海外では先週のうちに発表されていましたが、従来の G シリーズを大幅刷新して、静止画写真撮影のハイエンド機として生まれ変わった「G9 PRO」と、動体撮影ジャンルを本気で狙いに行くぞ!という意気込みが伺えるヨンニッパ相当の「LEICA DG ELMARIT 200mm」が国内でも発表されました。

DC-G9|デジタルカメラ LUMIX(ルミックス)| Panasonic
LEICA DG ELMARIT 200mm | 交換レンズ | デジタルカメラ LUMIX(ルミックス) | Panasonic

LUMIX G シリーズといえば、今をときめく一般向けミラーレス機の第1号機と言える、そしてマイクロフォーサーズ初号機でもある DMC-G1 を祖に持つ、パナソニックの王道(だった)シリーズ。

女流一眼というキャッチフレーズで笑いを取った? LUMIX DMC-G1 は、当時早期ではなかった癌が発覚して大きな手術をすることになった私が、「術後はもう重い一眼レフと超望遠レンズが持てないだろうなあ」と覚悟して、ミラーレス機の未来にかけて術前に(発売間もない頃でしたが)購入した、個人的に思い出深いカメラであります(^^)

もっとも、2008年に DMC-G1 を購入して「これなら5年くらいで動体撮影可能なミラーレス機が出るだろうな」とミラーレス機の未来に楽観視したのは早合点で、真っ当に動体が撮影できるミラーレス機が出てくるまで9年もかかり、ようやく今年α9という本気で動体が撮れるミラーレス機が出てきたわけですが、その年の最後に

動画ばかりに目が向いていたパナソニックが
急に動体スチル撮影志向の LUMIX G9 PRO を発表


してきたのは、どういう風の吹き回しなのかと思いますけれど、大歓迎です :-D

E-M1 Mark II、α9(α7R III)とハイエンドのミラーレス機が市場を賑わせて売れているのを見て無視できなかったのかもしれません。オリンパスの中間決算は E-M1 Mark II が売れてそこそこ持ち直したみたいですしね(^^)

昨今ドライな姿勢で儲からないものは切り捨てて見向きもしないパナソニックが、静止画志向のハイエンド・ミラーレス機へ注力してくれるというのは、見込みあると言うことなのでしょう(^^)

それに加えて、今回 DC-G9 とともに、スポーツ撮影の標準レンズである

ヨンニッパ相当のレンズを同時発表したのは本気が伺える


と思っています。高感度が弱いマイクロフォーサーズなのに、今まで明るい超望遠レンズがありませんでしたからね。

オリンパスも E-M1 Mark II と同時期に 600mm F4 相当画角の 300mm F4 IS PRO を発表したのに対して、ソニーはせっかくα9という素晴らしいボディを発売したのに、それを生かす望遠超望遠単焦点レンズが1年後にやっと1本というのは片手落ちすぎますから、パナソニックはバランス良いですね。

さて、そんな LUMIX G9 ですが、発表をみる限り、

E-M1 Mark II より α9 を意識したスペックの高さ


を感じます。もちろん、ミラーレス機らしい表に出すスペックと、小さく書いておく制限事項が色々ありますけれども。

もちろん、お値段も今までの G シリーズとは一線を画して一気に跳ね上がり、E-M1 Mark II と同価格帯の一眼レフ中級機クラスの価格設定になりましたし、

型番も従来の DMC- ではなく GH シリーズと同じ DC- に変えた


点からも、本気ユーザー向けという意気込みが伝わってきます。

もちろん、この手のものは実戦で撮ってみないと判りませんし、提灯ライターの悪いことは隠して良い点だけを語るレビューなどに騙されないようにしないといけませんが(また向かってくる電車で当たりコマ数を計ったり、民間機の離着陸程度でアレコレ言っちゃうのかなw)、以下のスペックは見逃せません



  • AF 追従で秒20コマ連写(電子シャッター時/メカシャッター時は秒9コマ)

  • パナソニックお得意のポストリファイン機能付き 6K PHOTO で 1800万画素&秒30コマ取り出し

  • AF のカスタマイズが追従感度だけという10年くらい前の仕様ではなく、今どき最低限必要な3項目がカスタマイズでき、カスタマイズした設定を4つ保存できる

  • AF測距点が増えたからといってピンポイント AF を削ってないし、1点AFのフォーカスエリア枠も拡大縮小できる

  • AF の低照度測距限界が -4EV!

  • 368万画素の高精細な電子ファインダー

  • ファインダー倍率は E-M1 Mark II に比べると大したことはないが、眼鏡ユーザーには便利そうなファインダー倍率切り替え機能(これはいい!)

  • 動体撮影を標榜するなら無くてはならないフォーカスエリア選択用ジョイスティック

  • ミラーレス機には超レアな右肩上面の情報パネル!

  • グリップしたまま操作できる WB, ISO などの設定ボタンに、新設ファンクションレバーや数多くのファンクションボタンなど、ちゃんと動体撮影する人のやり方を考えられたユーザーインターフェース

  • ちゃんとマイメニューでよく使う項目を登録できる

  • 夜間撮影に良さげな背面液晶のナイトモード

  • ダブルカードスロットは両方とも UHS-II に対応している

  • 設定のコピー、バックアップも、パソコンに繋いで独自ソフトでやるのではなく SDカードでできる柔軟性(というか当たり前)

他の点はまぁ適当に公式サイトの謳い文句を見ていただければ良いと思いますし、ぶっちゃけ AF や画質については実写実戦での話になりますから、スペックだけで何を言っても意味ないですけれども(後述するように怪しい点もあるし)

E-M1 Mark II の動体相手における操作性のダメな点は全部潰してる


印象で、

ちゃんと動体撮影の人のことを考えて作った感


は E-M1 Mark II よりもありますね。E-M1 Mark II は何よりもその点がダメだし。

ちゃんと背面にフォーカスエリア選択用のジョイスティックがあるし、GH5 から C-AF のカスタマイズも基本的なところはカバーしています。AF を速くして、EVF のブラックアウトを少なくして、連写コマ速を目一杯乗せたら、動体撮影用として売り出せるわ、という感覚で出してしまったオリンパスとは違う印象。

(例えば、縦横位置別にフォーカスエリアを記憶しない仕様は後発の GH5 も備わってなかったけど、既にファームウェア・アップデートで対処されていますが、E-M1 Mark II は音沙汰ナッシングのままですからねぇ)

電子シャッターの動体追従 AF で秒間20コマというのも α9 と同じで、E-M1 Mark II が霞んでいきますが、
  • 電子シャッターでどれだけ歪みがないのか?
  • 像面位相差 AF を採用しないパナソニックご自慢の空間認識 AF (DFD) でどれだけ高速/不規則な動体が撮れるのか?
  • 最速連写で速い被写体を追っていて EVF がきっちり追えるのか?

という点は、果たしてどうなのかな?と。

α9 ではその問題点を解決したけれど E-M1 Mark II はどれも厳しいのですし(E-M1 Mark II もブラックアウトが少ない EVF ですが、高速動体を至近で撮影して処理が追いつかない)、G9 PRO でどうなのかは実戦での実機検証待ちでしょう。メーカーの宣伝文句を鵜呑みしちゃダメなのは、痛い目に遭った人からの心からの言葉です X-)

世界最速 AF なんて謳い文句は、オリンパス E-3 の時に屁のつっぱりにもならないことが明らかになった


わけですしね。(オリンパスは E-P3 とか PEN の時も言ってたけど)

少なくとも GH5 と同じレベルだと、撮ってる人の写真を見る限り、動きの激しい動体を等倍で見ても問題ないクオリティで撮れる確率は厳しそうですからねぇ。

海外で先行発表された 200mm F2.8 を GH5 で使ったサンプル写真を見ましたが、子供のゆっくりとしたサッカーですらピン甘連発でしたから(E-M1 Mark II で見慣れた感じ)、G9 PRO もプロ仕様とか大上段に構えるなら、しっかり仕上げてきて欲しいですね。



スペックの細かいところを見てみると

EVF の倍速 120fps 表示は電子シャッターでは使えない


と書いてありますから、秒20コマ、秒12コマという電子シャッターでの高速連写や 6K/4K PHOTO 撮影での切り出しなどでは、被写体を滑らかに追えないことになります。

E-M1 Mark II を使っている経験上はっきり言っておきますが、EVF の 120fps 表示と 60fps 表示では、高速な被写体、不規則に動く被写体を追う時には大きな差があります。タイムラグとかが同じでも、ずっと追い回すのに 60fps なんて目の負担が大きすぎて使ってられませんからね。

(E-M1 Mark II も 120fps EVF を使用して照度が下がると AF の精度速度が下がると明記されている。されているが、とてもじゃないが 60fps なんて使う気がしないので、私は常時 120fps 設定)

また、電子シャッター時には最大連写コマ数が RAW+JPEG でも、JPEG だけでも同じ(50コマ)というのは、どういうことなのでしょうね?(メカシャッター時には JPEG 600枚以上)

もしかして、電子シャッター連写時はバッファの分だけで記録できて、メモリーカードに書き込みバッファ解放しながら連写できないとか?まさか、ね……でも E-M1 Mark II も色々とデジタル一眼では考えられない、表に出てこない制約がありますからねぇ。

そのあたりを見ると、ミラーレス機にありがちな “表に出てこない制約” が幾つかありそうではあります。ちゃんとメーカーが明示すべきだと思うんですけどねー

それと、LUMIX ではグループ AF がない代わりにカスタムマルチAF がありますが、オリンパスの多点 AF 同様、相変わらず測距開始点が指定できないのでしょうかね?それだとダメだと思うんですけどねぇ。



マイクロフォーサーズ 初の明るい超望遠レンズであるヨンニッパ相当の LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 には期待がかかりますが、どれだけの画質と AF 速度を発揮できるか?というのも興味津々。画質はもちろんのこと、超望遠単焦点レンズにはその用途上 AF 速度精度も要求されます。

パナソニックの超望遠レンズといえば従来は 100-400mm のみで確かに画角 200-800mm という便利な超望遠ズームでしたが、安価な便利ズームだったとしてもちょっと躊躇う描写でしたから、200mm F2.8 では本気のパナソニックレンズのお手並み拝見です。

お値段も40万円クラスとなれば最低限クリアすべきレベルは高いですし、なんちゃって LEICA の銘とか関係無いですからねぇ。(そもそも超望遠レンズを一般向けに作ってないライカの銘なんか入れて意味あるのか?という疑問が)

とりあえず、どこぞのメーカーのように商品パッケージ外面に「600mm」と換算画角を書いてアピールするのは恥ずかしいので止めてほしいですね(>_<)



いずれにせよ、元々主力機種であった G シリーズも、ハイエンドには動画志向の GH シリーズができ、一般向けにはサイズ大きめの一眼レフスタイルが逆に敬遠され、昨今のモデルチェンジはパッとしなかったのですが、動体相手の静止画撮影特化というポジションを得たのはちょうど良かったように思います。

私自身、LUMIX G9 には興味あるけど、G9 の動体撮影能力が GH5 同等または GH5 +αレベルに留まるなら手を出すことはないかな、って感じです。使い勝手は E-M1 Mark II より遥かに良さげですけどね(>_<)

LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 も興味はあるけど、個人的な使いどころとしてはちょっと短いので買えないです。

500mm 相当の 250mm F2.8 だったら50万円超えていても(オリンパスの 300mm F4 IS PRO を売って)間違いなく手に入れていたと思いますが、400mm では自分の使うどの場面でも足りない。テレコン入れるくらいなら最初からオリンパスのサンヨン使いますし。

(まぁ 250mm F2.8 なんてレンズになったら、いくらマイクロフォーサーズでも馬鹿でかいレンズになるので商品的に無理なのは重々判ってますけどね ^^;)

F2.8 のレンズだとスポーツ撮影とかでも E-M1 Mark II で最低限我慢できる ISO 1600 上限で何とかなることが多いので、F4 のレンズとはだいぶ印象が違うんですけれども、トリミング耐性のない画素数のカメラで 400mm の画角では足りないので仕方ないですね……