【2013/3/7 追記】Wappwolf がファイルの変換処理(Convert eBook 含む)を有料化したので、月5ドル払わないと、この手順は使えなくなりました。

Kindle は Paperwhite に限らず、電子書籍の標準フォーマットになりつつある ePub ファイルを読むことはできません。読めるのは自社独自フォーマット(AZW3, mobi, PRC)と PDF、プレーンテキストのみです(Fire/Fire HD はアプリを別途入れれば他フォーマットも読める)。

「Kindleパーソナル・ドキュメントサービス」というファイルの自動変換込みのクラウド書庫サービスも無料で提供されているのですが、それの変換対象にも ePub は入っていませんし、PDF は直接読めますが mobi にした方が見た目が良い場合もあります。

このあたり、「は?標準?なにそれ美味しいの?」というポリシーは Apple と似ているとも言えます(もっとも Apple の場合、自社が強くない電子書籍では ePub をいち早く採用していますが)。

そのことの良し悪しは別としても、昨今色々なドキュメントが ePub で配布されている現状で、Kindle 端末でストア書籍以外も読みたいと思った場合に ePub ファイルが読めないのはちょっと不便な時があります。

パソコン上で ePub ファイルを Kindle で読める形式に変換するソフトは幾つかありますし、Windows、MacOS X、Linux で使える「calibre」は有名です。(やろうと思えば)細かな調整もできます。

calibre - E-book management

ただ、

パソコンでファイル変換して Kindle 繋いで転送、とか面倒くせええええ


わけです。面倒臭がりの俺でなくても、たとえば毎週届く ePub配信のメルマガを読みたいだけの場合なんかだと、いちいち毎回パソコン上で変換して Kindle を繋いでコピーとか面倒なはずです。うん、面倒。

というわけで、

クラウドサービスのフォルダにファイルを放り込むだけで
自動的にファイル形式変換して Kindle 端末・アプリへ送るための設定


を以下に紹介しておきます。従来からの Kindle 使いなら知ってる人も多いと思いますけど、Paperwhite からのユーザーなら知っておいて損はないかも。

例によって Mac 上で行なっていますが、OS に依存する部分はありません。Android 端末でもできます。iOSデバイスは GoodReader などのアプリを使えば可能です。


(1)自分の Kindle 端末の「Send-to-Kindle Eメール」アドレスを知る


ePub ファイルを Kindle 形式に変換したのち、Kindle 端末へファイルを送り込むのは、Amazon が提供する「Kindleパーソナル・ドキュメントサービス」というものを利用します。

Amazon.co.jp ヘルプ: Kindleパーソナル・ドキュメントサービス

「Kindleパーソナル・ドキュメントサービス」は、Kindle 端末ないしアプリ毎に決められたメールアドレスへ向けて、送り込みたいファイルを添付してメールを送ると、添付ファイルが Kindle 形式に変換されて Kindle 端末/アプリに送り込まれます(前述のように ePub は変換に非対応なので受け付けられない)。

その際に使う送信先メールアドレスが各 Kindle 端末や Kindle アプリ毎に決まっていますので、まずは自分が使っている Kindle 端末への送信用メールアドレスをチェックします。

方法は2つあって、Amazon 内の「My Kindle」→「パーソナル・ドキュメント設定」でも知ることができますが、Kindle 端末内でも知ることができます。Kindle Papwerwhite の場合は、ホーム画面の右上メニューから

「設定」→「端末のオプション」→「Kindle のカスタマイズ」→「Send-to-KindleEメール」

と進んだ欄に、なんとか@kindle.com というメールアドレスが書かれていると思いますが、これが自身の Kindle 端末への送信用メールアドレスです。以後、必要になるので控えておいて下さい。

Kindle_Automator01
(ホーム画面右上のボタンをタップして出てくるメニューから「設定」をタップ)

Kindle_Automator02
(設定メニューのうちから「端末のオプション」のエリアをタップ)

Kindle_Automator03
(端末のオプション画面では「Kindle のカスタマイズ」のエリアをタップする)

Kindle_Automator04
(進んだ画面の一番下「Send-to-KindleEメール」欄の最後にあるのが本端末用のメアド)



(2)利用するクラウドサービスと Wappwolf Automator を連携させる


ePub 形式を受け付けない「Kindleパーソナル・ドキュメントサービス」の代わりに、「Wappwolf Automator」というサービスで ePub ファイルを Kindle 形式 (mobi) に変換して、前章でメモしたメールアドレスに送ります。

「Wappwolf Automator」というのは、Dropbox や Google Drive、BOX.net、Facebook にアクセスして、指定したフォルダ内のファイルや写真を別形式に変換したり、メールに添付して送信、別のサービスへアップロードする、といった作業を自動的に行なってくれるサービスです。

MacOS X ユーザーなら「Automater」の超簡略クラウド版とでも言えるサービスで色々できますが、本記事では Kindle 形式へのファイル変換およびメール送信のみに絞って紹介します。

なお、「Wappwolf Automator」は Dropbox, Google Drive, box.net, Facebook に対応していますが、Facebook は写真のみが対象ですので、Dropbox, Google Drive, Box.net から自分が使うサービスを選んで、以下の3つのうち対応するサービスのウェブサイトへ行きます。

Automate your Dropbox
Automate your Google Drive
Automate your box

ここで、まず自身が利用するクラウドサービスを「Wappwolf Automator」が勝手に操作できるような許可権限を与える必要がありますが、文字通り、

自分がクラウドに置いてるファイルを他人に触らせることを許可する


わけですので、セキュリティ的な危険がないわけではありません。「Wappwolf Automator」を信用するかどうかの問題でもありますが、自分が見られては困るファイルが置いてあるようなクラウドサービスには許可しないようにすべきです。

私の場合、Dropbox や Google Drive は他のサービスに許可を与えるのは怖いので、日頃ほとんど使ってない BOX.net を Kindle 自動処理送信用に使っています

この点は十分考えた上で、いずれかのクラウドサービスに「Wappwolf Automator」の権限を与えて下さい。

「Wappwolf Automator」に操作権限を与える方法は、Dropbox, Google Drive, Box とも Automator ページ右上の「Login/Sign Up」のボタンをクリックして、Dropbox, Google Drive, box の各サービスにログインして利用許可を与えます。

従来使っていないサービスを新たに利用する場合は、事前に利用するクラウドサービスのサインアップ(利用登録)を行なってから、「Wappwolf Automator」の連携手続きを開始して下さい。

例として、Dropbox と box.net の手順を以下に示します。

■ Dropbox を使う場合

Kindle_Automator05
Automate your Dropboxに行き、右上の「Login/Sign Up」ボタンをクリック)

Kindle_Automator06
(出てきたダイアログで「Connect Dropbox」のボタンをクリック)

Kindle_Automator07
(Dropbox のログイン画面が出るので、自分のメアドとパスワードを入れてサインインをクリック
なお、既にログイン済みの状況の場合にはこの画面は出ないことがあります)

Kindle_Automator08
(Wappwolf による接続問い合わせ画面が出てくるので「許可」をクリックします)



■ Box の場合

Kindle_Automator09
Automate your boxに行き、右上の「Login/Sign Up」ボタンをクリック)

Kindle_Automator10
(出てきたダイアログで「Connect Box」のボタンをクリック)

Kindle_Automator11
(Dropbox のログイン画面が出るので、自分のメアドとパスワードを入れてサインインをクリックして終わり)


Dropbox や Google Drive の場合はログイン後に連携認証の問い合わせ画面が出ますが、Box の場合はログインが成功すると同時に連携は許可されます。


(3)Wappwolf Automator で自動処理手順の設定を行う


Wappwolf Automator とクラウドサービスとの連携、操作許可の設定が終わると、すぐに以下のような、クラウド内にあるフォルダの選択画面になります。

Kindle_Automator12
(ここから画面写真は全て box での例ですが、Dropbox や Google Drive でも同じです)


私の box の内容が、以下のような2つのフォルダと3つのファイル(これは box のサンプルファイル)だけですので、Wappwolf Automator には2つのフォルダだけが表れていますが、多数のフォルダがある場合はフォルダの数だけ選択可能になります。

Kindle_Automator21


ここから Wappwolf Automator で自動化手順の設定を行います。内容は

  • 指定したフォルダ内の ePub その他のファイルを Kindle で読める形式 (mobi) に変換

  • 変換したファイルを(先ほどメモした)Kindle 端末へ向けてメール送信


の2つを設定します。

ここでは Wappwolf Automator で使うフォルダを「to_Kindle」と名付けたフォルダにすることとします。


3−1−a)「Choose a folder」画面では、Kindle へ変換して送りたいファイルを入れるフォルダを指定する

Kindle_Automator13
(ここでは to_Kindle フォルダをクリック指定してから、Next ボタンをクリックする)


3−1−b)「Choose an action」画面では、Convert eBook を選択する

Kindle_Automator14
(フォルダ選択画面の次は処理選択画面。「Convert eBook」をクリックする)


3−1−c)Convert eBook のオプションにある「Convert to format」で mobi を選択する

Kindle_Automator15
(mobi を選択した後、Add Action ボタンをクリックする)


3−1−d)Add Action ボタンをクリックすると、まず1つ目の作業が登録される

Kindle_Automator16
(画面中央上に Convert eBook が登録されている)


※ ここではくれぐれも finished? ボタンをクリックしないように。


3−2−a)続いて、画面を上へスクロールして Documents 欄にある Send it to your kindleを選択する

Kindle_Automator17


3−2−b)Send it to your kindle のオプションで、送信先・送信元のメールアドレスを入力する

  • Your Send-To-Kindle E-mail address 欄には、最初に自分の Kindle 端末で調べた送信用メールアドレスを入力する
    (@マークの後ろが自動的に free.kindle.com に変換されるが、そのままで良い)

  • Your sender's E-mail adrress 欄には、自分の Amazon アカウントのメールアドレスを入力する
    (My Kindle のパーソナルドキュメント設定で送信元メールアドレスの許可を増やしている場合は、そこで指定しているメールアドレスの一つを入れる)

  • Send via WiFi only の選択と、最後の Convert to Kindle 云々のチェックはそのまま


メールアドレスを間違いなく入力した後、「Add Action」ボタンをクリックする。

Kindle_Automator18


3−2−c)add Action ボタンをクリックすると2つ目の作業が登録されるので、「finished?」ボタンをクリックする

Kindle_Automator19
(画面中央上に Send it to your kindle が追加登録されている)


3−2−d)Your Automations 画面になって、いま登録した自動化手順が表示される

Kindle_Automator20


これで準備は終わり!


(4)実際に ePub ファイルを自動で変換→送付してみる


以上の Wappwolf Automator 設定作業が終われば、

設定で指定したフォルダへ epub ファイルを入れるだけで
Kindle 端末(アプリ)へ自動変換されて送られる


ようになります。

Dropbox, Google Drive, box.net ともクラウド内のデーターを Windows や Mac の1フォルダとして扱えるようにできますが、ここでは box をブラウザでアクセスしながら、実際に指定フォルダに epub ファイルを入れてみた例を示します。

Kindle_Automator21
(ここでは to_Kindle フォルダを使うように設定したので、そのフォルダを開きます)

Kindle_Automator22
(設定したフォルダの中には processed フォルダが勝手にできています。
これは変換→Kindle への送信処理が終わったファイルが入れられます)

Kindle_Automator23
(では、ここへ、あるメルマガの epub ファイルをドラッグして入れてみます)

Kindle_Automator24
(ePub ファイルのアップロードが終了したら、あとはしばらく待ちます。注意点は後述)

Kindle_Automator25
(しばらくすると、こんなメールが Amazon で使っているメールアドレスに届きます。
このメールが来ると、自動変換→ Kindle への送信が終わったことを意味します)

Kindle_Automator26
(先ほどの to_Kindle フォルダの中を見ると、アップロードした epub ファイルは消えています)

Kindle_Automator27
(処理が終わったファイルは to_Kindle フォルダの中の processed フォルダに入っています)

Kindle_Automator28
(Wi-Fi 利用な状況で Kindle 端末やアプリを起動すると
to_Kindle フォルダに入れた epub が Kindle に読める形で変換されて受信される)

Kindle_Automator29
(もちろん、中身も読める)


また、今回の例では epub ファイルを例に取りましたが、

epub だけでなく多くの形式を Kindle で読める形式に変換して送り込むことができます


ただ、後述するようにファイルサイズが大きいと失敗しますので、テキスト物を前提に考えた方が良いかと思います。


なお、こうやって Kindle 端末へ送られたファイルは Amazon が提供するクラウド書庫にも保存されるので、端末やアプリからファイルを削除しても再びクラウドから取り出すことができますし、送り先に指定した端末やアプリ以外でもクラウドから取ってきて読むことができます。

Kindle_Automator30
(Nexus 7 の Kindle アプリからクラウド書庫を見ると
2段目右に今回 Kindle Paperwhite に送ったファイルが見える)


この「Kindleパーソナル・ドキュメントサービス」で使える容量は、Amazon で購入した書籍とは別に各ユーザーに 5GB のスペースが無料で与えられています

【追記】Kindle へ送ったドキュメントに関しては Kindle ストアで購入した書籍同様、複数のデバイスで読んだ場合には、読んだ位置が同期されます

なので、長いメルマガを Kindle Paperwhite で新幹線で読んでいて、読んでいる途中で新幹線を降り、山手線では iPhone や Android の Kindle アプリでそのまま続きを読む、ということができます。


(5)色々注意点とか


一度設定すれば、クラウドサービスのフォルダにファイルを放り込むだけで Kindle 端末・アプリへ送られるので非常に便利で、自分自身重宝しているのですが、何でもかんでもOKというわけではありません。

  • ファイルサイズは 25MB まで
    (これは Wappwolf Automator の制限

  • ファイルサイズが大きいと Kindle 端末・アプリへの送信に時間がかかる
    (これは Kindleパーソナル・ドキュメントサービスの仕様。「ファイルのサイズが5MB未満の場合、送信は約5分以内に完了します。ファイルのサイズが大きい場合は、送信までに時間がかかることがあります」と明記されている)

  • 1日に処理できるファイル数やサイズに制限がある
    Wappwolf Automator の仕様。無料アカウントでは1日に 100ファイルまたは 100MB までと明記されている)

  • 変換用に指定したフォルダへ複数のファイルを同時にアップロードすると、変換されなかったり、Kindle 端末・アプリで受信されないファイルが頻繁に発生する
    (Wappwolf が悪いのか Amazon 側が問題なのか判らないが、1つずつファイルを入れて処理した方が無難)

  • テキストファイルなどを送り込む場合は、ドキュメントの文字コードによってはきちんと変換されずに文字化けする

  • Kindleパーソナル・ドキュメントサービスに保管するファイルが多くなると、見通しが悪くなってファイルを探すのに手間がかかる
    (色々なところでフォルダ分けができないのは、パーソナル・ドキュメントサービスだけでなく Kindle の欠点の一つ)


といった点が制限や困った状況としてあります。

それでもパソコンで変換して、いちいち USB で繋いで転送するよりは便利だと思いますので、ePub その他のファイルを Kindle へ送り込むことが多い人は利用してみるのが良いかと思います。

Kindle_accessary_store
Kindle アクセサリ特集ページもオープン

(当初ケースを付けるつもりはなかったが、付ける方向で悩み中…)