今週 SRS Labs. から発売された「SRS iWOW 3D」。SRS Labs. と言えば、オーディオ関係にちょっと興味のある人なら知っているであろう、サラウンド・オーディオ補正技術を持つ会社。技術開発・設計を行い、それ(IPコア)を他社にライセンス供与するのが中心の会社。

それゆえ、直接コンシューマー製品を売ることは殆どなく、ライセンス先から発売される製品、カーオーディオや PC などのサウンド関連ソフトのスペックやロゴで SRS だの True何とか(擬似サラウンドの TruSurround とか)だのという名前は、もしかすると見たことがあるかも知れません。

そんな SRS Labs. がコンシュマー相手に売る数少ない製品が iPhone / iPod / iPad 向けの“音質改善”ユニット「SRS iWOW」であり、その最新製品が数日前に国内でも発売開始された「SRS iWOW 3D」。

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(SRS iWOW 3D パッケージ)


SRS iWOW 3D

昨年末に前モデル「SRS iWowAdaptor for iPod/iPhone3G」が発売されましたが、こちらは公式には iPhone 4 に対応してなかった上、新型の発売が予告されていたため、今回 iPhone 4 公式対応の新モデルが国内発売されたので、私も早速購入してみた次第です。



元々個人的に SRS の処理は好みでないですし、基本的には移動時のリスニングなんてあまり音質にこだわることもないと思っているのですが(さすがにイヤホンはある程度のものは使いたい)、

思い出したように時々 iPhone の音質をどうにかしたくなる


わけで、今回もその一例。「この圧縮くさい音は、どうにかならんかなぁ…」と切実に思うことがあるんですよね。

モバイルプレイヤーの音質改善にはヘッドホンアンプを使うのも有効で、私も iPhone 用のヘッドホンアンプを複数持っているのですが、

ヘッドホンアンプを使ったら糞音質はより明確になるだけ


という側面もあるので、音源によっては逆効果という諸刃の剣だったりします(^_^;)

iBasso USB-DACポータブルヘッドホンアンプ D2+ Hj Boa
iBasso USB-DAC ポータブルヘッドホンアンプ D2+ Hj Boa

(USB DAC にもなる使い回しの効くコスパの良いヘッドホンアンプ。お勧め)


そんなけで、圧縮音源の音質改善には BBE やら SRS やら、そういった音質改変に頼るしかないか…ということで SRS iWOW 3D を購入した次第です。

ま、

結局は聴くソースの問題でしょ。
後から音を弄っても、労多くして功少なしでは?


と言うと身も蓋もないのですが、iPhone に 256GB モデルが出たら手元の CD ソース音源は全てロスレスで取り込み直そうと思っているものの、それでも圧縮音源がなくなるわけでもなく、また 256GB モデルの iPhone が出るのは数年後でしょうからね。

まぁ試したくなって試せるものは、とりあえず試してみようかと。

ちなみに、この記事を書いている現在 SRS iWOW 3D を扱っているのは、ヨドバシやビックカメラ、ヤマダ電機など一部量販店および Kitcut など一部専門店と AppBank Store といったあたりで取り扱い店舗が限られている上、入荷数も少ないようです。私も最初、梅淀で買おうと思いましたが初回入荷数が少なく確保できず、ヨドバシ.com の方で購入しました。



さて、SRS iWOW 3D は iPhone や iPod / iPad のオケツ(Dock コネクター)に付けるユニットです。iPhone / iPod − SRS iWOW 3D − イヤホン、という接続形態になります。デジタル出力で音声を取り出し、加工してイヤホン出力するモノです。

新モデルでは上記の旧モデルとは異なり、下記写真のように Dock コネクターと反対側には短いケーブルとともにヘッドホン端子が出ています。

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SRS iWOW 3D 本体と付属カラーフェースプレート(左)
カラーフェースプレートを付け替えたところ。黒で良いです…(右)


このあたり個人の嗜好さがあるとおもいますが、私は形状・ヘッドホン端子の出し方とも前モデルの方が好きでした。なんか出っ張り感が強くなるユニット形状といい、断線が起きそうなケーブル出しといい、なんか嫌ですね。カラーフェースプレートも微妙です。

当然ながら Dock コネクターに付けるタイプのアイテムですので、iPhone に装着するケースとの相性はあります。その点は iWALK のような Dock コネクター直結タイプの外部バッテリーと同じことが言えます。

ただ、写真を見て判るとおり、iWOW 3D の Dock コネクター部分の突き出しが若干長くはみ出る形になっていて、一般的な Dock コネクター直結タイプの外部バッテリーよりはずっと合うケースの範囲は広くなっています。

例えば、

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底面部が大きく開口したケースと SRS iWOW 3D


こういった底面部の保護がないかわりに Dock コネクタに干渉しないケースでは当然、問題なく接続できますし、

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バンパータイプのケース(非純正)と SRS iWOW 3D


Dock コネクター直結のアイテムと干渉しやすく、使えないものが多いバンパータイプのケースでも刺さるようになっています(ただし、上記例は非純正のバンパーケースであり、純正バンパーで使えるかどうかは知りません)。

また、殆どの Dock コネクター直結アイテムが付かないどころか Dock ケーブルですら挿さらない、愛用のケース iWood でも

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iWood と SRS iWOW 3D


ギリギリ挿さらないこともない(上記写真のとおり iWOW 3D の電源が入る)ので、見た目よりもケースに対する相性はそこそこあるように思います。なお、iWood との接続はすぐに外れるレベルなので、iWood との併用はオススメできません。



SRS iWOW 3D を単純に使うのは簡単で、iPhone / iPad / iPod の Dock コネクターに iWOW 3D を繋ぎ、iWOW 3D 下部から出ているケーブルの先にあるイヤホン端子に、手持ちのイヤホンを挿し込めば良いだけ。何も難しくありません。

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ただ、これだけだとデフォルトの設定で聴くのみです。iPhone / iPod touch / iPad の場合には、専用のアプリを入れることで簡単な設定変更ができ、設定に関して好みのものを選ぶことができます。

SRS iWOW App

SRS iWOW 3D を接続した状態で、このアプリを起動することで音質設定の変更ができます。その内容は、

  • iWOW 3D による処理の ON/OFF

  • 処理設定をヘッドホン、スピーカー、車の3種類から選択可能
    (デフォルトはヘッドホン)

  • Advanced Settings メニューで、Wide Surround、Deep Bass、High Treble の3項目の ON/OFF が可能
    (デフォルトは全部 ON)


というもの。このアプリで設定しない限り、ヘッドホン用&全部入りのデフォルト設定が使用されます。デフォルトは最もこってり味です。SRS iWOW によってもたらされる効果自体が“こってり”ですが、デフォルトではそれが最強です。

それゆえ、ちょっと味付けを変えたいという場合には SRS iWOW App による調整が必要なります。



さて、肝心の「」ですが、メーカーの言い分によれば、SRS iWOW 3D の音質的効能というのは

  • 奥行き感のある豊かな重低音とともに自然で包み込むような音質

  • 音源素材内に埋もれたオーディオ情報を動的に探知・復元

  • iPhone / touch なら SRS iWOWアプリで、お好きな音質モードやスピーカー設定可能


という内容。要は

圧縮音源で失われがちなステレオ感を拡大して
こもったような音質を改善してやるぜ


ということでしょうか。

一般に音質を改善しようとイコライザーで調整しようとしても、低音をブーストしてもこもるばかりだし、高音の伸びに関しては圧縮音源ならバッサリ失われているのだから EQ でいくら上げても音は戻ってこない。ないものは、いくら調整しても出てきません。

SRS は(圧縮などの過程で)失われた部分を分析して補完し、聴きやすく味付けしましょう、というもの。むかし流行った(というか今でもあるけど)BBE と同じ方向性。まぁ、SRS は現代的にこってり味ですが。

で、SRS iWOW の発売前レビュー記事を見ると絶賛ばかりだけれども、私個人が数日使った感想を言えば、

人工調味料で味付けを強調しすぎた音


であり、

このドンシャリかつ風呂場のような音場感は閉口するけど
こういう音が好きな人は結構いるよなぁ…


というのが率直なところ。特にデフォルトの「全部入り、こってり Max」は個人的には引くのですが、原音無視でもなんでも、こういう音が好きな人が少なくないのは理解できます。

そして、もう一つ

小音量で聴く時と大音量では印象が変わる
&カーオーディオに繋ぐ時には良いかも


と言うのはあります。

正直なところ、一定以上の音量で聞く際に SRS iWOW 3D を使うと、私には改変された音が耳につきすぎて耐えかねます。少なくともデフォルトの「全部入り MAX」設定では長時間のリスニングには耐えられません。

ただ、小音量で聴く場合にはこの音の改変、低音と高音補充は悪くないかな?と感じることがあります。小音量ではどうしても聴感上足りなくなる部分があるので、そこを補う装置としては悪くないのかもしれません。

また、外部からの騒音の多いカーオーディオに iPhone / iPod を繋いで聴くときには、悪くない補正かもしれないと感じました(個人的な好みでは Advanced Settings の Wide Surround は切った方がいいように感じましたが)。

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(SRS iWOW アプリ画面)


ともあれ、好みかどうかは別として、

SRS iWOW 3D を通すと音がガッツリ変わる


のは事実です。特に初期設定状態で初めて聴くと「うひゃー」というくらい変わります。

そんな状態で、メーカーによる SRS iWOW 3D の特徴で挙げられていた内容を振り返ると、

奥行き感? ある意味、出すぎるくらい出ます。擬似サラウンドみたいなもんですからね。

豊かな重低音? あぁズンズン出ますね。イコライザーでブーストしたような、こもった感じはさすがありません。

自然で包み込むような音質? いやいや自然って…どこまでも人工的なのは間違いないでしょう。

いずれにしても、

人も選ぶし、聞く音源も選ぶ


アイテムであることは間違いありません。

確かに音の拡がり感は出て、気持ち良さを感じるかもしません。反面、ボーカルものではボーカルの存在感や伸びといった部分に影響を与えますし(特に Advanced Settings の Wide Surround を ON にした時)、低音がググっと強調されて音のバランスは変わります。

また、高音域は補完が随分入ることもあってヒスノイズみたいなものはかなり強調されますし、サ行の発音がかなり耳につく楽曲も少なくありません。

そう意味で、音質改善というより音改変ですから、元の曲をきちんと保ったまま音質を良くしたい、というのとは違うものです。そのあたりの考え方が、この製品の好悪を決めることになると思います。



上記の私の感想を見て判るように、私自身はあまり肯定的な評価はしていません。ただ、こういう音が好きな人が少なくないのは知っていますし、それをどうのこうの言うつもりもありません。

カーオーディオでドンシャリかつ風呂場のようなリバーブ効かせるのが大好き
という人にはピッタリの製品


だと思いますし、そういう人がターゲットの製品でしょう(初期設定がそうであるように)。

私自身は、元々 SRS の音が好みでなかったことを踏まえても、専用の設定アプリもあるし、もう少し穏やかに効果をかけられるものと思ったら、残念ながらガチガチの SRS サウンドでありました。なんというか、

あっさり味が欲しかったけれど
こってり味とダブルこってりしかなかった…


という状態だったりします(笑)

前述のとおり、小音量で聴く場合には悪くないと感じますが、一定以上の音量で聴く場合は Advanced Settings を全て OFF にしてもまだ効果がきつすぎる&長時間聴くのは辛いと感じるので、

アプリで、もっと細かく設定できるようにして欲しい


とは思いますね。もう少し薄味にしたい。そうすれば、私自身の印象ももう少し変わるのに、と思います。

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(SRS iWOW アプリの Advanced Settings 画面)


とまぁ、私にはいささか合わない感のある「SRS iWOW 3D」ですが、上記カーオーディオ設定のように、今どきの DSP 音質調整に慣れきった人には心地良く聴こえるかもしれません。友人知人の車に乗っても、そういう設定でガンガン音を鳴らしている人は多いですしね。

それゆえ、

こういうコッテリで派手な音に改変するのがウケるんだろうなぁ…


と思いますし、そういう人たちにはオススメだと思います。「音質改善」というより「音質改変」ですから、その改変が好みかどうかは人それぞれです。

ただまぁ、最初違和感があっても

この手の音は聴き続けてると慣れてしまう


んですよね。そして音改変していない音が物足りなくなってくる。人工調味料なしでは、味が物足りなくなってくるように…私はそれが怖いのですが、どっぷり浸かっている人には SRS iWOW 3D はピッタリでしょう。

ちなみに SRS iWOW 製品はパソコン用製品もあります。

SRS Labs :: OnLine Store :: Comersus

iTunes 用プラグイン(PC / Mac 用)、PC 用のプレイヤーがあり、ダウンロード購入することができる他、試用版ダウンロードも可能ですので、

SRS iWOW って、どんな音になるのだろう?と迷ったら
パソコン版ソフトで試用してみて決めるのがベター


でしょう。iTunes 用プラグインは以前私も試してみたことがありますが、効果としては同じようなものだと思います。

他に PC を使っている場合、メーカーやサウンドカードによっては SRS からライセンスをうけていて、サウンドドライバ・サウンドコントロールパネルに SRS iWOW 効果の ON/OFF をできるものがある場合もあります。それがある場合は、そこで体感してみるのもよいかと思います。



というわけで、いささか否定的なインプレッションになってしまいましたが、竹ひごの骨に紙を張って中にろうそくを立てたような記事を書いても仕方ないですから、率直な印象を書きました。全肯定のレビューは巷にいくらでも見つけられますので、そちらへどうぞ。

結局のところ、劣化した音を良くする魔法はないのですから、音質改善を思うならば、やっぱり元ソースをできるだけ良いものにして、きちんと良い音質でエンコードして、そして良いヘッドホンアンプを通して聴く方が良いのは間違いありません。

という当たり前すぎる結論を得るために買ったわけじゃないんですけどね…う〜ん、BBE 程度の聴感補正で良いのだけどなぁ…SRS は私には強すぎますね…

それにしても、日本のレコード会社はいつまでビットレート 128Kbps にしておくのかと。ロスレスにしろとか、DRM を外せとかまでは言わないけれど、もう少し音質上げてくれないとねぇ。オンラインで買った曲だけ音質悪いとか、ホントがっくりしますから…