前回、ボディが大柄で片手操作・入力が厳しい iPhone 6s Plus でも ATOK for iOS の端寄せ機能で片手入力ができるようにしよう!と目論んで、見事に失敗したことを述べました。

iPhone 6s Plusの片手文字入力のために ATOK for iOS を買って使ってみた…

上記記事でも触れましたが、私の手が男性にしては小さく、指も短いため、ATOK for iOS で仮想キーボードを端に寄せてもギリギリ届かなかったのであり、手が男性の平均サイズか大きめの人なら iPhone 6s Plus でも ATOK for iOS を使えば片手入力は可能になるかもしれません。

また、ATOK for iOS で片手入力が叶わなかったのですが、せっかく安くないお値段のアプリを買ったということもあって、ATOK for iOS を使い続けています。私の手では完全な片手入力はできませんが、片手で使うには純正キーボードよりはマシですからね。

それにリリース当初は iOS による大きな制約の他に、Android 版と比べても機能が少なく、また当時はメモリ 1GB のiPhoneしかなかったためメモリ不足気味になりやすくて、賞賛とともに批判も多かったのですが、今は機能面、使い勝手でも改良もだいぶ進んだこと、それに

メモリが倍増した iPhone 6s (Plus) なら余裕あるパワーで
ATOK for iOS も快適に使えている


のも事実です。

友達が使っているのを見て iPhone 5s では、とてもじゃないけどモッサリで買う気になれませんでしたが、iPhone 6s (Plus) なら常用するのに全く問題ありません。

反面、

馬鹿で使えない日本語入力と言われた iOS 純正 IM も
iOS 7 くらいからだいぶ良くなり、今では概ね不満ない


レベルになりました。(自分が頻用する語句はある程度の単語登録する必要はあるけど、それは ATOK でも同じ)

初期の頃は連文節変換すらできず、その後も複数の文節を入力して変換させると酷い有様で、サードパーティ製IM が使えないのは iPhone 最大の欠点とも言われましたが、今は純正 IM でも(変換精度的なところで)厳しい意見を聞くことは少なくなったように思います。

そんなわけで、純正 IM も随分と改善が進んだ今、敢えて安くない価格のサードパーティー製 IM を買う意味があるかどうか?という視点で、改良が進んだ ATOK for iOS を今さら購入して使ってみた、ごく個人的な感想を以下に述べたいと思います。



結論から言うと、Mac における OS X 10.10 以降の「日本語入力」IM と ATOK for Mac との比較と同じように

ビジネス文書など整った文章を書くなら断然 ATOK が良いけれど
スマホ利用にありがちな口語調なら iOS純正IM で問題ないどころか、むしろやや良い


のではないかと感じています。

パソコン版 ATOK のような校正補助的な機能はないにしろ、正しい日本語を書くのならば ATOK の方が正確な変換が出てくるでしょう。助詞も省略せず、らぬきもせず、正確な日本語を入力して正しい変換を行うのは ATOK for iOS の方がよくできています。

ただ、ここで問題になるのは

スマートフォンはパソコンと違って長文入力をすることも少なければ、変換するまでの文節数も少なく、正確な文章を入力するより口語調のくだけた文章を入力する方が多いのでは?

ということです。

そして、

適当な日本語だと ATOK より iOS 純正 IM の方が意外と変換がスムース


だったりします。まぁ ATOK さんが品行方正すぎるのかもしれませんし、私の日本語が乱れすぎてるのかもしれませんが(~_~;)

全く適切な例ではありませんが、たまたまの例として

きょういくひとをみまもる


という文章があるとします。ちょっと変な日本語ですが、そういう正確ではない日本語を ATOK for iOS に与えるとどうなるか?であります。(ATOK for iOS は句読点や助詞の省略に弱いという例)

これが ATOK for iOS だと「教育費とを見守る」になります。

ATOK_for_iOS1


「今日行く人を見守る」としたい場合には、変換区切りを直して確定することになります。

ATOK_for_iOS2
(変換から文節区切りを変更する)

ATOK_for_iOS3
(これで確定する)


ところが ATOK for iOS 君は正しい日本語じゃないと学習してくれないのか、もう一度「きょういくひとをみまもる」と入力しても

ATOK_for_iOS5


やっぱり「教育費とを見守る」が変換候補になり、「今日行く人を見守る」はスルーされたままです。不正確な、もしくは適当な日本語に厳しいとも言えるのですが、 ATOK は結構こういったことが多く、まぁハッキリ言って ATOK for iOS って言葉に融通が利かない頑固ジジイです。

そして、iOS 純正 IM だと

ATOK_for_iOS4


サクッと入力したい文字が出てきます。これは学習していない、初入力時でコレです。

「きょういくひとをみまもる」というのは日本語的におかしいだろ!と言われればそれまでですが、ちょっとした助詞や目的語を抜きに文章を入力することはスマホでは当たり前ですし、スマホの IM なんていうのは、そういったところでの変換効率が求められてるのではないか、とも思うのです。

ちなみに、この「きょういくひとをみまもる」ですが、ATOK for iOS がリリースされる前からある(そして今でも外部キーボード利用時には使わざるを得ない)ATOKPad でも ATOK for iOS と同じ挙動になります。もちろん、ATOK for Android でも同じです :D

ATOK_for_iOS6


複数文節(特に3文節以上)を入力後の変換精度は ATOK for iOS に軍配が上がることが多いのは事実ですが、パソコンだと複数の文節を入力してから変換を行うことは多いものの、スマートフォンは文節数が1〜2個くらいで一旦変換することが殆どではないでしょうか?

スマートフォンの場合は画面(幅)が狭いゆえ、一気に長文を入力することも、それを変換して順次文節毎に確定していくのも大変ですから、比較的短く確定していった方が効率が良いと感じるでしょう。

特にスマートフォンの場合は「推測変換」が肝になりますから、“こんし” と入力したところで推測変換候補に「今週」や「今週の」が出ていれば、それをタップして確定することも多いはずです。

逆に言うと、外部キーボードを接続してパソコン感覚で入力する時こそ ATOK の 能力が引き出せるはずです。しかし、iOS の制限で、外部キーボード利用時は iOS 純正 IM しか使えません。

スマホのテンキー入力では純正 IM で変換精度は問題なくて
外部キーボード利用時こそ ATOK を使いたいのに使えない


という、もどかしさがあります。(そしてアップデートもされず放置プレイの ATOKPad を使わざるを得なくなる)

いずれにせよ、スマートフォンの日本語入力 IM では多数の文節を解析して云々よりも少ない文節数での変換精度が求められると思います。

そうなると効いてくるのは辞書の単語登録量。昔の iOS 純正 IM はひたすら単語登録をしまくらないと使い物になりませんでしたが、iOS 8 あたりから純正 IM の辞書はかなり充実してきた感じで、単語登録量がかなり増大したようです。

iOS 9 の純正 IM の単語登録量は ATOK for iOS と比べて劣ってるどころか、スマホ的利用でよく使われるような単語なら勝るとも劣らないと感じるレベルで、むしろ「ATOK ともあろうものが、これ登録されてないの?」ということもあったりします。

それに、ATOK は月額課金制の ATOK Sync に加入しないと複数デバイス間の単語登録を同期してくれませんが、純正 IM なら iCloud で最初から登録単語はデバイス間同期してくれる(Mac の純正 IM 含む)ので、その点でも月額課金せずに ATOK for iOS だけ購入していると単語登録は不便極まりありません。

そういったことを考えると

変換精度だけを求めて iPhone で ATOK 使う意味はあまりない


というのが私の正直な感想です。(ビジネス言葉もしくは正確な言葉だけを入力する方は別)

もちろん、
  • パソコンや Android でも ATOK を使っていて、ATOKSync で登録単語を共有したい
  • (前編で書いたように)仮想キーボードを端に寄せて片手入力を使いやすくしたい
  • 他デバイスで ATOK の変換の癖に慣れているから iPhone でも

という目的で ATOK for iOS を使うことは大いに意味がありますが、単純に「スマホ入力時の変換精度を上げるために iOS 純正 IM から乗り換えても、どれほど満足できるのかな?」という気がします。

また、iOS の制約があって外部キーボードで使えないことは再三再四書いていますが、それ以外にも

純正 IM のキーボードには音声入力ボタンがあって
キーボード切り替えなしで音声入力をシームレスに行える


のも個人的にはメリットだと思っています。(音声入力ボタンを表示せずにキーボード切り替えボタンをデカくして使いやすくすることも良いのですけど)

iOS の音声入力は完璧ではなくても「こりゃ意外と使える」というレベルにはあるので、一人で文章を話しても問題ない環境では結構使っています。多少の修正があっても仮想キーボード、テンキー入力より速い場合もあります。(音声入力にキーボード切り替えが必要なのは Android で不便だと思うことの一つだったりします)

また、純正 IM は、日本語テンキー → 英語フルキー → 絵文字、とキーボードを切り替えていく中で、日本語から英語にして英数字を入力し、次に切り替えボタンを押すと絵文字じゃなく日本語テンキーに戻るのです。

ところが ATOK for iOS は日本語テンキーから英語キーボードに変えて英数字を入力してから切り替えボタンを押すと、順番通りに絵文字キーボードに切り替わってしまう。さらにもう1回、切り替えボタンを押さないと日本語テンキーに戻ってこない。

どちらが使いやすいかは一目瞭然で、 ATOK for iOS って意外と痒いところに手が届かないというか、

ATOK for iOS を使ってみたことで
純正 IM の細かな使い勝手の良さに気づく


ことも多いですね。

あと ATOK が嫌なのは、ATOK は色々と言葉狩りされていて変換できない単語が少なからずあること。趣旨は判ってるつもりですし、ビジネス文書ではそれがメリットにもなるでしょうが、日本語入力 IM がユーザーの言葉に制限を加えるのは良いこととは思えません。



そんなわけで、ちょっと ATOK には厳しい見方をしていますが、これもまた一つの意見として捉えていただければと思います。

一時期は ATOK 神話みたいなところがありましたし、特に Windows では純正 MS-IME がある時期から超絶劣化してしまってサードパーティー製 IM を使わざるを得なくなりましたが、Mac や iOS の純正 IM は一時期までどうしようもなく糞だったのが、近年多少まともになりましたから、ATOK が絶対必要とも思わなくなってきました。

ATOK はパソコン版では年々無駄な機能ばかり増え、動作が重くなった割には変換効率が上がってるとも思えないので、残念ながら「日本語入力はやっぱり ATOK サイコー!」とは、とても思えなくなっています。

それでも Android スマートフォン・タブレットではリリース直後から ATOK for Android をずっと利用していますし、Windows でもまだ欠かせません。Google 日本語入力でも良いのですが、そこはそれ、やはり ATOK の方が信用はできますし、ATOK Passport を解約したとはいえ、一度パッケージなりアプリを買ってますので使える間は使い続けると思います。

そして何度も書いているように、iOS でも外部キーボードを利用して入力する際は、ATOK を入れていない iPad を含めて(ATO for iOS が出るよりずっと前から)ATOKPad アプリで ATOK を使って文章入力しています。(このブログ記事もそう)

ただ、そういった形で両方を常用していて「口語入力に関しては ATOK より iOS 純正 IM の方が変換精度が良さげ」と思うくらいですから、

「ATOK for iOS も結構ええ値段を取るからには、純正 IM より軽くて正確で融通の利くようにならないと、既存ATOK ユーザーのための IM でしかない」

というのが一ヶ月使ってきての率直な感想です。

当方は前回も書いたように、既に買ってしまったのと端寄せ機能が不満足でもあった方が良いので、今後もしばらくは使い続けて様子を見ると思いますが、少なくとも ATOK を他のデバイスで使ってない人に薦められるものではないですね。

というか、iOS 純正 IM にキーボード、テンキーの端寄せ機能が付いたら、ATOK for iOS はお役御免になると思います(^_^;) 正直早くそうなって欲しいです。iOS 10 でそうならないかなぁ……