前々回で iPhone カーナビアプリの現状について色々と書き、その流れで前回は無料 iPhone カーナビアプリ「Googleマップ」「Yahoo!カーナビ」「MapFan+」それぞれを常用してきた中での機能や性能の特徴について比較してみました。

iPhone カーナビアプリ色々
無料iPhoneカーナビアプリ Googleマップ、Yahoo!カーナビ、MapFan+ の個人的比較感想

「MapFan+」は一部機能が有料アプリだとか、無料カーナビアプリ比較という割には無料カーナビアプリで最も多機能な「NAVIRO」が入っていないとか、諸々片手落ちがありますが、ちょっと使ってみただけでの比較ではなく、きっちり話できるのは常用しているアプリに限られるので、この3つのアプリについてのみ記しています。

(NAVIRO を常用していない理由については、前回記事を参照)

前回記事では、

の3つのアプリそれぞれについて長所・欠点を列挙しましたが、今回はその前回記事でも触れた各アプリの情報表示やルート探索の癖について、具体的な事例を示していきます。

これら3つの無料カーナビアプリを始め、どのカーナビアプリもそれぞれ長所短所は持っていますし、特に

ルート探索についてはアプリ毎に癖がある


ので、使うなら事前にアプリの癖を知っておく方が良いですし、時には「転ばぬ先の杖」にもなります。(面倒くさいこと考えずに一番無難にこなしたければ、月額課金して「カーナビタイム」や「ドライブサポーター」の NAVITIME系アプリを使うのがベター)

ということで、以下、私個人の気づいた「Googleマップ」「Yahoo!カーナビ」「MapFan+」のそれぞれの特徴、注意点を実例で示していきます。今回はまず「Googleマップ」を中心に。

なお、ルート探索アルゴリズムは告知なく変更・改良されているものですから、当記事は記事執筆時点での話であることを予めご承知おきください。ここで指摘した問題は将来、きちんと改善されている可能性があります。

また、常用している中での実例なので関西エリアが中心の実例になっているので、首都圏その他の方には判りづらいかもしれないことを先にお断りしておきます。(首都圏その他でも同様の例はあります)




▼ 道路規制情報のないGoogleマップや無料利用のMapFan+では、ルート探索で致命的な時も

前回記事でも少し触れましたが、カーナビで渋滞情報とともに重要な工事規制情報を無料で表示できるのは「Yahoo!カーナビ」だけです。
  • 「Googleマップ」は渋滞情報を独自収集していて VICS 道路情報を利用しないので、工事情報も利用できない
  • 「MapFan+」はカーナビ含めて無料で利用できるが、VICS道路情報の利用には月額課金が必要
    iPhoneCarNavi22

となっているので、無料で道路規制情報を表示できるのは「Yahoo!カーナビ」(と、ここで取り上げていない「NAVIRO」)のみ。

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(Yahoo!カーナビの道路規制情報表示)

iPhoneCarNavi24
(Googleマップでは独自渋滞情報は表示されても規制情報はない)

iPhoneCarNavi25
(MapFan+も月額課金すれば道路規制情報は表示される)


実のところ、道路の規制情報ができるか否かは渋滞情報よりもクリティカルなポイントで、車線規制情報くらいならともかく、

道路の通行止め情報をルート探索で考慮しないのは致命的


です。当たり前ですが。

その実例を、先日事故のあった新名神高速道路工事現場で、橋の一部が落ちたため長期通行止めになっている国道176号線(以下 R176)を例にとって以下に示します。

iPhoneCarNavi21
(通行止め区間の地図表示。左:Yahoo!、右:Google)


R176 西宮北IC 付近から三田市街へ向かう経路上で事故があり、ずっと通行止めになったままです。大阪北部・宝塚などから高速道路を使わず、三田・篠山方面へ向かう場合には必ず使うといっていい道です。

そこで宝塚駅から三田駅へのルート探索を行ってみると…

iPhoneCarNavi26
(VICSを受信せず道路規制情報を持たない Google Maps は
通行止めがないと思って R176 を通る経路を提示)

iPhoneCarNavi27
(同じくVICSを利用できないMapFan+の無料利用でも
通行止め情報が得られないので R176 を通る経路を提示)

iPhoneCarNavi28
(VICSの道路情報でR176通行止め情報を持つYahoo!カーナビ
オススメだとR176を回避するルート…え?)

iPhoneCarNavi29
(ちゃんと見ると有馬川の対岸の道を抜けるルートになっています ^^)

iPhoneCarNavi30
(一般道優先にすると、通常の迂回路である県道15号利用になってます)


当然といえば当然のことですが、

VICS 道路情報を受けられず通行止め情報がないと
ルート探索を根本的に間違う


ことになります。独自に渋滞情報を収集しているとはいえ、天下の Google さんも通行止め情報を得ていないとルート探索・カーナビとしての致命的欠陥を抱えることになります。

上記例では川の対岸へ抜けるルートがあるので、現地へ行ってから判断することも可能ですが、山間部や全く土地勘のない場所で工事通行止めなどに出くわすと大きなタイムロスに繋がります。

このような事故で有名になった長期の通行止めよりも工事による細かな通行止めの方が多いわけですから、Google マップをカーナビとして使う人(無料で MapFan+ を使う人)はこの点に十分留意してください。

(上記通行止めでは県道15号利用が推奨迂回ルートとして発表されていますが、有野インター交差点で大渋滞するので Yahoo!カーナビのオススメルートを使う人も多いです。そちらも橋を渡るのに渋滞しますが…)

また、高速道路の集中工事のような場合には Google マップでも通行止め情報が表示されるのですが、正確でない場合もあります。以下、名神集中工事開始時の、各アプリにおける名神規制情報の表示具合です。

iPhoneCarNavi31
(集中工事で大津IC〜吹田IC間が夜間通行止めです)

iPhoneCarNavi32
(Googleマップも通行止表示する時がありましたが、なぜか大山崎JCT以南のみ…)

iPhoneCarNavi33
(有料課金中のMapFan+も途中まで。課金してコレはダメだろ)

iPhoneCarNavi34
(無料のYahoo!カーナビだけが正確に表示してました)


Googleマップは通行止め表示のない時の方が多かったですし、有料課金せず無料利用の MapFan+ ともども、名神高速道路が工事通行止めになっていようが、ルート探索には名神高速道路を使うルートを提示してきます。

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(MapFan+ は無料利用だと通行止め区間を考慮せず)

iPhoneCarNavi46
(Google Maps も通行止め区間は無視)

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(Yahoo!カーナビは京滋バイパス久御山ICまで下道を提示)


というわけで、結論から言えば、

道路規制情報をまともに表示・経路探索に使えるのは
この3つのアプリでは「Yahoo!カーナビ」だけ


であり、他の2つのアプリ、特に Google マップを使う場合には道路規制が考慮にない、表示されないことは要注意です。


▼ Google マップは一般車通行禁止・通行不能な道を通るルート提示する

これは現在はもう割と有名になっていると思いますが、Google マップをカーナビで利用する際に一番気をつけることです。

これも近所で実例を挙げてみます。

iPhoneCarNavi35


これは池田市にある五月山公園の裏手にある駐車場へ向かう経路を探索した結果ですが、この右下から真ん中上の方へ山を登っていく道は途中の五月山霊園のあるところまで一般車通行禁止です。

確かにこの道が通れれば一番早いですし、何より有料道路(300円)を通らなくて済みます。が、そうはいきません。侵入するところのゲートが閉まっていたらまだしも、下のゲートが開いていて Google マップに従って入ってしまい、上のゲートが閉まってたら目も当てられません。

正解は

iPhoneCarNavi36
(MapFan+)

iPhoneCarNavi37
(Yahoo!カーナビ)


これらのように素直に西にある有料道路(五月山有料道路)を登ってくるルートになります。(Google マップでも高速道路を使う設定にすると大回りして、このルートを取るようになります)

ちなみに、「高速道路・有料道路を使わない」設定にしても「MapFan+」「Yahoo!カーナビ」は上記有料道路を通る経路を示してきますし、「Google マップ」は一般車通行禁止の道を使うルートを示してきます。

ところが実際には「高速道路・有料道路を使わない」ルートもあり、有料道路とは反対側のずっと北側から大回りしてくるルートがあります。経路上はかなり大回りになり、所要時間も+10〜15分くらいかかるのですが、「高速道路・有料道路を使わない」設定ならそれくらい示して欲しいものです。(同じような例は他にもあります)

「高速道路・有料道路を使わない」設定でこの大回りなルートを出してくるのは、過去に試した限り NAVITIME 系のカーナビアプリのみでした。(直近では未確認)

さらに言えば、この何もなさそうな場所に実はトイレもあるのですが、NAVITIME系アプリではしっかり地図で表示されており、このあたりは「金の取れるカーナビアプリ」だけありますね。(今回の3アプリは表示されてなく、Yahoo!カーナビに至っては駐車場とすら書いてない)


▼ 通行禁止・不能じゃなくても脇道、細道を提示しやすい Google マップ

前項の一般車通行禁止の道を考慮せずに(データーに入ってない)ルート探索・ルート案内する Google マップですが、通行禁止・通行不能の道でなくても、
  • 目的地までの所要時間が短い
  • 周辺道路が渋滞している

といった理由で、道路状態を鑑みずに割と簡単に、主要国道より峠道含む脇道の県道を選んだり、渋滞する広めの2車線より住宅街の路地道を案内したりすることがあります。

このあたりは個々人の運転技量やカーナビのルート探索に求めるものの差があって、必ずしも良し悪し言い切れないのですが、他のカーナビアプリより積極的にワイディングロードや路地に突っ込んでいく姿勢があるように感じます。(裏道走行を厭わない迂回ルート探索があるアプリの迂回系ルートと同じようになる時がある)

例えば、大阪北部から鳥取方面へ一般道利用のルート探索を行った場合、アプリ毎に幾つかのルート候補が出てくるのですが、国道173号線で北上して国道9号線に合流してそのまま鳥取へ向かうルートを候補に出すカーナビ(車載、アプリ問わず)があります。

その場合、R173 から R9 への合流はその両者が交差する「和田」という交差点で左折するのが普通で、Google Maps 以外で R173 → R9 のルートを出す場合は全て「和田」を左折というルートを提示します。

iPhoneCarNavi55
(MapFan+ の例)


ところが Google マップは県道300号線→301号線→97号線を進むルートを提示します。

iPhoneCarNavi56


確かにこの道は国道9号線に比べれば交通量は劇的に少ないし、峠道でもなく、山あいの集落を通過しながらの快走路ですが、これを選ぶのはなかなかマニアックです(^^;)

国道9号線が渋滞でもしていなければ所要時間はほとんど変わらないし(距離も大差ないはず)、Google マップが何故このルートを選んだのかはよく判りませんが、感心するやら、運転に慣れていない人には嫌なルートじゃないかなぁ?(特に夜は真っ暗だし)と思う次第です。

これくらいの例では大したことがないのですが、

「ある程度(自らが位置情報収集した)交通実績があるなら脇道、細道使っていくぜ」

というのが Google マップのルート探索アルゴリズムのようであり、車載カーナビや有料カーナビアプリのように大通り優先、道幅優先といったルート探索バリエーションはないので、抜け道、細い道はできるだけ通りたくない、という人は少し気をつけた方がいいでしょう。

心配な人は、Google マップではルート探索結果画面で地図を拡大して経路をチェックできますから、事前に把握しておいた方が良いと思います。


というわけで、Google マップは素晴らしい地図アプリで、カーナビ機能も当初に比べれば随分と改善されて実用に耐えうるものになってきましたが、地図更新の遅さとともに、道路規制情報が皆無なのとルート探索時の問題(渋滞時にはやたら細道へ誘導される時があることも含め)は、利用時に十分気をつけるべきでしょう。

長くなりましたので、続きは次回へ。

(続き)→ Googleマップ、Yahoo!カーナビ、MapFan+ をカーナビアプリとして使う場合のルート探索上の注意点【中編】