昨日、角川文庫の電子書籍表紙の簡素化について少し書いたのですが、電子書籍関連で年末年始に話題になったのが、電子書籍ストア「エルパカBOOKS」サービス終了。

幸いなことに、楽天が「Raboo」を潰した時の酷いやり口に比べれば、エルパカBOOKS は Pontaポイントながら購入全額分を戻してくれる措置を受けられるので、まだ救いはあるでしょう。

尚、これまで弊社電子書籍サービスをご利用いただいたお客様へ、Pontaポイントによる過去ご利用いただいた購入金額をPontaポイントにて返金するサポートを実施予定です。 詳細はサービス上にて別途ご案内いたします。

エルパカBOOKS(電子書籍)サービス終了のお知らせ

これはエルパカBOOKS が単純なダウンロード型ではなく書籍閲覧時に認証必須と思われる仕組みのため(SIM カード必須など)、事前にダウンロードした電子書籍もサービス終了後は読めなくなるのですから、当然と言えば当然でしょう。

Pontaポイントでの返金相当に関しては、元々こんなマイナーなローソンの電子書籍ストアを利用する人なら、Ponta 依存も進んでいるでしょうから悪くないのかも…などと勝手に思っています。

どちらにしても、購入金額10%相当の楽天スーパーポイントをあげる、Kobo に移行するなら 40% 分にしてやる、といった楽天よりは遙かにマシです(あちらは当初 Raboo は Kobo に移行統合するとか言ってたのにも関わらず、でしたからねぇ)。

ただ、楽天が Raboo を潰した時は自社戦略の勝手な都合(としか見えないもの)でしたが、エルパカBOOKS は純粋な電子書籍撤退です。個人的には

電子書籍ストア淘汰(撤退)の時代が始まったかな…


という印象でした。



今回の「エルパカBOOKS」のサービス終了は年末に発表されていたのですが、年始になってから大手ウェブメディアが取り上げて、そこから掲示板だの Twitter だのを経由し、まとめサイトで更に拡散…といったタイムラグをもって広まっていました。

エルパカBOOKS、電子書籍配信サービス終了へ――Pontaポイントで返金 - ITmedia eBook USER

おおよそ見受けられる反応は
  • これだから電子書籍は怖い、買えない
  • こういった事態を考えると、Kindle (Amazon) にしておくのが無難かな

こういったモノ。至極当然。

購入先ストアが潰れたら読めなくなる電子書籍は怖い


電子書籍の購入冊数が千冊を超えている私でも、そう思います。

一昨年後半あたりから品揃えも徐々に充実してきて、その利便性や価格ゆえに買いまくるようになったけれども(自炊は手間暇かかって面倒だしねぇ)、電子書籍ストアが潰れたら払ったお金がドブ捨て状態になるリスクに対して慣らされることはありません。

そしてまた、

これからも電子書籍ストアは潰れていく


であろうことは想像に難くないでしょう。

現在の大手電子書籍ストアの多くは 2010年秋から2011年初頭にかけて設立されたところが多いが、その後も様々な電子書籍ストアが生まれ、異業種からの参入も増えました。

オンラインストアの取扱商品を増やすにあたって電子書籍も…といったように参入してきたところは、投資および維持に対する売り上げ、利益が出なくて、とっとと撤退するところがここ数年で幾つも出てきても不思議ではありません。

行きつけの本屋が幾つかあるのとは異なり、電子書籍ストアでは幾つものストアを使うというのは使い勝手が悪くなります(4つのストアを使っている私は正直限界)。音楽配信同様、ある程度のストア依存性があると感じますから、元々ニッチに特化しているストア以外の、ユーザー数の少ないストアは潰れていくしかないと思っています。


また、ある程度名の通った電子書籍ストアも現在どれだけあるでしょうか。BookLive!、BOOK☆WALKER、eBookJapan、Kobo、GARAPAGOS、honto、Reader Store、紀伊國屋、そして忘れてはならないのが au ブックパス、NTTドコモ dブックなどの携帯キャリアの電子書籍ストア。

他にも老舗のデジタル書籍、DL-market、WOOK、個人出版で有名なパブー…その他私が知らない、忘れている電子書籍ストアも多くあるでしょう。

さて、

これだけ多くの電子書籍ストアが全て十年後、二十年後に生き残っていけるのか?


どう考えても無理。電子書籍ストアは巷の本屋ではありません。売っているのは本でも、店舗形態としては真性のネットショップです。

ネットの世界は常に寡占化、一強数弱あとはニッチ専門か撤退


の歴史があり、電子書籍ストアもそれは避けられない流れでしょう。

今はどこも「将来の利益のための投資」「ユーザー数を集めないことには生き残っていけない」ということでの競争が起きているわけですが、どちらにしても十年後、さらにその先に用意されている椅子は(Kindle を除いて)数個レベルでしょう。

どこも先行投資できるお金には限りがあります。

体力が尽きたところ、戦略を描けなかったところから順に撤退


していくのは自明です。

「今後も電子書籍ストアは潰れていく」

その認識の下で買う覚悟もいるし、買ってもらおうという方は何らかの方策が必要です。となれば、
  • これだから電子書籍は怖い、買えない
  • こういった事態を考えると、Kindle (Amazon) にしておくのが無難かな

というのも尤もな話なわけです。



「電子書籍はストアが潰れたら読めなくなるから嫌」

そういう状況である限り、広く普及するのは難しいでしょう(それだけが理由ではないとしても)。音楽同様に DRM を解除するのが理想ですが、現状の出版業界や著作者がそれを容認するとは思えません。だとするならば、別の手段は必要。

「潰れる電子書籍ストアもある状況なら Amazon Kindle が安心だろうね」

国内の電子書籍ストア業者がその意識に勝つには、国内の電子書籍ストアが連携連合して統一した救済策(他ストアへの救済移行など)、何らかの担保を用意しておく必要があるのではないかと思います。

一部には「読ませてやってる」的なことを言う人もいますし(著作者にもいる)、電子書籍の「読むことができるだけの契約」をかざして仕方ないことだと言う人もいますが、結局それは Amazon 独占化を進めるだけでしょう。

電子書籍ストアや出版社の中の人で電子書籍に前向きなことを語る人はいますが、配信数がある程度整いつつあり、整備されていく環境もできてきた今、次の段階として、これから一番の課題は「買った本が読めなくなる」ことをいかに無くしていくか、ではないかと考えます。

もちろん、一介のド素人が感じる、考えていることなど業界の人なら既に十分に検討しているでしょうが、現実のものとならなければ意味はありません。

国内における電子書籍ストアのスタートアップ(黎明期)は終わり、淘汰の時代が始まる。

ならば、そういった状況に応じた仕組みがないと、いずれ大きな問題となってネガティブに波及しかねません。出版社や電子処せストアが電子書籍に未来があると考えるならば、できるだけ早く用意すべきでしょう。


個人的には、Kindle ストアはメインの一つでも購入冊数は国内電子書籍ストアの方が多いため、「買った本が読めなくなる」リスクが減れば嬉しいですし、そうなれば安心して(使い勝手の悪い)Kindle ストアの依存度を下げることができます。

しかし現時点では、やはり、ある程度は Kindle ストアこそが担保という気がしますし、他人に電子書籍を安易に薦めることはできませんし、将来を考えると Kindle ストア以外を積極的に薦めるのも躊躇われるのが本音です。


角川文庫の電子書籍表紙の簡素化に思う徒然