昨晩 Adobe CC シリーズのアップデートがリリースされ、それに伴い Lightroom シリーズの全面刷新も発表されました。

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Introducing: Lightroom CC, Lightroom Classic CC and More | Photoshop Blog by Adobe

要点は4つ。
  1. 月額制の Lightroom CC じゃない買い切り版 Lightroom の新バージョンはもう出さない。Lightroom 6 で終わり。Lightroom 6 のアップデートもカメラ新機種の RAW サポート追加も年内で終わるからね

  2. 今までのデスクトップ版 Lightroom CC は今後「Lightroom Classic CC」に名称変更するよ

  3. Lightroom CC という名前は今後、クラウドベースの Lightroom のことだから、そこんとこよろしく!

  4. クラウドベースの Lightroom CC はオリジナル画像をアップロードして作業することになるから、クラウドスペースが従来のままだと足りなくなるから増量するので、クラウドスペース増量プランも用意する
    (photography プランは 2GB → 20GB、通常 CC 版は 20GB → 100GB、容量 1TB プランは月額 1,980円、その他 Lightroom CC だけが使える新プランや 2TB/5TB/10TB の増量プランもあり)
    Adobe CCフォトプラン | プロ向け写真編集ソフトウェア




(販売終了済みの買い切り版 Lightroom 6 はボッタクリ価格に…)


昨晩リリースがあってから寝る前や今朝に少し使ってみましたが、

デスクトップ版 Lightroom CC から
Lightroom Classic CC へは大した変更はない


のですが(カタログ更新に時間がかかるのと動作速度アップ+αくらい、詳細は後述)、それよりも

デスクトップ版ソフトがクラシックと名付けられた


ことと、クラウドベースの Lightroom CC を本格的に手がけ始めて、そのためのサービスプランを整備したことで、

Lightroom は将来的にローカルアプリを廃止して
完全にクラウドベースのサービスへ突き進む方針


であろうことが明らかになりました。

2013年に月額制の CC が登場して4年経ち、いま買い切り版が廃止されたことを思えば、これから4〜5年後にはデスクトップ版の Lightroom Classic CC がなくなって、完全にクラウドベースへ移行することになるかも……


というのは、ほぼ確実でしょう。

Adobe としては、Lightroom を完全にクラウド化することで、ユーザーが使うクラウド容量が増加し、上位の料金プランへ誘導する=客単価の向上を狙っていることは間違いありませんから、CC 以降の完全月額制への移行とともに、この流れは決して変わることはないでしょう。

今までの Lightroom CC =今後の Lightroom Classic CC と、今後の新しい完全クラウドベースの Lightroom CC では、以下のようにワークフローが変わりますから、必然的にクラウド側のディスク容量が増えるので、使えば使うほど、使い込んでいる人ほど上位料金プランやディスク増量オプションが必要になります。



(1) 今までの Lightroom CC = 今後の Lightroom Classic CC
  1. Lightroom Classic CC で写真ファイルを読み込む
  2. 基本的には Lightroom Classic CC で写真整理・現像作業を行う
  3. モバイル端末でも作業したい場合には、必要なコレクションをクラウド同期させる
  4. クラウド同期するファイルはスマートプレビューという中サイズの JPEG ファイル
    (だからファイル数が多くてもクラウド容量の消費量は少ない)

(2) 新しい完全クラウドベースの Lightroom CC
  1. パソコンでもモバイル端末でも読み込んだファイルはクラウドへアップロード
    (オリジナルファイルはクラウドにあるので容量を食う)
  2. クラウドにアップロードされた写真はパソコンでもモバイル端末の Lightroom CC アプリもしくはブラウザでシームレスに整理・現像作業ができる
  3. パソコンやモバイル端末はクラウドから与えられた一時ファイルを手元の端末で整理・編集して返すイメージなので RAW 現像などはクラウド側のパワーで処理
  4. ブラウザ上での整理・編集作業は完全にクラウド側のパワーで処理


上記のようなワークフローの違いがあり、新しい完全クラウドベースの Lightroom CC では整理・現像対象の写真ファイルを全部クラウドへアップロードするため、どうしてもクラウド側の容量が多く必要になり、たくさんの写真を管理している人ほど、特に RAW で撮影している人は、どうしても上位料金プランが必要になってきます。

例えば、私は現在 Lightroom Classic CC で約 200GB、4万枚強の写真を管理していて、そのうち半分以上の2万枚超の写真をクラウドで同期させていますが、スマートプレビューの JPEG ファイルしか同期していませんので、クラウドの使用容量は 500MB にも満たない小容量で済んでいます。

これを新しい完全クラウドベースの Lightroom CC で賄おうとしたら、どうしても上位プランの 1TB 容量付きプランに移行せざるを得ず、従来の月額 980円から 1,980円のプランにコストアップとなります。

それにアップロード容量が多くなるので、回線への負荷も考慮しなければなりません。

また、

現状はまだ Lightroom Classic CC の方が機能が豊富


であり、トーンカーブや HSL、明暗別色補正などの機能がクラウドベースの Lightroom CC にはないので、HSL などカラー別の補正は多用する私は機能的にもまだ移行するのは無理です。

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(lightroom.adobe.com でブラウザ版 Lightroom が既に使える)

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(機能的には iOS/Android版と同程度だが、クラウドゆえの+αも)


ただ、逆に新しい完全クラウドベースの Lightroom CC の方が有利なことも幾つもあり、以下の点が挙げられます。
  • 従来の Lightroom CC、現行 Lightroom Classic CC のクラウド同期では複数パソコン間の Lightroom カタログの同期は(リスクある裏技を使わない限り)無理だったけれど、クラウドベースの Lightroom CC なら全く問題なくシームレスにできる

  • 機能的にはまだクラウドベースの新 Lightroom CC が劣っているが、追いつくのも時間の問題だし、偽色の軽減など既に新 Lightroom CC にしかない機能、クラウド側の AI ベースの自動調整機能が実装されている

  • photography プランでは従来ライセンスはパソコン2台までだったけれど、ブラウザベースで使えることも合わせればライセンス台数は無意味になった

  • クラウド側の AI 解析で自動的にキーワードを付加してくれる(他サービスでも既にやってるけど)

思えば、デスクトップパソコンとノートパソコンで Lightroom カタログ同期が簡単にできないのはストレスでしたし、いつになったら Lightroom に実装されるかと思っていたスマートプレビューもクラウドならパワーを生かして実装されるのかもしれない、なんて思うと、

やっぱり将来はクラウドベースの写真管理が主流になるのかなあ


とは思います。既に Amazon プライムフォトを写真ファイルのバックアップ先にして便利に使っている身でもありますからね……

(クラウド側の AI 解析で自動キーワード付加をしてくれるなら、車とか飛行機なんてレベルではなく、レジ番読み取りとか、レースチーム名付加とか、選手を自動判別して選手名を手動でキーワード付加しなくても良いとか、そのレベルでやってほしいよね。アドビに限らず)

スポーツ写真などの動きの速い被写体はまだまだ一眼レフ優位と思っていても、今年の最上位ミラーレス機の一部を使ってみると、「動体撮影も将来はミラーレス機になる」という思いがしたのと同じように思います。

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(Lightroom Classic CC のアップデート内容)


今回の Lightroom CC、Lightroom Classic CC の細かな内容に関しては、以下の記事がよくまとまっています。

【笠原一輝のユビキタス情報局】新名称になったAdobeの写真編集アプリ「Lightroom Classic CC」と「Lightroom CC」を速攻レビュー 〜プロの写真管理もクラウドストレージ時代に突入 - PC Watch

とりあえず昨晩中に、従来の Lightroom CC から Lightroom Classic CC へ移行しましたが、基本的には殆ど変わりません。ただ、カタログをアップデートするのに(管理写真ファイルが多い場合は)結構な時間がかかりますので、その点は注意が必要です。

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Lightroom Classic CC のアップデート内容に「動作速度が速くなった」とありますが、確かにそれは感じますね。起動も速くなりました。(Photoshop CC 2018 の方は、また少し重くなったけど…)

あとは範囲選択で調整できるようになったくらいですが、これをやる時は Photoshop CC に持ち込んでいたので、個人的にはさほどでもないですかね……スマートプレビューが入らなかったのは本当に残念。アンシャープマスクではちょっとねえ(´Д` )

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(Lightroom Classic CC の使い勝手は変わらず安心 :-)

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(現像機能的なアップデートは殆どなく、その点だけは残念)

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いずれにせよ、Lightroom は大きく舵を切って、将来は完全にクラウドベースになってしまうことが確定したと言っても良いでしょう。あとは、ユーザー的に

  • 写真管理の Lightroom からの脱却を少しずつ手配するか

  • 完全クラウドベースの Lightroom だけになる心構えをするか

二つに一つですね。どうしましょうか……