すっかり遅くなってしまったが、9月17日にパナソニックからリリースされた DMC-G1 と望遠ズーム LUMIX G VARIO 45-200mm F4-5.6 のアップデート・ファームウェアを試した際の感想をまとめておくことにしたい。

Panasonic デジタル一眼カメラ LUMIX (ルミックス) G1 Wレンズキット コンフォートレッド DMC-G1W-R
(LUMIX G1 Wレンズキット コンフォートレッド DMC-G1W-R)

1年経っても見劣りしない性能。価格は7万円台で安定したままに。


このファームウェア・アップデートがリリースされてから急遽 EOS 7D を買うことを決め、そして EOS 7D を買って試しまくったり、さらに 1D Mark IV が発表されたり、すっかり EF マウントに意識が行っていたが、ファームウェアリリース後1ヶ月かけて DMC-G1 + 45-200mm での撮影を何度も試していた。

その結論は、既に別の記事で軽く触れたこともあったけれど

今回のファームウェア・アップデートで AF-C 性能は
劇的とまでは言わなくても随分と改善された、素晴らしいアップデート


ということになる。どれくらい改善されたかというと

本気の動体撮影は無理でも(AF以外の問題もある)
条件限定の、お気楽な動体撮りならそこそこ使えるかも…


と思えるくらいである。

もちろん、動体撮りといっても色々ある。鉄道やモータースポーツのように、AF に頼らなくても構図は限定されるものの置きピンで対処可能なものもあれば、飛行機やスポーツのように AF に頼る割合が多いものもある。

鉄道や飛行機は挙動がほぼ予測できるが、サッカーやバスケットのように動きにランダム性が強い動体もある。そして、日中太陽光の中で撮る物もあれば、体育館などの暗い室内で撮るものもあるし、ナイターや夜間撮影をターゲットとする場合もある。

今回の DMC-G1 + LUMIX G VARIO 45-200mm のファームウェア・アップデートにおいて、それら全てについて撮影が可能になったか?と言えば、全くそんなことはない。特に

動体が撮れるほど AF 速度・精度が出せるのは
相変わらず十分照度のある状況に限られる


のは変わらない。もちろん、

20091002173342
(141mm F4.2, 1/40s, ISO160)


というくらいの写真は撮れる。ただ、ヒット率は(一眼レフを使うのに比べ)低い。ま、DMC-G1 はボディが軽すぎて流し撮りは特に難しいけれど。

(なお、本記事の全ての写真は全て DMC-G1 + LUMIX G VARIO 45-200mm F4-5.6。リンク先から等倍画像が閲覧可能。表記の焦点距離は 35mm 換算したもの)

これは極端というか、DMC-G1 の AF 限界を少しばかり超え気味の条件であると思うが、それでも以前は箸にも棒にもかからなかった。それが、ファームウェア・アップデートで、たまにでもヒットするようになっている。

旅客機撮りは十分照度があって、伊丹空港周辺のように撮影条件も良ければ、そう難しい被写体ではない。廉価一眼レフでも(そして初心者クラスでも)十分対応できる被写体だし、DMC-G1 でも着陸後の転がり(着陸からスポットへの移動のこと)くらいならそれなりに撮れていた。

20091021163138
(217mm, F8, 1/640s, ISO200, -0.3EV)
この程度の、着陸後の転がり写真なら普通に撮れるレベルになった。
以前はこの程度でも結構ピンを外していたものだった…


ただ、望遠レンズを使って飛行機を追いかけた場合、たとえ被写体の速度が遅い“転がり”であっても、等倍で見てビシッとした写真のヒット率はなかなか低く、「もうちょっと AF-C の動体追尾がマシになってくれたらなぁ…」という思いはあった。

もちろん、色々試す中で AF-C を単純に使うのではなく、追尾 AF にした方が良いのか?など色々試してきたが、追尾 AF の方が動体追従の結果が良い場合もあった。飛行機でいえば、着陸後の転がりで側面の窓を追尾させると追尾精度は通常の AF-C より良かった。

ただ、正面気味の被写体や、高速で動く被写体には無力だったりして、やはり基本である AF-C の速度精度の向上、特に望遠レンズ LUMIX G VARIO 45-200mm との組み合わせでの精度速度向上を望んでいた。

そんな中、標準ズームレンズ LUMIX G VARIO 14-45mm との組み合わせにおける AF-C 性能の向上は、半年前(2009年5月末)にファームウェア・アップデートが行われた。

私自身は標準ズームで AF-C を使うことはほとんどないので、これの恩恵はさほど受けてないのだが、その前に発売された LUMIX G VARIO 7-14mm F4 超広角ズームで飛行機撮りした際には、明らかにフォーカス速度がダブルズームレンズより速かったし、AF-C の挙動も安定していたので、それが 45-200mm にも反映される日を待っていた。

20090514183908
(16mm, F4.5, 1/1000s, ISO200, -1.33EV)
7-14mm F4 発売後に千里川で超広角飛行機撮りを試していた時の一枚
ここは一眼レフでも廉価機あたりだと厳しい条件なので
DMC-G1 だと当然ヒット率は高くなかったが、使える写真はあった
ま、AF 以外の問題の方が大きかったけれど…


が、一向に望遠ズーム 45-200mm へのファームウェア・アップデート、AF-C の性能改善のアナウンスはなく、既に DMC-G1 とだぶるズームレンズの発売から1年が経って、こりゃもう望遠ズームの AF-C 性能改善は無理なのかな…と思ったところに、キタコレ。

直前にリリースされた同じマイクロフォーサーズのオリンパス E-P1 の AF-C 改善ファームウェア・アップデートが、実質的には全く改善が見られないに等しかったことがあっただけに、こちらもどれくらい改善されているか心配というか、あまり期待せずにアップデートして試したのだが、

「やっぱりパナソニックはオリンパスと違うわ。これこそ、まともなファームウェア・アップデート、性能改善だわ!」

と思える改善だった。ファームウェア・アップデート後の一番最初の実戦投入が、たまたまサッカー(Jリーグ)撮りになったので、さすがにサッカーはお話しにならなかったし、アップデートしても厳しいだろうと思って使ってみたら

あれ?Jリーグの試合を撮って、こんなにまともに写ったっけ?


と思えるくらい、以前とは違った。

以前何度かサッカー撮りを(むろん本気撮りではなくお試しで)試したものの、ナイターはもちろん晴天日光下でも使える写真はほとんど無きに等しい状態だった。

20091003155358
(350mm, F5.3, 1/640s, ISO500)
Jリーグの試合写真は無断掲載禁止なので、アメフトをサンプル程度に。
サッカーやアメフトの動きには追従しきれないので、
まだまともに見られる写真でも等倍だと甘くなってしまう。


それがファームウェア・アップデート後に試し撮りしてみると、なんか意外と撮れている。もちろん、1D MarkIII で撮った場合とは違って、等倍で見られる写真は稀だけど、50%縮小しても見られる写真がなかった以前に比べると格段の向上になっていた。

万博のスタジアムからだと 400mm では遠いから大きくトリミングすることになるし、等倍じゃ厳しいので 50% 縮小前提となると、仕上がりの写真はあまり大きなサイズではなくなってしまうけど、写真を撮りに行くのではなく観戦の片手間でちょっと撮る分には意外と悪くない、と感じた。

何度か触れているが、Jリーグの試合を撮るにしてもフルサイズの一眼レフボディに大きなレンズを持ち出せる機会は、そんなに多くない。閑古鳥が鳴いているスタジアムならともかく、万博はスタジアムの収容人員が少ないボロスタジアムだけに、長いレンズを振り回しても周りに邪魔にならない試合は少ない。

そんな時、DMC-G1 + LUMIX G VARIO 45-200mm F4-5.6 で撮れればどれだけ良いか…と思う。アウェーの試合でも、サッカーを見に行く、サッカーを撮りに行くならば Mark III + 望遠レンズを持って行くのは苦にならないが、出張ついでだと難しい。が、DMC-G1 とレンズなら出張ついでに持って行くのも苦にならない。

20091021161646
(350mm, F4, 1/640s, ISO200, -2/3EV)
以前は飛行機を追尾していると、離陸直後は必ずピンぼけになっていた。
のが、アップデート後はそれなりにヒットしてくれるようになった。
とはいえ未だ苦手で、少しでも暗くなるとピンぼけしまくる。
(原因というか癖は判っているのだが…)
ピントが機体後部に来てるのはご愛嬌。ピント位置をすぐ変えられないし…


同じことは飛行機撮りでも言えることで、「飛行機を撮りに行く!」もしくは「写真を撮りに行く!」という旅なら大きなカメラとレンズを持って行くのは躊躇わないが、そうでない旅や出張時に、ちょっと空港 or 空港周辺で飛行機を撮りたい、と思っても DMC-G1 ではちょっと微妙だった。

せっかく撮ってもボツ写真、今イチ写真を連発するだけなら、後から落胆する分だけ撮りたくないとすら思う。だから撮影メインじゃない旅行の時にはマイクロフォーサーズだけで行くかどうか悩むし、出張などでマイクロフォーサーズしか持ってなければ飛行機は撮らなかった。

それが今回のアップデートで、「マイクロフォーサーズでもそこそこ飛行機が撮れるんじゃね?」という風にかわってきた。もちろん、EOS-1D Mark III や EOS 7D で撮るのに比べれば断然ヒット率は低い。でもシャッターを5枚切れば1〜2枚くらいは…と思える程度になってきた。

20091021163115
(400mm, F4, 1/640s, ISO200, -0.3EV)
空気状態もあってピン甘な写真だが、以前はこの程度すら撮るのも運任せだった。
遠くに見える着陸機に対する AF 補足率は劇的に向上したと言って良い。
(以前は被写体が小さいと、合焦して撮ってもピンぼけしまくりだった)


もちろん、今回のファームウェア・アップデートによる改善を持ってしても、DMC-G1/GH1 が動体撮りに使える、なんてことは口が裂けても言えない。言えないが、

ミラーレス機で動体撮りができるようになる希望は見えてきた、
お気楽撮影なら予想以上に早く動体撮りが実用になるかも…


と思わせてくれるアップデートである。

メイン機材が EOS-1D MarkIII や 7D といったスポーツ撮り・動体撮り専用機で、主被写体がサッカーや飛行機であるから、過去にも書いてきたように動体撮り性能に対しては、どうしても厳しい?目になってしまう。

だから、マイクロフォーサーズは気に入って使っているけど、動体撮りには向かない、使えるようになるにはあと3〜5年必要かも?と思っていた。

でも、意外と早くに動体撮りが(お気楽撮影なら)実現できる気がしてきた。もちろん

ミラーレス機の動体撮りは AF-C 速度精度の問題だけでなく
EVF の性能、消失時間やシャッタータイムラグという難題がある


のも事実。特にスポーツ撮りにおいて現在の EVF では話にならない。お遊びとはいえ、サッカー撮りアメフト撮りで DMC-G1 を使っていて AF 以上に一番ストレス溜まるのがファインダー、レリーズ周りである。

また、ファーカスエリアの移動変更も現在の G1/GH1 方式では(動体撮影時には)実用にならず、事実上一点使用のみになる(特に EOS 7D が凄まじく使いやすいしね…)。ファーカスエリアのサイズも標準では大きすぎ、小では小さすぎる感じもある。

だから、ミラーレス機で動体撮りが実用になるのは、たとえお気楽撮影だとしても、もう少し時間がかかるだろう。それでも今回のファームウェア・アップデートの性能改善を見れば、少なくとも

AF-S だけでなく AF-C 性能でも
AF が得意でないメーカーの廉価一眼レフにかなり近づいてきた


と言えるんじゃないかと思う。AF-S に関しては既に AF 性能の低い一眼レフは追い越しているし、AF-C も追いつけるレベルになってきたと思う。ミラーレス機も期待できるじゃん!と、本当に思う。ま、現状では「ミラーレス機で AF 性能が期待できるのはパナソニックだけ」ですけどね…

20091021162756
(400mm, F4, 1/640s, ISO200, -0.3EV)
高速シャッターを切る分には良いが、ボディが軽いせいか
低速シャッターでの撮影はブレ写真連発。
無論、自分の腕の問題だが、縦グリップが欲しくなったり…


さて、最後に今回のファームウェア・アップデートを適用して試した自分なりの結果をまとめておこうと思う。

  • 食いつき(初期合焦速度)は、微妙に改善程度。

  • 合焦精度は確実に向上している。以前は合焦ランプが点いている状態で撮影しても完全ピンぼけということが多々あった。アップデート後もあるが、その割合は確実に減った。

  • 合焦後の動体追尾精度についても、向上した。一番目立って改善された点のはず。ただし、後述する癖は変わっていない。

  • 合焦エリアに強い光源があると、迷いやすいのは変わっていない。合焦後もロストしやすいし、合焦後に撮影してもピンぼけになっていたりする。

  • 機体が夕陽に反射しているような場合も、ちょっとしたことでロストする。

  • 被写体の動きに大きな変化があると、かなりの確率でロストする。というか、被写体がそれまでと違う動きをして、それに合わせてカメラを振るとロストしやすい。

  • ロストしてからの復帰は相変わらず時間がかかる。

  • フォーカスサイズを小にすると、使い物にならないのも相変わらず。

  • 低照度でも頑張って(多少迷っても)合うようにはなった。もちろん限度はあるし、精度は悪いけれど。

  • 低照度でピンが合ってから追いかけるのは精度は甘くなりつつも何とかなるが、一度ロストすると復帰は難しい(復帰してもかなり時間がかかる)。

  • もっとも低照度では AF を問題にする以前に、EVF のリフレッシュレートが低下する方が先に厳しくなる。

  • AF-C が流し撮りにきちんと対応しきれていないのか、流し撮りのヒット率は低い。ボディが軽くブレやすいのも大きな理由。


といったところだろうか。

とりあえず気になるのは、相変わらず一眼レフに比べて AF 追従時にロストしやすいことだろうか。フォーカスサイズの標準と小の間のサイズがないことも含めて、このあたりがちょっと使いにくいのも事実。

いずれにしても、まだまだ不満は多いものの

発売後1年近く経って、体感できる性能改善ファームウェアが出たことは嬉しいし
パナソニック技術陣の努力には素直に感謝したい


褒め過ぎかもしれないが、どこぞのメーカーのファームウェア・アップデートが酷かった分だけ、素直に嬉しい。DMC-G1 後継機では F の更なる向上とともに、是非 EVF、レリーズ周りの改善を行って欲しいと思う(暗部や高感度の画質もね!)。

将来とも 1D Mark III / IV や 7D のようなスポーツ・動体撮影特化機には適わないだろうが、きっと遠くないうちに「今回はちょっと飛行機撮りたいけど、マイクロフォーサーズで良いかな」なんて思える日が来るだろうと思うし、その日を待ちたいと思う。

とにかく、今回のファームウェア・アップデートで、

DMC-G1 + LUMIX G VARIO 45-200mm が使える領域がまた広がった


のも事実だ。今後もパナソニックのマイクロフォーサーズには期待したいし、

DMC-G1 とパナのレンズ群を買って良かった!


と心から思う昨今である。

20091021161647
(332mm, F4, 1/640s, ISO200, -0.67EV)
動体でも廉価一眼レフ+安望遠レンズと変わらない写真が撮れるように…
そんな結論に達するアップデートであった…