モニターレポート3回目のテーマは「お気に入りのタッチソフト」。お気に入りのソフトとその使い方、気に入っている点を書け、という指定です。が、お気に入りのタッチソフト…お気に入り…お気に入りと言われても…

残念ながら、お気に入りのタッチソフトはありません


としか答えられません。

“大人の対応”で適当に「お気に入りのタッチソフト」をでっち上げて、適当にレポートを書くのも良いかと思いましたが、しかしモニターですから、モニターだからこそ、ないものはない、と言わねばならないと考えますので、ハッキリ「お気に入りのタッチソフトはない」と書かせていただきます。

ちなみにきちんと断っておきますが、PC-NJ70A を使う機会が少ないからお気に入りのタッチソフトがないわけではなく、私はモニター機到着からほぼ毎日 PC-NJ70A を使っています。しかし、用意されているタッチソフトを一通り使ってみた上で、私にとって魅力的なタッチソフトはありません。

それゆえに、タッチソフトを起動することも(モニターレポートを書くために必要な時以外は)ありません。自分にとって魅力を感じるタッチソフト、有用性を感じさせるタッチソフトがないのですから、当然のことです。無理して使いづらいソフトを使うような暇は、私にはありません。

ただ、これだけではモニターレポートとして足りないでしょうから、何故お気に入りのタッチソフトがないのか、そもそもタッチソフトに対して私が思っている疑問点を含めて、以下に述べたいと思います。



タッチソフトは光センサー液晶パッドの下にある「タッチ操作へ」というボタンを押して、その中にあるメニューから選んでソフトを起動しますが、そのメニューの中には、「手書き文字」「手描きイラスト」「電卓」「お気に入り」「電子辞書」「電子ブック」「フォト」「エンターテイメント」とあります。

まずエンターテイメントの中にあるミニゲーム類については、正直なところ遊べるとか遊べないとか、そういったレベルの問題ではないでしょう。個人的には、リリースするとアナウンスされている SDK(開発キット)のコードサンプルとして提供される程度のレベルであって、「これが光センサー液晶パッドを活用したソフトです」と言われても、どう反応したら良いのか判らないものです。

もちろん、一度や二度お試しで遊ぶことはできるでしょうが、これが本当に PC-NJ70A の魅力のひとつになると思って入れているのでしょうか?昔ならいざ知らず、今どきこの程度のソフトをカタログの特徴欄に堂々と写真付きで載せてアピールできるレベルだと思っているのなら、まずその基準を改めるべきではないかと考える次第です。そう言いたくなるほどのものです。

名目上タッチソフトの数を増やして揃えるには良いのかもしれませんが、ミニボウリングのような失笑したくなるソフトをプリインストールして数だけを増やすより、その開発リソースをもっと別のことに注力させるべきではなかったのではないでしょうか?

そんな「エンターテイメント」メニュー以下のソフトは論外としても、タッチソフトと銘打ちながらタッチソフトの意味があるのか疑問なソフトが少なくありません。

例えば「電子ブック」。パソコン上で書籍を読むための文庫ビューワーソフトの操作をマウスではなく、光センサー液晶タッチパッド上で指をスライドさせることで操作するためのソフトです。ちょうどページを左右にめくる操作が、本のページをめくる動作と合わせているわけで、やりたいことは判ります。こういったソフトのアイデアが思いついたのも理解できます。

しかし、実際にパソコン上で書籍を読むものとして(パソコン上で書籍を読むことの良し悪しは別として)、実際にページ送り、戻りの操作をタッチ操作で行って便利かどうか?という根本的な問題があります。マウスクリック(タッチパッドのボタンクリック)で読んでいくのと、どちらが便利でしょうか?

少なくとも、マウスクリックよりタッチ操作で指をパッド上でなぞる方が便利、とは私にはどうしても思えません。光センサー液晶パッドの操作感覚が通常のタッチパッドと同じくらいスムースであっても、マウスクリックと同等程度の操作性だったでしょう。ましてや光センサー液晶パッドは通常のタッチパッドよりスムースとは言えない状況では、マウスクリックによるページ送りより確実に劣ると私は感じます。

やりたいこともアイデアも理解できますが、光センサー液晶パッドを活用したタッチソフトと言うのならば、光センサー液晶パッドがない、一般的に使われる操作方法より使いやすい方法を提示しなければ意味はないと思います。“指で操作できる”というだけで、操作方法が改善されていないのであれば、それが用意されていてもわざわざ使う必要はありませんし、ひいては光センサー液晶パッドを搭載した意味も失われます。

PC-NJ70A_41BunkoViewer


同じことは「フォト」アプリにも同じことが言えます。「フォト」は指定したフォルダのスライドショーソフトですが、起動するとメインの液晶画面を占有した普通のスライドショーアプリであり、その操作を光センサー液晶パッド上に表示されるボタンで行うというもの。これもマウス操作よりも簡単か?と言われると微妙に思います。「電子ブック」よりは意味があると思えるものの、これが PC-NJ70A の魅力、光センサー液晶パッドの魅力として訴えられるほどのものでしょうか?

初めてパソコンに触った人が、何の苦労もなく「電子ブック」やスライドショーを使うのには良いのかもしれません。きっとシャープの中の人も、そういった意図があったのかもしれません。しかし、PC-NJ70A はパソコンです。否応なく、マウス操作(通常のタッチパッド操作)やキーボード操作に慣れる必要があります。そして、マウス操作と併用していく必要があります。

また、「フォト」アプリのようにソフトの終了まで全ての操作をタッチ操作で完結させているならともかく、その他のソフトではそうではありません。特にマウス操作との併用=マウス操作とタッチ操作の切替が必要なソフトもあります。その例が「お気に入り」です。

「お気に入り」ソフトは、Internet Explorer のお気に入りを光センサー液晶パッド上のタッチ操作で選択するためだけのソフトです。「お気に入り」ソフトで Internet Explorer の“お気に入り”(ブックマーク)を選択すると、Internet Explorer が起動して選択したサイトが表示されるというものです。

液晶パッド下の真ん中の「タッチ操作へ」というボタンを押して、メニューの「お気に入り」をタッチして、その中から“お気に入り”を選択してタッチするわけですが、Internet Explorer 起動後の操作は通常のマウス操作が必要になるため、再び液晶パッド下の真ん中の「マウス操作へ」というボタンを押す必要があります。

果たして、これが普通に Internet Explorer のお気に入り欄からマウス操作(タッチパッド操作)で選択するより便利でしょうか?

おまけに光センサー液晶パッドの画面は狭いので、一画面に表示されるお気に入りは7個のみ。それ以降は液晶パッド画面下の2つのボタン、本来マウス操作時には左右クリックとして使われるボタンでページ切り替えしてやらねばなりません。はっきり言って面倒くさいだけです。

そもそも、項目選択時に光センサー液晶パッドの画面に入りきらない場合、液晶パッド画面下の2つのボタンを押してページ切り替えするというアクションに疑問を感じます。この操作は他のタッチソフトでも、ごく当たり前のように使われていますが、タッチ操作ができる光センサー液晶パッドを使っているのに、ページ切り替えはハードウェアボタンを使用する、その発想がおかしいと私には感じられます。

せっかく自由にボタンなどが表示、タッチ操作できる光センサー液晶パッドなのですから、それをもっと有効に生かすようにできなかったのでしょうか?「お気に入り」ソフトなら、項目を縦スクロールできるようにするだけでも使い勝手の印象は違ったでしょう(それだけでは、わざわざタッチアプリにする意味はないとしても、です)。

また、Internet Explorer 起動後は液晶パッドがブラウザ操作専用モードになって、戻る、進む、ホームその他のボタンを用意し、お気に入り選択画面と迅速に切り替えられるようにすることで、液晶パッドだけである程度のブラウザ操作ができるようにするとかできれば、もっと有効性はあったでしょう。

そんな便利さもなく、単にお気に入りを選ぶのに、わざわざタッチ操作に切り替えて、ちまちまとボタンでページ切り返して時間をかけてお気に入りを選び、その後はまたマウス操作モードに切り替える。そんなことを誰がするというのでしょう?このようなオマケソフトを前面に出して光センサー液晶パッドの魅力を語られても、むしろ逆効果ではないでしょうか?

PC-NJ70A_42DictViewer


さて、ここまではあまりにも酷いタッチアプリでしたが、比較的実用的な存在として使えるのは「電子辞書」や「電卓」ソフトです。「電卓」ソフトについては、以前のレポートでも“なかなか使えるソフト”として評したことがあります。ただ、これをお気に入りというには無理があると思って、お気に入りとして挙げることはしませんでした。

それに「私のお気に入りタッチソフトは電卓です」と言っても、実際の使用頻度はほとんどありませんし、電卓を使うなら PC-NJ70A を使う!なんてことも当然ありませんし、お気に入りというには無理があります。

とはいえ、第1回のモニターレポートでも書いたように、この「電卓」と「手書き文字」の2つだけは、現状のタッチソフトの中で“使えるタッチソフト”、光センサー液晶パッドを有効に使えているタッチソフトである、と思っていることは変わりありません。特に「手書き文字」に関しては、光センサー液晶パッドならでは、でしょう。

けれど、ノートパソコン、ネットブックパソコンという存在の中で、様々な用途に使われる中で、「手書き文字」が使える利点がどこまで有用なのかは微妙でもあります。

例えば、タッチソフトの中では最も実用度の高い「電子辞書」。電子辞書のタッチソフトとしての付加価値は「手書き文字」との合わせ技のみに集約されます。それは「漢字の読みが判らない」「キーボードに全然慣れていなくて、手書きした方が早い」といった条件では有効ですが、それが広く便利に思われるかと言うと疑問に思います。

普通にキーボードから入力したほうが迅速なことも多いでしょうし、そうでなくても辞書ソフトでよくあるような「マウスで調べたい文字を範囲選択して右クリックメニューから直接辞書を引く」動作で実装する方が“調べごと”をする際にスムースな場合もあるでしょう。もしくはコピー&ペーストという手段もあります。

確かに「手書き文字」で辞書を引くのは、キーボードにも慣れない初心者には便利かもしれません。しかし、それはあくまで一部であり、初心者が初心者でなくなった時、別に方法を知れば「手書き文字」に拘らなくなるでしょう。

通常のマウス操作からタッチ操作に切り換え、電子辞書を開いて指ないしペンで文字を書いて貼り付けして Enter を押す。この一連の動作は決して迅速にできるものではないわけで、その点を考えると、辞書を引くのに「手書き文字」が使える有用性は十分あると思いますが、それはあくまで一定の条件に限られるように思います。

また、「電子辞書」に限らず、「電子ブック」でもそうなのですが、操作方法によっては消したいウィンドウが残ってしまい、結局キーボード操作なり、光センサー液晶パッドのモードをタッチ操作モードからマウス操作モードに戻してタッチパッドを操作する必要が出てくる場合があるので、こういうことは使用感を大きく損なうように思います。

「お気に入り」ソフトの項で述べたように、タッチソフトとしてリリースするのであれば、最初から最後まできちんとタッチ操作で簡潔できる、そのようなソフトを作ってこそ、初めてタッチソフトとして言えるのではないかと思います。そういった作りこみの甘さが、いずれのソフトにも感じられてなりません。

なお、「手描きイラスト」は、唯一光センサー液晶パッドを有効に生かしつつ、タッチ操作で完結できるものと言えますが、絵心のない私としては、残念ながらこのソフトがお気に入りになることはありませんし、無縁のソフトであります。また、良く判らない分野のものを評価する能力はありませんので割愛させていただきます。



以上、非常に厳しいことを並べましたが、「お気に入りタッチソフトについて書く」というテーマに対して、お気に入りソフトがないという回答の理由として、私がタッチソフトに関して感じていることを書かせていただきました。

提供されているタッチソフトに共通して感じられるのは、“光センサー液晶パッドを使ってみた”“光センサー液晶パッドで操作できるようにしてみた”というものであり、そこには

“光センサー液晶パッドで使いやすくしよう”という思想はないのでは?


と感じられてなりません。

ユーザーにとって使いやすくしよう、という発想がなければ、ただの開発用サンプルにすぎません。ましてや、ユーザーに光センサー液晶パッドの魅力も感じ取ってもらえないでしょう。

提供されているタッチソフトを使っていると、PC-NJ70A 唯一無二の特徴である光センサー液晶パッドの有用性を果たして本気でアピールする気があるのか、むしろ心配になります。ひいては、PC-NJ70A というパソコンを企画する時に、光センサー液晶パッドを搭載することも含めて、ユーザーニーズを考えられたのかも疑問に感じてしまうくらいです。

今後更なるタッチソフトが提供されるのかどうかは判りませんし、後継機種がリリースされて別のタッチソフトが搭載されるのかどうかも知りませんが、今後タッチソフトを開発されるなら、是非とも光センサー液晶パッドを使うことで、これだけ快適に、操作方法が改善されて便利になるんだ、ということを示してもらいたいと思います。

光センサー液晶パッドそのものに価値があるのではなく、タッチソフトこそが重要であるのは、iPhone が何故高く評価されているかを考えれば、十分理解できることでしょう。