プロ野球やJリーグが再開して3ヶ月近くが経ち、ともに上限5千人の制限を課せられながらも観客を入れての試合開催も2ヶ月が経ちました。

この間、選手やスタッフに感染者が出ることはあったものの、スタジアムにおけるクラスター、感染拡大の一因になるようなことはなく(確認されず)、無事に有観客での試合開催を続けられてきました。

このことは慎重を期して、安心安全を第一に考えたガイドラインの策定とクラブ側の遵守があってのことですし、関係者の非常なる尽力があったことは言うまでもありません。試合を観戦している一人として、心から感謝しています。

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実際、Jリーグで観客を入れることになった最初の週末から何度も試合観戦に行っていますが(記事執筆現在で全カテゴリー合わせて 8試合)、上限5千人で座席間隔も4席に1人という疎な配置になっていることで、スタジアムにおいて入退場含めて密を感じることは皆無でした。

このことについては、過去にインプレッション記事を記しました。

上限5千人のサッカー観戦に思う安心と不安 〜パナスタの場合 【前編】
上限5千人のサッカー観戦に思う安心と不安とこの先 〜パナスタの場合 【後編】

ただ、上記記事でも書いたとおり、上限5千人というのは多くのクラブで本来の観客数よりずっと少ない人数です。特に J1 クラブにおいては激減と言っても良い数字。ガンバ大阪の場合、昨年の平均観客数は2万7千人を超えていますから、たとえ5千人入っても平均観客数の2割以下。

単純にチケット収入だけでなく、グッズ販売やスタジアムグルメの飲食店舗の販売にも大きく影響を与えていることは言うまでもありません。来季のスポンサー収入にも大きな影響は否めませんし、どこのクラブも経営が厳しい状況になっています。

本来なら上限5千人という観客数制限は7月だけを想定しており、8月からは「スタジアム収容人数の50%を上限」という政府方針でしたが、周知のとおり、新型コロナウイルス感染拡大の第二波とも言える感染者増によって観客数制限の緩和は2度3度と見送られ、現在9月末までは現状の上限5千人制限が適用されています。

ただ、ここ1〜2週間では新規感染者数も減少傾向となり、感染拡大第二波?もピークアウトしたように見られています。

新型コロナウイルス 国内感染の状況
新型コロナウイルス 感染者数やNHK最新ニュース|NHK
一律5000人という考え方がどこまで妥当かを議論してきた。第15回新型コロナウイルス対策連絡会議会見レポート:Jリーグ.jp

となると、本来8月には実施される予定だった観客数上限の緩和が求められるのも当然で、先日Jリーグ・プロ野球合同で制限緩和を政府に要望しました。

新型コロナ:プロ野球とJリーグ、観客制限の緩和要望 2万人か50%へ  :日本経済新聞
プロ野球とJリーグ 新型コロナでの観客数上限 緩和を要望へ | NHKニュース

Jリーグにおける制限緩和の内容は、「Jリーグ 新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン 8月25日更新版」の記載から概ね以下のとおり。



 現状緩和後
観客数上限上限5千人か会場収容人数の50%の少ない方会場収容人数の50%
席間隔半径1m以上空ける1席程度空ける
ビジター席設置しない設置する
アウェイ観戦控える/アウェイグッズ装着禁止特になし
アルコール販売不可
場内外イベント禁止社会的距離を保って開催

入場時の検温、マスク着用、声出し禁止、道具を使った応援禁止、他の観客と接触する応援行為の禁止などのは継続になります。

Jリーグ 新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン_8月25日更新版 (PDF)

拍手は良いけど手拍子は禁止、という謎ルールは先日改訂され、今週から手拍子解禁となりました。

「Jリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」スタジアムにおける応援行為に関する見直し:Jリーグ.jp

先にも書いたように観客上限5千人というのはクラブの経営を危機的にするものですし、GoTo キャンペーンなんてものをやっているのにアウェイ観戦禁止するのもおかしな話ですから、それらの緩和を要望するのは当然だと思います。

思いますが、個人的に今までの観戦経験から上記内容での制限緩和には反対です。制限は緩和はすべきであるものの、現状ルールを守らない観客も多く、もう少し条件は考えてもらいたいと思っています。

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ということで、以下その理由を記しておきます。

  1. スタジアムの規模が違うのに一律「上限5千人」が根拠に乏しいのと同じく、一律に「会場の収容人数50%まで」では大規模スタジアムでは数万人規模となり、スタジアム内の密を回避する措置を行っても、都市部のスタジアムの場合は行き帰り(特に帰り)の公共交通機関の密が避けられない。

    一律に「会場の収容人数50%まで」とだけするのではなく各スタジアムの状況(交通手段比率など)に合わせた基準を作るか、もしくは「上限1万人」または「上限1万5千人」の併用(少ない方を採用)のような段階的措置、経過措置を作るべきと思う。(スタジアム周辺住民などへの影響も勘案すべき)

  2. 実際のスタジアムでもDAZNを見ていても判るとおり、観客の声出し禁止はほぼ守られていない。それでもマスクをしていたら飛沫拡散防止になるが、マスクを外している観客も珍しくない

    相手選手や審判への文句、ブーイングを行うのに、わざわざマスクを口から外して声出しやブーイングしてる人を結構見ているし、周囲にいてウンザリしたこともある。

    このご時世で、感染防止に無頓着な奴がすぐ後ろでマスク外して大声出しまくってるなんて、たとえ1列空いていたところで、到底気持ちよく観戦なんかできないし、コアなファン以外に来てもらえる状況とは思えない。

    みんながマスクして声出ししないことを前提に観客数制限を緩和するわけだが、現状多くのクラブでその前提が守られていない。(クラブ側も厳密に対応していないし、それは難しい)

  3. 単価と利益率の高いアルコール販売はスタジアム内外の飲食店にとって重要だろうが、アルコール解禁となればますますマスク装着や声出し禁止を守れない人は増える可能性は高い。


とにかく、大規模スタジアムにおいては「上限5千人(か会場収容人数の50%の少ない方)」と「会場収容人数の50%」の格差が大きすぎて、いきなりそんなに増やしても大丈夫?としか思えません。

パナソニックスタジアム吹田であれば会場収容人数の50%と言えば2万人。5千人だとガラガラで行き帰り含めて密に感じることはありませんが、2万人となれば過去の経験から退場時はそれなりに密になりますし、帰りのモノレールが長蛇の列まではいかなくとも、シャトルバス含めてそれなりの混雑になります。

というか、上限5千人の今はシャトルバスは運行されていないわけですが、会場収容人数の50%となれば運行するんでしょうかね?運行する場合の密対策とかはどうするんでしょうか……

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あと、観客の中にはマスクを付けない人(顎マスク含む)、声出し禁止を守らない人は少なからずいるわけで、みんながルールを守ってる前提で基準を考えるのは現実に即していないと思うんですよねえ。

はっきり言うと、サッカーの試合観戦で完全に声出し禁止なんて不可能です。というか、そんな行儀の良いスポーツでもないですし。

ただ、マスクさえしていれば多少声を出してしまっても、ある程度飛沫抑制、観戦防止になるわけですが、それを無視する人はいるし、むしろ盛んに文句叫んでる人に限ってそういう傾向はあるわけで、それを考えると緩和するにしても段階は踏んで欲しいなぁ、と思います。

プロ野球では感染者が試合観戦に行っていたことが1例発覚していて、それによるクラスター発生はもちろん、濃厚接触者の判定もなかったとのことですが、今後、席間隔が詰まってくれば話はまた違ってくるでしょうしね。

また、先日の飛行機(ピーチ)で、絶対マスクしないマンがいたために目的地に到着する前に途中の空港に緊急着陸した件が話題になっていましたが、あのニュース記事に対する反応を見ても(下記ツイートのリプライ欄を見れば判る)、「マスクなんか意味ないからルールなんか無視」というアホは一定数いるわけです。




各人がマスクの効果をどう考えるかは自由ですが、それとは関係なく公共の場ではルールを守るべきであるのは言うまでもないこと。(そもそもマスクは自分が感染しないためのものではなく、自分が無症状で感染している時に他人へうつさないためのものですが)

けれど、それを守れない人が少なからず世の中に、そしてスタジアムでも見受けられる現状では、制限緩和はすべきでも、その緩和基準として一気に上限数万人規模にするのが適当だとも、また座席間隔を今の2分の1まで詰めるのが適当だとも、私には思えないですね。