一週間前に発表された EOS M。時間が経って、話題的にはすっかり落ち着いた感はあります。ネットでの評価をあちこち見て回るほどの余裕がないのですけど、視界に入った範囲ではポジティブな評価は少なめかなぁ、と思います。

他メーカー信者の最初からネガるだけな意見はどうでもいいのですが、そうではなくても「最後発で出してきた割には何も特徴的な部分がない」という感想は多いですし、実際そういうスペックです。個人的には後述するように色々な意味でのキヤノンらしさを感じるのですが、いずれにしても、最後発なのに何もなし、という感想は当然でしょうね。

また、通常のキヤノン新製品は正式発表直後からキヤノン梅田や銀座のショールームで誰でも実機に触れて試すことができるのですが、今回はしばらくショーケース内の展示で触れることができない状態です。

そういう状態でアレコレ言っても仕方ないのですが、EOS M に対する思うところを書いてなかったので、ネタ切れついでに少々触れてみます。



直前のリーク情報が出てくるまでは色々な噂が言われていましたが、今回の EOS M を見て多少ホッとしたところがあります。その思いを端的に言うと、

  • すぐに飛びつかなくて済みそうなカメラで良かった

  • でも将来買いたくなりそうな方向性で良かった


この2点です。

「金欠なのに今すぐ欲しい!」と思わなくて済んで、一安心。
でも EOS M シリーズの方向性としては自分の求める方向になりそうで、一安心

つまり、今回の EOS M は(EVF なし・暫定的な製品っぽいので)予定通りスルー、けれど来年(以降)EVF 付きハイエンド機が出たら自分の好みに見あって購入できるかな、という感じです。今回はスルーだけど、将来に期待できそうと。

少なくとも発表会で示された下図の矢印を見る限り、上位展開を考えているのは間違いないというか、そう期待できますしね。

EOSM20120730
デジカメ Watch 記事より引用)


「え?将来に期待できるとか思ってるの?」と思われる向きもあると思いますが、個人的に今回の EOS M / EF-M マウントの発表内容で良かったと思っている点は幾つかあって、

  • APS-C サイズの撮影素子を採用したこと

  • 像面位相差AF を採用したこと

  • EF マウントの利用をオマケじゃなく打ち出してきたこと

  • シリーズ名称を新名称じゃなく EOS を冠してきたこと


といったところ。

人それぞれ意見、考え方の違いはあるので、当然異論はあるでしょう。でも正直言って

今どきのデジカメは、もう良し悪しなんかなくて好みの問題


だと思うので、人によって色々と意見が異なるのは仕方ないですし、他の意見も別に否定はしません。

でもって、

APS-C で良かった、像面位相差AF を採用して良かった
と思ってるのも、全部自分好みの話


なわけで、EOS ユーザーである自分の好みの方向へキヤノンのミラーレス機が向かってくれそうで良かったというわけです。ホント、好みの問題だけです。

Canon デジタル一眼カメラ EOS M レッド ダブルレンズキット
Canon デジタル一眼カメラ EOS M レッド ダブルレンズキット

(年末商戦には価格勝負に出られるように作ったとみてますが、さて…)


例えば、ミラーレス機の撮像素子サイズに関しては必ずしも APS-C が良いとは思ってません。

初代マイクロフォーサーズ機の DMC-G1 や初のコンパクトスタイルのミラーレス機 E-P1 などのマイクロフォーサーズ機を何台か使ってきて、レンズも込みでコンパクトにできるマイクロフォーサーズの良さは十分に経験しています。

また、以前愛用していたパナ 7-14mm F4 とか 20mm F1.8、新発売の 12-35mm F2.8、オリンパスの 45mm F1.8、75mm F1.8 など、使いたいレンズは色々あって、ちょくちょく、また戻りたくなる時があります(さすがに暫く出戻りは封印ですが ^^;)。

ただ、それを判っていても結局 GXR や NEX-7 の方に心が行って気に入っているのは、ひとえに APS-C の感覚が馴染むから、に尽きます。長いこと使っていてもマイクロフォーサーズの感覚に慣れきれなかった、とも言えますが。

こればっかりは仕方ないというか、センスなくてスイマセンというか、本当を言えば APS-C より(一番シャッターを切っていた)1D や 5D を使っていた時の感覚が抜け切られないのですが、いずれにせよ、せめて APS-C の感覚で撮りたいと。自分の好みにすぎません。



像面位相差 AF の件もまた同じです。動きモノを撮るのが大好きな人間だからこそ、そちらに賭けたい、期待したい。

ミラーレス初号機から色々と使ってきて、私レベルの適当スナップ、適当風景撮りには、今のミラーレス機で十分だと思っていますし、静止体相手なら像面位相差 AF なんか必要ないとも思っています。

最初から動きモノを撮るのが目的ならミラーレス機は持って行きませんが、旅カメラとしてミラーレス機を持って行っても、旅先の空港でちょっと飛行機を撮りたい、なんて思ってしまうわけです。で、撮ってみると「まぁこんなもんか…」と。

サッカーを始めとするスポーツ撮りをミラーレス機に求めようとは思いませんが、「飛行機、特に旅客機くらいは AF-C でも何の問題もなくバリピンで撮れるようになってほしい」と思っています。それがいつ解決されるかは判りませんが、コントラスト式AF の進化よりは像面位相差 AF に求めたいと、最近は思っています。

というのも、DMC-G1 の発表からもうすぐ4年。コントラスト式 AF も随分進化したと思いますし、速くなったと思いますが、DMC-G1 を使い始めた頃に感じた「今はまだまだだけど、5年いや3年もすれば飛行機くらい AF-C でもビシバシ撮れるようになるかも?」と思いは、4年近く経ってもまだまだかな、と。

ミラーレス機の AF の改善は結局 AF-S メインと思うことが多く、この間の他の機能性能の進歩に比して、ミラーレス機、コントラストAF における AF-C の改善は(多少進歩していても)コレは使える!という閾値を跨げていないように感じています。

それにレンズをグリグリと移動させて合焦させ続けるのは EVF 覗いている方も辛いですし、この3〜4年を思うと、動きモノ大好きな人間にとっては像面位相差 AF が進化してくれる方に賭けたいな、と思う昨今です。

「糞遅い Kiss X6i のライブビュー AF を見たら期待なんかできない」という人もいますし、今回の EOS M 初号機に期待はできませんが、像面位相差 AF はミラーレス機に実戦投入されて日が浅いですから、将来的な改善に期待したいと思っています。

加えて、一眼レフにおける動体予測込みの AF-C で先頭を行くのはニコンとキヤノンですから、その蓄積をもってミラーレス機でも AF-C を突き詰めていってくれるのは(ミラーレス機でも像面位相差 AF を最初から採用した)その両社かなぁ、と。

ま、結局 AF 方式も自分の被写体、好みの問題でありますし、別に像面位相差 AF が優れてるとかでもなければ、今回の EOS M に対する評価ではなく、将来的な期待込みで EOS M シリーズの方向性支持ということです。



あとの2点、EF マウントが使えること、EOS 銘であることについては、EF マウントユーザーだからこそ気になる、重要視する部分で、他マウントユーザーには関係のないことでしょう。EOS 名義にしてくれたことは、本気でやるんだな、というのを期待させます。

もちろん、デカい EF レンズなんかミラーレス機に似合わないから関係ない!という意見ももっともですし、私も常用はしないですが、NEX で EF レンズやαレンズをたまに使っている経験からすると、EF レンズ資産のあるユーザーなら、それが使えれば絶対便利だと思います。

というか、一眼レフを持っていて対応レンズをある程度持っているユーザーなら、そこに引っ張られるのは仕方ないでしょう。ぶっちゃけレンズは資産ですが、デジタルのボディなんか消耗品ですからね。

また、「ミラーレス機に一眼レフのレンズを付ける」と思うと大きく重くなるのですが、ぎゃkyに

「一眼レフのレンズが使える小さなボディ」と思えば意外と悪くない


ものです。被写体によっては、一眼レフのライブビューで撮るくらいならミラーレス機で良いんじゃね?と思うこともありますしね。

レンズとボディのアンバランスを指摘する意見も重々承知ですが、普段から重量級レンズを使ってると、それがどうしたの?って感じです(マウント部の負担を考えながら使うべきですが)、。



反面、今回の EOS M 初号機をスルーする理由は

  • EVF 内蔵じゃない(外付け EVF も用意されていない)

  • EF レンズを付けると事実上 AF 追従が1コマ目のみという動きモノ相手には辛い仕様

  • ストロボ外付けは(個人的に)別に良いけど、外部 EVF すら用意されていない

  • 営業から「今年の年末商戦に間に合うミラーレス機が必要」ということで出したという雰囲気満載


というところでしょうか。

EVF に関しては、何台もミラーレス機を使ってきて気に入って使えていたのが EVF 内蔵の DMC-G1 と NEX-7 だったので、今後のミラーレス機購入は EVF 内蔵一本になると思います。これも単なる自分の好みです。

「EVF でもファインダーがあるとないとでは、自分の“撮る意識”が違うかな」と感じているのですが。これも古い世代の意識なのかもしれないですね。

好みといえば、デザインも批判されてることが多いようですが、個人的にはそんなに批判されるものかなぁ、と感じています。確かにデザイン的に良いとも思いませんが、見栄え重視のグリップなしツルツルボディよりは遥かに好感をもっています。

また、右肩に動画ボタンがありますが、β機ではモードダイアルを動画モードにしないと動画ボタンが有効にならないようで、これについては賛否あるものの私は断然支持したいです。

あと今回の機種は、Kiss X6i の像面位相差+コントラスト AF を見る限り AF速度は期待できそうにありませんから、来年のミラーレス機の本気カメラに期待しておきます。

個人的にはスペックは凡庸でも、今回の EOS M は年末商戦に値段勝負をかけられるコスト意識の高いカメラと見てます。「スペックは平々凡々だけど売ってみせるから」そんなキヤノンらしさもあるかな?と。

そういう意味では、激安になれば思わず買ってしまう可能性は皆無ではないです。EOS M + EF-M 22mm は“コンパクトカメラ+α”のサイズで(自分が好きな焦点距離である)35mm 単焦点コンパクト的に使えそうなので、ちょっと魅力は感じています。

まだショールームでも実機に触れられない状況のなか、デジカメ Watch の記事には EOS-M + EF-M 22mm と PowerShot S100 の比較写真があり、S100 を持っている私としては非常に参考になっていて、このサイズなら AF や画質が少々アレでも…という気はあるので、Nikon 1 みたいに値段勝負になれば思わず手が出るかもです(^^;)

Canon デジタル一眼カメラ EOS M ブラック EF-M 22 STM レンズキット
Canon デジタル一眼カメラ EOS M ブラック EF-M 22 STM レンズキット

(予約価格の7万円強では全く手を出す気にはならないけどね)


いずれにせよ、今回の EOS M 初号機が「とりあえず出してみた」機種なので安心もしています。今すぐ EOS M を買わずに済みますし、NEX-7 を使わなくなったり、売ったりせずに済みますからね。

今年初めに繋ぎのつもりで購入した NEX-7 は過去記事で書いたように、爆発しそうな不満を抱えつつもそれなりに気に入っていますから、もうちょっと使っていたいと思っています。繋ぎ以上の魅力を Eマウントにもソニーの姿勢にも今のところは見出だせてはいませんが…

ともあれ、来年になるか、その先になるかは判りませんが、ハイエンドの EVF 内蔵 EOS M が出るのを期待して待っていようと思っています。NEX-7 ほどのサイズにできるかどうかは別にして、乗り換えを躊躇うような機種じゃないことを祈りたいです。

そして、私が EF-M マウント機を買うまでの間に、是非、シグマの EX DN レンズ2本も EF-M 用を出して欲しいと思います :)

シグマ 30mm F2.8 EX DN※ソニーEマウント
シグマ 30mm F2.8 EX DN ※ソニーEマウント

(元々 APS-C 対応だから色々あっても最高コスパレンズを EF-M にも出して…)


19/30mm F2.8 EX DN レンズが Eマウント用にでなかったら、きっと NEX-7 もこんなに使っていなかったでしょう。マトモなレンズが少ない Eマウントの救世主でしたから、EF-M マウントでもお願いしたいですね。EF-M マウント機を購入した時に、EX DN レンズがあれば、きっと買うでしょう。

あとは、ニコンもミラーレス機に本気になっていただいて、できれば APS-C ミラーレス機なんぞを出していただいて、キヤノンのケツを叩いていただきたいところです。キヤノンに出し惜しみさせないためにもニコンさん頼みますわ。

というわけで、ダラダラと EOS M に対する個人的な感想を書いてきましたが、今回の EOS M 初号機はとりあえず置いといて、キヤノンのミラーレス機の方向性は好ましく思えた、というのが率直な感想でした。

本日発表!キヤノン初ミラーレス機 EOS M と各社ミラーレス機のサイズ・重さ比較一覧
EOS M とライバル機のサイズ・重さ比較一覧(少し絞り込んで比較してみた版)
写真で見るキヤノン「EOS M」(β機)
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