今日は朝リリースされた Steve Jobs 氏の Apple CEO 退任で話題がもちきりで、私も長年 Apple 製品を使ってきた身として(OS もハードも糞すぎて愛想が尽きてた時期もありましたが ^^;)、別記事の枕に少しそのことについて書いていたのですが、思い直して単独の適当雑記記事として書いてみます。


さて、Steve Jobs 氏の CEO 退任については「前から予定されていた時が来た」という印象で、きっと多くの人がそういう思いだと思います。最初のすい臓がんによる休職の頃から既にもう長い時が経ち、3度の休職を経て、投資家からユーザーまで全ての人に十分な“覚悟”の時間が与えられていたと思います。

ただ、それと同時に、多くの人が思うのは「これから Apple は、どうなるのか?」でしょう。それについては、きっと誰にも判りませんし、1ユーザーでしかない人間が予測推測をしても仕方ないと思いますが、個人的に

  1. 短期的に魅力ある商品がリリースされるか?

  2. 中〜長期的に魅力ある商品をリリースされ続けられるか?

  3. 業界を変えるイノベーションが再び起こせるか?


の3点に分けて考えるならば、1点目の短期的な、数年間の商品については何の心配もしていません。

iOS 商品に続いて Mac の商品構造もかなり変わってきて、Lion リリースとともに新しい道筋はできていると思えますから、今後数年間は画期的な商品は出なくとも、妥当で、それなりに魅力ある商品は出てくるだろうと考えています。それに、Apple から画期的な or 魅力ある製品が出ないとしても、他から出なけりゃ相対的な魅力落ちは最小限だしなぁ、とも思いますしね。

少なくとも、実務面は Tim Cock 氏が、商品デザインやアイデンティティー面は Jonathan Ive 氏が担っていけば、当面はそれなりに行くんじゃないかなー、と思っています。問題は、それが崩れた時でしょう(後述)。

でも商品計画は1〜2年先まで作られているわけですし、Steve Jobs 氏も存命の限りは取締役会に留まるでしょうから、短期的に大きな影響はないかな、と考えています。



2点目の「中〜長期的に魅力ある商品をリリースされ続けられるか?」という点については、正直なところ 50/50 かな、と思っています。ぶっちゃけ、中長期的にも買いたくなる商品をリリースし続けてくれれば嬉しいでしょうが、

10年もすれば、IT 世界ではどうなってるか判らない


わけですから、想像しようもありません。

'90年代に世界最大のパソコンメーカーだった Compaq はとっくの昔に消え、IBM もパソコン事業からは撤退、本家 Yahoo! の凋落は止まらず、SNS の巨人だった My Space も存亡の危機になりそうなところまで落ちて行っている。Microsoft ですら他を寄せ付けなかった栄光に陰りが見えている。

それを思えば、Apple の 10年後がどうなっていてもおかしくない。'90 年代の Apple は迷走していて商品には本当に魅力がなかった。行き詰って、再びあの頃のようになってもおかしくはない。そうなったらなったで、それはもうしょうがないかな、と思います。

IT 業界の移ろいこそ、盛者必衰の理をあらわすもの


で、いつまでも絶好調でも最注目を浴びる存在でもいられないですからね。Jobs 復帰後の十数年間、iMac 発表後から今までの Apple が異常すぎたと言えます。

Apple だけでなく、10年後の Windows は? Google は? Facebook は?ともなるし、こればっかりは 10年先 20年先を考えていても仕方のないことだし、だいたい自分自身がそこまで生きて見てられるかどうかも判らないしねぇ…(^_^;)

先にも書いたように、実務面は Tim Cock 氏が、商品デザインやアイデンティティー面は Jonathan Ive 氏が担ってうまくやっていければいいし、他にも Philip Schiller 氏などの幹部重役が今まで通りやっていければ、短〜中期的にはそれなりの製品は出していけるだろうと思っています。

ただ、

Jobs がトップでなくなって、他の幹部重役が Tim Cock の下でずっと働き続けるか?


という問題は必ず起こるでしょう。 Jonathan Ive 氏に関しては退職の噂は過去に出ていますし、他の幹部重役についても、他に行けば CEO クラスがゴロゴロしているわけですから、いつまで上級副社長で留まってくれるか?ということはあります。

カリスマ CEO が退任したあとの会社というのは、結局そういった人材流出によって弱体化していくものですから、そのあたりを Tim Cock がどう乗り切るかで中長期的な会社の興隆は決まるでしょう。

ただ、個人的には Jobs 氏のアイデンティティを全部でなくても受け継ぐ人材は Jonathan Ive 氏だと思っているので、仮に Jonathan Ive 氏が退社することがあれば、そこが「終わりの始まり」かも?と感じています。



3番目の「業界を変えるイノベーションが再び起こせるか?」という点については、そりゃもう無理でしょう、と思います。もう、Apple がイノベーターの役割を担う時代は Jobs 氏退任とともに終わった、そう思います。

iMac から iPad に至るまで、この十数年間の画期的な製品・サービスが全て Steve Jobs 氏だけで創りだされたものではないのは当然ですが、Steve Jobs 氏がいてこその製品群だったのもまた明らかです。その

イノベーティブな製品開発の中心にいた人物がいなくなった今後
Apple にそれを求め続けるのも酷な話


だと思っています。

Jobs がいなかった時代も Apple は斬新な製品は出していました。PDA の走りである Newton しかり、カシオ QV-10 の一年以上前に発売されたデジタルカメラ QuickTake は、その代表と言っていいでしょう。しかし、それらは歴史の片隅に名を残すのみ。

結局のところ、単に斬新な製品を作るのではなく、とことん製品を仕上げ尽くして、適切な時期に適切な形でリリースする。イノベーティブな製品になるために、作り手にそのセンスが必要なのでしょう。Jonathan Ive 氏に Jobs 氏のアイデンティティが受け継がれていったとしてもイノベーターとしてのセンスまで求めるのは厳しいかな、と。

そういう意味では、この先、新しい何かに Jobs が目をつけて面白いプロダクトを生み出す…ということは、もう期待できないことだけは、つくづく残念です。ファンもアンチも多い Jobs 氏ですが、マイコンが生まれてたかだか 40年かそこらの歴史で、彼の創りだしたものの多さは抜きん出てますからね…

そういう意味では一つの時代が終わったと思いますし、今後の Apple にそれを期待しすぎると '90年代の失敗を繰り返す気もします。

だからといって、Apple が今の Steven Ballmer 牛耳る Microsoft のように、利益を追い求めるだけの安定堅実志向なだけの会社なったら嫌ですし、そうなったら誰もついていかないと思いますけど ;-)



というわけで、短期的には Apple に何の心配もしていないし、Mac 製品、iOS 製品を使い続けることも変わらないと思う。中長期的にどうなっていくかは、これはもう誰にも判らないし、商品の魅力がどうなるかも判らない。

ただ、少なくとも私の場合は

Mac を使う理由は MacOS X にあって
MacOS X を使う理由は素晴らしく使いやすい GUI が載った UNIX だから


という点にあるので、そうそう簡単に Windows に戻ることもないだろうと思います。Windows + Cygwin は、どうあっても辛すぎるし X-)

もちろん、MacBook Air の進化が全くなくなってしまい、Windows 上で VMware + Linux を常時起動しっぱなしにしてでも戻りたくなるような Windows 機がリリースされれば、その時には Windows 機に戻ることに抵抗はありませんが、数年のうちには有り得ないかなーと思っています。

いずれにせよ、1ユーザー的には、その時に使いたいもの、使えるものを使えばいいだけの話だし、

将来 Apple が凋落すれば、その時にまた新しい何が生まれているかもしれないし
IT 業界はその繰り返しだった


から、それはそれでまた期待したい。1つの時代が終われば次の何かが生まれるはず、と思いたい。

ただ、SaaS (Software as a Service) 志向が強まる時代にあって、“人が使うのに心地良いハードウェアとソフトウェアの一体感”に対する類稀なセンスを持っていた Jobs 氏が表舞台から去ることで、

ハードウェアの時代は本当に終わったのかな…


とも思います。

Pixar や iTunes などハードウェア以外でも残したものは大きいけれど、やはり彼の最も素晴らしいセンスは「ハードウェア+ソフトウェア」でしたから、そういった形での画期的な製品はもう出てこないのかもしれません。SaaS においては、ハードウェアなんて本当にただの箱ですからね…



というわけで、Steve Jobs 氏の Apple CEO 辞任で思うことを徒然と書いてみました。当初はこんな記事を書くつもりでもなかったんですが…

いずれにせよ、Jobs が公式の自伝を許可した時点で誰もが想像していることはあるだろうけれど、あとはできるだけ長生きして、家族との時間を十分に持てるように祈るばかりです。

最後に、有名なスタンフォード大学での伝説的なスピーチの動画を。God bress you, steve.