ICONIA W3-810 を手に入れてから初めて Windows 8 と本気で向き合った気のする昨今ですが、タブレットとしても使える端末(本来タブレットがメインだけど、そう言うのが正しい気がする)を手にして名実ともに初めて見て回ったのが Windows ストアアプリ。

Windows 8 をパソコンとして使っている限りは、ストアアプリなんて気にする必要もない。ましてやタッチパネル対応の液晶ディスプレイを使っていなければ、まさに眼中にない存在。

しかし、従来の Windows アプリはタッチパネルや仮想キーボードのことなど考えて作られていないだけに、外部キーボードやマウスがないと非常に使いづらいこと、それゆえにタブレット端末として使う場合はタッチパネル利用を考慮したモダンUI(メトロUI)のストアアプリが必要なことは、過去の ICONIA W3 関連記事で書いてきました。

そして、それと同時に

Windows ストアアプリの品揃えの乏しさは驚愕もの


であることも過去に何度も強調してきました。アプリ数の少なさを見せかけで補うためか、従来型デスクトップアプリもストアに並べることができるのも何だかなぁ…であります。


と嘆いていても仕方ありませんので、ICONIA W3 購入後に色々と試しては「こりゃ使えねー」とアンインストールしまくり、「他にないから、これで妥協するか」と我慢したり、「マジで使えるアプリがねぇわ」と落胆したり…

いずれにせよ、ストアアプリを試しているのですが、ぶっちゃけ

Windows ストアアプリの情報がネットに全然ない


のも困ったちゃんでありまして、そういうことから自分でアプリを作る云々の前に、とりあえず使ってみている Windows ストアアプリについて、幾つか書いていこうかと思います。

Windows タブレット絡みの記事を書いても世の中から全く興味を示されず、場末ブログがさらに閑古鳥の鳴く羽目になるわけですが、今後断続的にストアアプリの感想を書いてみようかと思います。


というわけで、今回第1回目として紹介するのは、SSH ターミナルアプリ2種類。「Remote Terminal」と「SSH Terminal Emulator」。

いきなりニッチなジャンルですが、個人的に出先でリモートメンテナンスするのに必須のアプリなわけで、日本語での紹介例も殆どないので敢えて書いてみます。

どちらも有料ですが安いですし、試用ができますので十分試してから購入を考えることができますが、参考までにこの2種類の SSH ターミナルアプリの内容を紹介しておきます。

とりあえず、最初に結論を書いておきますと…



どちらも鍵作成はできないし、日本語(多言語)対応もされてない


という実用ギリギリのレベル。カスタマイズもロクにできないし、トンネリングもできないし(これはマイクロソフトによる Windows ストアアプリの制限)、

とりあえず SSH で繋いでコンソールが使えるだけ


であります。ハッキリ言って、iOS の「iSSH」や Android の「ConnectBot」と比較するのは失礼なレベルです。

「安いとはいえ、これで金取るの?」とまでは言いませんが(ストアにアプリ並べるだけでもお金はかかるし)、iOS や Android ではもはや誰も見向きもしないレベルです。こういうことは、どのジャンルのストアアプリにも言えることですが…

ただ、

仮想キーボードでそれなりに使える SSH ターミナルアプリ


としては、これらを選ばなくてはなりません。

例えば、従来の Windows デスクトップアプリでの SSH クライアントのド定番といえば「Putty」があります。接続先に応じた細かなカスタマイズができ、日本語表示も問題なく使えるので、外部キーボードがあれば、Windows 8 タブレットでも「Putty」を使うのが便利です。

が、残念ながらかなり古いアプリである「Putty」は Windows 8 の仮想キーボードを出した時に使い物になりません…

Win8App_PuTTY01
(細かい設定と接続先に応じた設定保存ができる PuTTY は未だ現役)

Win8App_PuTTY02
(日本語の表示も問題なし。ただし入力はできない)

Win8App_PuTTY03
(タッチでスクロールバックも可能)

Win8App_PuTTY04
(仮想キーボードを出した時にウィンドウ調節されずに隠れてしまう)


仮想キーボード専用にウィンドウサイズを小さくした設定を作ってやれば使えないこともないのですが、それなら日本語表示に多少難があってもストアアプリを使った方が快適な場合も多いと思います。

Windows 端末で SSH クライアントを使うような場面では 99% 外部キーボードを持っていると思うので、概ね PuTTY で事足りるのですが、万が一ということもありますのでストアアプリの SSH コンソールアプリも併用することにしています。


ということで、前置きが長くなりすぎましたが、SSH ターミナルアプリ2種類の紹介を以下に(価格は記事執筆現在)。



【1】Remote Terminal(280円)


Win8App_RemoteTerminal01

Windows ストア の Windows 用 Remote Terminal アプリ

有料アプリだが、Windows ストアのページで購入ではなく「試用する」をタップすると 30日間フル機能で試すことができる。SSH と Telnet が使えるが、カスタマイズできる範囲は殆どない、ごく基本的な機能だけを提供している。

Win8App_RemoteTerminal02
(登録した接続先が表示されてるだけのシンプルがアプリ起動画面)

Win8App_RemoteTerminal03
(コマンドバー/メニューもシンプル。通常は Add で新規接続先を作成)

Win8App_RemoteTerminal04
(接続先編集画面。設定可能な内容はこれでほぼ全て)

Win8App_RemoteTerminal05
(認証方法で Key 2種を選ぶと“読み込んだ”秘密鍵での認証が可能)

Win8App_RemoteTerminal06
(鍵を自分で作る機能がないので、公開鍵認証を使いたい時は他で作った秘密鍵を予め読み込んでおく)

Win8App_RemoteTerminal07
(仮想キーボードは問題なく使える。上記写真はキーボードが消えるところなので少しおかしいが)

Win8App_RemoteTerminal08
(フォントは種類もサイズも固定という糞仕様で、それゆえ日本語表示はおかしい)

Win8App_RemoteTerminal09
(文字コピーはモード切り替えが必要、ペーストはコマンドという面倒さ。
タッチスクロールバックは可能で、同時宇複数接続/切り替えも可能)

Win8App_RemoteTerminal10
(チャームからの設定画面にあるのは色変更のみ…)


フォント種類もサイズも固定、設定もロクにカスタマイズできないというショボさですが、フルスクリーンで使える快適さはありますし、それゆえにフォントサイズもそう小さいとは感じず、実用的な範囲です。

日本語表示がおかしいのも文字化けするのではなく、フォント的に文字の半分強くらいしか表示できてなくて、よくよく見れば識別できなくもないので、日本語ファイル名や日本語ファイルをそう扱わない作業なら我慢できるかもしれません。日本語で書かれた設定ファイルを修正する、なんてことになったら無理げーですが。

なお、日本語入力は全くできません。キーボード自体が日本語モードに切り替わっていても英字が直接タイプされます(Windows 側のダメ仕様のせいで、日本語モードのまま数字記号入力レイアウトに切り替えて入力すると、数字と記号は全角で入力されます)。

いずれにせよ、日本語が関わらない作業で、サーバーの関係で特殊な設定が要らないのならば使えます。コピー&ペーストもコマンドバーから云々とあって、決して操作性も良いとは言いませんが、シンプルに使える SSH クライアントアプリです。




【2】SSH Terminal Emulator(160円)


Win8App_SSHTerminalEmulator01

Windows ストア の Windows 用 SSH Terminal Emulator アプリ

こちらも有料アプリですが、フル機能を試用できます。試用期間中は画面下部に広告が出る仕組みになっています。

機能的には「Remote Terminal」と大差なく機能的には最小限、こちらも自分で鍵を作ることはできず、公開鍵認証で使いたい場合は他で作った秘密鍵を使う仕様です。

Win8App_SSHTerminalEmulator02
(アプリ起動画面は Remote Terminal と同じく、設定済項目が並んでいる。
コマンドバーを出さずに設定作成・削除ができ、試用中は広告が出る点のみ違う)

Win8App_SSHTerminalEmulator03
(接続先設定画面。こちらもほぼ最小限の設定のみ)

Win8App_SSHTerminalEmulator04
(秘密鍵利用を選ぶと、鍵ファイルを指定する項目が現れる。
Remote Terminalはアプリ共通設定で鍵を読み込んだが、こちらは接続先毎に鍵ファイル指定する)

Win8App_SSHTerminalEmulator05
(Remote Terminal同様、アプリのホーム画面で登録先をタップすると接続開始)

Win8App_SSHTerminalEmulator06
(このアプリは右側の枠内がコンソール画面になる。フォントが小さく見づらい!)

Win8App_SSHTerminalEmulator07
(コマンドバーを表示すると、フォント拡大、フルスクリーンモードに切り替える設定がある)

Win8App_SSHTerminalEmulator08
(フォント拡大&フルスクリーンモードにしたところ。これでようやく実用レベル。
フォントサイズは2種類しかなく、ウィンドウ枠は存在したまま…)

Win8App_SSHTerminalEmulator09
(こちらもフォント種類は英語固定なので、日本語表示はこんな状態…)

Win8App_SSHTerminalEmulator10
(仮想キーボードは問題なく使えて、ウィンドウ枠も自動的に小さくなる。
が、ウィンドウサイズが変わる時に表示内容が消去されるのは困りもの。
英語モード固定なので全角は一切入力できないし、間違って入力されることもない)

Win8App_SSHTerminalEmulator11
(タッチによるスクロールバックは可能だが、最初は慣れが必要。
反面、コピーやペーストはマウスなら一般的な操作、タッチなら長押しから)

Win8App_SSHTerminalEmulator12
(チャームによる設定画面は一切なし。こういうアプリばっかり…)

Win8App_SSHTerminalEmulator13
(接続できない時に例外エラーメッセージをそのまま出すようなレベルではある)


Remote Terminal と比べると仮想キーボード利用の配慮がこちらの方がキチンとしている印象ですし、コピーペーストは一般的なターミナルソフトと同じような UI ですので、Remote Terminal のようにモードを切り替える必要がないのはストレスがありません(マウスを使った際には快適)。

反面、コンソール画面を枠で囲って初期状態ではフォントもウィンドウサイズも小さいのは、液晶画面が小さく解像度が低めだとラージフォント&フルスクリーンモードにいちいち切り替える必要があり、ストレスです。おまけにその設定を覚えない間抜けさですし…

こちらも Remote Terminal 同様に複数サーバーの同時接続やバックグラウンド接続が可能ですが、ちょくちょくアプリが落ちるので、安定性は断然 Remote Terminal です。



というわけで、Windows ストアアプリで配布されている Windows 8 タブレット向け SSH コンソールアプリとして「Remote Terminal」と「SSH Terminal Emulator」の2つを紹介しましたが、

どちらも iOS/Android の定番 SSH アプリの足下にも及ばないし
PuTTY の足下にも及ばない


という内容ですし、どっちもどっち、五十歩百歩なレベルですので一ヶ月使ってきて、どちらかに金を払おうと思っても迷ってしまう状況です…

せめてフォント種類とサイズくらい変えさせろや!


という感じなんですけどねぇ。

「公開鍵認証したければ、OpenSSH か putty-keygen で作った鍵持って来い」という時点で SSH クライアントとして金取るレベルでない気もしますが、PuTTY のサブとしてはこのどちらかなぁ…という感じであります。

次回は VNC クライアントを紹介する予定ですが、SSH も VNC クライアントも iOS や Android 使っていた方が百億倍マシな状況であります。