最初に言っておかなきゃならないことですが、当方、映画マニアどころか映画ファンでもなく、映画館で映画を見るのは年に4〜5本程度の“スーパーライトユーザー”であり、dTV や Amazon プライムビデオで見る映画を含めても年間30〜40本くらいですから、映画に対して特に何か言えるほどの知識も経験もありません。

そういった“スーパーライトユーザー”ですから、劇場で見る映画といえば、どちらかというとハリウッド大作と呼ばれるものに偏っている傾向は否めませんし、そもそも邦画を見る気になることなんて数年に一度あるかないか。いや、ない。

今回「シン・ゴジラ」を某所イオンシネマで見たのですが、本編始まるまでに予告編を20分近くも見せられ、十数本どれもこれも興味を惹かないツマラなさそうなものばかりで帰りたくなっただけでなく、その6割くらいだった邦画の予告編を見るたびに、

なんでこんなの映画化するの?金払って見に行く人、そんなにいるの?こんな内容2時間ドラマで良くね?


とか本気で思うくらいには偏見で凝り固まっている私なので(お気に入りの役者も好きな女優がいるわけでもないし)、元々「シン・ゴジラ」を見に行くつもりもありませんでした。

過去に「ゴジラ」を劇場で観に行ったこともあるし、テレビやオンデマンド系でも何作品か見たことはありますが、また今さら劇場で金出して「ゴジラ」なんてねえ…と思っていました。

もっと言うと庵野秀明作品、っていうか、実質エヴァンゲリオンは世間で評価されてるほど凄いと思えなくて(リアルタイムでエヴァもカレカノも見てたクチですが)、嫌いじゃないけど絶賛したくなる人間ではなかったので、庵野秀明作品だからと言って観に行く動機には成りえませんでした。



そんな否定要素、観に行かない条件全開の私でしたが、先週末の「シン・ゴジラ」公開初日から Twitter の timeline を見ていると、チラホラ観に行っている人がいて、ほぼ全員が「良かった!」と褒めているし、ネタバレしたくないけど語りたい感がツイートに出ていました。

そして土日になると、公開初日の評価が口コミで流れていたせいか、多くのフォロワーさんが観に行っていて、やっぱり高評価ばかり。それも過去のゴジラにはない描き方への評価ばかりでしたので、「これは一度見ておくか…」と。

そして早速、観に行った今言えるのは、

観に行って良かった、もう一度観に行っても良いくらい


と。いや〜、前述のような私が邦画でこんなことを思ったのは、いつ以来でしょうか。

ネタバレする気はないですが、とりあえず思うのは…



  • ゴジラという題材を採っているものの、主役はゴジラでもなければ、誰かヒーロー(個人)でもない。それが日本であり、日本人であることの特徴を描き出している

  • 最近天災の多い日本人としては実に興味ある、「想定外」「未曾有」の事態に対して現状の日本というシステムがどう動くか?というシミュレーションの見せ方としてよくできている

  • 常々批判の対象になる日本のシステムを単純な批判ではない形で描いている

  • 淡々と絶望さも描きつつ、実は前向き

  • 庵野秀明氏の代表作「エヴァンゲリオン」に似ている点ばかり話題だけど、初代ゴジラへのリスペクトも大いに感じられる


と言ったところに感心させられました。スーパーライトな何も判ってない人間が偉そうに言ってしまって申し訳ないですが、ど素人ですら、そう感じるということで。

加えて、

  • 観客動員考えてキャスティングされたアイドルがおらず、彼らが下手な演技を晒したり、ストーリーに本来不要であろう役で出てきて違和感を感じることがない

  • 音楽も伊福部オリジナルゴジラ楽曲をモチーフに作られていて、日本の人気グループやアイドルの歌で雰囲気台無しにすることがない

  • しょうもない(だいたいは笑えない)小ネタ、ユーモアを入れ込んだりしない

  • 現状批判を押し出しすぎて扇動的感情的に描いたり、役者が口に出して言うことによる軽々しさがない


といった私が邦画に対して嫌悪感を感じる点が一切なかったのも非常に好感を感じた要因でもあります。

特に

お涙頂戴的なのも含む本筋に関係ない無駄なシーンのない素晴らしさ


は良かったですね。一番嫌いな点ですから。

こういう淡々さこそが庵野秀明作品なのかもしれませんが、淡々と描いていくからこそ引き込まれました。

そして淡々と描く形になっているからこそ、見る人それぞれの政治的主観や偏見その他によって色々言いたくなるのは判らなくもないところはあるし、受け止め方もそれぞれでしょうが、劇中の

「私は好きにした。お前らも好きにしろ」は
監督から観客へのメッセージ


でもあるのではないかと私は受け止めました。


(予告編の全く魅力を感じさせなさは、ある意味騙された感)


もちろん、色々と突っ込みどころはあるのはありますし、最後に敵をやっつける段になるとどうしても粗くご都合主義になるのは古今東西の映画にありがちなパターンですが、そこに十分目をつぶれるくらいの面白さ、良さはありました。

天災の多い日本に住む者なら感じ取れるリアリティと言いますか、こういった事態では「官」の組織をどう動かしていくのかという状況を描いている点で、

日本人による日本に向けた映画


だったように思います。

同時期に続編が公開されている「インディペンデンス・デイ」のようなハリウッド娯楽大作と比べてみると実に好対照で、邦画だからといって何も見劣りするどころか、私自身は「シン・ゴジラ」の方がずっと魅力的な作品に思えます。(派手でスカッとしたい人は違うかもですが)

いずれにせよ、「ゴジラ」と言いつつ、その内容はまるで過去の「ゴジラ」とは違うし、主役であって主役でもないので、

なんか全然よくわからへんで、途中で何度も寝そうになったわ


という前列にいた高校生のグループが上映後にこぼしていた感想も納得です。小学生以下はもちろん中高生ですら理解の範疇外、置いてけぼりになる「ゴジラ」でしょう。

初日に観に行った友人が「場内はガラガラで10人もいなかった」と言っていて、土日観に行った人たちも混んでいるという報告はなく、私が観た時も3割の入りでしたし、この内容で夏休み興行的な入りは厳しいのかもしれませんが、それで終わらせるのは勿体無い映画でした。

もっとも、過去のゴジラシリーズはリニューアルのたびに「過去との決別」といって新機軸を打ち出すものの、結局その後は子供向けの要素も取り入れて続編が作られていくことになる繰り返しでしたが、今回はあまりにも異質ですし、庵野秀明氏も二度目はないでしょうから、どうなりますやら。

いずれにせよ、久々に見に行って「これは良かった!」という邦画でありましたので、思わずブログ記事にしてしまいました。

ネットでは、エヴァンゲリオンにそっくり(特に新劇場版:序)というエヴァヲタ、アニヲタの絶賛的支持が若干目立つところもありますが、私みたいなエヴァ別に大して好きでもない、庵野秀明作品に思い入れゼロな人間でも楽しめたので、そこは気にする必要はないと思います :-)

あまり言うとネタバレになるのでこれ以上触れませんが、エヴァンゲリオンのオマージュというか、そのままさがあちこちにあるのはともかく、BGM まで流さなくてもいいとは思いましたけどね…

ただ、こういう内容で、こういう描き方ですから、それなりに人を選ぶところはあるのは事実ですし、感動ストーリーを求めているような人、スーパーヒーロー/ヒロインを見たい人は他の映画を見に行った方がいいでしょう。

それでも、こんな偏見に満ちた私に「日本も捨てたもんじゃない」ならぬ「邦画も捨てたもんじゃないな」と思わせてくれたのは、本当に感謝したい映画でした。


というわけで、支離滅裂になりましたが、このへんで。



(特撮秘宝は面白い内容らしいので買ってみようと思ってます)