連休が終わった直後に大型台風が近づいておりますが、三連休は行楽日和で楽しんだ人も多かったのだろうと思います。私も最後の日だけ軽くドライブへ出かけて、久しぶりに X-E1 を持ち出していました。

このところ、ミラーレス機を持っていこうと思っていても写真を撮りに行くのでなければ荷物の嵩張りを考えて、つい F900EXR にしてしまうことが多かったので、Nikon 1 も X-E1 も出番が減っていました(暑さのせいも大きかった)。

特に X-E1 は画質は良いのですけれど、望遠ズームのデカさ・重さは一眼レフの安価望遠レンズ以上ですし、正直画質以外は糞ったれな部分の多いカメラですので、F900EXR に安易に走っていた今年の夏でありました。

F900EXR_Sample48TochigiGreenStadium_358mm_EXR
(サッカー撮りは無理だけど、ガンバのアウェイ遠征応援時のスナップには重宝しまくり)


さて、前回記事まで改めて F900EXR の魅力、良さ、気に入った点を述べてきました。

安価に超望遠、スマートフォンでは決して撮ることのできない世界へ 〜改めて富士フイルム F900EXR【1】
コンパクト超望遠デジカメとして F900EXR を選んだ理由・前編 〜改めて富士フイルム F900EXR【2】
手のひら超望遠デジカメとして F900EXR を選んだ理由・後編 〜改めて富士フイルム F900EXR【3】

しかし、F900EXR も当然良いことばかりではありません。それどころか、

手のひら超望遠コンパクトデジカメであるゆえの無理


がきている部分もありますし、

富士フイルムのデジカメに共通する、どうしようもない糞仕様


もあります。まー、こんな仕様にしたヤツは頭おかしいんじゃないの?と何度でも言ってやりたくなる点もあります。

IT 系ライターの中には「ネットは悪口ばかり先行する。良い点より悪い点を書くのは簡単だ。」などと盛んに言っている人もいますが、良い点はハッキリ書いて、良くない点は触れなくはないけど上手くオブラートに包むのは確かに難しいと思います。

私はそんな高等技術はできませんので、良いと思う点も悪いと思う点も忌憚なく書かせていただきます :-)


ダメ出しする点、F900EXR の欠点として一番最初に触れておかなければならないのは

手のひらサイズに 20倍ズームレンズを押し込んだことによる画質的弊害


でしょう。

ハッキリ言えば、

画面中央部の画質はそれなりでも、周辺部はボロボロ


です。いくら技術が進んだところで物理法則は超えられません。

いくら撮像センサーサイズが小さいとは言え 500mm という超望遠域まで対応し、さらには 25mm から 500mm までの 20倍という高倍率ズームレンズは、手のひらサイズでなくとも厳しいレンズになるところをこのサイズに収めているのですからやむを得ません。

そのあたりは他メーカーの同等クラスのカメラでも同じで、あとは如何に誤魔化すか、付加価値で勝負するか、でしょう。

F900EXR_Sample31_MatsueHanto_60mm
(綺麗な海であるが、周辺部の木々や島の描写を見ると酷いもんです…)

F900EXR_Sample49KIXStarFlyer_74mm
(構図的に飛行機先端部を右端に持ってきたが、流れてしまってピンぼけのように orz)

F900EXR_Sample29_Windmill_25mm
(こんな構図なら周辺画質の悪さも目立たないですが、いつもそういうわけには行かず)


まぁ、このサイズにこれだけのズームレンズを押し込めれば仕方ないのは判っています。最初から判っていて買ったわけですから、この点について富士フイルムがどうこう言うつもりはないですけれども、

判ってて買ったけれど、撮った後に悲しくなる周辺画質


でもあります。高感度画質は連写重ね撮りモードなどで(条件によっては)改善可能ですけれど、こればっかりはどうしようもありませんからね。

コンパクトデジカメでも、センサーサイズが小さくてもレンズさえ良ければ素晴らしい描写を見せてくれるのは、各社ハイエンドコンパクトデジカメを見れば判るところですが、逆に言えば

サイズと利便性を優先すれば、画質は犠牲になる


のは道理であり、これについては自分がどう割り切るかであります。

(私の場合では画質優先なら画角は固定だけど GR、画角優先なら画質を犠牲にして F900EXR と割り切って、その組み合わせで使っている)

いずれにせよ、富士フイルムも頑張ってはいるのだろうけれど、画面周辺部の画質はどうしようもない、のは覚悟して購入・使用する必要があります。きちんとこの欠点を判って買うカメラです。



二つ目は

像面位相差 AF 採用は良いけれど
任意選択時のフォーカスエリアが中央一点固定


というのは、ちょっと酷いですね。AF/AE 個別のロックができないだけに、かなり使いづらい仕様です。

フォーカスエリア選択が自動の場合は中央一点ではなく多点フォーカスエリアですから、単に撮影者が任意にフォーカスエリアを選択させる時だけ中央一点固定と、機能を意図的に制限しているわけです。。一昔前の廉価機ならともかく、2013年に発売するカメラとしてはダメ出しせざるを得ません。

F900EXR_Sample46TochigiGreenStadium_500mm_EXR
(中央一点固定では、フォーカスロックする余裕のない被写体では構図が制限される…)


また、AF は暗所条件でなければキビキビと動いて AF 速度的なストレスはありませんが、

像面位相差AF だけどコンティニュアス AF はイマイチ


です。通常 AF に比べてかなり AF 精度が下がりますし、動体への追従もよくありません。

このことは富士フイルムだけではなく、像面位相差AF を採用しても動体相手の AF は結局メーカーの持つノウハウ次第であり、像面位相差AF 採用=動体に強いわけではない(メーカー次第)で、この F900EXR も決して動体相手に良いカメラではありません。

富士フイルムの AF 最速○○秒的なキャッチフレーズは X-E1 で寒い冗談でしかないことが判っていたので、元より期待していませんでしたが、富士フイルムの像面位相差AF に過大な期待は抱かない方がいいというのが、私の実感です(X100S を見ててもねぇ…)。



そして、これは X-E1 でも盛んに言っていることですが、

連写モードで撮影した写真ファイルは通常時とファイル名が変わり
連写撮影した写真の再生だけは一段階多くの手順が必要


という、全く意味不明の仕様。何度でも書くけど、富士フイルムのこの仕様を決めた開発者は頭がおかしい。おかしいんじゃねーの?ではなく、おかしい。

おかげで、通常撮影と連写撮影したファイルは撮影順にファイルが並ばないし、連写撮影したファイルを再生する時は通常再生画面から↓キーを押して一段階奥に行かねばならない。次の写真の再生もスムースに移動できない。ホント、百害あって一利ないキチガイ仕様である。

この仕様が続くような開発姿勢なら、いつか我慢に耐えかねて「富士フイルムのカメラは全部売却だ!」となるだろうと思う。それでも F900EXR は操作性という点で X-Pro1 / X-E1 / X-M1 よりはマシだから救いがあるけどねぇ(Xマウント機の操作性は狂ってる)。



酷いと言えば、バッテリー充電器も酷い。

富士フイルムは Xシリーズのカメラをプレミアム感のある高級機として売り出しているのだが、本体意外には端々にチープさがあって、バッテリー充電器も安物&使いづらく、高級という言葉が笑い死にするレベルですが、F900EXR は更に酷い。

F900EXR_04ACAdapter1
(F900EXR 付属の充電器はプラグ部分が別部品、コストだけ重視の国際対応)

F900EXR_05ACAdapter2
(無駄にデカいし、収納時、持ち運び時にプラグが邪魔になるし、最低の充電器)


今まで各社色々なデジタルカメラを使ってきましたし、カメラの分だけバッテリー充電器も使ってきましたが、

過去最低のバッテリー充電器の一つ


と言っても過言じゃないですね。旅行に持っていきたくないレベル。

せっかくカメラは小さくなっても、バッテリー充電器がこれではねぇ。なにせ、バッテリー充電器の使い勝手は、店頭でなかなか判らないだけに質が悪い。

そして富士フイルムの何が嫌らしいと言っても

別売りのバッテリー充電器はコンパクトかつプラグ折り畳み内蔵式


なんですよね、こちら ↓ の製品。



実売価格3千円少々で売られているわけですが、付属の充電器を最低レベルの物にして、ちゃんとした物が欲しければオプションを買えよ、というのが富士フイルムの姿勢なわけです。

キヤノンにしろ、パナソニックにしろ、ソニーにしろ、真っ当に売れているメーカーはそういったところも手を抜かない。なんで富士フイルムは充電器くらいでケチるのかねぇ、と思いますし、

充電器はカメラ同様、ユーザーが頻繁に使う物という意識に欠けている


わけです。充電器の使い勝手は意外と重要だと思うのですけどね。

Xマウント機の操作性もそうですが、どこか富士フイルムのカメラ開発陣の考え方は歪で、富士フイルムのカメラ製品は使っている人の視点が往々にして欠けていると思います。画質が素晴らしくても、それだけではねぇ…と感じます。



他にも、

  • デジタル水準器がない(超望遠では結構辛いかも)

  • スマートフォンへの写真転送は問題ないけど、パソコンへの Wi-Fi 転送が不安定
    (転送枚数が残っているのに転送が終了してしまう、パソコンによってはどうやっても転送できない場合がある)

  • 今どき、そろそろ USB 充電非対応は遅れてる


といったところも F900EXR の欠点、問題点だと思いますが、3ヶ月半使ってきて正直ちょっと感じるのは

見た目より分厚く、やっぱり普通のコンパクトより嵩張る


感じがあります。これは欠点ではないですが、もう一声という欲望の話です。

もちろん、従来の 20倍ズーム、500mm 域までカバーするコンパクトデジカメは「名前はコンパクトだけど、全然コンパクトじゃなくゴツい」カメラだったのが、ここ一年ほどで手のひらサイズに収まったわけで、そのこと自体が驚異であり、サイズに対して文句を言うのは間違っているとは思います。

F900EXR_18LensWide
(ワイド端撮影時)

F900EXR_19LensTele
(テレ端撮影時。ここまで伸びる)

F900EXR_17LensOff
(それがレンズ収納時は、ここに収まるのは凄い)


しかし、人間というのは贅沢なもので、コンパクトデジカメとして使っていると

意外とレンズ部分が出っ張っていて、普通のコンパクトデジカメみたいに隙間に入れるのは厳しいことも多いんだよなぁ

と思うことが度々あったのも事実。

F900EXR_16BodySide2
(こうしてみると一見グリップが張り出しているように見えるが…)

F900EXR_15BodySide1
(実際にはレンズ部が意外と出っ張っていて、微妙に嵩張ることも)

F900EXR_10Top
(上から見ると、レンズ部がかなり出っ張っているのが判る)

F900EXR_11Side
(横から見たところ。ボディも厚めだが、さらにレンズの出っ張りがある)

F900EXR_12Bottom
(下から見てもそう。ボディ厚があるわりには三脚穴は光軸上にない)


サイズ・重量を、同じく 25〜500mm 手のひらコンパクトデジカメのキヤノン PowerShot SX280HS、ソニー Cyber-Shot DSC-WX300 と比較してみると、

F900EXR105.1×61.0×36.0mm232g
PowerShot SX280HS106.4×62.8×32.6mm232g
Cyber-shot WX30096.0×54.9×25.7mm166g


となって、圧倒的に WX300 は薄いのが判ります。

「P/S/A/M モードもなければ、露出補正もメニューの中で操作性は最悪だけど、ソニーの DSC-WX300 にしておけば良かったかもなぁ」と思うことはしばしばあります。画質も F900EXR の方が良さげですが、一眼レフやミラーレス機と比べれば五十歩百歩とも言えますしね。

このあたりは購入時にも迷って使い勝手と(多少の)画質を選んで F900EXR にしたわけですが、どっちを選んでいても「あっちは…」と言っていたと思いますから、割り切らねば仕方ありません。

一眼+超望遠レンズを持って出るのと比較するのは勿論、ミラーレス機+望遠レンズと比べても圧倒的にコンパクトで、GR とペアを成す旅カメラとしてはまずまず満足しているわけですし、現状このサイズで欠点というつもりはありませんが、周辺画質の悪さと他メーカーとの比較を考えれば、もう少し頑張ってね、という気はします。

F900EXR_Sample24_GambaGifu_295mm
(大勢の人がカメラを向ける先は、コーナーキックを蹴るヤットこと遠藤保仁。
J2 アウェイ遠征先では見慣れた光景。295mm 相当)


というわけで、長々と書いてきましたが、F900EXR も基本的には気に入っていますが、欠点・問題点と思うところは幾つかあります。

それでも APS-C センサー搭載ながらも単焦点レンズカメラ GR の良きペアとして、画角を補うコンパクトデジカメとして愛用してまくりですし

買って良かった


と心から思っています。

まぁ、富士フイルムのカメラに共通する問題点はあるものの、Xマウント機と違って使っていてストレスを溜めることは少なく、比較的軽快に、心地よく使えるので満足しています。

今週は各社から様々な注目すべきデジタルカメラが発表されますが、富士フイルム機も果たして頭のおかしな仕様が直っているのかどうか、そこらへんは注目したいと思っています。


安価に超望遠、スマートフォンでは決して撮ることのできない世界へ 〜改めて富士フイルム F900EXR【1】
コンパクト超望遠デジカメとして F900EXR を選んだ理由・前編 〜改めて富士フイルム F900EXR【2】
手のひら超望遠デジカメとして F900EXR を選んだ理由・後編 〜改めて富士フイルム F900EXR【3】