今週初め、大阪で三日間開催された EOS 7D Mark II (と PowerShot G7 X)の体験イベントに行ってきました。当初は最終日に行く予定でしたが、台風の関係でガンバ大阪の鹿島アウェイ遠征から帰るのを1日繰り上げたので、主に月曜日に行ってきました。

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キヤノン:EOS 7D Mark II SPECIAL SITE:EVENT INFO

メイン会場はグランフロント大阪・北館4階にあるナレッジシアター。個人的には先日のワールドカップ日本代表 vs ギリシャ戦の NHK 8K映像パブリックビューイング観戦して以来でした。ちょっと、あの時のことを思い出してしまいました。

ただ、個人的にお目当てだったのはメイン会場の EOS 7D Mark II 体験イベントではなく、別会場(同じグランフロント北館の B2F にある小会議室)で行われていた 7D Mark II カタログ掲載の写真を撮影したプロカメラマンの方々によるセミナー。

体験イベントで 7D Mark II 実機を思う存分触って確認できるのは良いのですが、所詮限られた空間でちょこちょこ試したところで、肝心要の AF 性能や画質をきっちり知ることはできないので、それなら実際に使ったプロの写真家の話を聞いた方がええだろうと。

もちろん、こういう場ですから多少のバイアスというか、あまり悪いことは言わない方向なのは重々承知ですが、彼らもプロですからどこかに本音は出ますし、言外ないし行間ならぬ言間にちょっとしたヒントはあるものです。

(セミナー会場には開発者セミナーを除いてキヤノン社員の方はおられないという話も聞きましたが……?)

もちろん、写真家セミナーを聴いた後はメイン会場へ行って 7D Mark II 実機を色々試したり、質問させていただいたりしました。

19時以降だと来場者も少なくて超望遠レンズコーナー以外は並ぶこともなく、ゆっくり確認できましたし、キヤノンの方で同じ趣味を持つ方と雑談しつつチラリ本音みたいなものをいただいたり、真剣に来年以降の購入を考え始めた EF400mm F4 DO IS USM もある程度試せて、G7 X も初めてしっかり触って担当の方と色々と話もさせていただきました。

(G7 X は結構印象が良かったので、GR をレリーズ修理&オーバーホールに出さなきゃ……という状況だけに、GR を修理に出すと代替機代わりに G7 X を買ってしまいそうで怖いです ^^;)

いずれにせよ、「結局は自分で試すしかないんだよなー」という思いは変わらないのですが(スポーツ/モータースポーツだとプロとは撮影環境が全然違いますし)、行って聴いてきたことの自分用メモとして簡単に記しておこうかと思います。



【1】開発者セミナー


冒頭で「開発中の裏話なんかも交えてお話を……」と言いつつも、そこはそれ、雑誌インタビューでも二言目には「内部仕様についてはお話しできません」「詳細は公表していません」が出てくるキヤノンですから、イベントの開発者セミナーと言っても正直聴くべきものはありませんでした。

EOS 7D Mark II には大して興味ないけど写真家さんのお話が聴けるから来たという人(結構いた)、ウェブ媒体や雑誌、ムックの 7D Mark II 技術解説記事や開発者インタビュー記事を読んでいない人には良かったかもしれませんが、内容的には

インタビュー:キヤノン「EOS 7D Mark II」の大進化に迫る - デジカメ Watch

ほぼ、↑この記事そのまんまです。

こんなことだろうと思っていましたし、このあたりはキヤノンらしさ全開で、ある意味納得もするのですが、まあ次回からは開発者セッションは行かないだろうと思います。


【2】野鳥・戸塚学氏


貧乏人が鳥に手を出したら人生終わるよなぁ〜、なんて思わなくもないわけですが、近年猛禽類が撮りたくて仕方ありません(カワセミとかは全然興味なし)。いずれにせよ、鳥はきちんと名前や生態を覚えることから始めないとなー、というレベルですが、興味はあります。

そんなわけで野鳥撮影の世界がどんなものなのかあまりよく知りませんが、私が聴いた写真家セミナー5つで最も混雑していました(もちろん満席)。おまけに年齢層の高いこと!

「おまえら 5D Mark III ユーザーで 7D系は関係ないやろ〜」と言いたくなったのですが、講師の方に現行7Dユーザーの人を聴かれたときに2〜3割は挙手されていました。

しかし、時間帯が異なるとはいえ、他ジャンルのセミナーと比較して1,2を争う混雑。EOS 7D Mark II 発表会で6ジャンルの撮影人口でトップ(野鳥34万人、鉄道30万人、スポーツ24万人、飛行機20万人、野生動物9万人、モータースポーツ6万人)というのも納得でした。

そして、私が聴いた最初の写真家セミナーから、なかなかシビアな意見を聴けました(笑)

  • AFは他ジャンルは絶賛されているだろうけれど、野鳥に関しては期待しすぎると後で苦情言われそうだから……と、いきなり釘さし(^_^;)

  • 野鳥に対する AF はシーンに応じて設定を変えるなど 7D Mark II の AF 機能を使いこなして初めて満足できるものになる。

  • 秒間10コマになったけれど、もっと欲しい。でも 5D Mark III の 6.5コマ程度だと、飛んでいる鳥の羽の動きと同期して全部同じ形になったりするが、10コマあるとバリエーションが撮れて好みの形を選べる。

  • APS-C で画素数が増えた分、陽炎の影響は受けやすい。

  • 夏に撮影依頼されたが、夏は鳥がいないうえにカメラを使えたのも数日なので困った。おまけにキヤノンからは(野鳥なのに)縦位置で撮ってくれ、と言われて難易度が高かった。

  • 野鳥は画質第一でフルサイズかつ感度が上げない人が多いが、7D Mark II の画質はそこそこいける。高感度よりも中間感度の画質が使えるようになったのが良い。

  • メイン機材は 5D Mark III を使っていて周りは 1D X が多かったが、これで 1D X に張り合えるカメラができた。


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【3】野生動物・福田幸広氏


野生動物も殆ど撮りに行ったことがないし、動物を撮りたいと思っても動物園やサファリ程度になってしまうが、野鳥同様に撮ってみたい分野。もっと若いうちから興味を持っていれば……という後悔先に立たず状態です(^_^;)

野鳥に続いて講師の方は初めて拝見してお話を聞く方で、淡々とお話しされる中でもちょくちょくユーモアを入れられて、なかなかそのギャップに笑わさせていただきつつ、詳しい撮影事例を紹介されて為になりました。

ジャンル的に撮影人口が少ないせいか、野鳥と繋がりがあっても良いはずなのに野鳥のあとで参加者が半分近くまで減っていましたが(各セミナーは完全入れ替え制なので区切りは付けやすいけれど)、勿体ないと思った次第。

  • 普段は EOS 1D C を使っていて APS-C も使うが、7D Mark II は十分これから撮影に使っていける。

  • 秒間10コマに増えたのは大きい。1秒間がどれだけ短いかを、実例としてカタログ掲載写真の前後写真を示して説明。それでももっとコマ数は欲しい。

  • 秒間コマ数が増えただけではなく AF追従も良くて、使えるカットが増えて選択の余地がさらに増えた。(実例あり)

  • 秒間コマ数と AF 性能とバッファの増量の全てがあってこそ使える

  • 静音シャッターモードは臆病な野生生物相手には素晴らしい機能。ムササビやツキノワグマなどの撮影例で紹介。

  • ISO 6400 は使える画質、F8 対応 AF も使える。(EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM に x1.4 テレコンの実例)

  • 70D から搭載された「デュアルピクセルCMOS AF」による動画 AF が素晴らしいので、スチル専門の人も 7D Mark II を購入したら動画を撮ってみて欲しい。(70D によるジャコウウシの決闘動画は、思わずオレも撮ってみたいかも?なんて思わせるに十分だった)


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【4】飛行機・チャーリー古庄氏


飛行機写真、特に民間機写真の世界ではルーク・オザワ氏(東京でのイベントでセミナー開催)などと並んで有名な方。何度かお逢いして、トークショーの類いもお聞きしていますが、相変わらず明快軽快な語り口でした。

成田、伊丹、関西空港の写真を中心に米国で撮影された飛行機写真もあり、最後にスナップ写真も紹介しながら、それぞれの説明で多くの作例を見せながらの30分でした。

  • 1D X と比べれば 1D X の方が良いのは決まっているが、APS-C には APS-C の良さがある。飛行機は遠くのものを撮るので APS-C が便利なことも多い。

  • 高画質な 1D X や 5D Mark III があり、APS-C には 70D があるなかで、7D Mark II の良さは、画質(高感度)と APS-C の利点や軽さとのバランスが良い。プロでも EOS 7D ユーザーは多く、1D や 5D が上というのでもない。

  • APS-C ならではの AF 測距点の広さは、構図を作るのにとても良い。

  • 連写速度は2コマ増えただけだが、連写速度の多さは衝突防止灯が光る瞬間や着陸時のタイヤスモークの瞬間を狙うには必要。

  • AF は霧の中でほとんど飛行機が見えない中でも食い付くし、背景がゴチャゴチャしてようが、船の上からの撮影で揺れていようが、しっかり追従する。

  • 夜の飛行機撮影を行う人も増えてきたので高感度画質は重要だが、ISO 8000 でもしっかり露出決めてドンピシャで撮れば、A3 ノビに耐えられる。(でも ISO 8000 では少しでも弄ると破綻する)

  • 軽いので、最近増えてきた女性で飛行機写真を撮影する人にも良い。1D X の機能性能が欲しいけれど重すぎる、大きすぎる、と言っていた人には良いカメラ。

  • 5D Mark III でラウンジや機内で撮影するのに重宝していた静音シャッターモードは、状況に応じて使って欲しい。

  • 飛行機写真では水平をしっかりとるのが重要なので、水準器がファインダー内で常時表示されるようになったのは、とても良い。

  • また、ファインダーが新しくなって、ファインダー内に設定情報が多く表示できるようになって、上面パネルを見ることなく、ファインダーを覗いたまま設定変更と確認ができるのは、動体相手に考えて作られた印象。

  • バッファ(連続撮影枚数)は RAW + JPEG で公称19枚だが、Sandisk の最高速カードを使っていると(保証はしないけど)実戦では撮影シーンによって 40枚近く撮れることもあった。

  • 軽いのでスナップ撮りにも使える。(NY でのスナップ写真を実例に)

  • キヤノンはカタログ写真を撮影しようが、セミナーをしようが、EOS学園講師をしようが、カメラは一切くれないので、自分も予約した。先着1万名のバッテリーグリップキャンペーンに応募した。


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【5】鉄道・山崎友也氏


東京在住時には何度か氏のトークショーとかを拝見したことがありますが、久しぶりにお聞きしても、相変わらず広島弁でテンポ良く話しながら、ガンガン笑いを取っていくスタイルは変わらず。

飛行機と鉄道では両方好きな人も多いせいか、連続聴講する人は多かったですし、飛行機よりもさらに人が増えてほぼ満員だったようです。客層も野鳥の時は 95% 爺さん婆さんでしたが、飛行機あたりから年齢層が20〜40代中心に。

そんな盛況のお客さん相手で、作例も豊富に実戦例で判りやすく話を進めていた山崎氏ですが、この日は台風18号が関東方面に襲撃した日であり、この日の朝に新幹線で大阪入りする予定だった氏は、東京駅で5時間足止め。

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セミナー冒頭では足止め食らった時の様々な模様を収めた写真を見せながら笑いを取りまくった後の本題になりました。(いわゆる、掴みはオッケー的な)

  • 鉄道写真では基本的に MF 置きピンをしているが、今回キヤノンから AI Servo を使ってくれと言われたが、驚くほど使える。

  • AF 測距点が広く端まであり、点数も多くてクロスセンサーでエリア AF でしっかり食いつくので、画面の端に列車先頭を入れることの多い鉄道写真(編成写真)でも AI Servo が使えて画期的。

  • センサーはスペックだけ見ると 70D と同じだが随分違って、AF だけじゃなく画質も良くなっているので ISO 6400 が常用できる。7D の時は常用 6400 とか書かれていたけど、あんなの嘘。でも今回の 6400 は既に(商業)印刷に回しています。

  • 画素数が増えて画質がホント良くなっているので、トリミング耐性も上がった。

  • ファインダー内に全てを表示して上面の表示を見なくて済むようになった。動きモノを撮る時にはファインダーから目を離さずに設定できるのは重要で、使い勝手の向上は大きい。

  • 水準器もファインダー内に表示できるのは重要。7D も表示できたが、レリーズ半押ししたら消えるというダメな仕様だったが、今回は使える。

  • 7D Mark II は軽いから、流し撮りでも振りやすい。


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【6】モータースポーツ・赤松孝氏


このセミナーだけは仕事の関係で2日目に聞くことができなかったので、最終日の最後、オーラスの回で拝聴しました。氏はモータースポーツの中でも二輪専門ということで、鈴鹿8耐のテスト走行を撮影した写真を挙げながらのお話しでした。

  • 普段は 1D X で撮影時はマニュアル露出。カタログ掲載の写真もマニュアル露出、EF500mm F4L IS II USM で撮影。長く連写はせず、追っていってここぞと思うところで2〜3枚。

  • カタログ写真を頼まれた時は、単なるテストだけではなく仕事として写真を撮らないといけなかったので 1D X も持っていったが、最初に少し使っただけで、あとはずっと 7D Mark II で仕事をこなせた。

  • 操作性も含めて 1D X と併用できる。

  • AF は十分仕事に使えるもので、1D X のテレコンを付けた時と同じくらいの印象。(EF500mm F4L IS II USM 装着時)

  • 1D 系が 1D X でフルサイズになってテレコン付けっぱなしのシーンも増えていたので、今後は必要に応じて 7D Mark II を併用したり、7D Mark II メインで撮る人も出てくるだろう。





てな感じで、お聞きしたセミナーを個人的な印象でメモした内容は、上記という感じでした。まあ、細かいニュアンスの違い、漏れなどもあるかと思いますが、近いうちに Youtube のキヤノンマーケティングジャパン・チャンネルで公開される分もあるので、詳細はそちらをご覧下さい。

また、個人的には肝心要のスポーツ分野のカメラマンが来阪されなくてお話を聞けなかったり、質問できなかったのが残念ですが、東京でイベントが開催された時のセミナーは既に一部がもう公開されています。



ちなみに多くのセミナー講師の方が共通して言われていたことは、

  • シャッター音が良くなって気持ちよく撮れる。

  • 1D X や 5D Mark III ユーザーならマニュアルなしでそのまま使えるほど操作性が統一されている。

  • なので(使っている人は)1D X と 5D Mark III と問題なく併用できる。

  • APS-C には APS-C のメリットがあり、ジャンルによっては強い味方になる。

  • 画質は中〜高感度の画質も含めて 7D からは大きく向上している。

  • 測距点エリアの広さも含めて AF は本当に良い。
    (と言っても MF置きピンする人はこれからもするだろうし、AI Servo がどれだけ良くなっても OneShot 派の人はこれからもそれで撮るだろうけれど)

  • (1D X や 5D Mark III と比べると)軽いので取り回しがしやすい。

  • ファインダー内で多くのことが確認でき、ファインダーから目を離さなくても良いのは動体向け。


といったあたりでしょうか。そういえば、誰も GPS には触れませんでしたが、そんな暇はなかったのかもしれません。

複数の講師の方からの話を聞いていると、カタログ写真の撮影は、いずれの写真家諸氏もテスト機を渡されて撮影期間は3〜4日間だったようです。さらにカタログ掲載ということもあってか、

縦位置写真と ISO 6400 などの高感度写真が多いのはキヤノンのリクエスト


らしかったですね。(カタログを見れば判るように、横位置写真を縦に切って掲載されている写真も多いですが)

おまけに、縦構図をリクエストされた割には縦グリがまだできてなくて本体のみだったという……大変だったと思うし、流し撮りメインのサーキット・モータースポーツの方なんて大変だったと思います。

また、カタログ掲載写真も撮って出しか、それに近い条件のものが多いようで、高ISO撮影も含めて条件的にはあまり良くないものが多く、画質の判断、特に RAW からどれだけキッチリ仕上げられるかは、発売以後の評価待ちなのかな、と思います。(どちらにせよ、フルサイズと比較するのは愚かな話ですが)

いずれにせよ、今回のイベントで EOS 7D Mark II 買う買わないが左右されることはないのですが、自分の興味ある被写体を撮られているプロの方の話をこれだけまとめて聴けるのは貴重な機会でした。こういう場所では撮影方法、設定を話してくれるので、本当に参考になりました。

各セミナー講師の方々、そしてこういった場を提供していただいたキヤノンには感謝したいと思います。有意義な数時間でした。