E-M1 Mark II にしてみて良かったことシリーズ第3回です。ある友達からは

性能も機能も前よりダメなだけでなく、フリーズ連発やらオリンパスの修理対応で大変な目に遭ってるのに、急に良かったことを挙げていくなんて、もしかして店じまいの準備?


とか痛くない腹を探られていますが(ないとは断言できない現状が辛い ^^;)、動体相手の性能が宣伝とは裏腹にまだまだであったり、買った OM-D が連発で不良品だったり、修理対応がアレとか悪いことばかり目立ちますけど、それだけではないですからね。当たり前ですけど。

E-M1 Mark II &マイクロフォーサーズシステムをメインに据えて良かったこと・その1
E-M1 Mark II &マイクロフォーサーズシステムをメインに据えて良かったこと・その2

何度も書いてますが、E-M1 Mark II は静止体相手にマッタリと撮るなら本当に良いカメラです。動体撮影でなければらあらゆる動作が小気味よく、AFも迅速かつ正確、機能的にも何ら不満は出ないでしょう。動体撮影で一眼レフに匹敵とか凌駕するとか宣伝トークでも言っちゃうから、その基準で判断すると、全然まだまだですわ〜、ということになるだけです。

購入直後から書いている C-AF も、前回書いた手振れ補正も、動体相手では単純な “速さ” “強さ” だけでなく被写体や邪魔者の動きやレンズを振る動きに対する、こなれたアルゴリズムが必要ですし、5点/9点グループAFのように「それでは動体を捕捉できても追えないんだよ」と形だけ他社を真似した機能も、真面目にヤル気なら知見や経験を蓄積して今後改良できる余地は大きく、そうなれば今度こそ本当に一眼レフ中級機に肩を並べるか超えるレベルになるかも?と感じるところはあります。

もっとも、そこまで手を入れられるのか、入れる気があるのか、入れられる余裕があるのかは判りませんし、そもそも E-M1 Mark II は現状でも設定によっては連写速度やAF速度精度がスペックどおりに出ない、カメラの処理能力の余裕のなさが窺えるので、先行きの伸び代がどこまであるのかあまり楽観はしていません。

(富士フイルムの X-T1 Ver.3 みたいに、え?ファームウェア・アップデートでそこまで AF 強化できちゃうの?ほぼ作り直しじゃね?というようなアップデートがあれば良いですけどね〜)

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いずれにせよ、個人的に文句言いたい点とか動体撮影機を標榜してる割にこれは…という点は多いものの、それ以外では他にない良さもありますから、良かった点メモをまとめられる時にまとめておこうという今であります :D

今回も、3ヶ月使ってきて E-M1 Mark II の、これは思っていた以上に良かった点をまた幾つか。



▼ 何度も書いてるけど、動体を追える初めての EVF


E-M1 Mark II ご自慢の EVF を遥かに凌駕する動体向け EVF が搭載されたα9がリリースされた今、E-M1 Mark II の EVF を素晴らしいと言いまくるのも少々気が引けますが、それでも 3ヶ月使ってきて、この EVF には思っていた以上でした。

初めて E-M1 Mark II を触ってみたときから

あ、これはミラーレス機で初めて動きものを撮ってみようかと思わせる EVF だわ


と云う気持ちが起きたのも事実ですし、購入理由の一つでもありました。そして、その評価は3ヶ月使ってきた今も変わりません。

光学ファインダーから移行すれば必ずや不満も出るだろうし、ストレスを溜めることになるだろうことを覚悟していましたが、

3ヶ月使ってきて EVF にはあまり不満がない


です。本当に。

E-M1 Mark II の謳い文句と実際に使ってみての結果との間には小さくない乖離がある機能が多いのは事実ですけれど、こと EVF については大きな不満は感じず、特に文句もつけてないと思います :D

もちろん、E-M1 Mark II の EVF に目立つ欠点がなく、十分に満足できるレベルにあるかといえば、そんなことはなく
  • 高速で動く(見かけ上速い)被写体を追う場合には、光学ファインダーと同じ感覚だと微妙に遅れる
    (少し早めにレンズを振ろうと心がけてはいるのですが、なかなか…)
  • C-AF でシャッターを半押しにすると EVF の見え方が変わってピントが判らない/判りづらくなる
  • 慣れてしまうと EVF フレームレートは「高速」以外使う気が起きないが、細かい制約が色々ある

このようなことがあるので不満がないわけではないですが、それでもトータルに見て、

動体相手でも光学ファインダーから移って及第点を与えられる EVF


だと思います。

特にメイン機として常用してみて実感するのが、

フレームレート高速で常時使っていると
EVF 利用での目の疲れが従来よりマシ


ということ。これはある程度長く使い続けて感じられる点です。

今まで使ってきた EVF 機は(見え味という点では最も素晴らしかった X-T1 も含め)光学ファインダーと比べると明らかに目の負担が大きいことを実感してきました。一日使っていると、その差は顕著でした。

ところが、E-M1 Mark II では普段からフレームレート高速設定で使っているせいか、EVF を使っていることでの目の負担は従来の EVF 機ほどではないと実感しています。

EVF で動体を追うことでは光学ファインダーより目の負担が大きいのは E-M1 Mark II でもなくはないのですが、その負荷の差は従来使ってきたミラーレス機の EVF よりかなり縮まったと感じます。

C-AF のイマイチさ加減、機能満載の割には動体撮影に対する機能不足さ、諸々の不安定さ、といったマイナス点があってもとりあえず使う気になるのは、この EVF があればこそです。

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ただ、何度も書いてきているように、E-M1 Mark II はスペックの割には処理能力に余裕がないのか、EVF のフレームレート高速設定では、
  • 暗所 での C-AF 速度精度が落ちる
  • 撮影コマ数の低下
  • 高温使用時にフレームレートが落ちる(強制的に標準へ移行)
  • 機能の組み合わせによってはフレームコマ落ちが感じられる

ということがあって、

E-M1 Mark II ってスペック詰め込んだはいいけど、処理能力に全然余裕がなくて性能をちゃんと出せない場面がちょくちょく出てくるよねえ


というのを EVF 周りでも感じられるのは残念です。静止体しか撮らない人はそんなことを思う場面は少ないと思いますが、高速動体を追ってると間々あります(´Д` )

とまぁ、ちょっとマイナス点を指摘せざるを得ないところもありましたが、

E-M1 Mark II の EVF は、追える EVF


であり、動体撮影においてミラーレス機で初めて合格点を出せる EVF ではなかったかと思います。まぁ、後発の α9 と比較するとこれまた圧倒的な差がありますが、値段も倍違いますからね。比較しちゃあ酷です X-)


▼ グリップ(バッテリーグリップ)


軽量小型志向のカメラでもグリップの深い、握りやすいボディにするのは最近の流行りで、EOS 6D Mark II を見ているとキヤノンですらそういう傾向にあるようで大変喜ばしい昨今ですが、

細く深い E-M1 Mark II のグリップには満足


しています。前回、手振れ補正の強力さを述べましたが、手振れ補正だけでなくグリップの良さもまたブレ軽減に貢献しているのは間違いありません。(コンパクトデジカメ並みのなんちゃってグリップしかない E-M10 Mark II とは比較するのも無意味ですが)

オリンパスのカメラでグリップに納得できるのは E-M1 Mark II だけで、それも購入時にハードルが下がった理由の一つですが、私個人の場合、後付けグリップのような、みっともないオプションがないボディというのは、メインで使うカメラに最低限の話ですね。

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ただ、マイクロフォーサーズならではの小型ボディであることには変わりがありませんので、300mm F4 IS PRO のようなレンズとのバランスはレンズヘビーになりすぎるため、バッテリーグリップを付けることでバランスを取っています。

ボディ単体だけだと、男性としては手の小さな私でも小指が余って浮いてしまいますが、バッテリーグリップを付けることで(横位置でも)手全体をしっかり使って安定させることができますので、飛行機やスポーツ/モータースポーツ撮影では常用に近い形で使っています。

メーカーや機種によっては、ボディ側のグリップ感には配慮してもバッテリーグリップの方は適当グリップすぎて「棒をつけりゃあええってもんじゃないぞ」という製品もありますが、E-M1 Mark II のバッテリーグリップは満足とまでは言えないけど妥協できるレベル。

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ボタン、ダイアル類は E-M1 Mark II ボディ本体からしてチャチなので、バッテリーグリップだからどうのこうのはないけれど、大きめバッテリーを入れる方向が関係しているせいで、ボディ側のグリップより太くなってしまって持った感触がかなり違う、握りやすさがボディ側より落ちるのはマイナスです。

とはいえ、縦グリップは D一桁や 1D 系のようにボティ一体型じゃないと色々制約があって難しいですし、これより酷いバッテリーグリップも多く使ってきたので、合格点とまではいかなくても、色々な制約条件を考えると仕方ないかな、というレベルで悪くはないです。


▼ 低感度の画質


画質について語るのは人それぞれ基準も違うし、見方(重きをおくところ)も違うと思いますし、私自身多くを言えるものは持っていません。

ただ、基本的なスタンスとして、マイクロフォーサーズは過去に買った時も今回も「画質的には割り切って使うもの」と思ってきましたし、メインシステムに据えて3ヶ月経った今でも変わりありません。

画質云々を言うならフルサイズ機(かそれ以上)を使えば良いだけで、センサーサイズの小さなカメラで超えられない壁の内と外で比較しても意味はないでしょう。(趣味なら人の好き好きだから、あくまでの私個人の話)

ただ、直前まで使っていたカメラの一つ、同じような価格帯、スペックで動体撮影志向の APS-C 機である EOS 7D Mark II と比較を画質面で言うならば、
  • 低感度からノイズが乗ってきて、特に暗部ノイズが酷かった EOS 7D Mark II に比べると低感度の画質は良い。というか、正確に言うと現像時の処理がしやすい。
  • 個人的に常用できる上限感度は ISO 1600 なのは両者同じ(金属物なら ISO 3200 でも何とか)
  • ISO 1600〜2000 あたりの画質は RAW 現像処理する限り 7D Mark II の方が良い
  • ISO 2500 以上のノイズがどうにも多い領域では E-M1 Mark II の方が高感度ノイズの粒が揃ってるので、縮小した時にノイズが消えやすくて使い易い
  • 実効感度は E-M1 Mark II の方が低い(同じ露出設定では E-M1 Mark II がアンダーになる)

といった印象があります。ベンチマークではどうか知りませんが、実感としてはこんなところ。

(そもそも E-M1 Mark II の撮って出し JPEG は好きになれないので、JPEG はスマホ転送と取捨選択にのみ使って、適当処理ながら RAW 現像するようにしてます。EOS 時代の最後の方は RAW のみ撮影)

旧来のキヤノンセンサーの欠点である暗部ノイズの酷さ、低感度からノイズが浮いてくるのは 7D Mark II 最大の欠点であり、初代 7D から 7D Mark II に移行した時に「4年かかって、ほとんど改善されてないやんけ」とガックリしたものですが、その点 E-M1 Mark II は同じ画素数でセンサーサイズは小さいのに優秀です。

もっとも 7D Mark II は既に3年近く前の機種であり、キヤノンのセンサー世代としては一世代古いものですから、オリンパス機最新のセンサーと比較するのが妥当かどうかは微妙ですけど。

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(クリックで等倍切り出し/RAW現像)


7D Mark II などキヤノン旧世代センサー機では暗部ノイズの酷さから、露出アンダーになるのを避ける露出設定にしていましたが、E-M1 Mark II では低感度〜中感度ならば暗部ノイズがマシなので、ハイライト側を基準に露出を決めることができ、その点にストレスがないのは心地よいです。

ややアンダー目に撮って、シャドーをがっつり持ち上げるような処理をしても、ある程度まではノイズの浮き方も対処しやすいので、

低感度で撮ってる限りはレタッチ耐性もそこそこ余裕ある


印象です。

逆に言えば、ISO 400 を超えるとあまり余裕がなくなってきて条件が悪い撮影では後が大変になりますし、1600 前後になると解像感とノイズリダクションのバランスを取るのも厳しくなるので、強力な手振れ補正に頼ってとにかく低感度で撮るに尽きますね。

(高感度画質も APS-C センサーに負けない的なレビューもあったようですが、さすがにそれは言い過ぎ、としか私には思えません。ベンチ的な測定ではライティングがきちんとされてる環境で撮っているものばかりですが、実戦ではそんな条件ばかりでもないので、7D Mark II との比較ですら高感度時の RAW 現像/レタッチ耐性で E-M1 Mark II の方が良いとは言えないと感じてます)

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(クリックで等倍切り出し/RAW現像)


また、EOS Digital ではベース感度は ISO 100 であり、拡張感度の ISO 50 はフルサイズ機のみ、APS-C 機にはありませんでした。それにフルサイズ機の ISO 50 もラチチュードの狭さなど明らかに画質面で劣るところが多かったので、低感度側の拡張感度なんて使うこともありませんでした。(ND フィルターを忘れた時くらい)

ですので、ベース感度 ISO 200 の E-M1 Mark II でも拡張感度として ISO LOW(ISO 64 相当)があるのは知っていたものの、使おうという意識はありませんでした。

ところが先月の SUPER GT タイヤメーカーテストの際に、サーキット撮影なのに ND フィルターを忘れてしまう大失態をしてしまい、そこで仕方なく ISO LOW を始めて使ったのですが、

E-M1 Mark II の拡張感度 ISO LOW って、
ベース感度の ISO 200 より画質良くない?


と思った次第。きちんと定点比較もせず、単なる印象だけの話ですが。

白飛びはしやすくなるけど、明らかに ISO 200 より画質が落ち着いているというか、ISO 200 のようにベース感度なのに処理を通してる感が少ないというか。私だけの思い違いなのかもしれませんが、なんかそんな印象なのです。

気づいたのが鈴鹿サーキットで2回の撮影した、それぞれの日の写真を比較してからだったので、実戦で色々試していくのはこれからですけれど(このところ E-M1 Mark II は手元にあるよりオリンパスに修理出してる時間の方が多いし)、ISO LOW を積極的に使っていけば、もっと好みというか、E-M1 Mark II の画質に良い印象を持てるかもしれません。

もっとも、ISO LOW を多用するとなると、動体相手だとますます晴天日中専用カメラに拍車がかかりそうですけど(^_^;)

【追記】実効感度のことを書くのを忘れていましたが、 EOS Digital と比べると明らかに実効感度が低く、スタジアムのナイトゲームで撮影する場合には同じ設定だと 1/3段ほど暗く、それでなくても高感度画質がダメなのに、より厳しいですね。

雑誌その他メディアの ISO 画質比較も実効感度を考慮しているものが少なくて、実効感度の違いを考慮せず同一 ISO 設定で画質云々を比較されてもなー、と毎度思います。