先週の Nikon Df を最後に各社から発表された秋のデジタルカメラ新製品の波もすっかり落ち着いて、発表どころか年末商戦に向けた発売もとっくになされている状況ですが、一人完全に蚊帳の外状態だったキヤノンが、ようやく EOS M の後継機「EOS M2」を発表しました。

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キヤノン:ミラーレスカメラ“EOS M2”を発売 「ハイブリッド CMOS AF II」を搭載しAF性能が大幅に向上

純正 RAW 現像ソフトの内部にはその名があったものの、なかなか出てこずに年を越す噂もありましたが、さすがにそれはキヤノンマーケッティングが許さなかったのでしょう。ミラーレス機全盛のいま、年末商戦が “ホワイト Kiss” だけでは弾不足になるところでした。

で、ようやく出た EOS M2 の初代 EOS M からの進化、改善点といえば、

誰もが期待していた 70D のデュアルピクセル CMOS ではなく
従来の改良版「ハイブリッド CMOS AF II」採用で AF 高速化


したのと Wi-Fi 機能が追加されたことが大きな点。

【追記】初出時に内容の大きな勘違いがありましたので、訂正しました。大変失礼しました。

まぁでも EOS M は色々言われていたものの元々 AF 速度以外は(エントリークラスのミラーレス機として)さほど悪いものではなく、その最大の欠点が修正されるのは喜ばしいことでしょう。まぁ平凡と言えば平凡ですが。

ハイブリッド CMOS AF II 採用で、初代 EOS M の AF 高速化ファームウェア更新後と比べても 2.3倍(多点AF時)ということですから、公称値通りなら悪くない速さです。初代 EOS M では狭かった像面位相差 AF エリアが全面に近いところまで広がっていて使い勝手は随分上がっているでしょう。

その他、細かい改善点や変更点を列挙すると以下の通り。


  • 連写速度が 4.3→4.6コマ/秒と、気持ち程度速くなった

  • サーボ AF(AF-C)時に合焦するとフォーカス枠が青くなって合焦状況が判るようになった
    (コレは良い!他社も見習って欲しい。AF-C で合焦状況が判らないミラーレス機が多すぎる)

  • サイズと重量が 8% 削減と、気持ち程度小さく軽くなった

  • モードダイアルで簡単撮影モードと、P/Tv/Av/M の応用撮影モードが別になった
    (ただし、P/Tv/Av/M の選択は相変わらずメニューの中)

  • クリエイティブオートモードでの撮影時に、エフェクトあり/なし両方を撮影できるモードを追加

  • 背景のぼけ具合をより効果が判りやすくなる「ぼかしシミュレーション」機能の追加

  • 動画撮影時にジオラマ風エフェクトに対応し、デジタルズームも利用可能に

  • 映像エンジンは DIGIC 5 のまま

  • EOS M2 はボディ色がブラックとホワイトのみになった

  • EOS M2 ではパンケーキレンズ EF-M 22mm F2 STM だけとのレンズキットはなくなった代わりに、超広角ズームレンズ EF-M 11-22mm まで含めた EF-M 全レンズ入りトリプルレンズキットが新設された


まぁどれも随分と細かい改善・変更だけで、現像エンジンに新世代の DIGIC 6 が載ってないことも含めて

初代 EOS M の完成形マイナーチェンジ


という印象です。まるで、富士フイルム X-E1 → X-E2 と同じ。いやホントにね(複雑な気分)。

確かに初代から良くはなっているものの、従来 AF 速度が他社現行機に比べて遅かったので、ようやく他社並みになってきただけとも言えるし、Wi-Fi 搭載も今や当たり前レベルの機能。そういう意味では良くも悪くも

ようやく他社と肩を並べられるレベルになった(だけ)


と言えます。取り立てて悪くはないけれど、別段何も特徴も無いミラーレス機でありますから、まぁ宣伝力で売っていくキヤノンのパターンですかね。

おまけに

新しいレンズの発表はなし


であり、従来の標準ズームやフラッシュとのレンズキットやパンケーキレンズ EF-M 22mm も含めたダブルレンズキットだけでなく、超広角ズーム EF-M 11-22mm まで付けたトリプルレンズキットはフラッシュ、マウントアダプターも含めた EOS M 関連製品全部入り。

新鮮味に乏しく、相変わらずキヤノンはミラーレス・システムに手をかけるつもりがないんだねぇ、という印象が拭えない新製品発表であります。

まぁサイトやキャンペーンを見る限り、 “ホワイト Kiss” と同様、最近どこのメーカーも推している「女子カメラ」アピールで売ろうと言うことなのでしょう。個人的にはええ加減ウンザリですが…(女子カメラ系写真家は引っ張りだこだなぁ、と思いますが)

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初代 EOS-M をキヤノンから借りたり、友達のを使わせてもらった限り、画質はキヤノン APS-C 製品の中では上位だし、レンズも EF-M 22mm や 11-22mm は良いので、ちまたで言われるより悪くないのですが、如何せんキヤノンのやる気のなさが見え隠れするのが何とも…

EF マウントユーザー的にはサブで一つあっても良いなぁ、と思っているのですが、マウントアダプターは許せても私の場合は EVF 付きボディが出ないことにはどうにもなりません。現状では見込み薄でしょうね。

まぁ AF 速度を求めないのであれば、投げ売りされている初代 EOS M の、EF-M 22mm F2 STM とのレンズキットを買って、新型 M2 との差額で、写りの良い超広角ズームレンズ EF-M 11-22mm F4-5.6 を買うのもありだと思います。

Canon ミラーレス一眼カメラ EOS M
Canon ミラーレス一眼カメラ EOS M 22 STMレンズキット

(EOS M2 ではなくなった色を狙うのも悪くないかも…)


とにもかくにも、

今年のキヤノンはボディもレンズもやる気なし


でしたね。Kiss X7 や 70D は、それぞれ良さがあったものの、おおっ!と思えるのはエクステンダー内蔵の EF200-400mm F4 くらいだったような…(かなり偏りあり ^^;)

おかげで他社機にリソースを割くことはできましたが、さすがに来年は「さすが、キヤノン!」と思わせるものを出してもらいたいところです。EF マウントユーザーとしては切に願います。

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