操作性というものに対する評価はパソコンやカメラに限らず、人間工学的な視点に基づいた普遍的な一定の基準があるものの、レビュワーの好み、単純な好き嫌いだけではなく経験、慣れによる各自の評価軸による差異が表面化しやすいものです。

時にはレビュワー、ユーザーが一定以上の経験があるからこそ、思い込みに繋がったり、新規なものに対する違和感などを表に出した評価に繋がることすらあります。歳をとると特にその危険性を孕むことは、自分自身が新しいものに接した時の印象や前のめり度が若い時と違うと感じることで、十分に自覚してもいます。

カメラでも各社それぞれが独自の操作性を持っています。ニコンやキヤノンといった伝統の一眼レフを受け継いできているメーカーでは特に、操作性の継承がユーザーの引き留め理由の一つにもなっている、と言ってもいいでしょう。

多くの人が「これはちょっと…」と感じるような、どうにもダメな操作性はあるにせよ、そうでない部分においては自分の慣れた操作体系が良い、ベストではなくても全く違う操作体系より良く感じる、という判断基準になることは有りがちです。

さらに、それが高じて「カメラユーザーにありがちな宗教論争」にもなりがちです。全く不毛です。

ですから私が「キヤノン EOS 一眼レフのサブ電子ダイアルが最高に便利だ」と言っても、慣れの問題は大いにありますし、「キヤノンのカメラの操作性が良いとかないわ〜」と思うニコ爺さんやソニーヲタさんとかは適当に聞き流してもらえればいいのですが、とりあえず

サブ電子ダイアルが最高に便利だと思うのは
撮影時ではなく撮影写真再生時


だったりします。

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撮影時は特にどうこうということはないのですが、撮影後に多くの画像をチェックすべく次々と画像を連続再生していく時には、この大きく回しやすいダイアルが非常に操作しやすく、大量の撮影画像から欲しい写真を見つけたり、ボツ写真を削除していくのに有用なインターフェースだと思っているのです。


現行のインターフェースになって以降の EOS デジタル一眼レフは、背面に大きなサブ電子ダイアルがある代わりに、他メーカー機にある「後ろダイアル」がありませんから、撮影時には絞りやシャッター速度は前ダイアルで変えて、露出補正は後ダイアルではなくサブ電子ダイアルで行います。

(デフォルトで露出補正が前ダイアル、絞りやシャッター速度の変更は後ろダイアルというメーカーもあります)

この時、ホールドした状態の親指で(多くの場合ファインダー右側にある)後ろダイアルを操作するか、サブ電子ダイアルを操作するかは、あまり差を感じません。どちらのカメラを使っていても、そのことに特に優劣はないと感じます。

むしろ、ダイアルが如何に滑らかで、かつ適度な重さを持って回るか(誤操作するほど軽くもなく、操作したい時にはストレスなく回るか)であり、ホールドした状態からダイアルへ無理なく親指で回せる位置にあるか、の方が重要です。

そもそも背面にダイアルを持っているレンズ交換式カメラはそう多くありません。

CameraRear_D500
(NIKON D500)

CameraRear_A99II
(SONY α99II)

CameraRear_K1
(PENTAX K-1)

CameraRear_XT2
(FUJIFILM X-T2)

CameraRear_EM1M2
(OLYMPUS E-M1 Mark II)

CameraRear_GX8
(Panasonic GX8)


EOS Digital 以外で背面にダイアルのあるカメラも幾つかありますが、どれもコンパクトデジカメの背面コントロールホイールに近い小ささで、EOS のサブ電子ダイアルのような大きいダイアルを持つカメラはありません。(下記は一例)

CameraRear_A7R2
(SONY α7R II)

CameraRear_GH5
(Panasonic GH5)


私自身、一番最初の一眼レフはニコンであり、EOS 5D 登場時にキヤノンへマウント移行した時には、このサブ電子ダイアルに特に好印象を持ったわけではありませんでしたが、慣れていくとともに好印象を持つようになりました。

特にミラーレス機を併用するようになって、EOS Digital とそれ以外のメーカーのカメラと併用して使っていると、「大きな背面ダイアルはキヤノン機のみだけど、これ意外と良いよなあ」と思うことも増えてきました。

先にも述べたように撮影時には特にサブ電子ダイアルが優位とも便利とも思わないのですが、

撮影画像を背面液晶で確認する時、特に写真を流し見しながらザッとチェックしたり、大量の写真から確認したい写真を探す時にはサブ電子ダイアルのダイアルの回しやすさが最高に心地よいし、ストレスなく操作できる!


というのは、他メーカー機を使っていると一番の違い、サブ電子ダイアルの便利さを感じます。(他メーカーがダメというわけではないので念のため)

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再生画面において画像の前後移動は、他メーカー機だと前後ダイアルが主です。(小さな)背面ダイアルのある機種ではそれが使える場合もあります。

撮影画像を一枚一枚ゆっくり見ていく時には、別にサブ電子ダイアルでなくても問題ありません。前後ダイアルを指でくるくる回すのも、小さな背面ダイアル/コントロールホイールを回すのも特にストレスは感じません。

ところが、大量の写真をどんどん流し見していきたい時、大量の写真の中から特定のものが写ってる写真を見つけ出すために


(片手でカメラ操作、片手でiPhone撮影なので、ブレはご容赦 ^^;)


上記映像は少々極端に回してみた例ですが、こんな感じで写真を連続的に高速で表示していく時はサブ電子ダイアルの「大きく回しやすいダイアル」以外だとグルグルと回せなかったり、指が速攻で疲れたりして、こんな速く長く回すことは無理があります。

大きなサブ電子ダイアルだと人差し指でグルグル回せば100枚でも200枚でも連続で表示し続けられますが、前後ダイアルを長い時間、人差し指や親指で回し続けるのは厳しいですし、指が痛くなります。(上の動画は都合上、カメラが動かないようにホールドした状態で親指にて回しているので100枚くらいで休みが必要ですが)

撮影枚数の多い状況で
  • 写真をピックアップして Wi-Fi 転送したい
  • 〇〇が写ってる写真はプロテクトしておきたい
  • 一目で判るボツ画像を削除しておきたい

という場合には

延々とグルグル回せるサブ電子ダイアル最高!


と思うのです。(もちろん、グルグル回しても撮影画像の表示が付いてくるだけのボディ性能があればこそですが)

もちろん、極端な例だと言うのは自覚していますし、EOS Digital を使っていない人からすれば「なんじゃそりゃ」と思うこともあるでしょうが、レース、航空祭、スポーツの試合など、シャッター切る回数が多くなる撮影が多いと意外と重宝します

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(こういうボツ写真は高速で画像をめくっていても一瞬で判る ^^;)


普通に撮影していたり、ちまちまと撮影画像を背面液晶で眺めているだけでは、別に EOS Digital サブ電子ダイアルは特筆するほどのことは感じませんし、良さを感じても「これは慣れの範囲だよなー」と思うのですが、上記で説明したような場合だけは別だったりします。

大量の写真のチェックとしては16枚表示とか25枚表示といった多数のコマが並んだ縮小表示もありますが、小さな背面液晶なのにさらに多数の写真を小さく表示されちゃうと見づらいし、判りづらいです。高速でパラパラめくりしていく方がまだチェックしやすいと思っています。

(上記動画はかなり速く回しているので、実際にチェックする時はもう少しゆっくり回します。ただ、数十枚以上ずっと回して写真を流していくのは常です)

EOS だけを使っていてもこういったことができるのは「当たり前」でしかないのですが、他機種を使うと

撮影画像を大量に流し見しようと思うと、指疲れるなー


って感じて、サブ電子ダイアルの良さを実感するわけです。

まぁ、こんな特殊例を挙げて EOS の操作性が良いとかなんとかブチあげるつもりは皆目ないですが、EOS 以外のカメラを新しく買うたびに同じことを思っているので、ちょっと書いてみた次第です :D



(8000Dにもサブ電子ダイアルはあるけど、使いやすいのは80D以上)