来週に発売を控えた EOS 70D。Kiss と EOS 7D に挟まれ、ややもすると存在感が薄れたり、迷走気味になったりもした EOS 二桁機ですが、今回は「デュアルピクセルCMOS AF」という新技術も搭載して、なかなかの意欲作。

キヤノンらしく、あくまで EOS 7D を完全に上回らないようにしてヒエラルキーは維持しつつも、EOS 7D が既に3年前の機種である分、画質面や機能面では遙かに上回り、それでいて小型軽量ですから、7D ユーザーとしても今までのように「二桁機なんて out of 眼中」という感じではありません。

しかし、それだけに

「ワシは 7D Mark II を待つんや、軽くても二桁機に下りたくはないんや」


という思いがあると、逆に

見たら負け、発売前に触ったら負け


の恐れがあったので、今回の発売前イベントも意を決してスルーする予定でした。

なにせ、去年のソニー CyberShot RX100、今年のリコー GR と、発売前イベントに参加して、そのまま購入に至ってしまったデジカメが続いていますからね…(^_^;)

しかし、本日ちょっと梅田に行く用事がありまして、ガンバサポ仲間の友人から「70D のイベント行かないんですか。行きましょうよ」と誘われたこともあって、つい足を踏み入れてしまいました…

キヤノン:EOS 70D JAPAN PREMIER 「イチガン新世界。」体験イベント開催!

カメラの善し悪しなんてイベントでちょっと触ったくらいでは全く判りようもないものですが、発売日から EOS 7D を使ってきたユーザーとして 70D をアレコレ触りつつ、キヤノンの方とお話ししての印象を少しだけ述べてみたいと思います。

あ、それから PowerShot S120 / S200 / G16 の2機種も展示されていました。どちらかというと、こちら目当てでしたけどね(^_^;)



さて、会場に入って直行したのが PowerShot のコーナーでしたので、まずそちらから。といっても G16 や S200 は out of 眼中なので、S120 で念入りに弄くりつつ、担当の方に色々お聞きしました。

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先日の発表に関する記事でも書いたように、今回の S120 はレンズが若干明るくなっているせいか、S100/S110 よりやや大きく重くなっています。

PowerShot S11098.8×59.0×26.9mm198g
PowerShot S120100.2×59.0×29.0mm217g


発売時から1年半、PowerShot S100 を使い続けている私が、コーナーへ行っていきなりパッと S120 を掴んだ感触は

持数字上は厚く重くなってるが、「重っ!厚っ!」ということはなかった


ので、それは安心しました。

しましたが、S100 の時のように「おお、スペックも上がったのに薄く軽くなって凄いなぁ」といった

持った瞬間に「凄いなぁ」「これは買いだわ」という驚きは皆無


でした。

確かに高感度画質は多少上がってるようですし、AF 速度も触ってすぐ判るくらいに高速化されていますし、AF固定の連写速度は EOS 1D系を思わせる連写速度です。

が、従来と同じ 1/1.7"型センサーに 24-120mm ズームのまま、それなのに軽くも薄くも小さくもなっていない。「DIGIC 6 で〜」と言われても正直、心は動きません。

シーンモードに星空その他が追加されたりという今回の機能強化の方向は、キヤノンの人も話していましたが、

ハイエンドコンパクトをもっと一般層に


ということのようです。既に PowerShot S シリーズは一つの基準であり、マニアが買う物でもなく一般層が買うものになっていると思いますけど、それをより推し進めていくということのようです。

それならそれで、やっぱり厚みや重さは維持して欲しかったと思いますけどね。レンズが F値で 0.2 明るくなるより、その方が重要だった、と私は思います(そのことは係員の方にも伝えましたけど)。ニコン P330 が F1.8 スタートですから営業上必要だったのかも知れませんが…

まぁ、そういうことなら COOLPIX A に対抗するカメラを出してもらいたいと思いますけど、どうなるんでしょうかね。如何せん G16 ではちょっとそれは違うだろう…と思うのですが。


いずれにせよ、触って改めて

今回の S120 はスルー、もっと本気の機種を来年に期待!


でありますね。これから買う人にとっては S120 で良いと思いますが、S110 はもちろん、S100 からも買い換えるほどじゃないなぁ、と私は感じました。タッチパネルや Wi-Fi が欲しい人は別ですが…

というか、初値5万円の PowerShot S120 を買うなら



の方が良いように思うんですよね。軽いし、薄いし、基本スペック同じだし、画質の向上はエポックメイキングなほどでもないし、連写が爆速とかそんなに使わないだろうし…

ここだけの話、担当の方も「今は S110 という選択も良いかもしれません…」なんて言ってたくらいですから。もちろん、S110 は流通在庫限りでフェードアウトしていくわけで、いつまでもリーズナブルな S110 があるわけではないですけど。

というか、ホント S200 はどういうつもりで出したんでしょうか…途上国向けというわけでもなさそうだし。S200 よりは S110 の方が断然良いし(現在の実売価格なら)S110 の方が安いし、担当の方もそう言ってたくらいですからねぇ。



さて、イベントの主役たる EOS 70D。正直言って

7D ユーザーは皆 7D Mark II 待ち


だと思うんですよね。でも、一応気にはなるから 70D を触りに行くかと。大阪駅からすぐだし、ヨドバシの斜め向かいだし。

で、実際触ってみると

「7D より小型軽量と言うけど、意外とゴツい印象だな」
「グリップがかなり深めに作られてるなぁ」
「噂には聞いていたけど、18-135mm STM IS 全然音しない、凄いわ!」
「背面液晶、メッチャ見やすいし、ライブビューでも追従が遅れずスムースについてくるのは気持ちが良い」

などと思いますし、何よりも(背面液晶で見る限りですが)

高感度画質は 7D とは比較にならねぇなぁ(3年の差は大きい)


と実感しますし、AF も

7D と同じ 19点AF だけど食いつき良いなぁ、追従性カスタマイズも豊富だなぁ


と思って、年月の差を感じて、ちょっぴり欲しくなったりもします。それにバリアングルモニターは便利ですしねぇ。

ただ、私は既にミラーレス機と使い分けできていて、 EOS DIGITAL でバリアングルモニターが必要な被写体を撮るかと言えば、あまり撮らないから必須ではなく、どちらかといえば、X-E1 がバリアングルモニターになってくれた方が嬉しいわけです。

まぁ富士フイルムの場合、まず液晶が糞ったれなのをどうにかしなきゃならないし、X-Pro2 はバリアングルモニターになっても、X-E2 はケチって搭載しないとかありそうだけど。

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そういった個人的な事情はともかく、確かに

便利だし、画質も良くなってるし、AF も良い感じ


なわけです。良いカメラだなぁ、と思います。

思いますが、

ちょっと触っただけでアラも見えてしまったなぁ…


というのもまた本音。ちょっとメニューが細かくなりすぎて使いづらいし、タッチパネル誤爆もあります。

それになんと言っても、

MENU ボタンが左上端に移動したのは使いづらい


と感じました。サブダイアルも小さくなって使いづらいし、ボディが小型なのはいいけど、操作性は過去の EOS の中ではかなり低い方だなぁ…という印象です。

また、70D は画期的な「デュアルピクセル CMOS AF」をメインに押し出していますし、ライブビューを見るための背面液晶も実に見やすく気持ちいいレスポンスなのですが、どうもまだ中途半端なのです。

  • アイセンサーがなくてファインダーと背面液晶は相変わらずボタン切り替えであったり…

  • デュアルピクセル CMOS AF は位相差 AF なのに、ライブビューでは AI Servo が使えなかったり…

  • デュアルピクセル CMOS AF なのにレリーズを切ると、背面液晶が一瞬止まって動きものは使いにくい


といった感じで

デュアルピクセル CMOS AF の良さを生かし切れてない発展途上機


という印象でした。ぶっちゃけ、これではライブビュー撮影がマイクロフォーザースなど最新ミラーレス機を越えてるとは言えないなぁ…と。背面液晶の見え味なんかはかなり良いのですけどね…(使い勝手に関しては、富士フイルムはキヤノンの爪の垢を煎じて飲みやがれ)

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(鉄道模型の回りに大量の 70D を配してデュアルピクセル CMOS AF をアピールしていたが…)


会場のあちこちで係員と来場者が 70D を触りながら話しているのに聞き耳を立てていると、やっぱり 7D ユーザーがやたら多いわけですよ。人のこと言えませんが。私も一緒に行った友人も 7D ユーザーですし。

私自身、「キヤノンさんよ、7D Mark II 早く出してくんねぇかなぁ〜」オーラ全開で 70D を触り、さらには担当の方と色々 70D にお聞きしつつも、ついついその本音が出てしまうわけです。

たぶん、担当の方も開場以降、何人の方にも言われてきたのでしょうね、そういう言葉に苦笑していましたが…

「やっぱり 7D Mark II を早く出して欲しいんだけどねぇ」
「鋭意開発中です…だと思います」

私が交わしたそんな会話はきっと、今日あちこちで行われ、明日も行われることでしょう。それで良いんだと思います。今回のイベントでは

より多くの人の「はよ 7D Mark II 出せや!」という声を
直接届かせる意義もある(はず、かも)


と思っています。より多くの声があって損になることはありません。

少なくとも匿名掲示板なり SNS なり底辺ブログで書くより、そういったイベントで直接思いを、リクエストを届ける方が遙かに有用です。どんなメーカーであったとしても。

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70D は従来の二桁機どおり、アクセサリーも Kiss の方と共通になってるモノがあったりして、やはり従来の二桁機を踏襲しているものだと感じました。いくら 7D を殆ど超えつつあるとは言え、向いてる方向は少し違う。

用途に万能性を求めるなら、今の 7D より EOS 70D の方が遙かに良いと思います。画質も良いし、バリアングルモニターもある。完成度が低い部分はあるけど、最新鋭機種だけのことはあるなぁ、と思わせる部分も多いです。

ただ、私が求めるのはそうじゃなく、やっぱり 7D の直接後継機。バリアングルモニターがなくてもいい、無理な小型化なんて要らない、少しくらい高くなったっていい。

次は、キヤノン本気の APS-C ハイエンドを見せてくれ


その思いをより強くした EOS 70D JAPAN PREMIER 「イチガン新世界。」イベントでした。


APS-C EOS 新世代の旗手となるのか?デュアルピクセルCMOS AF搭載「EOS 70D」発表