まず、少し長い前置きから。

今のミラーレス機隆盛に繋がる始まりだったとも言えるマイクロフォーサーズ初号機、パナソニック DMC-G1。“女流一眼” というキャッチコピーとともに大々的に発表された時には一笑に付してスルーだったのですが、なぜか発売直後に購入したのが、今から5年前の 2008年秋。

何を思って買ったのか今にしては全く思い出せなかったのですが、過去を掘ってみると当時の記事タイトルが「疑問は自分で調べるしかない。だから買った DMC-G1」。

そして、そこに書かれた、自身で買って使ってみて調べたい疑問というのも

コントラスト式 AF だけど位相差 AF に負けないくらい速いとか、そんなことぬかしてんなら、少しくらい動体撮影に使えるんだろうな?


という内容。ミラーレス機初号機から今までやっていることは全く変わらない進歩のなさ(^_^;)。まぁ十代の頃から全く進歩がないのは自覚してますが… (-_-;)

動体撮影といっても、スポーツ撮り(私の場合はプロサッカーやアメフト)がキチンとできるミラーレス機は無理と諦めているので(AF というよりファインダー的な意味で)、私がミラーレス機に求めているのは

民間旅客機ならキッチリ撮れるくらいのミラーレス機が欲しい


ということ。

飛行機といっても戦闘機と民間旅客機では(離着陸時付近の)速度が全く違い、戦闘機撮りはスポーツ撮りと大差ないので、ミラーレス機で撮れて欲しいと思うのは民間旅客機。

飛行機を本気で撮るなら近場でも遠征でも一眼レフを持っていくわけですが、そうではない、旅のついで的な時にも少しくらい飛行機を撮りたい、撮れて欲しい、と思うわけです。

JAL's A300-600R@RJEC/AKJ of past days 1
(こんな写真が重い機材ではなく軽量小型なミラーレス機で撮れるはず…
by EOS 1D Mark III + EF 100-400mm f/4.5-5.6L IS USM)


正直言えば、オリンパス OM-D、特に最新の E-M1 なら随分とその理想に近くなると思っていますが、なんとなく「OM-D に手を出すのは全部回ったあとの最後の手段」という感じなのですよね(^_^;)

また、マイクロフォーサーズは三度手を出して三度手放しているので、次はどうしても慎重になりますし、それに画質的には富士フイルム機の方が(善し悪しは別として)ずっと好みです。

(Nikon 1 は動体撮影能力がミラーレス機の中では随一で手放せないですが、画質的に厳しいところがありますから今後次第。せめて Cybershot RX100 程度のセンサーになれば随分違うのですが)

いずれにせよ、いま自分にとってミラーレス機のファーストチョイスは富士フイルム Xマウント機であり、X-E2。

画質に惚れたカメラで、このまま飛行機くらいは撮れたら良いのになぁ


と思うわけです。富士フイルム機はハイライトが粘るので、飛行機写真に向く画質でもありますしね。

富士フイルムが画質最重視で AF 速度の優先順位が低いだの何だの言ったところで、直線的かつゆっくりの旅客機なら動体撮影の中でも難易度は高くないから追えるはず、追えるようになるはず。そう思っています。

ミラーレス初号機 DMC-G1 から 5年。動体撮影能力を除いては、過去幾つも手にしてきたミラーレス機で最も満足度が高いと感じている X-E2 ですが、コンティニュアスAF (AF-C) だけはミラーレス機の歩んでいた5年の半ばを歩んでいると言って良いのではないかと思います。


X-E2 Test Shot (33)
(X-E2 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS)


X-E2 購入から一ヶ月。この間撮影した五千枚以上の写真のうち、半分近くは X-E2 でようやく真っ当な実装になった コンティニュアスAF (AF-C) の試し撮りがてらの飛行機撮影でした。

最初に自分なりの結論を言っておくと、

X-E1 の AF-C は、ほぼ100% どうにもならないレベルだったが
X-E2 では「当たるも八卦当たらぬも八卦」レベルに(大幅)改善


されています。なお、本記事における X-E2 は全て日中の十分明るい条件でハイパフォーマンス・モード有効時の話です。

「当たるも八卦当たらぬも八卦」で大幅改善、というのもおかしな話ですが、従来機が酷すぎたので、これが事実です。比喩の使い方が間違ってもいるのはこの際置いといてもらって、率直な印象はそんな感じ。

褒めてるのか貶してるのか判りませんが、

一応褒めているけれど、まだまだ、という意味も込めて


ですね。

少なくともサッカー(Jリーグ)を撮ってみた時は、予想どおり論外のレベルでした。小さな子供の遊びサッカーならともかく、前述のとおりミラーレス機にスポーツ撮影まで望むべくもありません(一応確認したかった)。

そして最初に書いたように飛行機(民間旅客機)撮影を元に AF-C の印象を述べていくわけですが、過去記事でも拙い AF-C 作例を載せて撮れそうな雰囲気は出してきたものの、

X-E2 Test Shot (56)

X-E2 Test Shot (44)

X-E2 Test Shot (39)
(ともに X-E2 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS)


といった写真は、ぶっちゃけ「当たるも八卦当たらぬも八卦」で当たった写真です。一連の動きを連続して撮っていて、前後写真の中からの当たり写真です(若干甘めの写真含めて)。

X-E2 の場合、AF-C でも合焦までは位相差AF を使うので合焦速度そのものは悪くありません。ハイパフォーマンス・モード有効時ならば食いつきは結構良い感じです。

が、問題は、合焦したあとの追従していく時。

X-E2 では追従時にはコントラストAF へ切り替わりますし、動体予測もありませんから、AF の挙動自体が合焦位置を探しながら追従していくコントラストAF らしい AF-C になり、合ったり合わなかったり、になります。

コントラストAF で追従しているために一度デフォーカスすると戻りはかなり遅く、デフォーカス状態から帰ってこないこともしばしばあります。すぐレリーズから指を離して戻して位相差AF でフォーカスし直してやる必要がありますが、これもまぁ「当たるも八卦当たらぬも八卦」です(^_^;)


また、コントラストAF での AF-C らしい得意不得意は顕著にあるように思います。

実際の撮影例の連続写真を全部見せて例にすれば判りやすいのでしょうが、手間暇かけてもこんなことに興味を持つ人間がいるとも思えないので、要点だけを文字で説明します(面倒くさがり)。



まず、横から撮る構図は比較的 AF-C に優しいこともあって、高い確率でヒットします。若干甘いのも含めれば 7〜8割程度になるでしょうか。ヒコーキを横方向から撮る場合は「当たるも八卦当たらぬも八卦」はいささか失礼かな?という印象。

X-E2 Test Shot (10)

X-E2 Test Shot (40)

X-E2 Test Shot (42)
(全て X-E2 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS)


横撮りは被写体との距離の変動が少ないですし、ボディと窓・ロゴという AF が掴みやすい状態が続きますから、これでジャスピン率が低ければお話にならないわけですが、X-E1 の時はその話にならない偽物 AF-C、なんちゃって AF-C だったわけで。

ただし、X-E2 もハイパフォーマンス・モードを無効にしている時はジャスピン率が落ちて、ピント甘めの写真が多くなります。AF-C では顕著に違います。AF-C を使うならハイパフォーマンス・モード必須

また、夕暮れ以降の照度が低下した状態では一気に合焦速度、ヒット率が落ちます。これは AF方式に関わらずどのカメラでも同じですし、コントラストAF の AF-C では顕著でありますから現状は諦めざるを得ないですね。納得はしませんが。

X-E2 Test Shot (34)
(X-E2 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS)


5年前に DMC-G1 を購入した時に

千里川で真上を通過する飛行機を撮るのは無理でも、スカイパークから(やや遠目に撮る)離着陸する飛行機はちゃんと撮れて欲しい


と書いたのですが、千里川での撮影でも意外にしっかり撮れました。ただし、後述するように X-E2 の AF-C の欠点も露呈しますが…

まず、千里川というところがどういうところかと言えば、

X-E2 Test Shot (29)

X-E2 Test Shot (38)
(ともに X-E2 + XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS)


こんなところ。滑走路端に近い場所で、大型機の着陸だとかなり低い距離を飛び、接近戦になる。もちろん、それなりの速度で通過していくので、AF 速度が試される場所。

ちなみに北向きに

X-E2 Test Shot (30)
(X-E2 + XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS)


こういう場所なので、この季節は北風が吹き抜けて超寒い。公園とかではないので近くに寒さをしのげる場所も、トイレもないので長時間いるのは結構キツいけれど、それでもヒコーキ好きにとっては聖地の一つ。

ここは超広角から超望遠まで色々な画角で飛行機が撮れる場所ですが(魚眼を使った作品も)、AF の食いつき速度が比較的良好な X-E2 では被写界深度が深い広角レンズなら、しっかり高速シャッターで追えればチャンスはあります。

X-E2 Test Shot (57)

X-E2 Test Shot (28)
(ともに X-E2 + XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS)


という感じだったり、合焦後に AF-C で追いながら引きつけても

X-E2 Test Shot (58)

X-E2 Test Shot (43)
(ともに X-E2 + XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS)


といった感じで、まずまずフォーカスポイントの部分に合焦が追従していっています。

望遠レンズで引きつけても

X-E2 Test Shot (41)
(X-E2 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS)


こんな感じで何とかなることも少なくないです。まぁ、こんな天気の悪い日に撮ってもあまり意味はありませんが、試し撮りということで…(今月空港へ行けるタイミングはいつも天気が良くなく…)

ただ、接近戦では(状況によってジャスピン率が大きく変わりつつも)まだ何とかなるものの、

飛んでくる飛行機を正面/斜め正面から望遠レンズで撮る
飛行機写真で最も多いシチュエーションが苦手


という困ったちゃんだったりします。

X-E2 Test Shot (59) miss focused sample


↑こういう感じの正面でもピントが甘くなったまま追従、合焦し直しても甘いまま、というのが多いですし、

X-E2 Test Shot (61) miss focused sample


こういった、やってくる飛行機に対する遠目のショットもとにかくピントが甘いか、ピンぼけかの二択。少し日が傾いて、前照灯が目立つ時間帯になると、とにかくフォーカスロストしまくります。

X-E2 の AF-C は合焦後の追従時にはコントラストAF になりますから、大きくデフォーカスすると戻りが遅いため、ロストしやすいシーンで使うのは致命的です。

X-E2 Test Shot (60) out of focus


このくらい判りやすくデフォーカスしていると再度レリーズし直して合焦し直したり、場合によっては、いっそ MF で…と思いますが、ちょい甘のまま追従している、というのが一番厄介です。

例えば、以下の例ですが、この4つの写真の間もずっと連続で撮っているわけですが、ずっとピントがズレたままです。ところが、EVF では動体を追っている時は少しのピントのずれが非常に判りづらいのです。

X-E2 Test Shot (62) miss focused sample

X-E2 Test Shot (63) miss focused sample

X-E2 Test Shot (64) miss focused sample

X-E2 Test Shot (65) miss focused sample


1枚目のあたりでは被写体の動きも相対的に小さいので「コレはちょっと怪しい」と感じて合焦をやり直しましたし、2枚目と3枚目の途中でフォーカスエリアを動かして合焦し直したのですが、結局タッチダウン直前までピントはズレたまま。

この例だけでなく、日を変えてもこういった感じで捉えようとするとジャスピン確率はかなり低く、アレコレ設定や撮り方を変えながらでしたが、ダメダメ。

おまけに、現状の EVF は静止体相手に止まったまま撮影するならピントのズレもかなり認識できますが、動いているモノをカメラを動かしながら撮影すると被写体がチラついて細かいピントのずれが把握しづらいのも辛い。

X-E2 ではカメラを振ったり暗所での EVF の見え方は良くなったのですが、流し撮りをすると EVF 内の被写体が流れたりして、動きモノを撮る限りはまだまだ光学ファインダーの足下にも及びません。

そんなことは EVF機として当たり前と言えば当たり前ですけれども、まぁ何というか

X-E1 とは比較にならないくらい真っ当な AF-C になったけれど
5年前のミラーレス初号機 DMC-G1 の AF と比べちゃうレベルだなぁ


というのが正直な思い。思わず、この記事を書く前に 5年前に DMC-G1 で撮った飛行機写真をオリジナルのファイルで確認してしまいました。

もちろん、ヒットした時の画質は断然 X-E2 + XF55-200mm の方が良いし、高感度画質は比較にならない。AF も食いつきは位相差AF ハイブリッドな X-E2 の方が良いし、暗所性能も良いのだけど、AF-C の追従に限っては(X-E2 の方が良いにしても)5年の歳月で期待するほどの差はないなぁ、と。

(ミラーレス初号機 DMC-G1 は今でも安価に中古が売られているのを見ると買い直そうかな?と思うくらい。色収差の自動補正がないので RAW で撮って現像…という感じになりますが、300mm over のレンズも多いしね)

X-E2 Test Shot (66)
(離陸後上空を旋回する飛行機を撮ってもしっかり写るのは、さすが)


数日前にどうしても撮りたい飛行機がやってくるので撮影しに行った時は、ちょっと迷ったものの、結局 X-E2 は工夫で乗り切れない部分があると判断して、いつものデジタル一眼レフで確実に押さえに行きました。

X-E2 の画質は言わずもがな、XF55-200mm も良レンズなので(色々な意味で中途半端なところもあるが)、X-E2 で撮れるモノなら撮りたいなぁ…という気持ちは強かったのですが、やはりまだ信用以前、博打を打つにも確率は高くないようではキツいですね。

いつも使っている一眼レフなら、上記に出したような例はどれもこれも迷う、失敗するというのを想定しないレベルです。外しまくってたら、キヤノンへ即点検修理に出すレベル。それくらいカメラに信用が置けています。

それは動体撮影以外において、X-E2 を使って撮ってダメなら諦められる、自分の未熟さと思える、カメラやレンズのせいにはしない、そういう信用を X-E2 に置けるようになったのと同じです。

(良いレンズを使う、自分が納得するカメラを探すのは、自分に対する言い訳を排除するためでもあります。弱い人間ですから、つい物のせいにしてしまいますから、逃げ道は塞いでおかねばなりません ;-)

X-E2 Test Shot (47)


というわけで、

X-E2 というカメラの守備範囲外であることを重々承知の上


で書いてきた私なりの X-E2 に対する AF-C 評価。X-E1 のことを思えば、結構な前進で嬉しいのですが、客観的に見ればまだまだ他社現行機からは遅れています。

個人的な基準である「ミラーレス機でも飛行機(民間旅客機)をしっかり撮れるようになって欲しい」という点においても、癖はある程度把握して撮れないことはないけれど、やはり満足には程遠い。特に向かってくる飛行機への合焦率が低くては話にならないわけで。

また、X-E2 の場合
  • フォーカスエリア選択にシングルエリア AF しかなく、多点AF がないレベル
  • 動体予測制御がない
    (追記:動体予測AF-Cしているというプロカメラマンの記事が…これで?)
  • 連写が秒3コマでは遅いし、AF-C だと秒3コマも出ない
  • 親指 AF も被写体追従敏感度の設定もできない
  • グリップが糞

と思えば、できない子に無理強いさせて評価しているみたいで、ちょっと悪い気がしているのも事実ですが…(^_^;9

【2013/12/30 追記】X-E2 に動体予測AF が取り入れられている件は、富士フイルムの X Story サイトの記事で確認。失礼しました。しかし、何故 X-E2 公式ページの中に、あれだけ事細かく特徴やら X-E1 からの改善点を書いているのに、動体予測AF のことを書かないのか不思議でならない…【追記終わり】

それだけに、こういう記事を書きつつも

もっと AF-C を速度精度とも向上しろよ!とは言わない


ですね。富士フイルムさんのできる範囲で頑張っていただいて生暖かく見守っています、という感じでしょうか。

もちろん、AF-C 周りが改善されるに越したことはないですし、追従時にもコントラストAF ではなく位相差AF を使ってもらいたいと思いますが、私自身もそれを主目的に X-E2 を買ったわけではないので…

全部を適えるカメラはないですし、できるメーカーとできないメーカーがある部分はありますからね。

とか言いながら、年明けに発表されるっぽい防塵防滴一眼レフスタイルのボディが。動体撮影能力的に X-E2 から更にガッツリ改良されていたりしたら、心迷うことになりそうですが(笑)

X-E2 Test Shot (13)


というわけで、長々と X-E2 の AF-C について書いてきましたが、X-E2 そのものは気に入っていますし、得手不得手、ヒット率に色々あっても

当たれば良い写真


なだけに今後もトライして行くと思います。

現状は「EOS なら鼻歌交じりに撮ってもミスショットなんて出ないのになぁ」と思いながらの苦行で遊ぶことになりそうですが、趣味ならそれもまた愉し、です :-D


富士フイルム X-E2 ファーストインプレ【6】 〜メモリーカード書き込み速度は従来機よりどれだけ速くなったか?を検証
富士フイルム X-E2 ファーストインプレ【7】 〜良いとこ悪いとこ→良いとこ編
富士フイルム X-E2 ファーストインプレ【8】 〜良いとこ悪いとこ→ここは直して欲しい編
富士フイルム X-E2 ファーストインプレ【9】 〜数字先行の宣伝は痛いが AF-S なら何の不満もない


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(いま一番の万能ミラーレス機といえば、コレになるわけだが…)