前回記事では手のひら超望遠コンパクトデジカメとして F900EXR を選んだ理由の第一として、

  • 富士フイルムならではの発色

  • (周辺画質は糞だけど中央部の)画質

  • EXR モード/連写重ね撮り撮影の出来が良い


といった点を挙げました。

F900EXR に惹かれた理由はそれだけではなく、他にもあります。

  1. 廉価コンパクトデジカメの割には納得の操作性

  2. P/S/A/M モードと RAW 撮影機能

  3. スマートフォン/パソコンと連携可能な Wi-Fi 機能


今回は、これらの長所(と思う点)を述べておきます。



(1)廉価コンパクトデジカメの割には納得の操作性


画質同様、諸手を挙げて「操作性が良い」とまでは言えませんが、ハイエンドコンパクトデジカメのようにダイアルやボタンが多くあるわけでもない限られた範囲で良くやってる、良くできている、と思いますし、

モードダイアルや露出補正も標準的な操作な上、
カスタム可能なファンクションボタンで撮影設定変更が比較的素早くできる


ことは F900EXR の長所の一つかと思います。

廉価機ではボタンやダイアルの数が少ないこともあって、あらゆる操作をメニューに押し込んでしまう機種がある中で(特にソニーの廉価機)、まずまずよくできた操作体系と感じます。

F900EXR_07
(小ぶりながらグリップがある。超望遠撮影には重要なポイント)

F900EXR_08ModeDial
(P/S/A/M のあるモードダイアルは斜めになっていて使いやすい)

F900EXR_09ButtonAndDial
(背面のダイアル&ボタン。一般的なダイアル&4方向ボタンと周囲に4ボタン。
録画ボタンは少しスイッチ形状が違っていて、誤操作は起きくい)

F900EXR_Menu04
(F900EXR の特徴でもある E-Fn ファンクションボタンを使うことで
合計6つの機能ショートカットが割り当て可能。これは便利)

F900EXR_Menu05
(ファンクションボタンはカスタマイズできるのがポイント)


E-Fn ファンクションボタンを押すと、上下左右4ボタンとダイアル上側の2ボタンに各種撮影設定の機能が割り当てることができ、設定変更のためにいちいちメニューを出して辿る必要がなくなります。

ISO感度、画像サイズ、画像モード、測光方式、フォーカス設定、ダイナミックレンジ、フィルムシミュレーションなど9項目から自分の好きな6項目をボタンに割り当てることが可能です。撮影時に頻繁に使う設定が多いので、これらがメニューを辿らずに済むのはかなり便利。

ソニーの WX300 はコンパクトなサイズと軽さが大変魅力だったのですが、P/S/A/M モードがないばかりか、露出補正すらメニューを辿らないとできないというのは、カメラお任せ以外で撮りたい人には選択できないカメラでした。

F900EXR_Menu06
(E-Fn ボタンを押すと各ボタンに割り当てた機能がアイコン表示される)


F900EXR の露出補正方法は「上ボタンで露出補正モードに入る→背面ダイアルで露出補正を行う」というコンパクトデジカメではよくあるタイプ(ボタンは違うがキヤノンのコンパクトと同じ)ですが、特にやりづらいこともなく普通に操作できます。

極小センサーで白飛びしやすい普及クラスのコンパクトデジカメですので露出を制御したいことも多いですし、いくらオート撮影機能が進んでいるとはいえ、自分で意図した写真を撮るには露出を自分でコントロールしたいことも多いですから、露出補正のしやすさは譲れません。

以上のことから

廉価クラスながら比較的コントローラブルなカメラ


として、F900EXR を選んだわけです。

使い慣れた/良くできた PowerShot の操作体系が使える SX280HS でも良かったのですが、カスタマイズ可能な E-Fn ファンクションボタンは購入の決め手の一つになりましたね。




(2)P/S/A/M モードと RAW 撮影機能


GR の補完的コンパクトデジカメとして“手のひら超望遠コンパクト”を買うことを決めた際、購入するカメラの選定条件の一つに「P/S/A/M モードがあること」があったことは以前の記事で述べました。

P/S/A/M の各露出モードのうち、私が実際に使うのは P(プログラムAE)と S(シャッター速度優先AE)の2つ。

富士フイルムのインテリジェント・オート撮影(EXR モード)では露出補正もブラケット撮影もできませんから、露出補正付きのお手軽撮影をするためにプログラムAE は必須です。

カメラにお任せの EXR モードはかなり良くできているのですが、前回記事でも書いたように露出がやや明るく振れる傾向に有り、白飛び多めになるシーンもあるので使い分けています。

F900EXR_Sample33_SunsetWindmills_133mm
(朝夕のシーンで露出補正は必需品)


また、普及型コンパクトデジカメの極小センサーでは A(絞り優先AE)は殆ど無意味ですし、M(マニュアル露出)を使うことも希ですが、一眼でもコンパクトでも動くモノを撮りたい私としてはシャッター速度優先AE は必須。

単にシャッター速度を上げるだけではなく、スローシャッター流し撮りもしたいですから、シーンモードのスポーツモードだけでは物足りないわけです。

多くのシーンでは EXR モード(インテリジェント・オート)とプログラムAE があれば事足りると言っても

絞りの開閉があまり意味のない廉価コンパクトでも、シャッター速度はコントロールしたい


ので、P/S/A/M モードがあるのは条件の一つになりました(むかし、P/A/M はあっても S のない廉価コンパクトデジカメを作るメーカーがあって、何考えてるんだろう…と思ってましたけどねぇ)。

F900EXR_Sample25_AirplaneWindow_25mm
(車窓機窓を撮るにもシャッター速度の設定は必須。機窓には少々辛い画質レベルだが…)


同じことは RAW 撮影の可否にも言えます。所詮、廉価コンパクトデジカメ、超高倍率ズームのコンパクトですから、RAW で撮ったからといってレタッチに耐えうる画質的余裕というのは少なく、RAW から頑張っても労多くして功少なしかもしれません。

しかし、

99% JPEG で撮っているけれど、RAW で撮れる安心感


というのはあったりします。保険といっても良いでしょうか。本当に上手い人なら必要ないかも知れませんが、下手くそだけに保険はかけておきたいと思うものです。

昨今のデジカメはよくできているので、RAW 現像を頑張ってみてもカメラ内生成の JPEG が結局一番良かったりすることも多くなりました。今や「カメラ内 JPEG 生成より RAW で撮ってレタッチした方が良い」というのは古くさい考え方だと百も承知です。

それでも、これは大切に撮っておきたい、という場面では RAW も合わせて撮っておきたい、と思います。ノイズリダクションのように、時代とともにより高性能な処理ができるようになって、昔よりよく見える写真を現像することも可能になるのが RAW でもあります。

RAW+JPEG で撮りながら結果的に殆ど RAW からレタッチしないままであったとしても、単なる安心感であったとしても、RAW で撮れるというのは購入ポイントの一つでした。




(3)スマートフォン/パソコンと連携可能な Wi-Fi 機能


今どき珍しくもなくなってきたデジタルカメラの Wi-Fi 機能。キヤノンはコンパクト全機種を含む全てのデジカメに搭載する勢いで標準機能化しつつありますし、他のメーカーも上から下まで多くのデジタルカメラに Wi-Fi 機能を搭載しています。

F900EXR も Wi-Fi 機能内蔵ですが、3ヶ月強使ってきて

iOS / Android スマートフォン・タブレットへの写真転送は簡単かつ安定


していると感じます。

メーカーの中には端末とカメラの接続が不安定でイラッとするようなところもありましたが、F900EXR の場合は iOS / Android 端末ともサクッと接続して、簡単かついつも安定して写真を転送することができています。

F900EXR_WiFi24
(カメラ側は再生メニュー→ワイヤレス送信から送りたい写真を選択する)

F900EXR_WiFi25
(写真選択が終わったら、この画面に。次はスマホ・タブレットのアプリへ)

F900EXR_WiFi21SmartPhoneStart
(富士フイルムのスマートフォン用アプリの起動画面で画像受信をタップ)

F900EXR_WiFi22
(接続するをタップすると、Android 端末は自動的に無線LAN が切り替わり
勝手にカメラと接続してくれるが、iOS端末は自分で無線LAN を切り替える)

F900EXR_WiFi26
(Android 端末は無線LAN が自動的に切り替わり、カメラをサーチ)

F900EXR_WiFi27
(この画面になったら、次はまたカメラの背面液晶を見る)

F900EXR_WiFi28
(カメラの背面液晶に送信しても良いかの確認が出てくるので OK)

F900EXR_WiFi29
(するとスマートフォンへ写真転送される。JPEG 数枚ならあっという間)


こう書くと手間のように見えますが、実際は難しくありませんし、Android 端末なら手間もかかりません(この手の無線LAN 切り替えが必要な処理は iPhone / iPad より Android が断然楽)。

最初は手間取ったとしても、何度かやっていればすぐに慣れると思います。キヤノンやソニーもこのあたりの手順は良くできていると思いますが、富士フイルムも負けてはいません。Eye-Fi mobi や FlashAir より楽だと思いますね。

F900EXR_WiFi32
(複数画像転送を行う時のスマートフォンとカメラの操作画面)

F900EXR_WiFi33
(カメラ/スマートフォン両者から相手をサーチ中)

F900EXR_WiFi34
(転送中はスマートフォンにも受信完了した画像が次々と表示される)



Wi-Fi 機能が、コンパクトデジカメがスマートフォンに押されまくっている中、スマートフォンの周辺機器として生き延びようという思惑で搭載されていることもあるせいか、iOS/Android との連携しか考えていないメーカーもあるようですが、

富士フイルムはスマホ/タブレットだけでなくパソコンへの写真転送も可能


です。iOS / Android 端末だけしか対応してなかったら、Windows タブレットを持ってる人間はどうなるんだよ…と思うのですが、富士フイルムの場合は心配要りません。Windows も Mac も対応されています。

ただ、正直言って、パソコンへ写真転送を行うための初期設定手順は少々手間です。最初だけと思えば仕方ないでしょうが、パソコンに専用ソフトをインストールしたのち、ペアリングのような初期設定も行う必要があります。

F900EXR_WiFi02
(パソコンにインストールしたソフトとカメラ両方を連携しながらの初期設定作業)

F900EXR_WiFi04
(パソコンの方を待ち受け状態みたいにしてから、カメラ側で初期設定していく)

F900EXR_WiFi05
(パソコンへの写真転送は既存無線LAN を通して行うので、無線LAN の設定から…)

F900EXR_WiFi08
(無線LAN に接続できたら転送先のパソコンをサーチ…)

F900EXR_WiFi09
(見つけたらカメラ側に転送先パソコンを登録する。複数登録可能)

F900EXR_WiFi11
(カメラの転送先登録が終わったら、今度はパソコン側で確認)


写真転送先が複数登録でき、転送時に転送先を選べるのは良いですね。Eye-Fi のように転送先の登録が一つで、切り替えるのが面倒ということもありません。

その分、パソコンへの写真転送は、Eye-Fi のように何もしないで帰宅後カメラの電源を入れるだけでパソコンに全撮影写真が転送されるというわけではなく、転送前に若干の手順が必要です。

F900EXR_WiFi12TransferStart
(メニューの「ワイヤレス送信」はスマートフォン用、パソコンへの転送は「PC保存」)

F900EXR_WiFi13
(転送先登録が複数ある場合は、最初に転送先パソコンを選ぶ)

F900EXR_WiFi14
(転送先選択後、無線LAN に接続しに行き…)

F900EXR_WiFi15
(無線LAN に接続したら転送先パソコンを探しに行き…)

F900EXR_WiFi16
(見つけたら転送開始の最終確認)

F900EXR_WiFi17
(転送の最初にパソコンへ未転送の写真をチェックして…)

F900EXR_WiFi18
(その後転送。どれくらいの枚数を転送し、現在何枚目かはカメラ背面液晶に表示される)

F900EXR_WiFi19
(パソコン側でも転送中、何枚目かの表示はされる)


転送が始まってしまえば放っておけばいいのですが、融通が利く分、若干手間です。もっとも初期設定の面倒さに比べれば簡単なことですし、メモリーカードの抜き差しを行わず、帰宅後にちょいちょいと転送をかけて放っておけば良いだけなので楽です。

(個人的には Eye-Fi カードにしても、Wi-Fi 機能付きデジカメにしても、スマートフォンへの転送よりパソコンへの全画像転送の方が使う機会は多い)

ただ、はっきり言うと

F900EXR のパソコンへの写真転送は、スマートフォンへの転送ほど安定していない


ですね。数十枚以上の転送していると、途中で転送が終わってしまっていることもあります(やり直すと問題なく終わるので、どうにも原因が掴めません…)。

また、同じ OS バージョンの Mac なのに、方や問題なく転送できるのに、方や転送開始とともに落ちまくり、なんてことがあります。富士フイルムの写真転送が落ちまくりの機種は OS クリーンインストール直後にも試したのですが、やはりどうにも転送できず、お手上げ。同じ OS バージョンでも、もう一台の方はサクサクと転送できるのですけどねぇ。

スマートフォンへの転送は簡単かつ安定しているのですが、パソコンへの転送、特に Mac への転送はちょっと不安定なのが玉に瑕です。

F900EXR_06BodyStart


以上、前回今回と F900EXR を購入する決め手になった理由を述べてきました。

あと、もう一つ言うならば、

安い


ということもあります。以前も述べましたが、富士フイルムのコンパクトデジカメは比較的値下がり幅が大きいので、発売から半年ほど経った今は1万円台後半と、この内容にしては十分お買い得と言えるものになっています。



上記 Amazon でも記事執筆時点で1万8千円台ですが、量販店でも2万円を割る価格で売られていますので、値頃感は十分にあるかと思います(色は4色)。

動画を積極的に撮るのでなければ、またコンパクトさを最優先にするのでなければ、F900EXR はリーズナブルな“手のひら超望遠”コンパクトデジカメだと思います。初心者にも扱いにくいようなことはないですしね。

また、バッテリーも NP-50 という富士フイルムが昔から使ってきているバッテリーですので、互換バッテリーなら非常に安く入手できるのも良いところです。



互換バッテリーとは言え、2個で 700円弱ですから予備バッテリーを持っておいて安心できます。

なお、F900EXR のバッテリーの持ちですが、無線LAN 転送を多用しなければ、この小さく薄い電池の割には保つかな?という印象です。

私の場合、GR がメインのコンパクトデジカメであり、F900EXR は主に望遠用途のサブカメラということもありますが、予備バッテリーはあまり活躍の出番がありません。150カットほど撮影し、RAW も含めて 250枚ほど写真転送してもバッテリー切れになることはありません。

F900EXR_Menu08
(節電モードはあるが、使ったことはない)

F900EXR_Menu09
(手ぶれ補正のモードも色々と選択できる)


ということで、手のひら超望遠コンパクトの魅力から F900EXR を選んだ理由まで3回にわたって褒めてきましたが、次回は F900EXR の欠点、ダメ出し回の予定です。

如何せん、富士フイルムには頭おかしいんじゃないの?という悪癖もありますし、手のひら超望遠であることの無理もありますので、その辺を忌憚なく記したいと思います。


安価に超望遠、スマートフォンでは決して撮ることのできない世界へ 〜改めて富士フイルム F900EXR【1】
コンパクト超望遠デジカメとして F900EXR を選んだ理由・前編 〜改めて富士フイルム F900EXR【2】