以前からチラ見と予告を繰り返していた VAIO X が正式発表。先行した海外発表で $1,300 と聞いて、「いくら超薄型軽量とは言え、今さらネットブック製品で $1,000 越えって有り得なくない?」と思ったけれど、国内店頭モデルはXバッテリー別売で11万円。

実際のところ VAIO P でも SSD 搭載して云々…とカスタマイズしていくと 10万円は超えるし、VAIO P で問題視されていた点(スーパーワイドな高精細液晶ゆえの文字サイズの小ささや有線LAN などのインターフェース周り)をカバーしつつ、尖り度は変えずに出してきたことで、それなりに魅力はある。

ただ、いくら薄くてもこのサイズ、というかフットプリント(底面積)で Atom Z系のネットブックという仕様バランスと、値段バランスはどうなのかなぁ?と思う。

性能を犠牲した Atom Z系のネットブックで薄さだけを求める人、というのはどれだけいるのだろう?

過去に性能を擬製して薄さだけを追い求め、価格も割高だった VAIO type 505 Extreme は、話題は呼びこそすれ、VAIO P のような売上の実績は残せなかったように記憶しているのだが…(まだ使ってる友人がいるので、触らせてもらうたびに、その薄さには感心するけどね)

VAIO P の好調さをもって VAIO X までリリースした心意気は買うけれど、ちょっと危ういバランスのような気がしなくもない…

VAIO X


私は基本的に、ノートパソコンのフットプリントより薄さの方が重要と思っている。フットプリントを小さくすると液晶サイズとキーボードにしわ寄せがくる。液晶はサイズが小さくなれば解像度も低くするという手段で一定の解像度(XGA)までは我慢できるが、キーボードが小さく狭いノートパソコンは使えない。

だから、一定のフットプリントがあって薄い方が実用的だと思っている。薄さも最薄部だけ薄いのではなく、最薄部と最厚部の差がないものが良い。その方が鞄への収まりが良い。

いくらフットプリントが小さくても厚みのあるボディは、鞄に入れる時に収まりが悪いことが多い。特に書類などが一緒のビジネススタイルなら尚更だ。最薄部だけ薄くて最厚部がやたら厚いのもバックに無駄な空間ができがちでスマートじゃない。

同程度の性能で、まともな熱処理がされていれば、フットプリントはそこそこになるべく薄く、厚みの変化が少ないノートパソコンがベストと思ってる(無論その他の要因はあるけれど形状だけを取ってみれば、の話)。

だから、そういう意味では VAIO X は良いパソコンだと思う。

ただ、一定のフットプリントを持ち、価格が10万を軽く超えてくるならば、自分にとっては“それなりに本気で仕事ができるパソコン”であって欲しい。ネットブックのように“ある程度ならこなせる”ではなく、ガッツリ仕事ができるものを求めてしまう。

VAIO X が搭載する Atom Z系 CPU + SSD + Windows 7 で仕事ができない訳じゃない。が、実際に VAIO P を愛用していて、仕事に使っていくのは非常用でもない限り結構大変だとも思う。

Atom だから、ネットブックだからダメ、というわけじゃない(ソニー的には VAIO X をネットブックとしていないが、中身は同じだ)。

それどころか、「Atom なんて使い物にならねぇ」とか未だに知ったことを言ってる人を見ると、使ったことがないか、使いどころを完全に間違えてるかの二択で、無知を晒しているだけでは?と思う。いくつかのネットブックを使ってきて、今も使っていて、ネットブックは結構使える、というのが私の実感だ。

しかし

同じネットブック、Atom CPU でもN系とZ系では、使用感に結構差が出る


のも事実。いま手元には

・EeePC 901-X(Atom N270, SSD, Windows XP SP3)
・VAIO P(Atom Z540, SSD, Windows Vista SP2改)
・Mebius PC-NJ70A(Atom N270, HDD, Windows Vista SP2改 / Windows 7 RC)

と3台あって、同じ Atom でもN系もZ系もあるし、SSD も HDD もあるし、Windows も色々。

これら全部が全部を毎日使っているわけじゃないが、どれも1週間の半分以上は使っている。それぞれの役割は限定的だし、持ち出すのは VAIO P だけだが、3台ともそれなりに常用している。

この中でストレスなく快適に使えるのは、Atom N系である EeePC 901-X と PC-NJ70A の2つ。EeePC 901-X は SSD のプチフリが少ないように SSD を換装していることもあるが、この両者はまず普通に実用できる。

ネット用途は勿論、オフィスソフトでのちょっとした文書作成、表計算作成なら余裕でこなす。というか、MS Office は EeePC 901 +外付け液晶で使ってる。フルHD 動画は厳しいけれど DVD クラスの動画くらいは十分見られる(いつも見てる)。

RAW 現像をしまくるのは難しいが、JPEG で撮った画像の整理・印刷くらいは問題ない。動画のエンコードをやらせるには非力すぎるが、外付ドライブから iTunes で音楽を取り込むくらいは速くないけど実用レベル。

ところが、Atom Z系の VAIO P はこれら2台から比べると、それなりの鈍重さがあり、耐えるストレスが必要になる。圧倒的な小型さ軽さがあるからこそ愛用できるが、そんな特徴がなければ積極的に使う気になれないのも事実だ。

基本的に VAIO P と同じスペックの VAIO X は、動作速度的にはそれなりであることは予想できる。Vista に比べれば Windows 7 は随分マシだけれど、アプリケーションレベルではそう大きく差が出るわけじゃない。

「超軽量薄型ノートが欲しかったけれど、VAIO P の液晶は無理だった」という人にはベストマッチするかもしれないが、それなりに用途を限定して割り切らないと厳しいと思う。はっきり言えば、ブラウザ一つ起動するのだって、体感差がある。

少なくとも同じ Atom でも、N系とZ系では体感速度で開きがあることを踏まえた上じゃないと、「使えねー」となって馬鹿さ加減を自覚するだけになるような気がする。

VAIO X


個人的に VAIO X にあまり惹かれたない、もう一つの理由は、先に書いた「ノートパソコンはフットプリントが小さいことより薄さが重要」と書いたことと矛盾するけれど、VAIO X ではフットプリントの小さい VAIO P を置き換えられない、ということにある。

VAIO P の良さはフットプリントが小さい、というよりは、絶妙なサイズにあると思っている。高精細すぎる液晶は確かに見づらいと感じる人も多いだろうが、そこはアプリケーション毎の設定で乗り切るしかないし、自分的にはそれで問題はない。

逆にフットプリントを極端に小さくせず、「まずキーボードありき」で設計したことが VAIO P 最大の魅力だ。キーボードを犠牲にしない最小限のフットプリント、その素晴らしさが VAIO P の魅力であり、売れた理由でもあるように思う。

私の VAIO P の使い方は主にタイピングマシンである。ネットを始めとするブラウズ用途なら、もっと小さな LOOX でも Netwalker でも PM でも良いと思う。というか、非力なネットブックを使うより iPhone の方が快適にネットブラウズはできることも多い。

でも、タイピングするとなると話は別。過去にまともなタイピングが可能なノートパソコンは、どうしてもそれなりのフットプリントがあった。鞄の隙間に入る、そんなパソコンでまともなタイピングができるノートパソコンはなかった。

それが初めて可能になったのが VAIO P だったと思う。シグマリオンとかも悪くなかったけど、個人的にはモバイルギア以来だと感じた。ま、VAIO P のキーボードも満足とは言えないけれど、出先である程度まとまった文章(例えばこの記事)をかけるくらいのキーボードではある。

そんなタイピングが実用的なパソコンなのに、他のモノでかなり詰まったバッグの隙間にサッと入れられ、サッと取り出して、また液晶を開いた時の高さがない分、どこで使っていても“ノートパソコン使ってる目立ち度”が低い。そんな

VAIO P は未だ他にないパソコン


であることは VAIO X がリリースされても変わらないと思う。その尖り具合が使う人を選ぶのも事実だけれども。

それに比べると VAIO X は随分普通である。見た目はかなり普通だ。薄くて軽いけれど、普通のノートパソコンっぽい。だから、性能を犠牲にして、ここまで薄く軽量を求める人がどれだけいるのだろう?と思う。

まぁ、VAIO X が売れても売れなくても私には全く関係ないのだけれども、VAIO P 系列が将来また更新してラインナップを残して欲しいと思う私には、VAIO X が爆死してソニーがピュア・モバイルなノートパソコンに及び腰になってもらいたいくないので、そういう心配はある。

505 Extreme のようになるのか、それとも VAIO P のように売れるのか…



ちなみに、購入して10ヶ月近くが経とうとしている私の VAIO P は、前述のとおり今でも愛用している。まさに代えることのできない Only One なパソコンとして、今でも持ち出す機会が一番の多いノートパソコン。

正直、ネットブラウズしながら秀丸で文書を書く、といった程度でも若干のもたつきに些細な我慢を強いられることはあるけれど、このサイズ、軽量さには勝てない。

iPhone 購入で持ち出す機会が減るかと思ったが、多少は減っているけれど、ごく僅かな減少に留まっている。自分ではもっと減るかと思ったが、そんなことはなく、外出先で少しでもタイピングする可能性があって、他のノートを持ってでない時は必ず VAIO P を持って出る。

必要最小限の作業がこなせればいい、そんな時にはやっぱり小さくて、それでいてまともにタイピングできる VAIO P は欠かせない。ちょっとした時でも持って出せるし、例えばカメラバッグの隙間に入れられるのも大きい。

もし、VAIO P を持ち出す頻度が減るとしたら、やっぱり MacBook Air を買った時かな?と思う。VAIO X なんかより MacBook Air を買うかどうかの方が悩みどころで、ずっと懸案事項だ。こちらは仕事道具として、だから仕事で元を取れないと買えないしね…

ま、Air を買ったとしても、きっと VAIO P は愛用し続けると思うけどね。

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