本日、富士フイルムサロン大阪で展示されている X-T1 実機(β機)を係員の方に色々聞きながら試して、写真その他だけでは不明だった点を確認するとともに、ごく個人的な印象を報告しておきます。

なお、あくまで今日短時間(30分程度)試しただけであり、ファーストインプレというレベルでもありません。もう少し時間をかけて使えば慣れて不満がなくなったり、別の見方が出てくるかも知れません。

さらに、私は富士フイルムが本来想定しているようなユーザーではないことを自覚していますし、過去のインプレ記事を見ていただければ確実に見方として偏りはありますので、ご期待やご信心には必ずしも応えられないことをお断りしておきます。

X-T1atFujiSalonOsaka5
(本日届いたばかりという X-T1 のカタログは気合い入ってます!)


また、試したのは昨日から展示の試作機であり、今週末以降のイベントで展示される機材や発売時とは異なる可能性があることをご了承ください。一応、ボディのファームウェアが Ver.1.00 だったことは確認していますが、発売時にどうなっているかは判りません。

(展示のレンズはファームウェアを更新されていなかったため、お手数ですが更新してもらいました。位相差AF が使えない状態で試しても意味ないですからね。ってか、イベントやショールームでは全部ファームウェアを最新にしておきましょうよ>富士フイルムさん)

XF10-24mm F4 や XF 56mm F1.2 といったレンズはまだ用意されていませんでしたが、既に発売されている3つほどのレンズを試しつつ、バッテリーグリップも出してきてもらえたので、それも試してみました。

色々説明していただけたので、もう来週のイベントに行かなくても良いかも?と思うくらい十分試しましたが、X-T1 にあまり時間を取られすぎて、横で開催されていた風景写真の写真展を見ることができず…申し訳ない気が…スイマセン(^_^;)



まず、幾つかのボタン類などについて動作を確認しましたので、以下報告しておきます。

  • シャッター速度ダイアル、ISO 感度ダイアルともロックボタンが付いたが、シャッター速度ダイアルは A(オート)のみがロックされ、それ以外のポジションでは自由に動く。ISO 感度ダイアルは常にロックされる。

  • 親指AF ができそうな Focus Assist ボタンは、X-T1 では従来機と異なり背面ダイアルがプッシュできないので、その代わりに用意されたものであり、通常はフォーカスアシストの拡大表示ボタン、長押しでピーキング、デジタルスプリットイメージの切り替えになるボタンである。
    残念ながら、Focus Assist ボタンは AF とは全く無関係だし、X-T1 で親指 AF は不可能です(レリーズ側の AF キャンセル設定もない)

  • MF 時のワンタッチフォーカスも従来どおり、AF-L ボタンで動作する(位置が変わったが、相変わらず微妙な場所)

  • 2画面表示モードで右側の拡大画面の拡大率は(少なくともその状態では)切り替えられない

  • 縦グリップ装着時も防塵防滴は保たれる
    (本体側のパネルを一枚外して、グリップ側に付けてから装着していた)

  • 縦グリップには前後ダイアルと Focus Assist, AF-L, AE-L のボタンのみで、ボディ前面グリップ脇にある Fn1 ボタンは縦グリップにはない
    (縦グリップ利用者はカスタマイズの際に注意が必要かと)

  • 相変わらず三脚穴が光軸上にない



次に、実機を30分ほど説明を受けつつ試した個人的な感想ですが、まず大まかな印象から。

ぱっと見、そして持った感じの第一印象は
写真で受ける印象ほど大きくなくて、お馴染みのサイズ感


という感じですね。高さや厚みの増加による大きな圧迫感はありませんでした。

その後に試したオリンパス OM-D E-M10 と比べると一回り大きいわけですが、X-E1, X-E2 という従来機と比べて「デカくなったなぁ」という印象はなく、X-Pro1 のように「魅力あるけど、これはちょっと大きいなぁ」という感じはありませんでした。

X-E1, X-E2 を使っている人なら

お、この手の収まり感は今までと一緒だね


そう思えるボディです。やはりボディ幅をそれらと同じにしたのは正解ですね。

そして何よりも

この EVF はヤバい!


です。いやー、ヤバい。一目見て、「おおっ」と思えるファインダー。

よくよく見ると精細感があるわけでもないのですし、2画面モードの右側拡大画面でピントの山が従来より凄くハッキリするわけでもないのですが(便利だけど)、このデカさは 1D系のファインダーと同じ感覚で魅力あります。

【追記】間違っても光学ファインダーと EVF では(双方のメリット的に)超えられない壁があるので、同じではありませんので誤解なきよう。被写体を実物として見るような光学ファインダーと同じではなく、あくまでサイズの意味です。【追記終わり】

このサイズ感と EVF のデカさだけで第一印象は惚れますね。「オヤジ、一ツくれっ!」と言いたくなります。

X-T1atFujiSalonOsaka4


ただし、フラッグシップ機としていささか物足りない性能面は置いとくとしても、ボタン類の作り込みに関しては賛否両論あると思います。完全否定はしませんし、小型化の代償かもしれませんが、フラッグシップ機であるならば、このボタン類はいただけない部分もあると感じました(詳しくは後述)。

また、私自身は動体撮影志向ですし、望遠馬鹿ですが、たまに某所とか某所とかネット上を見ていると「X-T1 なら動体撮影も何とかなるんじゃないか?」と、ボディデザインからして考える人を散見しましたが、

従来機同様、動体撮影を考える人には全く向かない


と感じました。ちょっと触った感じでは X-E2 と大差ない印象です。

まぁ富士フイルムの場合は動体予測とか言う前に、動体撮影アピールはフォーカスエリアをマルチエリア対応、被写体追従でフォーカスエリア移動を実現してから出直していただきたいレベルですが、詳細は後述します。

でもまぁ、そんな人は別にして

フィルムカメラにノスタルジーを感じる人にはピッタリの
実力も備えた雰囲気カメラ


だなぁ、と思いますね。そういった人に「撮る気にさせる」カメラということも含めて。

アナログチックな機能固定型ダイアルのオンパレードがデジタルカメラというモノにベストな操作系かどうかは別にして、雰囲気モノとしては最高ですし、魅力も実力もあります。

X-T1atFujiSalonOsaka3


といったのが最初に触った第一印象でしたが、その後アレコレ試して感じた点を以下に列挙しておきます。

  • ボディ全体の質感はかなり良い。X-E1/X-E2 とは掴んだ瞬間に差を感じられる。この剛性感はフラッグシップ機に相応しい印象。
    (X-E1/X-E2 も決して○○○のようなボディ剛性の柔い感じは全くなくて十分満足だけど)

  • 上面の機能固定ダイアル類も良い感触だが、それに比べると前後ダイアルの操作感は並み。

  • また、ボタン類は防塵防滴に対応したせいか、ボディの小型化に影響されたせいか、どのボタンも小さくなってボタン類の使い勝手は明らかに落ちた。

  • 背面の上下左右ボタンはサムグリップと近くなり、誤動作防止に上下左右ボタンエリアが凹んだ感じになったので、若干押しづらくなった
    (昨日試した人がそう言っていたのも納得できた)

  • シャッター速度/ISOダイアルのロックもそうだが、全体に誤動作防止に基準を振りすぎて、全体的に軽快な操作感という点では従来機より劣ると感じた。
    (写真で見る限り、ボタン配置などは従来機より良い印象だったのだが、正直操作しやすくなったかどうかは私にとっては微妙。ただし、人によりけりで、良くなったという人もいると思う)

  • 従来機では上面右側にあった Fn ボタンの位置に動画ボタンが取って代わられ、代わりに露出補正ボタンとシャッター速度ボタンの間に挟まれるように Fn2 ボタンが作られたが、Fn2 ボタンの位置は X-T1 の大きな欠点の一つと言っても良いくらいにファインダー覗きながらで使いづらくなった
    (従来機と併用する際の操作互換性も劣るし、だいたいフルHDで14分しか撮れないカメラで動画も何もないのだから、富士フイルムにはこんなところで動画機能に日和って欲しくなかった)

  • EVF は本気でデカい。フルサイズ上級機並み。隅までクリアで、これまでのミラーレス機の EVF で間違いなく最高!

  • EVF は大型だが眼鏡をしていても隅までキチンと見えた。アイポイントの高さは賞賛したい。

  • 従来機はアイカップがショボすぎて、眼鏡をしていると斜光線が入りまくりだったが、今度のは多少マシかも…でももう少ししっかりしたのに変えられると良いな。

  • EVF のレスポンスは X-E2 より更に改善されるのが一目で判るレベル。カメラを流した時の違和感は減った。
    (ただし、C-AF で連写をしなければ、という条件付き ^^;)

  • C-AF で連写すると EVF はシャッターが切られる度に、コ・マ・送・り・に・な・り・ま・す・よ♡というのは従来と変わらず。
    (X-E2 の C-AF 連写よりはマシにはなっているけれど、C-AF 時にファインダー消失時間が長くなるのは X-E2 と同じ傾向で、これで動体に使えるという人はいないでしょう。と書いたけど、子供が走ってくるのを撮って動体に使えるぜ!というレビューは国内外いつもあるよなぁ……)

  • AF 周りは基本的に X-E2 と同じだが、C-AF の連写速度だけは向上しているが、確かに C-AF の連写速度は X-E2 より遙かにコマ速を出していた。
    (ピント精度は知らない)

  • しかし、C-AF と S-AF とを比べると C-AF でレンズを振って撮っていると、やっぱりコマ速が落ちていて公称値ほど出ないと感じた。
    (XF55-200 使用時の話。X-E2 と同じ現象)

  • 【追記】完全に確認を忘れてましたが、ハイパフォーマンスモードがおそらくONになっていないと思われるので、パフォーマンスモード有効時は上記の AF や EVF の挙動が変わるかもしれません。
    (初期設定はオフですが、私自身は X-E2 で常時オンにしているので、うっかりしていました。X-E2 ではハイパフォーマンスモード有効で AF速度は体感で向上します)

  • X-E2 では C-AF の被写体追従連写をさせると、レリーズボタンを離した後にしばらくして1コマシャッターが切れてしまうことが頻発するのだが、X-T1 ではそういうことはなくなっていた。

  • 本体のグリップは、写真で見たり、後付けのハンドグリップが用意されると聞いて覚悟していたよりはマシだった(笑)。XF55-200mm 以外の現行レンズのような軽いレンズなら悪くないし、そういった人たちは好印象を持つと思う。

  • ただし、XF55-200mm や大口径望遠ズーム、超望遠ズームのような大型レンズに対しては力不足の本体グリップなのは間違いない。

  • 今回一番の驚きはバッテリーグリップ(縦グリップ)の形状が結構マトモだったこと!本体グリップ(横位置)より縦グリップの方がずっとしっかり安心して握れる。これなら不満ない。ってか、縦グリップがコレなら本体グリップも同じにしてくれよ…
    (本体グリップと縦グリップは操作性も含めて、なるべく変わらないようにするのが基本なのですが…。縦グリップのボタンも適当に並べた感が強いので、そこは残念)

  • ぶっちゃけ、ボディのグリップに関しては E-M1 >>> NEX-7 > X-T1 >>(壁) >> E-M5/E-M10 って感じ。

  • ごく個人的な印象を言うと、E-M1 はそのままなら(サイズに比して)X-T1 よりコンパクトに感じるのだが、縦グリップを付けると E-M1 は急にゴツくなる感じに対して X-T1 はそれなりで、縦グリップを付けた時のバランスが良い。

  • レリーズボタンは従来機より軽くなり、感触も良くなった。歓迎したい。

  • レリーズ音もしっかり判るが大人しく主張しすぎなくて好印象

  • 露出補正ダイアルの重さは体感で X-E1 と X-E2 の間。重さは変わらないのかもしれないが、ダイアルが回しやすくなってサイズも大きくなって軽めに感じるのかもしれない

  • 前述のとおり、親指AF の類いはできない。MF時のワンタッチフォーカスも AF-L がサムグリップの上なので、意外と押しづらい。
    (AE-L と AF-L を入れ替えたい…)

  • ISO ダイアルとシャッター速度ダイアルが二重(二段)になっていて、下側にドライブダイアルと測光ダイアルがあるが、一見便利そうに見えるものの、操作しやすいとは感じなかったし、どうかなぁ。これぞ雰囲気モノって感じ(別に嫌みじゃなくて)

  • 背面のサムグリップ形状が変更になったけれど、可もなく不可もなく。

  • メニュー画面やクイックメニューは従来機とほぼ同じで、機能や設定部分の作り込みからはフラッグシップ機というものは感じない

  • カタログは力入っている。良いカタログだ。


WBブラケットが増えたとか、上下左右ボタンも含めたボタンカスタマイズが可能になったとか、そういったスペックで見て判ることは敢えて試していません。あと、付属ストロボもスルーでした。限られた時間ですので、自分があまり使わないモノは仕方ありません。

基本的な内部処理は X-E2 と同じですし、フラッグシップ機だと言ってもメニューや設定周りの使い勝手は何も変わりません。

とはいえ、従来機とはあらゆるボタン配置が変わっているので、併用はそれなりに戸惑うことがあるかも知れません。ただ、個人的な印象では、似て非なる X-E1 と X-E2 より、大きく違っている X-T1 の方が併用しやすい気もします。

だからと言って、誰も買うとは言ってませんが…(笑)

X-T1atFujiSalonOsaka2


発表時から感じていましたが、実際に触ってみると

従来機と X-T1 では撮影の方向性が違うカメラ


ですね。従来通りのクラシックデザインとアナログ操作系を発展させていますが、スナップシューターとしては X-E2 の方が良い面もあるように感じました。

誰が意見したのか知りませんが、先にも書いたとおり、誤動作防止に振りすぎている嫌いがあります。機能固定ダイアルがたくさんあってカメラの電源を入れずとも見て確認できるというなら、むしろ設定が変わっているのもカメラの電源を入れる前に判るだろ、とツッコみたい。

相変わらず細かいところは色々ありそうなカメラですが、

この EVF を一度見ると、並みの EVF ではもう…


って感じなのは、だぶん実機を見れば誰しも思うはず。

そして個人的には

「糞グリップしか作ってこなかった富士フイルムのくせに、縦グリップだけは良いぜ…」

というのも印象的でした。一眼レフでは縦グリップを外すことがないので(外せない機種もあるけど)、縦グリップはホント欲しいんですよね……どうせ動体は撮れないし、スナップ機としては不要ですが。

というわけで、適当乱文になりましたが、X-T1 試作機を30分ほど触った個人的な印象でありました。私の結論としては

X-E2 + 最高のEVF + チルト液晶 + 縦グリップ = X-T1


ですね。あくまで超個人的なインパクトですけど(ISOダイアルとかドライブダイアルとか正直どうでもいい)。

いや、良いカメラです。売れるかどうか判らないし、フラッグシップ機としては物足りない点もあるけどねぇ……せめて SS 1/8000秒…… (^_^;)