ましいです。

「今日は写真撮るぞ」と思うときにはミラーレス機のシステムを持っていきますから、GR IIIx の出番はなし。そういう時に GR を使うと色が好みじゃなくてストレス抱えそうだし。

写真を撮るかどうか分からない時、気軽に持っていけるカメラとして GR IIIx は活躍するけど(主にカバンの中で)、だからこそ持ち出し回数はダントツに多いけど、撮影枚数は少ない。元を取った気がしない。

ホント、これからどういう付き合いになるのか、どういう折り合いをつけていくのか、どういう撮影スタイルを見つけていくのか、我ながら見通せない GR IIIx との1ヶ月でした。