【7/4 追記】暫定的に複数デバイスにインストールした場合の切り替え方法があったので、記載しました(機内モードでの切り替えだけではなく、アプリの再起動でも切り替え可能なので再追記しました)

今年もはや折り返しを過ぎて7月に入ったわけですが、7月1日に「リコーがペンタックスのデジカメ事業を買収」なんて驚きのニュースがあったとともに、NTT コミュニケーションズがモバイル端末向け IP電話サービスに本格参入というのも驚きでした。

Skype のような老舗から Viber みたいな新興モバイル端末(スマートフォン)向けまで様々な IP 電話サービスがリリースされ、次第に使っている人も増えてきている中、

いよいよ NTT も動いたか


という感じの「050 plus」。

その名のとおり 050 で始まる番号が貰えるサービスですので月額基本料 315円と有料サービスですが、9月までは基本料が無料(ユニバーサル使用料はかかるっぽい?)ですので早速試してみました。

使ってみるとなかなか好印象なのですが、個人的に気になった

「データー通信 SIM を使っている端末でも使えるのか?」
「複数の端末にアプリを入れたら、どうなるのか?」

という点も試してみました。


さて、まずは「050plus」の特徴を端的に述べておくと

  • 050 で始まる電話番号がもらえる反面、月額基本料315円であり Skype のような加入者同士なら完全に無料となるわけではない
    (ただし、9月までは月額基本料が無料なので、その間はユニバーサル使用料だけで色々と試すことが可能)

  • 050plus 加入者同士や OCN その他の IP電話へは通話料無料
    (無料になる IP 電話サービスについては、公式サイトを参照のこと)

  • 携帯電話や固定電話への通話料が、携帯電話からかけるよりかなり安いのが売り
    (後述するように、ホワイトプランよりは断然安い)

  • 着信するには、アプリが起動・バックグラウンド待機中である必要があるが、月額基本料に留守番電話サービスや着信通知メール機能がある
    (それゆえに制約付きながらセカンドナンバー的に使えるかも)

  • 利用開始には、クレジットカードと携帯電話番号の登録が必須

  • iPhone からサービスインしたが、近いうちに Android 版や PC版もリリース予定


というもの。

概ねよくある 050 IP電話サービスと似たものですが、この「050plus」はターゲットがスマートフォンであり、通話発信端末としての料金の安さが売りになっています(通話後に「◯◯円オトク」と表示されるくらい…やりすぎですけど、設定で OFF にできます)。

たとえば携帯電話相手の通話料を比較してみると、

ソフトバンク(ホワイトプラン)30秒 21円
ドコモ30秒 7.875〜21円(プランによる)
b-mobile Talking SIM30秒 21円
Skype1分 13.3円〜15円(月額プランの場合 ※)
050plus1分 16.8円(月額基本料 315円)
(※ Skype の料金体系は一例です)

となって、ドコモのプランLL(月額基本料1万以上のコース)並みの低単価で、Skype に迫る安さと言えます。

特に、ソフトバンクの儲けの源泉となっているホワイトプランの他社携帯電話への通話料の高さを狙い撃ちで、上手いやり方です(その分、月額基本料をとられますが)。Android 版も近日予定ということなので、グループ会社の NTT docomo の通話料も削るサービスで大丈夫なの?なんて思ったりしますが(^^;

Skype と比較してもそう分の悪い料金ではなく、Skype の料金体系の判りづらさやセットアップのハードルを考えれば、簡単に始められる「050plus」の方が敷居は低く、また Skype と違って発信者番号通知可能というのは大きな魅力でしょう。

もっとも、加入者同士で話すだけなら Skype や Viber は無料ですから、月額基本料が必要な「050plus」は無料通話を望む人には問題外となってしまうでしょうが…

また、固定電話相手の料金を比較しても

ソフトバンク(ホワイトプラン)30秒 21円
ドコモ30秒 7.875〜21円(プランによる)
b-mobile Talking SIM30秒 21円
Skype1分1.44〜2.17円
(月額プランの場合。実質無制限プランが月額 690円 ※)
050plus3分 8.4円
(※ Skype の料金体系は一例です)

となっていて、こちらも Skype の固定電話実質無制限コースを除けば、かなりの競争力。なにせ

固定電話へ3分8円は、固定電話からの発信料金そのもの


となっていて、携帯電話から固定電話へかけることの多い人には特に魅力的なサービスとなっています。

後述するようなモバイル IP 電話らしい通話の遅延はあるので、それを我慢できるなら、という条件付きですが、他社携帯電話や固定電話に十数分でも電話する人には十分考慮する価値があるサービスだと思います。

050plus01


さて、「ソフトバンク以外に電話をかける人」には魅力的に映るサービスですが、実際に試してみた感じを率直を書くと、

  • アプリから2〜3ステップで申し込みでき、あとはかかってくる確認電話をとって確認番号を入れるだけと、比較的簡単
    (Skype Out とか過去のサービスに比べれて、まだマシという程度だが)

  • ソフトバンク回線上や自宅 Wi-Fi 経由で 050plus 同士や他社携帯や固定電話との通話を試した限りは、Skype より通話品質は良いかな?と感じた

  • IP 電話独特の通話の遅れは、それなりにある(相手に自分の声が伝わるのは1〜数秒遅れる)。普通の携帯電話、固定電話感覚で話すと会話がぶつかり合うことは多いのは、他のモバイル IP 電話と比べても大差ない。

  • IP 電話などにありがちな回線の不安定さによる相手の声の途切れや、自分の声がエコーするようなことも、やはりある。Skype より多少マシな気はするが Viber の方が繋がれば安定して使える印象はある(あくまで個人的な感じ)。

  • 携帯電話や固定電話から 050plus の番号へコールしてからの着信レスポンスは速い(通常の携帯電話と変わらないと思う)

  • 前述のとおり、 050plus も「アプリベースの IP 電話サービス」ゆえに、アプリが起動またはバックグラウンド待機状態の必要がある。起動後にアプリを忘れずに一度起動しておく必要はあるのは Skype などと変わらない。

  • Viber のようなプッシュ通知による着信通知がないので、アプリが起動・待機状態にない場合は着信不可。
    (留守番電話サービスが ON ならそちらへ、OFF または未設定の場合は「おかけになった番号は通信できる機器が接続されていないか、通信できる状態にない」と言われる)

  • そのように着信に制約があるが、月額基本料の中に留守番電話サービスも含まれていて、着信通知メールも可能(留守番電話の内容 WAV ファイルの送付も可能)

  • 着信時の呼び出し設定で着信音とバイブの ON/OFF が可能だが、バイブは ON になっていても殆どバイブされない(バグ?)

  • 着信音は変えられない

  • 050plus へ電話をかけて着信コール後にすぐかけた方で切っても、050plus 着信側では 20秒くらい着信音が鳴り続ける(これが仕様なら嫌すぎる…)

  • 【7/4 追記】アプリが削除されている時には留守番電話サービスに繋がるが、そうでない時には通信できない状態にあっても着信時に留守番電話サービスに繋がらない(明確な条件は特定していませんが…)


というもの。

個人的には「NTT 本体が始めたサービスだけある」と感じる部分もありますし、NTT なら下手なことはないだろう的な安心感もありますが、所詮 IP 電話の枠から抜け出たものではないので、

モバイル IP 電話の欠点は今まで通りにある


ので、着信をどれくらい重要視するか、通話の遅延(相手には遅れて声が聞こえる、いっこく堂状態ですね)を我慢できるか、というのはあるでしょう(通話の遅延は慣れもありますが)。

いずれにせよ、着信のことを考えると

基本的には発信メインで使うもの


ではありますが、

月額基本料に留守番電話サービスも着信通知メールもあるので
着信も使用頻度や状況によっては使えなくもない


とも思います。個人的には Skype In/Out よりは使う気に、お金を払う気にさせてくれます。日本での Skype は発信者番号通知ができない欠点もありますから。

もちろん、「050plus」がビジネスや大切な連絡先には不向きなのは言うまでもないですが、留守番電話サービスも着信通知メールサービスも月額基本料に含まれているので、これなら

予備的セカンドナンバーとしては有りかな?


というのが、3日間使ってみての印象です。サービス名も「050plus」ですからね。あくまで“プラス”ですからね :-D

ただ、前述のように、月額基本料がかかる時点で“無料通話を望む人には向かないサービス”です。私も当初は「Skype もあるのに流行らんような…」と思いました。

しかし個人的には、このあと Android版、パソコン版と多くのデバイスで対応したならば、月額基本料の範囲内での無料通話先も増えますし、留守番電話サービスも着信通知メールサービスを考えると月額 315円なら悪くないかなぁ…と思い直しています。

なにせ、

iPhone の留守番電話サービスだって月額 315円だしねぇ


というのもありますからね。比べるのはおかしいとしても、そういう値頃感かなぁ…と。

まぁ、9月までは月額基本料が無料ですので、それまで色々使ってみて判断したいと思っています。今のところ、月額基本料が有料化されてから継続するかどうかは 50/50 です。私の場合、別途 docomo のガラケーがありますので、どういう使い分けにするかも含めて悩ましいですね。

050plus02
(申し込みは3ステップで、特に難しい点はない)


さて、ここまで単なる感想ですが、以下は通常とは違う使い方でのお試しです。

【注意】以下の本来の登録方法・公式に想定された利用形態と違いますので、今後この方法で登録できなくなる可能性や、この方法で登録した場合にアプリの使用ができなくなる可能性がありますので、十分ご留意下さい。当方は一切の責を負いかねます。

まずは、ネット上でも散見される良くある質問ですが、

データー通信 SIM を入れた iPhone や iPad、iPod touch でも使えるか?

無保証&条件付きだが使える


です。ただし、以下の条件が必要。

  • 申し込みには、必ず携帯電話番号が必要。

  • 通話に必要な帯域とプロトコルの通過が確保されている必要がある。


申し込み時に携帯電話の登録が必要で、登録直後にその携帯電話に確認の自動応答電話がかかってきますが、その電話番号は携帯電話番号であれば必ずしも使用する iPhone の電話番号でなくても良くなっています(少なくとも記事執筆時は)。よって、iPod touch や Wi-Fi版 iPad でも別途携帯電話があれば登録は可能になっています。

※ 公式サイトにも書いてありますが、携帯電話番号1つに対して1契約のみとなっていますので、その点もご注意下さい。また同一クレジットカードを使った契約も5契約までとなっています。

また、iPhone で登録してから、アプリを iPad や iPod touch に入れ、そちらのデバイスで 050plus の初期設定を行えば、そのデバイスで使えるようになります。

050plus04
(再設定は 050番号とパスワードのみでOK。あとは自動設定される)


ただ、Wi-Fi で利用するにせよ、他社 SIM(例えば b-mobile)を利用するにせよ、通話に必要なデーター転送速度と、IP電話を通話するために必要なポートが塞がれていないことが必要になります。

はっきり言ってしまうと、b-mobile AEON プランAや U300 のように低速かつプロトコル制約の厳しい SIM では実用的でないということです。Fair では問題ありませんでしたし、プラチナサービスを使っている友人との会話も問題ありませんでしたが、プランA を入れた iPad では使えたものではなかったですし、U300 でも厳しいように思います。

b-mobile の安価なプランではストリーミングや IP電話関連のプロトコルを制限しているので、この手のサービスを使うには向きません(ここ数日話題になっているけれど昔から使っている人には自明な話ですね。安いのには理由があるのは当然です)。

なお、VPNを通すことでプロトコル規制を避ける手段はありますが、電話一つにそこまで手間をかけるのは現実的でもないですし、本記事の内容でもないので触れません。

050plus03
(050 番号決定と個人情報登録が終わると、この画面になり確認電話がかかってくる)


次に

アプリを複数デバイスにインストールした場合、着信はどうなるか?

最後に機内モードを解除 or アプリを起動しなおしたデバイスでのみ着信される


アプリの起動しなおしというのは、一度アプリを起動していた状態であるならば、マルチタスクから 050plus が待機状態なのを切って再度立ち上げ直すことで、着信デバイスが切り替わります。

【2011/7/4 追記】複数デバイスでの挙動について追記し、内容を修正しました。なお、厳密には機内モードを解除した時やアプリを起動し直した際に IP Reachable かどうかによって挙動が変わると思われます。ここでは機内モード解除、アプリ起動時にインターネットと通信できる状態にある場合を想定しています。

Skype のような複数デバイスに着信コールされるようなことはありません。発信はいずれのデバイスからも可能ですが、着信は最後にアプリをインストールして初期設定したデバイスか、最後に機内モードから復帰させたりアプリを起動しなおしたデバイスのみです。

また、

  • 最後にインストールしたデバイスからアプリを削除しても、それまで使っていたデバイスで着信されることはない
    (おかけになった番号は通信できる機器が接続されていないか、通信できる状態にないと言われる)

  • それまで使っていたデバイスで初期設定をやり直しても、そのデバイスで着信され直すことはない

  • それまで使っていたデバイスで着信したい場合は、いったんアプリを削除して、再度アプリをインストールして初期設定をやり直せば、そのデバイスで着信できるようになる

  • 【7/4 追記】設定をやり直さずとも、それまで使っていたデバイスで機内モードを ON → OFF して機内モードから復帰するか、マルチタスクから一度 050plus アプリを切って再度起動しなおしてやると繋がるようになる(ネットに接続可能な環境の場合)


という仕様のようです。複数デバイスで使うことが考慮されていなかったり、簡単に切り替えができないのは、いささか残念です。

特にパソコン版がリリースされれば、同一電話番号でパソコンとスマートフォンを使い分けたいですし、複数のスマートフォンを持っている場合も同一電話番号で使えれば便利ですし、IP電話の利点が生かせるでしょう。

Skype のように複数のデバイスにインストール可能にして、全てのデバイスで着信コールされるようになるか、少なくとも明示的に切り替えられるようにして欲しいところです。ぜひ検討して欲しいものです。

【7/4 追記】上記のように機内モードやアプリの再起動を利用して着信デバイスを切り替えることは可能です。

例えば、iPhone に 050plus アプリをインストールして初期設定した後 iPad にインストールして設定すると、着信デバイスは iPad になります。

これを iPhone に切り替えるには、iPhone側で一度マルチタスクから 050plus アプリを削除して停止し、再度 050plus アプリを起動しなおすことで着信デバイスを iPhone にできます(アプリ再起動時に通信可能な状況の場合)。



というわけで、NTT コミュニケーションズが始めた「050plus」、欠点も色々あるし、無料電話を望む人には全く向かないサービスですが

iPhone で電話する人なら試してみる価値はあるかも?


と思います。なにせ9月までは月額基本料が無料ですから(ユニバーサル使用料がかかるとしても)試しても損はないかと。

Android 版やパソコン版がリリースされれば、無料通話の範囲、使い勝手も広がってくるでしょうから、そうなるとまた利便性も変わってくるでしょう。ただ、思いきり収益源を狙い撃ちされたソフトバンクが何やってくるかは判らんよなぁ…というのは若干心配ですけど…(^_^;)

あとは、「050plus」に対しての改良は望みたいところです。具体的には

  • 着信時にアプリへの通知ができない場合には、プッシュ通知を行って欲しい

  • 回線が不安定な時に、通話品質をもっと落としてでも通話の安定性を向上して欲しい

  • 複数デバイスへのインストールを認めて、着信コールを複数デバイスへ行えるように、最低限でも切り替えられるようにして欲しい
    (Android 版やパソコン版がリリースされる時にはぜひ実現してもらいたい)

  • 着信時バイブをちゃんとして欲しい

  • 着信音の変更はできるようにして欲しい


といったところは是非お願いしたいものです。

いずれにせよ、日本企業による安定して便利なモバイル IP 電話サービスが登場したことは、素直に期待したいものです。

「050 plus」 iPhoneから無料・格安で話せるIP電話アプリ