CP+ ができて以降というか CES の存在感が低下してきて以降というか、最近はあまり CES に合わせてデジタルカメラ関連の新製品発表が少なかったのですが、今年はキヤノン、ニコンとも今週7日に発表がありました。

キヤノンはフラッグシップ機 EOS-1D X Mark III の正式発表。開発発表ではライバルであるニコン D6 が先でしたが、正式発表はこちらが先んじての発表。


キヤノン:EOS-1D X Mark III|概要

で、発表数日前の価格リーク情報で、量販店価格88万円!というのを見た時は、マジで!?とビックリでしたが、本当にその価格。消費税分が 10% あるとはいえ、税抜き約80万円、ポイントなしの一般カメラ店の税込価格も80万円弱。

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10年くらい前の EOS-1D X 世代になる前の、私が使っていた頃の EOS-1D シリーズは50万円くらいだったわけで、

4年に1度モデルチェンジのたびに10万円アップ


かと思うと、なかなかのインフレ率。超望遠単焦点レンズの値上がり具合と合わせて、ますます手の出せる人が少ない製品になってきたように思います。

ニコンD一桁機とともにお得意さんはメディア系のカメラで、スチルカメラでは数少ない BtoC より BtoB 的なカメラですが(新製品にありがちなスペシャルサイトなんてのも無い)、マスメディアも昨今厳しい予算が多い中で、以前ほど多数を入れ替えるのも難しくなってきたと聞く中で、このお値段。

キヤノン、ニコンの牙城、金城湯池を崩すべく超速で攻め込んでいるソニーのフラッグシップ機、

α9/α9II が凄く安く見える


という価格ではありますが、その中身を見ると、

もしかすると最後になるかもしれないフラッグシップ一眼レフ機として、これでもか!というくらい詰め込んできたなぁ


というスペック、新機能。

ぶっちゃけな感想としては、

高い!けど、凄い!頑張った!


まさにキヤノン渾身の一台そんな印象を受けるカメラに見えます。



EOS-1D X Mark III の発表に対するネット上の反応をチラ見するに、「画素数が2000万画素のまま」という点に国内外とも落胆の声も多いようですが、以前も書いたようにフラッグシップ機は高感度画質&連写速度(連写安定性)優先であり、画素数を求める人はターゲット対象外のカメラ。

ただ、それでも(CF Express 採用もあるので)2,400万画素にはアップしてくると思っていたのですが、2,000万画素据え置きとは少し意外でした。EOS-1D シリーズで唯一2年以内でマイナーモデルチェンジした EOS-1D Mark II → Mark II N 以来の画素数据え置き。

(Ds じゃない EOS-1D シリーズの画素数は、約400 → 800 → 800 → 1000 → 1600 → 1800 → 2000 → 2000 という変遷)

これがどういう商品設計の意図だったのかは知る由もありませんが、α9→α9 II が画素数据え置きだったことも含めて、現状ではまだ高感度&連写最優先のカメラで画素数をジャンプアップさせる技術段階にないということでしょう。

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ともあれ、この EOS-1D X Mark III、個人的に気になった点は幾つもあります。D5 ユーザーから見て「ええなぁ、羨ましい」と思える機能もあります。当然スチル撮影機能のみですが、以下の点には惹かれるものがありますね。

(1)AFスタートボタンと測距点選択スティックが一体化

随分前から EOS-1D X Mark III では AF スタートボタンと AF 測距点選択スティックが一体化したコントローラーが登場すると噂されていましたが、それが「スマートコントローラー」。

海外での事前レビューでも評判は良いようですが、親指AF ユーザーとしては間違いなく便利そうで、こういう取り組みはキヤノンらしくて(今となっては)羨ましいです。



ちゃんと手袋OK、指でスライドしたときの移動量の大きさ(敏感度)を設定できるのも、テストを重ねてきた結果なのでしょう。AFスタートボタンと測距点選択スティックを行き来しなくて済むのはホント良さげ。EOS R でも採用すれば良かったのに。

これだけを試しに実機を触りに行きたいのですが、キヤノン大阪が梅田から中之島へ移転して、すっかり足が遠のいています……


(2)陽炎発生時や遠ざかる被写体へのAF性能向上

当然ながら AF ユニットも一新され、多測距点化、-4EV 対応(ニコンは D5世代で実装済み)、ライブビューAF は F11 対応と大幅進化しているわけですが、陽炎発生時の AF 性能向上についてもキチンと書かれているのは、ちょっと気になるし、羨ましいところ。

陽炎と言えば、私の被写体ではモータースポーツや飛行機の撮影で頻繁にありますが、サッカー撮影でもあります。サッカー撮影で陽炎?と思われる人もいるかもしれませんが、屋根付きで囲まれたスタジアムだと気象状況によってはファインダーで見て判るくらいに陽炎が出ることがあります。ちょっとモヤモヤくらいなら割とあるくらい。

飛行機撮影なんかでも陽炎バリバリの状態で撮っても残せるものになりませんが、距離のある&陽炎の影響が強い状態から被写体にロックオンして追従させる時に、AF が迷う外す確率が下がるだけでも有難い。

細かいところでしょうけど、フラッグシップ機はそういう細かな状況に対しても信頼をもてる機械のはずですから、そういう意味では気になる改良です。


(3)ファインダー撮影での秒16コマ連写速度

連写速度が全てではないし、秒10コマを超えてくると最優先ではないけれど、それでもスポーツ撮影などではコマ速はいくらあっても良いものです。減速するのは設定でいくらでも減らせるわけですから、大は小を兼ねます。

そういう意味で、前世代の EOS-1D X Mark II & D5 でキヤノンとニコンで差がついてしまって、D5 を使っていて EOS-1D X Mark II が羨ましいと思う唯一?の点だったのですが、今回さらに引き離す秒16コマ。

モータースポーツや飛行機だと D5 の秒12コマ以上が欲しいと思うことはないですが、スポーツ撮影では速いなら速いだけ当たりを得られる確率は高くなります。脚の振りが速い選手だと秒12コマでも、脚を振り上げてからインパクトまで2コマ撮れるかどうかですからねぇ。

α9 の秒20コマ連写と比べるとまだ負けているけど(ライブビューなら EOS-1D X Mark III も AF/AE 追従で秒20コマ)、ここまで来ると決定的な差というほどではなくなるように思います。D5 の秒12コマと秒20コマでは全然違いますけど……


(4)シャッター耐久回数50万回

連写コマ速が速くなるということは、それだけシャッターユニットもたくさん動作するわけですが、シャッターユニット作動試験クリア回数も 10万回上乗せ、というのは重要なところです。

まぁこの数値はあくまで目安で、それより少ない回数で壊れることもあるし、それ以上にもつこともあります。それについては個人的に体験しています(壊れるところまではいかなくても、体感で少しおかしくなってきてユニット交換した経験はある)が、向上させたことにマイナス要因はありません。価格上昇の一因ではあるかもですが…

SNS 上では上手い方が「馬鹿みたいに連写してる奴は〜」とご高説されてるのをよく見ますが、スポーツ撮影の中には迷ったり狙ったりしてる瞬間があれば 0.01秒でも早くレリーズボタンを押し込んで追い続けろ、ってなシーンもありますから、連写コマ速とともに重要なポイントです。


(5)Wi-Fi / Bluetooth 対応

世界中どこでも確実に使える、というコンセプトゆえ、従来はニコン/キヤノンともフラッグシップ機には電波モノは一切内蔵せず、オプションで対応してきたわけですが、さすがにもうそんな時代じゃないということで、Wi-Fi も Bluetooth も内蔵。

カメラ内蔵の Wi-Fi 機能は 2.4GHz 帯のみで 5GHz 帯を利用する Wi-Fi 機能はオプションで提供、というのはやはり 5GHz 帯が使えない国があることへの配慮だろうと思います。日本でも Wi-Fi の 5GHz 帯域は屋外だと一部帯域しか使えませんからね。

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もちろん、プロの速報現場では Wi-Fi のような不安定で遅い通信手段は使えませんので、LAN 端子が内蔵されているのは従来どおり。GPS 内蔵も Mark II から引き続き。D5 は GPS が内蔵されてないだけでなく、オプション品も販売終了だったような…


(6)常用可能なデジタルレンズオプティマイザ

もう何年前か忘れましたが、キヤノン純正 RAW 現像ソフト「Digital Photo Professional」の新機能として話題になった「デジタルレンズオプティマイザ」。

ローパスフィルターの影響やレンズの各種収差の補正を強力に行う純正ソフトならではの機能として、当時 EOS ユーザーだった私も魅力は感じたものの、登場当時はそこそこのパソコンを使っていても

デジタルレンズオプティマイザを有効にすると、くっそ重たい!よほどの時しか使えんわ…


という代物でした。

それがハイエンド機を中心にカメラ内蔵の機能となり、カメラ内 RAW 現像時にも適用できるようになりましたが、とうとうデジタルレンズオプティマイザが撮影時に使用になり、使っても連続撮影時の撮影速度や連続撮影可能枚数への影響がない!とのこと。

とうとうここまで来ましたか……と、デジタルレンズオプティマイザ登場時の糞重さを知っている身としては、そんな感慨があるくらいです。いやホント、進歩しましたね。

というか、それだけの性能を持つチップを内蔵して処理しても、バッテリー性能の公称値はむしろ良くなっているわけですからねぇ。拍手しかないです。

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他にもニコン機ですごく便利なボタン照明とか、新しい構造のローパスフィルターとか他にも新しい点はありますが、私自身が気になるのはとこれらくらいでしょうか。

今はニコンに移行してしまっているので、EOS-1D X Mark III に手を出すことも考えることもないですが、代わりに思うのは

ニコン D6 はどうなのかねぇ?大丈夫かねえ?


ということですかね。120-300mm f/2.8E のように斜め上の方向に進んでしまっていないかなぁ?という思いはあります。

まぁ D6 が発売されてもすぐに D5 から D6 に買い替えるのは無理ですし、今のところはその必要性も感じないですし、D6 の内容によっては将来的な買い替えもない気もしますが、とりあえず次はニコンのターン。

そんなわけで、寝込んでいた中や移動の合間にスマホでちまちま書いていたら結構長くなってしまいましたが、キヤノンのターンはこの辺で。

写真で見るキヤノンEOS-1D X Mark III - デジカメ Watch
キヤノン「EOS-1D X Mark III」ハンズオンレポート@CES 2020 - 価格.comマガジン