少し前に D500 とサンヨンPF (AF-S 300mm f/4E PF ED VR) を調整に出そうとニコンへ行ったら、ゴールデンウイーク後になると言われてスゴスゴと帰ってきたのですが、10連休後も混みそうですし、不具合とかではなく急ぐものでもないので、しばらくはお預けです。

キヤノンにせよ、ニコンにせよ、サポートに対するコストを値上げ(もしくは新規設定)しているわりには地方のサポート拠点をどんどん減らすだけでなく、修理や調整にかかる期間が昔に比べると長くなっていて、購入後のサービスという点では低下の一途だなぁ、と感じます。

別に無料にしろ、極端に安くしろ、とは思いませんが、ちょっとした修理点検、調整でも半月以上使えないのが当たり前となると躊躇うものがあるのも事実。その点、オリンパスやリコーのアフターサポートは良いよなぁ、と改めて思ったりする昨今です。


AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR - 概要 | NIKKORレンズ | ニコンイメージング

さて、公私ともども諸々捗らないことが多すぎて、本ブログの更新頻度もメッキリ減少しておりますが、AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR のファーストインプレ後編です。

ゴーヨンユーザーから見るゴーゴーロクPF (Nikon AF-S 500mm f/5.6E PF ED VR) ファーストインプレ【前編】

前編で大まかに言いたいことは書いてしまいましたが、後編では細かいところで感じたことも込みで改めて、本レンズの良いところと、ほんの僅かなそうでない点を記しておこうと思います。



(1)絞り開放からキレる画質

開放F値が暗い分、多用するであろう絞り開放での画質については、前編でも散々書いたように

絞り開放から文句なしのキレキレ


画質で、何の不満もありませんでした。周辺まで不満なく、絞り開放時の周辺減光もゴーヨンと比べて少なく、ちょうど良いです。

兄貴分のゴーヨンFL (AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR) と比べても、絞り開放時の画質という点では見劣りを感じることは殆どありませんでした。もちろん、ゴーヨンの方が開放F値が1段明るいので、同じF値では絞り込める分だけの差はありますが、些細なものです。

AFS500F56PF13


公式サイトで公開されている MTF 曲線↑は驚異的な上辺張り付き具合ですが、それに違わぬコントラストと解像力でした。(普段 MTF 曲線なんて気にしない、大して参考にもしない私ですけど、これは凄すぎです ^^;)

ボケ味云々については、私みたいな初心者に毛の生えたドヘタは言及する術を持たないのですが、確かに開放F値の違いによるボケ方の差はあれど、撮ってる限り背景が変にうるさいと感じることはないので、自分的には無問題です。

Tennoji Zoo 2019.3.30 (6)


とりあえずレンズ単体使用時においては画質という点ではほぼ不満なく使えました。(逆光耐性については次項にて)


(2)完全ではないがサンヨンPF から明らかに向上した逆光耐性

PF レンズを使用しているということで心配される逆光耐性ですが、ぶっちゃけ

重さ大きさ開放F値以外を別にすれば
ゴーヨンFLと差がある点の1つは逆光耐性


なのは事実でしょう。

逆光条件で長時間撮影したり、様々な逆光条件で使ったわけではないし、ゴーヨンFL と横並びで比べたわけではないですが、逆光時のコントラストの低下、ハイライト部分の描写、光線条件によって若干フレアっぽくなる確率はゴーヨンFL より多いとは感じました。

ただ、1年間、初代PFレンズであるサンヨンPF (AF-S 300mm f/4E PF ED VR) を使ってきた身からすると、

サンヨンPFと比べると
逆光耐性も随分と良くなっている


と言い切れる進化は感じましたし、個人的には

これなら多少の逆光条件でもほとんどの場合は問題なくね?


と思った次第。

PFレンズらしい点光源に対して独特のフレアが出るのは確認したものの、それがどれくらい許容範囲なのかは夜間の飛行機撮りをしなかったので何とも言えませんが、太陽が直接入らない逆光条件で「これは使えん!」「逆光では使いたくないわ」と思うほどのことはなかったですね。

このあたりは個々人の感じ方で差があるので、あくまで私が3日間レンタルした限りでは、の印象に過ぎないことにご留意ください。

Itami Airport 2019.3.31 (12)


ちなみに、サンヨンPF は「逆光条件では使いたくないレンズ」と思っています。太陽が直接入らなくてもフレアが酷くてウンザリして、「このレンズ、本当にナノクリコートなの?」と言いたくなることもありました…

その昔、EF サンニッパ (EF300mm F2.8L IS II USM) も逆光条件で使っていて、「最新サンニッパでもこんな絵になるのか…」という思い出があって、一眼レフ復帰時にキヤノンじゃなくニコンへ戻った一因(ナノクリレンズ使いたい)でもあります(^_^;)

それらと比べると、まだマシというか、他の利点を考えれば十分に目をつむれるのではないかなぁ?という印象です。

まぁ私の被写体的には、
  • 点光源フレアが予想される夜間の飛行機撮影には、こんな暗いレンズは持ち出さない
  • ライト(光源)の多いモータースポーツ撮影の時は二重フェンス抜きもあるのでゴーヨンを選択する

ということがあるので、別に本レンズが万能でなくてもいい、という視点での評価ゆえ甘くなっている可能性はありますので、念のため。


(3)サッカー撮影でも十分満足できる AF 速度

ボディがフラッグシップ機の D5 という条件でありますが、ナイトゲームのサッカー撮影でも十分に使えるモノでした。

ぶっちゃけ、事前に想定していたよりゴーヨンFL 使用時と比べて被写体への食いつきや追従性には差がなかったと感じました。超望遠ズームなど廉価なレンズなどと比べると、その点でも一線を画すレベルにあるのは間違いありません。

AFS500F56PF07


今回の撮影では、晴天日中ではなく、J1 基準以上の照明があるとはいえナイトゲームのサッカー撮影、さらに雨中という条件でしたので、もう少し差があると思いましたが、画質のキレ同様、AF においてゴーヨンFLと大きな差は感じるものではありませんでした。

ただ、使用する AF 測距ポイントが中央付近だったので(中央〜中央上側の測距点を使用)、それ以外のポイントを使用した場合は条件により開放F値の差が AF 速度精度への影響が強く出る可能性はあります。

また、サッカー撮影にも十分対応できる、満足できるものだったとはいえ、ゴーヨンFL 使用時と比べて全く同じレベルとまでは言えないのも事実で、僅かな差ではあるものの、どこで差を感じたかというと
  • 食いつきの時に一瞬迷う、食いつきまでほんの一瞬長くなる確率がわずかに多い
  • ダイナミックAF使用時、被写体のコントラストが低い時に背景に抜けてしまう確率が若干上がる

といった差は感じられました。このあたりはレンズのAF性能というより開放F値のよる差による影響が大きいかもしれません。

AFS500F56PF12


前述のとおりナイトゲームのサッカー撮影で若干の差を感じるくらいで、飛行機のような大きな被写体や日中の撮影ではテレコンを使用しなければ、ゴーヨンFL との差は極めて小さいと思います。

同じ環境で兄貴分のゴーヨンFL で撮影する時と比べて、開放F値の違いによる使用 ISO 感度の違いから生じる画質差を除いて大きな差を感じることもなく、AF 関連では使っていて困ることも特に見当たらなかったと思います。


(4)大きさ、軽さと、その恩恵

前編記事でも書きましたが、大口径単焦点レンズと遜色ないレベルの

高性能な500mm単焦点レンズでありながら
70-200mm F2.8 / 80-400mm 並みの可搬性


というのが本レンズ最大の特長です。

ニコン純正 200-500mm やシグマ/タムロン 150-600mm を使っている人からすれば、むしろ小型軽量になり、それでいて画質や AF については段違いに向上できる(価格も向上するけど)レンズです。

NIKON 500mm f/5.6E PF106×237mm1,460g
NIKON 70-200mm f/2.8E FL88.5×202.5mm1,430g
NIKON 80-400mm f/4.5-5.6G95.5×203mm1,570g
NIKON 200-500mm f/5.6E108×267.5mm2,300g
SIGMA C 150-600mm F5-6.3105×260.1mm1,930g
TAMRON 150-600mm F/5-6.3 G2108.4×257.7mm1,990g


上記表を見てもらえば数値的にも判るように、一回り太くて、ちょっと長い 70-200mm F2.8 / 80-400mm もしくは短く軽い 150-600mm という 500mm 単焦点レンズですが、その感覚は実際に使っていても変わりません。(重さは感覚的には同じ)

特に、太さについてはレンズ先端はそれなりの口径があるものの(フィルター径 95mm)、全体的に細長く、中央より後ろは 70-200mm F2.8 や 80-400mm のレンズと大差ない太さなので、数字ほど太く感じない印象です。

D5 や D500 などの中上級クラスのボティとの組み合わせは

非常にレンズが持ちやすくバランスが良い


のて、とても振り回しやすいです。

AFS500F56PF03


サイズ、重量的にも 70-200mm F2.8 や 80-400mm と言った多くの望遠ズームレンズ利用者が手慣れた重量バランスで使えるのはメリットが大きいですし、それらのレンズ愛用者で「超望遠単焦点レンズは欲しいけど、あのデカくて重いのはちょっと…」と躊躇う人にはピッタリです。

当然、カメラバッグも 70-200mm F2.8 や 80-400mm を想定した、なおかつそれらで少し余裕のあるバッグならば入りますから、70-200mm F2.8 や 80-400mm あたりを使っている人もカメラバッグを変える必要は少ないでしょうし、また運用も同じような感覚でいけます。

公共交通機関や徒歩、自転車での移動時や手持ち撮影時の負担は、兄貴分のゴーヨンFL と比べると雲泥の差。カメラバッグも小さくて済むということは、バッグ重量も軽くできますし、一脚、三脚が必要な場合のそれらの要求レベルも違うので、一脚、三脚の重量やサイズ、金銭的負担も軽減できます。

AFS500F56PF04


とにかく

大口径単焦点レンズと変わらぬ高性能レンズを
70-200/80-400mmを入れるバッグで気軽に持ち運べる


この素晴らしさは大口径単焦点レンズを持っている人こそ感銘を受けるのではないかと思います。

そしてまた、望遠・超望遠ズームレンズから超望遠単焦点レンズを買い増し、買い替えを考えている人にも、取り回しや機材運用の負担が大きく変わることないこともあり、様々な点で

負担を最小限に始められる超望遠単焦点レンズ


でしょう。

70-200mm F2.8 や 80-400mm あたりを使っている人でも(レンズコスト以外は)大きな追加負担なく、200-500mm や 150-600mm を使っている人にとっては小型軽量な上に圧倒的な画質向上と AF 速度精度の安心が得られるという点でも、なかなか素晴らしいと感じましたね。


(5)テレコン装着時の画質、AF

逆光耐性を除けば、兄貴分ゴーヨンFL と画質、AF 面で差はほとんどない、極めて小さいと感じたゴーゴーロクPF ですが、

テレコン装着時は差が少し広がる


と感じました。(テレコンは TC-14E III を使用)

テレコン入りで使ったのは、いつも撮影している2箇所から伊丹空港の離陸機をロングショットで狙っただけなので、違う条件では差を感じないかもしれませんし、機動飛行などではもっと差を感じることになったかもしれませんが、ひとまず私のベンチマーク的撮影ポイントでの比較の印象としては、
  • 解像度の低下は最小限でテレコン入りと思えば気にしないレベル
  • 逆光気味もしくは光がしっかり反射する部分で、ややコントラストの低下やハイライト部の描写に差を感じる
  • 日中晴天時に中央の AF 測距点を使っている条件では絞り開放 F8 でも十分実用になるが、合焦までに一瞬ふらついたりする確率はレンズ単体より確実に増える(D500 使用時)

という感じで、テレコン使用時らしい差はあります。

Itami Airport 2019.3.31 (7)


描写に関しては殊更大きく低下するようなことはないのですが、PF レンズでの逆光やハイライト付近の苦手部分がテレコンでやや増幅されるかな?という気はしました。

とはいえ、初代PF レンズであるサンヨンPF の逆光耐性のイマイチさに比べると、レンズ単体で大きく改善されてる分、テレコン入れてもダメダメになるようなレベルではないと感じました。(撮影条件が限られている中での感想ですが)

AF については絞り開放 F8 になってしまうため、晴天日中でも一瞬迷う場面は何度かありましたが、民間機の離陸という、ゆっくり動く大きな被写体相手ではそれが問題になるほどではありませんでした。

とはいえ、F8 AF というのは一眼レフ使用時には制限が大きいですし、テレコン使用が考えられる時はゴーゴーロクよりゴーヨンという当たり前の選択になりそうです。

(そういう意味では絞り開放 F5.6 の AF 制約がないミラーレス機で使う方が良いレンズかもしれません)

Itami Airport 2019.3.31 (21)


ゴーヨンFL を使用していてもレンズ単体で足りない時は
  • フルサイズ機のまま x1.4 テレコンを入れる
  • テレコン入れる代わりにボディを APS-C 機(D500)にする

の二択で迷うことも多いわけですが(※)、テレコンを入れると絞り開放 F8 になるゴーゴーロクPF の場合は後者を基本的に選択することになりそうですし、テレコン+APS-C 機による 1,000mm 超での撮影は光量が十分な条件を選びたくなりそうです。

(※)個人的には、航空祭や日中のサーキット、サッカー撮影(順光)など低感度で撮れるシーンではテレコンより D500 を選択、ナイトゲームもしくは夕方以降のサッカー撮影では高感度画質の大きな差からボディをフルサイズのままテレコンを入れる方を選択することが多いです)

AFS500F56PF02


というわけで、試しに3日間使ってみての個人的な結論は、

(なんとなく)「欲しいもの」リストから
「購入を具体的に検討するもの」リストへ昇格


したと言えば判るでしょう(^-^)

とかく、大口径超望遠レンズを使うとなると、
  • どれだけ機材を最小限にしてもカメラバッグは大型になる(=カメラバッグ自体が重くなる)
  • 車以外での移動時の体力的負担が大きくなる(レンズ重量増量分+カメラバッグ重量増量分)
  • 機内持込重量 7kg 制限の LCC を使えなくなる(遠征コスト増大)
  • 手持ちで振り回す際の腕力握力体力も要求される
  • 手持ちでは難しく一脚、三脚が必要な場面が増える
  • 一脚、三脚は 70-200mm F2.8 や 80-400mm クラスに対応できるものよりずっとしっかりした物が必要になる(=一脚、三脚の重量、サイズも増える)
  • 馬鹿デカいレンズの分、撮影場所・条件によっては周囲の目、世間の目が気になったり、配慮する必要がある(空気読めない視野狭窄亀野郎なら関係ないだろうけど)
  • 壊した時の金額的負担はもちろん、盗難にも一層気を使う必要が出てくる

こういうことがあるわけですが、それを思うとゴーゴーロクPF は
  • 大口径超望遠レンズと同じクオリティだけど気軽に持って出られる、持ち出しに迷う必要がない軽さ、サイズ
  • 公共交通機関や徒歩、自転車で移動しても 70-200mm F2.8 や 80-400mm と変わらぬ負担
  • スローシャッターでもない限り手持ち余裕(手ぶれ補正もよく効く)、サッカーの試合90分手持ちも可
  • 70-200mm F2.8 や 80-400mm クラスのレンズを使っていれば、カメラバッグなどは流用できることも多く、追加の金銭的負担は小さくて済む
  • 世間的には「大きなレンズ」扱いなのは間違いないけど、大口径超望遠レンズほど引かれたりする確率はずっと低い
  • 兄貴分ゴーヨンの半額とはいえ高額レンズなので破損、盗難に気をつけるのは同じ

というメリットがあります。

特にゴーヨンのような大型レンズが使えない、周囲の邪魔になる際にはとても便利なレンズで、観客席からのサッカー撮影が多いなどの私には刺さるレンズだったと言えます。

反面、ゴーゴーロクPF があったとしても、テレコン使用時や夜間の撮影などゴーヨンが使えるなら必ずゴーヨンを選択するシーンはあるわけで、

同じ 500mm 単焦点レンズだけど、この2本は使い分けられるよなぁ


と感じました。

AFS500F56PF09


ま、Fマウントへ戻って1年、まだレンズは3本しかなく全部望遠レンズ、標準域のレンズも広角ズームも手に入れていないのに、2本目の 500mm 単焦点レンズを買うのは躊躇われるところですし、某量販店でゴーゴーロクPF (AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR) の入荷の様子を聞いてみても

全く判りません。何か月かは待っていただかないと…何しろ入荷してこないので


という、昨年の発売後から変わらない状況のうえ、当方の金銭的事情も簡単に購入を許すものではないので、今すぐに購入というわけではありませんが、具体的に購入を検討し始めています。

同じ「コンパクトに 500mm 域」でも、D500 + サンヨンPF と D5 + ゴーゴーロクPF は比べ物にならない画質差と圧倒的なヒット率の差があって、セットの価格差は3倍ですが、得られるものはそれ以上だなぁ、というのが判ってしまった限りは何とかして…という方向に傾きつつあります(^_^;)

今後、年寄り一直線になっていくと、ますます体力低下して大口径単焦点レンズを持ち歩くのも辛くなるでしょうから、そういう意味では先行投資にもなるように思いますしね!(笑)

そんなわけで、自分に刺さりすぎて褒めてばかりになってしまった気がするゴーゴーロクPF のファーストインプレでありました。まぁ話半分に思っておいてください :D