過去4回のインプレ記事で散々書いているように X-E2 の良さは、使い勝手が平均レベルにまで改善されたこと

元々画質は X-Pro1/X-E1 時点で APS-C 最高クラス(個人的には最高と言い切ってもいいくらいだ ;-)。質感もデザインも一般受けとしては悪くなく、AF もアップデート後は静止体相手なら不便ないレベルになっていました。

となれば、イマイチどころではなかった操作感が真っ当になれば、そうそう不満が出るカメラではなくなったわけで、前回記事で「X-E2 は新機能より小さな改善の積み重ねによる使い勝手の違いが重要」と書いたのは、そのとおりです。

が、X-E2 で追加された新機能が無意味だというわけではありません。むしろ、便利に使っていて、恩恵に浴しています。

X-E1 から X-E2 で追加された主な機能と言えば、以下の通り(改善点ではなく新機能)。
  • 点像復元機能
  • インテリジェント・ハイブリッドAF(像面位相差AF)
  • Wi-Fi 機能
  • アドバンストフィルター
  • デジタルスプリットイメージ
  • 顔検出機能
  • スーパーiフラッシュ

点像復元機能やデジタルスプリットイメージを除けば、昨今のミラーレス機なら(名称は違えど)割と当たり前に装備している機能ばかりで追いついた感もありますが(点像復元機能は逆に他社が追いついてきた)、Xマウント機の足りない部分でした。

内容美人であっても、やはり一般受けにはパッと見が重要です。最後発で出てきて、本質的なポテンシャルは他社を凌駕する部分を持っていながらも全くキャッチーな存在になれなかったのは、決して宣伝力の差というだけではないでしょう。

そして私自身も、X-E1 にフィルター系機能や Wi-Fi 機能がなくて不便と思ったことはないものの(むしろ X-E1 にも X-E2 にもない HDR 機能がないのはたまに不便)、他社機で使っている経験もありますから、

「あれば便利」「あれば楽しい」

そう思っていましたし、X-E2 に追加されて正直ありがたいです。もはやデジタルカメラにおいて標準搭載レベルの機能だと思いますしね(最初は割と冷ややかに見てた方ですけど ^^;)。

X-E2 のフィルター系機能や Wi-Fi 機能は他社に比べて出色というわけではないものの、無難に使えるものになっていますし、使いやすくて気に入ってもいます。今回はそのあたりを中心に、X-E2 で追加された機能について諸々と。



一般層を狙った X-M1 で機能追加されたアドバンストフィルターは X-E2 にも搭載されていて、フィルターの種類は X-M1 と変わらず 8種類。数は比較的少なめで、どこのメーカーでもありそうな基本を押さえたフィルターを揃えたという感じです。

強いて言えば、パートカラーのバリエーションが多めなのと、あまりどぎつさを感じないエフェクトが特徴でしょうか。

X-E2_30EffectNormal
(通常撮影)

X-E2_31EffectDynamicTone
(ダイナミックトーン)

X-E2_32EffectHighKey
(ハイキー)

X-E2_33EffectSoftFocus
(ソフトフォーカス)

X-E2_34EffectPopColor
(ポップカラー)

X-E2_35EffectToyCamera
(トイカメラ)


この他にジオラマ風(上下ぼかしのみ)やローキー、パートカラー(レッド/オレンジ/イエロー/グリーン/ブルー/パープル)があります。なお、富士フイルムのフィルターは調整が一切できない仕様です。

使っていて少し気になったのは、パートカラーの色域感度は狭めのようで、下記のように赤では反応しないのは当然としてもオレンジがここまで反応しないのは意外でした。調整ができないので、抜きたい部分がベタな塗りでないと厳しそうです。

X-E2_36EffectPartColorBlue
(前写真を例にしたパートカラー/ブルー)

X-E2_37EffectPartColorOrange
(パートカラー/オレンジ。ぱっと見はオレンジで抜けそうだが、殆どなし)

X-E2_38EffectPartColorRed
(パートカラー/レッド。この写真では赤に反応しないのは当然かな)


ちなみに個人的に気に入っているのは、ダイナミックトーン。派手だけど行き過ぎない半歩手前な感じは、個人的に好みです。F900EXR にもありましたが、階調が広い大型センサー機の方が断然生きますね。

X-E2 Test Shot (3)


また、X-E2 のアドバンストフィルターについては、ボタンカスタマイズにより

ワンタッチでアドバンストフィルターのオンオフが可能


なのは、ものすごーく気に入っています。

さらにアドバンストフィルターに切り替えた際、左ボタンから即座にフィルターの種類を変えられるのも良いです。ここまでフィルター系撮影の使い勝手が良いと、ちょくちょく使いたくなりますね(GR もワンタッチ切り替えやブラケット撮影ができるので便利に使っています)。

X-E2 では 4つのボタンがカスタマイズできるので、今はアドバンストフィルターのオンオフに1つ割り当ててますが(そのうち飽きて外すと思うが ^^;)、こういう機能に割り当てていくと、どうしてもカスタマイズ数は足りなくなり、シャッター速度に使われてるけど(好きじゃない)左右ボタンもカスタマイズさせて欲しいところです。

X-E2 Test Shot (16)


昨今のミラーレス機では、この手のフィルターの数を競いあうように増やしたり、有料オプションで提供したりしていますので、数的には他社に見劣りするかも知れませんが、たくさんあると選択時に手間取って逆に使いづらくなるのは NEX で実感済み(もし、これ以上増やすならパートカラーの色選択は一階層奥にした方が良さげ)。

ただ、オリンパスやリコーのようにアーティスティックに使えるエフェクトに絞っているわけでもなく、ソニーやパナソニックのように数で勝負でもなく、カシオのように他にない表現で勝負でもない、ひとまず入れときました的な印象は否めないところ。

実際、幾つかのメーカーのカメラを使っていると、フィルターの種類にも各メーカーの特徴が良く表れていると感じます。

ソニーも単に数だけではなくリッチトーンモノクロなど素晴らしいエフェクトが幾つもありますし、本家とも言えるオリンパスは売りのフィルターをカメラ連携アプリにも搭載して魅力の一つにしています。無闇に数を増やせとは全く思いませんが、将来的には富士フイルムらしい方向性をフィルター機能にも持たせて欲しいなぁ、と思いますね。

まあ、フィルター機能以前にカスタム設定に入れ込める設定をもっと増やして、きちんと自分の設定を作れるようにしてくれよ、というのはありますけどね(^_^;)



昨今のデジタルカメラにおいて Wi-Fi 機能は、もはやあって当然と言える機能。富士フイルムもコンパクトの方では昨年から搭載していたものの、Xシリーズでは今年発売の X-M1 からようやく搭載。

X-E2 の Wi-Fi 機能は X-M1 やコンパクトデジカメと変わらないもので、私自身は以前の記事で紹介したように GR の補完的なコンパクトデジカメとして F900EXR を使っていますので、そっくりそのまま同じ操作方法で利用することができましたが、スマートフォン/タブレットとの連携は他社機と比べても難しくはないと思います。
FUJIFILM デジタルカメラ F900EXR 1/2型1600万画素CMOSIIセンサー 光学20倍ズーム F FX-F900EXR
FUJIFILM デジタルカメラ F900EXR ブラック

(手のひらに収まる 500mm 超望遠コンパクト。フィルムシミュレーションなどフジらしさは同じ)


スマートフォンへの転送時にはサイズ圧縮機能もありますので、必要に応じてサイズ変換して送れば複数枚の転送も時間がかからずに済みます。

唯一、富士フイルムの純正アプリは複数あって、マニュアルを見ずに AppStore / Google Play ストアへ突っ込んでいくと、一瞬どれをダウンロードすれば良いのか判りづらいのが難点でしょうか。通常は「FUJIFILM Camera Application」ですね。

iTunes の App Store で配信中の iPhone、iPod touch、iPad 用 FUJIFILM Camera Application
FUJIFILM Camera Application - Google Play の Android アプリ

もう一つの「FUJIFILM Photo Receiver」の方は写真受信専用アプリで友達に写真を送る用とのこと。ぶっちゃけ、いちいち専用アプリをインストールしてもらうより LINE かメールで送るんじゃね?と思いますが、オフラインで所有者以外に渡せる用意がなされているのは悪くない配慮。

X-E2_43WiFiStart


デジカメの Wi-Fi 転送機能というとスマートフォン/タブレット相手しか見えていないメーカーもありますが、

富士フイルムはパソコン (Win/Mac) への転送ソフトも用意されている


のも有り難いところ。

最近(ほんの少しだけ)流行のWindows タブレットにも対応できます。ただ、Mac版ソフトを使っている限りだと同じ OS を使っている複数の Mac できちんと動作したりしなかったりがあるなど、他社ソフトに比べて不安定風味なのが気になります…

私自身は Eye-Fi カードでパソコンへの Wi-Fi 転送を昔から利用していますが、意外と便利なものです。一日撮影した数十〜数百枚の写真を Wi-Fi 転送するのは RAW ファイルだと非現実的な時間がかかりますが、JPEG ならまだ何とかなります(バッテリーは馬鹿食いするけれど)。

富士フイルム機は良くも悪くも JPEG で撮ってこそ、RAW では色々な特長が失われるカメラですから、そういう意味では Wi-Fi 転送に向いているとも言えるかもしれません。また、ハンドグリップを付けていると、いちいち外さなくて済むので Wi-Fi でパソコンへ転送するのは便利です

ただ、Eye-Fi カードのようにデジカメの電源を入れれば勝手に無線LAN に繋いで転送を開始してくれるのと違って、富士フイルムの(&他の多くのカメラメーカーも)パソコン転送機能は送信開始するまでに手順がかかりすぎて、これならメモリーカードを抜いてカードリーダーに挿すのと手間が変わらないのが残念です。

◆富士フィルム NP-W126◆互換バッテリー1500mAh◆FinePix HS30EXR /FinePix HS50EXR/ X-Pro1/ X-E1/ X-M1
富士フィルム NP-W126◆互換バッテリー1500mAh

(Wi-Fi 機能を使うようになると、予備バッテリーはさらに+α 必要になりますね)


また、富士フイルムの場合、Wi-Fi 機能でできることはカメラ内写真の閲覧と転送、そしてスマートフォンの GPS を利用した簡易ジオタグ付加機能のみであり、

他社の Wi-Fi 機能と比べると一世代遅れてる


と感じます。写真を転送する機能だけの時代は終わっています。

家電メーカーのようにテレビへ転送できる機能を搭載しろとは言いませんが、リモートレリーズ機能くらいはあっても良いでしょう。常に携帯しているスマートフォンで簡易的なリモートレリーズができるのは結構便利です。

三脚にカメラ据えて構図だけ決めておいて、スマートフォンで各種設定を行いつつ、スマートフォン側のライブビューでタッチAFしてリモートレリーズを切る、ということをやっている友人を見ると、今後はこういうスタイルが理に適ってるな、と思ったりします。夜間だと特に。

まあレトロデザインな富士フイルム機には似合わないかも知れませんが、ボディ側がレトロな分だけ、スマートフォン連携では今の時代に即したやり方を取り入れるのもありだと、個人的には思ったりするのですけどね。

X-E2_44
(スマートフォンへの写真転送は Android ならほぼ何もしなくても簡単なのですけどね)


さらにいえば、富士フイルムの場合はカメラ内 Wi-Fi 機能での SNS 連携もありませんし、撮影した写真をカメラからクラウドサービスへ転送できる機能もありません。

キヤノンやソニーのように以前からサービスを持っているメーカーはもちろん、パナソニックのように新たにデジタルカメラとパソコンや家電との写真転送をネットを介してできる仕組みを作ったところもあります。

そして富士フイルムも「Fotonoma」「マイフォトボックス」という自社クラウド写真サービスがあるのですから

最低限「マイフォトボックス」サービスへの転送機能くらい付けるべき


ではないかと思います。スマートフォンに転送してから、パソコンに取り込んでから、という方法しかないのは時代遅れでしょう。そして、これは単純にユーザーの利便性だけの問題ではありません。

富士フイルムのカメラ購入者で「Fotonoma」「マイフォトボックス」といったサービスの認知度/利用度を思えば、カメラの Wi-Fi 機能からの写真保管という点からもマイフォトボックス利用者を増やし、マイフォトボックスの有料利用者比率の向上に繋げるべきではないかと思います。

手間暇なく撮影画像の保管場所として活用できるようになれば、パソコンやスマートフォンでアレコレやるのが苦手な人にはアピールできるはずで、無料アカウントの 1.5GB では足りなくなる人も増えるでしょう(現在の仕様を改善して、富士のカメラユーザーだけでもオリジナルファイルを保管できるようになれば特に)。

それに、富士フイルムの場合は早くからネットプリント事業にも力を入れているのですから

デジカメ→クラウド保管→ネットプリント


という流れをもっと早くから確立すべきだったと思うのです(もう他社がやってますが)。

そして、ユーザーが富士フイルムのサービスへ依存していくことで、次のカメラ(買い替え・買い増し)においても自社カメラを選択する確率を上げることに寄与できるはずです。個々の製品・サービスだけでなく、それらの有機的な結合に進む点において遅れていると感じます。

(富士フイルムのネットサービスはカメラのユーザー登録とログイン ID が別だったり、ネットサービスも機能毎に複数になっていて判りづらいので、サービス名も含めて一つに統合整理して、もっと簡潔な見せ方にした方が良いと思います。カメラの UI と一緒で旧態依然すぎます)

X-E2_46WiFiEnd


ま、個人的なことを言えば、パナソニックのように自社サービスにこだわらず幅広く、よく使われている写真サービスへの対応をしてもらえれば、特に Flickr へのアップロード機能があれば助かりますが、現状が現状ですので当面はそこまで望むべくもないなあ、とは思っています(^_^;)

いずれにしても、私個人の使い方を鑑みるに、Eye-Fi のクラウド転送機能を使って旅先の宿から(JPEG だけでも)ネットへバックアップできると、結構安心なものです。クラウドへのバックアップなら旅の道中でポータブル HDD を落とした/壊した、ポータブル SSD をなくした、なんてこともありません

(富士フイルムのマイフォトボックスは現状ソニーやキヤノンと同じく、アップロードした写真のオリジナルデーターが保管されるわけではないので、完全なバックアップには使えないですけどね)

その昔、重い一眼レフのシステムだけではなく、データーバックアップ用にパソコンと USB 接続のポータブル HDD を持って行っていたことを思えば良い時代になったものです。まぁ今でも CF 利用の一眼レフを持って行くとやっていることは変わりませんが…



さて、アドバンストフィルターと Wi-Fi 機能でゴタゴタと長く書きすぎましたので、以下略…ではなく、簡単に。

X-E2 で追加された機能のうち目玉機能の一つである「点像復元機能」については、以前の記事でも書いたように、普段そう気になるわけでもありません。絞らなければ効果の出にくいものですし、パッと見で凄く違う、なんてこともありません。

ただ、絞って撮った写真を等倍で見ると、X-E2 の方が細部が若干スッキリしている印象はあります。まぁ多くの場合は比べなきゃ判らないレベルで、X-E1 から大きなアドバンテージがあるかというと微妙な気もします。

X-E2_40F16Shot_E1
(X-E1 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS / F16)

X-E2_39F16Shot_E2
(X-E2 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS / F16)


これを等倍切り出ししてみると…

X-E2_42F16ShotTrim_E1
(X-E1 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS / F16)

X-E2_41F16ShotTrim_E2
(X-E2 + XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS / F16)


若干 X-E2 の方が良いなぁ、とは思いますし、この例が相応しいかどうかも問題ありますが、どちらにせよ私の使い方、レベルでは「あったら嬉しい補助機能」という感じです。



X100S で導入された「デジタルスプリットイメージ」機能も X-E2 では搭載され、購入前は結構使ってみたかった機能です。



普段 XF レンズで MF を使う時は AF-L ボタンで AF してから拡大機能でピントを追い込んでいくことが主なので、デジタルスプリットイメージもピーキング機能も使わないのですが(富士機のピーキング機能は使いづらい)、

マウントアダプター経由の MF レンズで速写するには便利だなぁ


と感じています。速写じゃなくても、MF である程度フォーカスを素早く合わせるのにはピッタリの良い機能です。

マウントアダプター経由で MF レンズを使うことを当初から想定している Xマウント機らしい、富士フイルムらしい機能で、付加機能とはいえ、これは良いですね。

まぁ普段はあまり使わないのですけど、あって愉しい機能の一つには間違いありません。

X-E2_48
(重いデカい XF55-200 を持って行きたくない時、鞄に忍ばせておける
Voigtlaender APO-LANTHAR 90mm F3.5)


その他 X-E1 → X-E2 で追加された新機能と言えば、顔検出機能、スーパーiフラッシュでしょうか。このあたりは今さら、という感じで、顔検出機能なんて Wi-Fi やアドバンストフィルターと同じく、昨年の X-Pro1 / X-E1 の時点で搭載されていて然るべき機能とも言えるでしょう。

とまあ、偉そうなことを書いてきましたが、操作レスポンスや AF 同様、

付加機能も他社ミラーレス機に追いつきつつある


という感じです。最初は、遅まきながら追いついた、と書いたのですが、まだ半歩足りない気がします(^_^;)

富士フイルムも他社同様カメラ部門は厳しい状況でしょうから、なかなか付加機能、付加サービスにリソースは割けないと思いますが、この先はデジタルスプリットイメージのような独自の付加部分、自社サービスとの有機的な連携を考えてもらいたいと思います。

X100、X-Pro1 を出してきた頃のようにプレミアム、プレミアムと連呼してハイエンド層だけ狙うならデジタルカメラとしてのコアな部分だけに集中しても良いのでしょうけれど、X-M1 や X-A1 のように一般層に訴求しようと思うなら質実剛健だけではやっていけませんから、付加価値な部分でも富士らしさはあって然るべきじゃないかと感じます。


富士フイルム X-E2 ファーストインプレ【1】 〜X-E1 ユーザーの私が X-E2 を購入した唯一つの理由と、その結果
富士フイルム X-E2 ファーストインプレ【2】 〜X-E2 を買うにあたって気になった“次”機種
富士フイルム X-E2 ファーストインプレ【3】 〜発売前イベントで感じた印象と購入後の体感差
富士フイルム X-E2 ファーストインプレ【4】 〜尖りカメラが特長そのまま万人に勧められるカメラへ