噂情報どころか前日には公式ページ用の宣材写真がだだ漏れまくりだった、ニコン Z fc が昨日発表になりました。Z50 に続く2機種目の APS-C 機。

Zfc_Release01

Z fc - 概要 | ミラーレスカメラ | ニコンイメージング

基本的に噂の段階からネガティブな印象しかなかったし、正式発表でメーカーとしての方向性を見たり実機を触ってみて多少ポジティブな印象もありましたが、それでもまぁ、なんだかなーという気分は少なからずあります。

おまけに、Df の時と同じく、こういうデザインのカメラが出てくると必要以上に礼賛する風潮があって、そういうのを見るとホンマ馬鹿だよなーと思ったりする、そんな輩の愚痴やらなんやらが以下続くので、ニコ爺、信者の類いはとっとお帰りやがれください🖕



Z fc は端的に言って、

Z50 の中身そのままに
レトロスタイルにしただけ


と言っても良いカメラ。Z50 自体は高い評価を受けるダブルズームとともに良いカメラだと思ってます。昨年末、サブシステムを買う時も最後まで富士フイルム機と迷ったし。

Z fc での進化は、USB 給電や瞳認識・動物認識が Z6 II / Z7 II と同じワイドエリア AF 対応になったとかありますが、Z50 でもファームウェア・アップデートで対応できそうな程度。あと、バリアングル液晶にしたためか、背面液晶はちょっと小さくなってます。

Zfc_Release02


実機を触ってみれば判りますが、外見と操作体系は独特であるものの、メニューを見れば Z50。操作体系も前後ダイアルがあるので、Z50 その他従来ニコン機と同じように操作しようと思ったら割とできます。

シャッタースピードダイアルは1段刻みですから、1/3段毎に設定しようと思ったら汎用ダイアル操作になりますしね。絞りはそもそもレンズに絞り環がないので、汎用ダイアル操作ですし。

左肩の ISO ダイアルはロックがかかっており、ダイアル中央のボタンを押しながらじゃないと回らない仕様ですが、右肩のシャッタースピードダイアル(以下 SSダイアル)は普通に回る仕様で、ISO ダイアルよりは随分軽く回ったのが印象的。(触った展示機の場合)

SSダイアル中央のボタンもロックがかけられるかと思ったのですが、そんなこともなく、中の人にナニコレ?と聞いても「カメラが来たばかりなので判りません」と言われ不明でしたが、自分で頑張ってあちこちの情報探ってみたら X/T/B の位置だけロックがかけられる仕様だとか。なるほど。

Zfc_Release03


さて、この手のレトロスタイルの UI まで再現したデザインカメラと言えば、ユーザーでもある富士フイルム機ですが、

同じようなUIコンセプトでも
富士機とは操作性は意外と違う


と感じましたね。シャッタースピード、ISO、露出補正の独立3ダイアルがあるのは同じですが、撮影モードに対する考え方が違います。もちろん、見た目だけレトロデザイン風で操作体系は今どきな一部のオリンパス機とは全然違います。

(X-S10 など一部機種を除く)富士フイルム機の場合、
  1. レンズ側の絞り環と SS ダイアルを両方 AUTO にすることでプログラム P モード
  2. SS ダイアルだけ AUTO にすれば絞り優先 A モード
  3. レンズ側の絞り環を AUTO にするかレンズ側スイッチを AUTO にすればシャッター優先 S モード
  4. 絞り、シャッタースピード両方の値を指定すればマニュアル露出 M モード

となります。ISO ダイアルがある機種も、ダイアルを AUTO にすることで ISO AUTO になります。

ところが Z fc ではシャッタースピード、ISO 両ダイアルがありながら、Df 同様に(モードダイアルではないけど)P/S/A/M、AUTO のモードレバーがあります。

レトロデザインUIでありながらも
既存カメラの操作性から逸脱しない


操作体系になっていて、このあたりはニコンにとって Z fc は(旧 Df も)“派生機” であるが故の配慮が伺えますし、個人的にはこっちの方が手っ取り早くモードを切り替えられて好きです。

(X-E/X-T シリーズを使っていた時は A モードと S モードの切り替えが面倒でマジで嫌だった。X-S10 なら富士機に戻ってくる気になった、小さな理由の一つ)

また、P/A モードでは SS ダイアルの指定値が最低シャッター速度として扱われるのも良いですね。ISO ダイアルの指定値が最大 ISO 値になるような設定はあるんでしょうかね?確認するのを忘れました。(どうでもいいか)

Zfc_Release07


価格レンジ的に富士フイルム機だと廉価機の X-S10 / X-E4 / X-T30 あたりになりますが、X-S10 はレトロスタイル機ではないので別として、X-E4 も X-T30 も SS ダイアルはあっても ISO ダイアルは省略されています。(X-E4 はモードダイアルもない)

それを考えると、同価格帯ながら

廉価機でもダイアルを省略してないZfc


は好印象に思えます。

Df と比べれば価格的に仕方ない部分はあるとは言え、実機を触ってみると、

値段の割にチープさは最小限


で、売りである上面のダイアル周りなんかはよくやってる感はあると思います。まぁ言うても10万円台半ばですから、安さが売りだけの廉価機とは違いますしね。

だからと言って、これで「さすがニコン、安くても質感がある」とか言ってる奴はアホもいいところであって、それなりにコスト削ってる部分はありますし、そこはそれなりでええんやないですかね。実際以上に称賛しても、信者心が満たされる以外、誰も得しないわけで。

Zfc_Release09
(見た感じはホント渋さがあって良いです)


こういうデザイン、UI のカメラが出てくると、どうしても勝手知ったる富士フイルム機と比べてしまうわけですが、先に書いたモードに対する考え方なんかは実は瑣末なところで、どうしても感じてしまうのは、

ここまでレトロスタイルなUIにすると
レンズに絞り環がないのが違和感


というところ。片手落ち、とまで言うと、言い過ぎかもしれませんが、それに近い。

SS も ISO も露出も専用ダイアルがある。でも絞りはショボい小さな汎用ダイアルでやるしかない。おまけに、絞り値の確認は、えらく小さな液晶窓。小さなボディに色々ダイアル詰め込んで、液晶窓のサイズはそれくらいしか取れなかったんでしょうけど、ちょっと哀しい。

こればっかりはトータルのシステム上、そして派生機である限り仕方ないことですが、なんか微妙にチグハグ感は感じてしまいます。X-S10 で現代的なボディ操作をしているのに、レンズに絞り環があることの違和感と逆。

旧 Df の場合は、ニコ爺がオールドレンズ、旧タイプのニッコールレンズを使うための母艦としての役割が強かったですから問題なかったのですが、Z fc では絞り環のあるレンズを使うことはあまり想定されないと思うので、そこがアンバランスというか、画竜点睛を欠くというか。

Zfc_Release08


あと、先日のレンズロードマップ更新でも APS-C 用レンズはこの先高倍率ズームだけであり、単焦点レンズもなければ、フルサイズ用レンズでは賄うことができない APS-C 用超広角レンズも出す予定なし

APS-C用レンズもロクに出さず
こういうボディを出してどうしたいの?


と思うんですよ。

Z50 はダブルズームキットから先に進まない層をターゲットにしてる、と思えば納得もできますが、Z fc を買う層はそれとはちょっと違う気がするので。

そもそも Z fc に 28mm f/2.8 を付けた佇まいは悪くないですが、ダブルズームキットのレンズをつけるとボディのデザインが台無しになりますからねぇ。キットの Z DX 16-50mm のシルバーバージョンは電源オフの状態なら良いけど、電源を入れた途端…ねぇ。

Zfc_Release05


唯一、Z fc で本当に感心したのは、エクステンショングリップ「Z fc-GR1」。残念ながら展示機には付いていなかったので、実際の握り具合は確かめられませんでしたが、写真を見る限り、後付け感があまりなくて良い感じ。

この手の後付けグリップは、メーカー純正であっても後付け丸出しで、「ボディのデザインに散々凝っているのにこの後付けグリップはどうしちゃったのよ…やっつけ仕事?」なんて思うことも少なくないのですが、コレは良さげ。

カメラボディデザインの素晴らしさを散々語っておきながら、自分のカメラには後付けグリップ付けてるプロの方とか見ると、それでええんか?別のところで語ってた、そのカメラのボディデザインの素晴らしさはええんか?とか思っちゃうクチですが、これなら悪くないかな?と思ったり。

Zfc_Release04


いずれにせよ、Z fc が、Df みたいにボディを買ってもレンズを全然買わないニコ爺層に売るカメラじゃなくて良かったと思います。実際に、ニコンがターゲットにしてる層に売れるかどうかは別にして。

(カラーバリエーションじゃなく張り替えサービスなのはコスト面では良いでしょうけど、カラフルな宣伝見て買いにきた一般民が「購入したあとメーカーに出してください」と言われてまで買うかどうか…壊れてもないのにサービスに出すなんて普通しないですからね。そのあたりの感覚のズレはニコンらしいですけど)

ぶっちゃけ、情報だだ漏れ宣材写真が流出しまくった時点で、レトロデザイン機の噂が本当になってしまったことに

嗚呼、ニコ爺などのマニアや一部プロカメラマンに持ち上げられたけど商売的には成功せず、将来の技術開発に充てるべきリソースを過去の思い出に無駄遣いした Df の反省もなく、ソニーやキヤノンから周回遅れにされているのを挽回するカメラより、懲りずにまたそんな先もない層にウケるカメラを作ったのか(´Д` )


と、ため息を吐くしかなかったくらいには絶望感があったのですが、正式発表された後の公式サイトやパンフレットを見ると、

またもやニコ爺相手の商売なら絶望しかなかったが、APS-C 廉価機ということで一般層、ライト層向けのファッションカメラ狙いっぽいし、まだマシかな


と多少思い直しましたし、実機を触ってネガティブな思いの5分の1くらいはポジティブ化されました😓中身まんま Z50 で開発コストは抑えているでしょうし。

ただねぇ、本音を言えば、

潤沢じゃないリソースをそんなとこに使うより、周回遅れにされているソニーやキヤノンと真っ向勝負できるカメラを早く出せよ。ってか、Z9 はどうなってんねん!ソニーはα1 出して、キヤノンも EOS R3 の中身をそれなりに出してきてるのに、一番実績のないニコンがどのインタビューでも「ご期待に沿えるよう頑張ってます」だけやんけ💢


ですけどね。Z9 早く出せとまでは言わないが(早く出して💩の方が困る)、どのくらいの物か、どれくらいを目指してるのか具体的な情報を少しくらい出して欲しい。出してくれ。出せ。

Zfc_Release11
(高松宮妃殿下の写真展開催中)


とまぁ、そろそろプラザ点検に出していた機材が上がってくる時間なので、暑さしのぎにレイコー飲みながら書き散らしてるのも、これくらいにて。

ちなみに、ニコンのショールーム/サービスセンターが移転して初めて来たのですが、前みたいに中でゆっくり機材点検待ちできなくなったのは残念。ショールームやエレベーターホールから見える景色は前より良くなったかな。

あ、そうそう Z fc より新しい Z 105mm マイクロレンズを試させてもらったら、ちょっと感動でしたね。クソ素人でも一目瞭然の素晴らしさ。あれであの値段だと、そんなに高くない気が。Z ボディはどれも心動かないけど、Z レンズは怖いですねえ。