今朝未明の Apple の新製品発表会。iPod シリーズのリニューアルが中心ということは明らかだったし、新 Apple TV も映画やテレビ番組のストリーミング配信用ゆえに日本は蚊帳の外というのも予測されていたので、内容には元から大して興味はなかった。

が、今回は Apple が初めてキーノートをネット生中継するということで、それだけは体験しておくか〜と思っていたのに、発表会スタート15分前で撃沈、気がつけば既に発表会は終わっていた朝4時…orz

とはいえ、発表会の内容を振り返ってみると、ほとんど事前リーク通りで興味を惹くようなものは特に無し。

アップル、720pカメラや高精細液晶の新iPod touch
アップル、小型化&マルチタッチ液晶の第6世代iPod nano
アップル、操作ボタン復活の第4世代「iPod shuffle」
アップル、SNS機能やAirPlay機能を追加した「iTunes 10」
米Apple、99ドルのストリーミングビデオ端末「Apple TV」

個人的に興味を惹いたのは、iOS 関連のみ。来週リリースの iOS 4.1 で、

  • HDRカメラが純正機能で入ったこと

  • HD 動画のアップロードが Wi-Fi 限定で可能になったこと


の2つはちょっと目を惹いた。特に HDR 機能を純正に入れてくるとは驚いた。

夢の中での噂によれば、この純正 HDR 機能は3枚合成なのに1回しか切ってないかのようなレスポンスで、通常撮影より少し遅いくらい。通常写真と2枚保存してもストレスフリーとか。画質は HDR としては穏やかで、ラチチュードを大きく広げるより、彩度も含めて自然な方向でチューニングされてるとか、夢の話らしいですけど。

HD 動画のアップロードの方は、今でも Pixelpipe を使えば HD 動画のアップロードは可能で、実際に前回記事で紹介した「オロロンライン 28機の風車」は、先週北海道で iPhone4 にて撮影し、すぐに iPhone4 の iMovie アプリで編集し、Pixelpipe を通して Youtube にアップロードしたものですからね。

ただ、純正の HD 動画アップロード機能は Wi-Fi 限定になるので、3G 経由でも各所に HD 動画アップロードが可能な Pixelpipe は iOS 4.1 登場以後も利用することになりそうで

あとは発表会では特に触れられていませんが、iOS 4.1 では AVCRP がフルサポートされて、ようやく Blueooth イヤホンで曲の早送り・巻き戻しが使えるようになりました。マトモになるのに、どれだけ時間がかかったことやら!ですが…

Apple iPad Wi-Fi + 3G ★64GB★ (香港SIMフリー版)
Apple iPad Wi-Fi + 3G 64GB (香港SIMフリー版)

(環境が整って、個人的に iPhone4 より iPad の SIM フリーが欲しいかも…)


もっとも、大きな興味は来週使える iOS 4.1 より、少し触れられた iPad 用 iOS 4.2。特に

  • 標準でワイヤレス印刷機能搭載

  • ワイヤレスで外部スピーカー、Mac/PC、新Apple TV などで映像・音楽を再生できる AirPlay


という 4.1 にはない2点は、大いに気になる。

ワイヤレス印刷は、各プリンターメーカーが配布しているアプリや ePrint などのアプリで今でも限定的に印刷可能だけれど、いつも使ってるメールアプリや Safari アプリ、その他のアプリからサクサクと印刷できるわけではない。

ノートPC 代わりに iPad 的な使い方を考えるなら、やはり印刷機能は必須だし、一手間二手間が必要な外部アプリで云々やるより、システムに統合してもらう必要はある。ま、そのための API を作って、アプリで対応は必要となるだろうが。

iOS 4.2 のワイヤレス印刷機能がどこまで使いやすく、どこまでのプリンターをサポートするのか不透明だが(Mac で共有されたプリンタのみ、なんてなったら興ざめだ)、Apple のことだから期待しすぎないように…と思いつつ、期待したい。

また、AirPlay もちょっと期待したい。というか、いま実際に悩んでいることで、

「iPhone4 で撮った HD 動画を編集後、リビングのテレビに出力にしたいがスマートな方法がない」

ということ。iPad に HDMI アダプタ・ケーブルがオプションであれば良いのに、旧態依然のアナログ RGB のみ。そんな端子、今どきのテレビに付いてるわけないだろ。

Mac だと Blu-ray に焼くのも大事になるし(Windows でやれば良いんだけど…)、あるのは iPhone4 を AV コンポーネントケーブルで繋ぐくらい。でも、なんで今さらあんな大げさなケーブルで繋がなきゃならないのか。

というわけで、超小型な新 Apple TV を1万円以下で買って HDMI ケーブルでテレビと繋ぎ、Mac / PC や iPad からの映像をワイヤレスで流せることができれば、結構スマートなはず。いちいち、ケーブルで繋ぐよりずっと良くね?と。新 Apple TV は安いし。

でも

現在、日本では新 Apple TV は予約受付すらできない


んですけどね。

その代わりなのかどうか知りませんが、現行の 160GB Apple TV が値下げされて 12,800円で売ってるんですけどね。微妙にぐらつく値段かも(笑)



さて、iPods の新製品。発売は2〜3週間先と言うことですが、既に各店舗で予約受付は始まってるようです。

価格的には、昨今の円高(少しマシになったけど)に関しては多少加味されているようです。モデルチェンジのなかった iPod Classic 160GB が2千円下がるなど、前モデルよりは米国値段から少し下がってるように見えます。

で、iPod トップモデル、と言うよりは iPhone 持ちたくない人向けモデルの iPod touch 第四世代。



予想通り、そして誰にも考えたように「iPhone4 から電話機能を削除してもの −α」なわけだけど、毎年注目されるのは、その“−α”。


去年までは、カメラと GPS がセットになって削除されていたのだが、今年は待望のカメラが搭載、おまけに前面も背面も両方に!

…なのだけど、そうは問屋が卸さないのが Apple。

  • Pod touch では HD 動画撮影可能と言いつつ、静止画撮影が 960x720 pixels に制限(iPhone4 では 2592x1936 pixels)

  • フラッシュは非搭載

  • GPS も非搭載


という内容。要は

iPod touch のカメラは基本 FacaTime 用だから、よろしく


ということですね。

FaceTime を広めるために iPod touch へカメラ搭載は必須だけど、あくまで FaceTime 用であり、HD 動画撮影はオマケ、静止画撮影はオマケのオマケということ。

旧来 iPod touch にカメラを頑なに搭載してこなかったことを考えれば、不思議ではない話です。特に背面カメラの静止画解像度制限に、それが表れているように感じます。

が、それでも iPhone 4 と同じ物が搭載されなかったことで怒ってる人がいるのは訳わからんですな。

iPhone に比べて圧倒的に薄いし、安価なのに
全く同じカメラ機構や GPS が入らなくても不思議じゃない


のにねぇ。値段が違う商品で、下位機種は上位機種から機能を削って差別化するなんて普通な話でしょう。touch の場合は値段だけでなく、薄さの問題もありますし。

もちろん、言いたくなる気持ちが判らないではないし、糞画質でも良いから背面カメラの静止画解像度は 3GS 並みの解像度にしてやっとけよ…とは、私も思います。

でもまぁ、カメラ機構は iPhone4 とは全く違うでしょうから(厚み的にもコスト的にも)静止画だと小さくしないと見られない画質なのかもしれません。

特長や仕様でも画素数には全く触れてませんから、touch のカメラは 100〜150万画素あたりの HD としては最低限で、さらにレンズもあの薄い中に入れるにはギリギリのものなのかもしれません。

普通に出力したら厳しい画質なので、こういう仕様になったのかもしれません。意図的な制限だけなら 960x720 ってのは不自然な気もします。

といっても、本当のところは中の人以外は判りませんけどね。

【9/3 追記】FCC の資料で内部写真が公開されています。

米連邦通信委員会、第4世代iPod touchの分解写真を公開

元の FCC の資料写真を見る限り、ギッシリという感じでもないですし(iPad などと同様にバッテリーの占有率に驚きますが)、GPS は入れようと思ったら入れられなくもなかった感じで、やはりコストや差別化要因でしょうね。【追記終わり】

いずれにせよ、過去に何度も書いたように

iPhone と iPod touch は似て非なるもの


であり、同じ基盤を共有するけれど、向いてる方向は少し違うデバイス。

特に最近の Apple 的には

iPod touch は、音楽やビデオ機能もネットもできる「ゲーム機」


な方向にシフトしているわけです。そうでなければ iOS 4.0 のβに入っていた Game Center を 4.0 リリース時に外し、4.1 リリース時に正式スタートさせることはなかったでしょう。

iPhone4 という存在があるだけに、色々と削られた点にばかり目が行って iPod touch や Apple を批判するのは、ここ毎年9月の恒例行事になってますが、いい加減学習して、iPod touch は iPod touch として順当進化を感じたら良いのに、と思いますね。

iPhone も4でフルモデルチェンジだけに
iPod touch も今回がフルモデルチェンジと言える


わけですから。

iPhone4 から採用された Retina 液晶と、余裕のあるメモリと能力は本当に心地よいですから、iPhone と違って縛りもないですし、第三世代 iPod touch も含めて、パワフルに使ってる人なら乗り換えて損はないと思います。

また、今回の発表会でも疲労された、超有名ゲームエンジン Unreal Engine 3 のデモアプリ

「Epic Citadel」

は 3GS でも動きますが、微妙なカクツキも含めて、やはり iPhone4 にふさわしいものですし、これを使ったゲームは尚更そうなるでしょう。そう考えると、iPod touch も新世代が標準になっていくのかな?と思います。



さて、順当進化だった iPod touch に比べて大きく変わったのが、nano と shuffle。それでも

shuffle はマトモに戻った


と言えます。

前世代の、極めて小さいけれど、ほとんどコントロールできるものがない“銀色の小片”だったのが、ちゃんとコントロールできる真っ当な音楽プレイヤーに戻りました。



前世代(第三世代)の shuffle は私も持ってますが、誰がどう見ても扱いにくい代物です。使えなくはないですし、その小ささに思わず衝動買いしてしまいましたが、ぶっちゃけ少々後悔してます(^^;)

後悔のほとんどは、第三世代 shuffle が使いやすい使いにくい、ということより単に、普段 iPhone を持ち歩いてるのだから音楽を聴くのも iPhone になっているので、shuffle を買っても結局出番が全くなかった、ということに尽きますが、それでも人に勧められるデバイスではありません。

ともあれ、「やっぱり音楽プレイヤーは、きちんとコントロールできるべき」という反省に基づいて、shuffle は第二世代に回帰した形状になっていて喜ばしいと思ったのですが、

nano は、どこへ行こうとしているのだろう?


としか言えませんね…



もちろん、この形状・サイズを歓迎する人もいるでしょう。iPhone や touch でタッチパネルに慣れている人なら、ホイールからタッチパネルになっても問題ないかもしれません(こんな小さなタッチパネルでマルチタッチも糞もないとは思いますが)。

でも、そんな iOS デバイスに関わりのない

純粋に音楽プレイヤーが欲しい人にとって、使い良いデバイスなのか?


という疑問を感じざるを得ない。

音楽プレイヤーならやっぱり画面を見ずに操作できるデバイスでありたい、その方が安心、そう思うのは私だけではあるまい。ポケットの中で、カバンの中で指だけで操作できる、それが音楽プレイヤーでしょう。

わざわざ液晶画面を見て iPod を操作するのは iPhone でも面倒くさい


のだから。

それは Bluetooth イヤホンを使ってる iPhone ユーザーなら、早送り・巻き戻し操作をするために一度や二度、経験してるはず(iOS 4.1 で解消されるけど)。

だからこそ、音楽プレイヤーに液晶タッチパネルは相応しいとは思えない。

機能的にも、前世代(第五世代)nano からビデオ用カメラもアラーム機能も削られ、ビデオ再生すら削られた。第五世代で盛りだくさんになった機能は、どこへ行ったのだろう?

何もかも捨てて、shuffle サイズまで小さくしてどうするの?


という感じが否めない。

操作性を犠牲してまで、前回ウリにしていたビデオ再生すら削ってまで、小さくする意味はあるのだろうか?

shuffle もコントロール可能な形状に戻ったとはいえ、とにかく小さくするために 2GB モデルのみになってしまった。nano も前世代と同じく 8GB と 16GB のみ。

音楽が聴きたいだけで、でも容量は欲しい人の需要を軽く無視である。無駄に小さくするなら 32GB なり 64GB があっても良いはずなのに…

今日「ウォークマン、iPod抜く…8月販売台数シェア」というニュースがあったが、ウォークマンが死亡気味の米国はともかく

日本ではますますウォークマンが売れる


だろうな、と思う。今日の発表を見て、ソニーはほくそ笑んでいるのでは…と思うくらい。

・手頃なサイズで
・迷わない操作性で
・大容量モデルを用意し
・音楽プレイヤーの本質を追求して
・(iPod より)安価

いまのウォークマンは地道にそれをやってる。というか、ソニーはそれしか道がない。だからこそ、少しずつシェアを回復してきたのだろうと思うし、今回の iPod 新製品で加速がつくだろうと思う。

昔は、iPod がウォークマンに比して、それらの事項に勝っていたのに、いつの間にか逆転してしまった。

ただ、Apple 的には第五世代 iPod nano の完成度が高すぎて(あのホイールは必ずしも操作性が良いとは思わないけど)、もはや過去の nano の延長線上では大きく進化することは無理だったのだろう。それゆえ

ひとまず完成してしまったなら
一度ブッ壊して新しいのを作ってしまえ感覚


で、新 nano を作ったのだろうと思う。だから Apple らしいといえば Apple らしい。

あくまで推測だが、iPod / iTunes / iPhone で革新を成し遂げてきた Apple 的には

完成度が高いからといって、今度はマイチェンは許されなかった


のかもしれない。特に Steven Jobs 的には。

それがたとえ裏目に出たとしても、大変化の勝負に行けるのが今の Apple。
今のところは地道に改良していくしかない SONY。

単機能の音楽プレイヤーとしてみれば、後者がどんどん良くなっていくのも道理だろう。個人的には nano は nano としてマイナーチェンジにして(大容量化して)、新 nano は別シリーズにすれば良かったのに…と思えてならない。

本当に nano シリーズは、どこへ向かっているのだろう?

たぶん、Apple 自身がその答えを探して、そして見つからないままなのが今回のモデルチェンジだったように思う。現状に甘んじず、でも次はどこへ向かえば良いのか見えない。そんな nano。

きっと、今回の shuffle のように、来年の nano は第五世代的なものに回帰してもおかしくない。そんな気がするし、そう願いたい。それだけに



が逆に注目されるだろうし、実際 Amazon 本体の在庫は捌けてしまって、マーケットプレイス中心になっている。多分使うことがないと思いつつも、一つ買っておいた方が良いかも…と思うくらいだ。

いずれにしても、今回の新製品を見ると

Apple は iOS デバイス以外の iPods は関心が薄れてきたんだな…


と強く感じる。無闇に小さくするのも、利益の薄い iPod で利益最大化のためじゃないかな…と思える。

まぁ、音楽プレイヤーは袋小路になりつつあって、私自身も関心がすっかり薄れてることを思えば仕方ないし、そう遠くないうちに iPhone、スマートフォンもそうなるのかな…と思ったり。パソコンも近い状態だしね。



最後に iTunes 10。新しいデザインはスッキリして嫌いじゃないが、いささか事務的になったようにも感じる。細かいことだが、同期している時に「ステップ1/5」というような表示が追加されたのは良いね。詳しくない人には判りやすい。

ただ、鳴り物入りで登場した PING は、使ってみてすぐ止めた。名前に支払い情報の名前が強制的に使われる上に、市町村までの住所がデフォルトで公開、非公開にしても最低でもフォロワーには見えるし、ニックネームが使われていた過去のレビューも全部 PING の名前に置き換わる。

本名や住所を隠してるわけではないし、レビューでは自分で感じたことを真面目に書いているつもりだから、それらが絶対に困るわけじゃないが、Facebook じゃあるまいし、それを強制されるのはいただけない。

なにより私の場合、パソコン通信黎明期から「Double H」「だぶる☆えっち」として存在しているから、ネットの世界では本名よりニックネームでないと判ってもらえない。そういうこともある。だから使えない。

ついでに言うなら、おすすめ楽曲を登録しようと思っても、日本の iTunes Store ではソニー系その他が使えないので、おすすめに載せたい曲が載せられなくてストレスが溜まった。これも、やる気減退の一因。

というようなことをやっていたら、大してメリットもないし、やる意味はねーな、と。

加えて

PING とかいう名前は紛らわしい…


っていうのもある。まぁ、一般人が ping とゴッチャにするなんてことはないだろうが、それでもいささか気持ち悪い感覚だ。

まぁ、なんにせよ

SNS まで Apple に依存する気はねーよ


ということだね。