1ヶ月くらい前の話ですが、とあるブログの「電子書籍の購入は作家の応援にならない」という記事が話題になっていました。現役編集者に聞いて「電子書籍は紙の副産物でしかなく評価の対象にならない、紙書籍の初動売り上げが全て」的な内容でした。

元ネタの記事は本当に編集者に聞いたのか真偽不明の怪しさもあったり、現役作家、編集者の反論もあってか、煽っておいてしばらくしたのちに反論記事を同じく掲載するなど、いささか炎上商法っぽさがあるので元記事のブログへのリンクは貼りません。

ただ、ラノベ作家が Twitter で同じようなことを呟いたりしているので、
  • 一定の地位を確保した作家、漫画家でもない限り、(初巻の)初版売り上げが運命を握る
  • 電子書籍の売り上げなんて作品の継続(打ち切り)に影響を与えない

というのが、一般的な話のように拡がっているようです。(どう考えても出版社やジャンル、編集部その他によって千差万別だと思うのですが)

現役編集者「電子書籍の購入は作家の応援にならない」に対する反応 - Togetterまとめ
電子書籍の購入は作家の応援にならない?2/6更新 - NAVER まとめ

個人的に東京在住時には数社の出版社とも仕事をさせていただいたこともありますが、お客様は専門色の強い零細出版社ばかりで、こういった初動売り上げで重版が云々という世界を垣間見ることもなく、そのあたりは全く分かりません。

とはいえ、

講談社、ミリオンセラー無き増益 デジタルで稼ぐ  :日本経済新聞

こういったようなニュースもあるくらいですから、少なくとも大手、準大手クラスの出版社(の経営に関わる人たち)が今尚電子の売り上げを気にしてない、なんてことはないでしょう。

もちろん、国内の電子書籍というのはコミックの電子比率が大きく伸びているという状況であり(移動しながら書いてるので統計データーは自分でググって探してちょ)、ジャンル的に偏りがあるのは事実ですから、一般文芸などでは電子書籍の売り上げなんてスルーする編集者もいるでしょう。(電子書籍は出したくない作家、漫画家もいるし)

ただ、コミックやラノベなどの若年層から中年層がメインカスタマーのジャンルはそんなことを言っていられないように思いますし、何よりも

たとえ「電子書籍の購入は作家の応援にならない」としても
普通の買い手がそんなことまで気にするとかないわー


アホか、って感じですね。



当たり前の話ですが、自分が読み始めて気に入ったシリーズは完結まで続けて欲しいですよ。途中で「俺たちの戦いはこれからだー」と強制終了させられたり、音沙汰もなく続刊が出ないのは、書き手にとっても読み手にとっても不幸です。

(2〜3巻まで出て続刊が出ずにフェードアウトにすらならないより、「俺たちの戦いはこれからだー」という感じで打ち切りが明確に判る方が読者にとっては有り難いですけどね。諦めがつきますし)

だからと言って、作者や出版社の都合で電子書籍じゃなく紙の書籍を買ってくれた方がいい、なんて言われたところで、ハイそうですか、と言えるものでもないわけです、今や。

個人的には、紙の書籍を買ってもらえなければ続刊は出ません、というなら、別にそれで結構、と思ってしまいます。実際、電子書籍は嫌い、出させない作家、漫画家についてはスルーです。

読みたい本は幾らでもあるし、積ん読はいつまで経っても減らないですから、そういった主義の作家、漫画家に付き合わなくても別に読書ライフに困りはしません。まぁ、そこまで言える作家、漫画家は別に私みたいなのが本を買わなくても困りはしないでしょうから、どちらも問題なしです。

もちろん、特に応援している作家、漫画家がいて、その人のためなら紙書籍でも電子書籍でも両方買う❗️という人なら、それはそれで良いでしょうし、それを否定するものではありません。けれど、今はそこまで思い入れのある作家さんもいない私には、

読みたいモノを読みたいスタイルで読む


だけですし、少なくとも

狭い部屋に置ける本の量に限界がきて、購入書籍をできるだけ電子書籍へと移行したした身としては、売り手が今さら何を言おうと、紙の本に戻れませんわ


ですね。

それに電子書籍で買うことに統一してしまうと

シリーズ新刊が出る/出た時に既刊を読み返すのに
あの本はどこに行ったっけ?と探さなくて済む


のも有り難くて手放せません。(何千冊買おうが綺麗に整理できるほど広い部屋があればいいけど、本以外にも物が多いのにウサギ小屋なので、紙の本は整理しても整理しても見つからないのが出てくるのよねー)

そして最近、

電子書籍メインになって本の買い方が変わった


ことに気づきました。

Kindle ストアその他どこの電子書籍ストアでも、書籍を購入したら「合わせて買いたい」的なオススメが出てきますが、それについてはほとんど影響されたことはありません。(全くゼロというわけではない)

ニュースや雑誌、何かのブログ、SNS その他の情報ツールから知った作家さん、漫画家さんに興味を持って書籍を探しに行く、買いに行く、というのは、紙書籍でも電子書籍でも変わりません。知らない作家に初めて触れるのはそういったルートが多いのは、ごく一般的だと思います。

ただ、電子書籍メインになって紙書籍時代と大きく異なるのは電子書籍にはほとんどに試し読みがあること。

少量のページでも試し読みして
自分に合うか合わないか判断材料にできる


のは大きいです。

もちろん、出版社によって、またジャンルによって試し読みの分量は大きく異なり、
  • コミックだと10ページもなくて表紙から目次その他が終わったら、実質1〜2ページで試し読みが終わる
  • 一般文芸や専門書でも目次までしか載せていない場合もある

ので、そういったセコい出版社、レーベルでは試し読みでは判断できない場合も多いです。

それでも

文体(一般文芸の場合)、絵柄(コミックの場合)が
自分に受け付けない場合は試し読みで概ね判断できる


でしょうから、買ってみて失敗だった、「この言い回しを続けられるのは無理だわ〜」と言った無駄遣いせずに済むのは事実です。

紙書籍では本屋での立ち読みという手段がありましたが、今どきコミックを立ち読みできる書店は多くないですし、小説も最初の数ページならともかく、ある程度まで読むのには抵抗ある時も多いです。特に、

購入候補が数冊あって1冊を決める時の試し読みは
本屋の立ち読みではちょっと…だけど電子なら気兼ね不要


というのは明らかにあります。

それに、試し読み用冊子を置く店も増えましたが、その試し読み冊子は出版社が提供するものですからかなり限られています。しかしながら電子書籍では大半の書籍で試し読みが可能です。(前述のように試し読みと言えない分量の場合もありますが)

世に出る作品は星の数ほどあるわけで、しかしながらそれらと出逢う機会も、読む機会も限られているのですから、効率よく取捨選択したくなる中で、ふと気がつくと

シリーズ続刊ではない本を買う場合には、試し読みしてから判断することが増えたなあ


と思うわけです。

もっと言うと

以前は買う前に作家名や同じ作家の作品名を調べていたが、電子書籍メインになってからはまず試し読み、気に入って買ったら今まで何度か買っている作家さんだった、なんてことがあるくらい気にしなくなった、作品だけで判断するようになった


ってのはありますね。

作家名を全く気にしないわけではないですが、紙書籍時代とは大きく比重が変わったのは事実です。そう言う意味では、作家買いの比率は下がったと言ってもいいでしょう。

Kindle20161229D


とまぁ、ここに買いたことはあくまで私個人の話であって、別に一般化するつもりは全くありません。ただ、先日ふと気づいただけです。

購入が電子書籍メインになってから紙書籍時代と比べて
  • どれだけ買っても部屋が圧迫されない、整理に困らない、省スペース性
  • 急に読みたくなった本を探さなくてもすぐ検索してダウンロードして読める、それもどこでも可能な利便性

ばかり考えていましたが、

ある本に興味を持ってから購入するまでの過程も少し変わったなあ


ということでした。

試し読みはあくまで試し読みですから、たとえ20〜30ページやそれ以上の試し読み分量があっても、必ずしも試し読みで判断して正解とは限らないし、切ったのが実は失敗で、文体や絵柄が多少受け付けなくても読み始められば気にならなくなるくらい面白い作品だったかもしれません。

でも、どういう取捨選択手段をとったところで零れ落ちるものはあるのは仕方ありません。(誰かに強く勧められて読む場合には、試し読みも何もないですしね)

そういった中で、電子書籍になって、どんな本も買う前に試し読みできる(少なくとも目次くらいは)ってのは、だいぶ私の書籍取捨選択に影響を与えているようです。