なかなか体調が戻らず、右手の腱鞘炎も良くならず、カメラは持つだけでも痛い状態で、キーボードやトラックパッドの操作も最小限に抑えるべく写真整理も進まず、ブログ書きだけは相変わらず音声入力ベースで何とかちょい更新。

さて、先週、東京五輪に向けたプロ向けフラッグシップ機の先頭を切って正式発表された、ソニー α9 II。作ってるよ〜、と言っただけで発表の中身ナッシングだったニコン D6 の発表とは違って、こちらは来月発売も含めて正式なリリース。

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進化した高速通信性能と革新的な高速撮影性能を備えるフルサイズミラーレス一眼カメラ『α9 II』発売 | プレスリリース | ソニー
α9 II | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー

国内発表前夜の海外発表時から、ガッカリだの、期待外れだの、裏切られただの、お金用意していたけど買うのは止めるだの、ネット上の反響を見ると散々な言われようで、

君ら、噂サイトの適当な噂に勝手に期待しただけで、裏切られた相手はソニーじゃなく噂サイトか自分自身だろうに、なに言ってんだか。そもそもフラッグシップ機に求められてるものを勘違いしてるんとちゃうか?


と、ちょっと呆れてしまう感じもしたので、今回の α9 II について個人的に思ったことを少々述べておきたいと思います。



初代 α9 の登場は、確かにエポックメイキングでした。

当時はまだαシステムの望遠超望遠レンズがほとんど揃っていなかった時だったので、α9 のポテンシャルを正しく評価するのは難しかったものの、その後ヨンニッパ (400mm F2.8)、ロクヨン (600mm F4)、そして超望遠ズームとしては随一の写りと評価の高い 200-600mm と、α9 を活かせるレンズが揃ってきました。

そういった中で、鉄道、飛行機やモータースポーツなど動体撮影を主目的とする人たちの中でも、

ミラーレス機で動体撮影はどうかと思っていたけれど、ソニーαなら行けそう
ソニーαシステムなら動体撮影でも全く問題ない


という評価が高まり、アマチュアのみならずプロカメラマンでもキヤノンやニコンから移行する人が増えているのは周知のとおり。

ところが、動体撮影でもスポーツカメラマンの分野ではそういったことは聞きませんし、スポーツを主被写体する知った人でも皆無。少なくとも、ソニーが宣伝でその性能を謳うほどには(他ジャンルと比べて)浸透していないように思います。

平均すれば月に3回くらいは観に行っている Jリーグの試合でプロカメラマンの状況を見ても、αシステムで撮っている人は現状は稀。たまに見て「おおっ」と思うくらい。

観戦地域が首都圏ではなく関西が多いので、メディア、プロカメラマンの機材を見ていても最新鋭の機材が出回りかたは首都圏に比べると遅い傾向にありますが、それを鑑みたとしても、少しでも浸透し始めてるとは言い難い状況です。

過去 D3(と EOS-1D Mark III)が出てきた時などは、それまで白レンズが圧倒していたのが、どんどん1シーズン中に黒レンズが増えて、1年後には優勢に逆転するようなことがあったので、本当に魅力ある性能と利便性(操作性)、そして信頼性があれば、オセロのようにひっくり返る状況はあるわけです。

それに比べるとスポーツの現場で、少なくとも現時点ではソニーα がプロ向け、メディア向けに浸透し始めているとは言い難いのではないかな、と感じています。

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そういう状況から

フラッグシップ機をプロ向けに売るには、スペックだけではダメだ


ということをソニーも踏まえて今回、

東京五輪でプロに使ってもらうために
α9に足りないものを追加してきた


というのが α9 II であり、私には、プロカメラマン/メディアカメラマンに使ってもらうための正常進化であるようにしか見えません。

噂サイトの適当な情報に騙されて勝手に期待して、勝手に落胆している人たちの求めるものはともかく、プロユーザーにとって初代α9 に足りないと思わせるものは画素数なんかではなく、
  • 不規則な動きをする被写体に対する追従精度の向上
  • ホールディングを含む操作性の向上
  • Wi-Fi だけでなく有線LAN の搭載
  • 隣りとレンズがぶつかり合うことすらある狭い撮影現場や移動その他の激しさのある環境での信頼性の向上

と言った部分であり、そこをきっちりフォローアップして、

これならどうですか?東京五輪で試していただけるんではないですか?
2年間プロの方にご意見いただいてファームウェアで改善できるところはしてきましたが、ハードもきっちりブラッシュアップさせてもらいましたよ


というカメラが α9 II のように思えます。

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コンシューマーユーザーからは最上級機=スペックモンスターを求める声も多いでしょうし、特にソニーファンなら尚更でしょうが、ニコン D一桁機やキヤノン EOS-1D シリーズを見ても判るように、フラッグシップ機に求められているのは全方位のスペックモンスターではないわけです。

飛行機とか撮っている人たちの多い私の SNS では、ソニーにせよ、ニコンにせよ、高画素版フラッグシップ機を望む声が多いわけですが、比較的低感度で撮ることの多い被写体と違ってスポーツだと室内競技やナイトゲームで ISO 6400 や 10,000 以上を普通に使います。

さらにプロの現場では撮って出し JPEG ですぐに社へ電送され、簡単な処理だけで使われることも多いので、高感度・超高感度でしっかりした絵作りができていることが前提になります。

また、スポーツ撮影でもむやみやたらに連写するものではないと言っても、タマばらまいてナンボというシーンはあるわけで、高画素化したから連写コマ数が減った、バッファフルからの解放が遅くなった、では敬遠されます。

もちろん、近い将来 3,000万画素を超えても今と同じレベルの高感度画質、連写能力が担保されるでしょうけど、来年の東京五輪対策機として考えた場合、α9 II が画素数そのままで高感度画質重視、連写能力担保に振られたのは適切な判断だったように思います。

それよりも、現場からそのまま会社へ写真を電送するのに、Wi-Fi なんていう遅くて不安定な方法(アリーナやスタジアムの中は電波が飛び交ってますし)より、安心安定の有線LAN が必要なのも当然です。

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(フィールド上でEOS-1D XからLANでノートPCへ転送した画像チェックするカメラマン)


私みたいな糞素人は EOS-1D シリーズでも D一桁機でも「有線LAN なんかより Wi-Fi 付けてくれよ」と思っていたわけですが、プロの現場では話は違いますからね。

(電波を発する機械に対する規制は国ごとに違うため、フラッグシップ機は世界中どこでも使えることを前提に Wi-Fi は非内蔵・オプション、としてきたニコンやキヤノンが D6、EOS-1D X Mark III で Wi-Fi をどうするのかは興味津々です)

もっとも、α9 II が全部良かったというわけではなく、個人的には
  • ソニーは XQD カードメーカーなのに何故フラッグシップ機でも SD カードだけのままなのか
  • センサーやAFユニットはそのままでも EVF だけは進化して欲しかった
    (低速SS時にパラパラ漫画状態が改善されてるのかは興味ある)

というのはありますね。特にメディアカードは「フラッグシップ機なのに SD だけはちょっと…」と思う人は少なくないと思うのですけどねぇ。

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ま、ニコンにせよ、キヤノンにせよ、フラッグシップ機のモデルチェンジというのは4年おきで、プロに使ってもらえる信頼性をもってのフルモデルチェンジはそれくらいのペースだったことを思えば、今回のα9 II がマイナーチェンジであったとしても不思議はないですしね。

ニコンの D4 に対する D4s のように、名前が α9 II ではなくマイナーチェンジ・ネーミングなら多少は許されたかも?


なんて思いますが、事前の噂サイトがデマ飛ばしまくって、ソニーユーザーはもちろん、他メーカーでソニーへの関心を示していたユーザーの期待を煽りまくっていたので、結果は一緒だったでしょうね。

いずれにせよ、ミラーレス機のフロントランナーは当分ソニーであるのは間違いなく、α9 II は東京五輪対策機だったとしても、1年半か2年後に「ほれ、お前らの欲しいのはこの全部入りだろ?」というのが出てくるんではないですかね。α7 も III の進化は結構なモノでしたし。

ここでニコンが「じゃーん、実は D6 は 3,000万画素超のフラッグシップ機でした」なんてのを出してきたらビックリしますが、キヤノンともども無難に 2,400〜2,800万画素くらいで収めてくると思うのですが、さて。

(一眼レフの構造上難しいけれど、フルサイズ機の AF 測距点の上下の狭さが改善されてると D5 から買い替え、買い増ししたくなりそうだけど、根本的にはミラーレスに行くしかないんですよねぇ)


(α9 II の AF 性能が大差なかったら初代のコスパは更に良くなりそう)