寝モバに最高の iPod touch ではあるが、ドラクエ4DS購入からここ数日、予想通り寝る前は iPod touch から Nintendo DS Lite に変わってしまった。本編である第5章までは比較的短時間で終わるシナリオが続いて、小気味良く進むために寝る前だけでなく熱中してしまうのが難。まだまだ先は長く、しばらくは iPod touch は起き抜けのメールチェックと軽いウェブ巡回中心になりそうだ。

ともあれ、前回 iPod touch は音楽プレイヤーとしてだけみれば旧来より劣化してしまっていると書き、さらには“iPod を冠しただけの別の存在”と書いた。ハードウェア的には iPod touch が旧来の iPod 各シリーズのどれかから進化したわけでなく、iPhone からダウングレードしたものと考えれば、それは特筆すべきほどのことでもないだろう。問題は、

音楽も聴ける別の“何か”だが、その“何か”に答えられるだけのものがない


ということだ。モバイルヲタ属性を持つ人間にとっては、その中途半端さが必ずしも欠点として映らないのだが(笑)、冷静に見れば iPhone から常時接続の機能を取り払ったことの難点は、PDA が廃れてスマートフォンに進化せざるを得なかった歴史的経緯、過去に PDA がメジャーになりきれずにニッチな存在に堕ちてしまった理由を内包してしまっている。

また、iPod touch でビデオ機能を本格的に使おうとすれば、今に至るまで iTunes および iPod が音楽以外のメディアに対するサポートを怠っているところも如実に出てしまう。iPod より先に多くのプレイヤーがビデオなどの多機能メディアプレイヤーを目指して、それでもどうにもならなかったことは、iPod touch でも何も変わっていない。

iPod という冠があるがゆえに注目もされ、革新的なインターフェースを始めとする物欲感そそられる魅力による訴求力はあるが、メディアプレイヤーとしての本質は何も進化してなく、iTunes や iPod によって音楽プレイヤーが大きく変化を遂げたような革新は、まだないように思う。






【4】ビデオプレイヤーとしては未成熟な iPod touch と iTunes

「iPod touch は音楽も聴ける別の何か」と考えた場合、まず思いつくのがビデオを始めとするメディアプレイヤーという位置づけ。Apple は iPod が進化する過程で写真を取り込み、映像を取り込んだ。(iPod としては)大きな液晶は音楽より映像に対して存在を主張する。

さらに、Apple が「iPod touch はあくまで iPod であり、iPhone の機能削減版でもネット端末でもない」というのならば、その役割はメディアプレイヤーということになるだろう。しかし、

iPod touch の映像関連機能、iTunes の映像管理機能は、あまりに未完成すぎる


ビデオおよび映像ファイル管理に対して経験の蓄積がなく、大きなこだわりがない私でもそう感じるのだから、もうちょっと本気でモバイル端末で映像を見たい人が使ったら、もっと不自由を感じてもおかしくない。

私自身、iPod touch を買うまでは、携帯も含めて様々なモバイル端末でビデオを見ることに、あまり注力したことがない。モバイル端末向けにビデオ映像を作ってみて、それを閲覧してテストするようなことはしていたが、実利用でモバイル端末でビデオを見ることは、さほど多くない。音楽と違って、元々映像方面にはさして関心がなく、むしろ距離を置いていたくらいだ。

だから薄い知識と乏しい経験の中での、ごく印象的なことしか言えないが、それでも iTunes & iPod touch の映像機能の不備は、すぐに色々並べられる。

  • iTunes 上でビデオファイルのプレイリスト(スマートプレイリスト含む)を作ることはできるが、音楽ファイルの同期のようにプレイリストを指定して iPod touch と同期ができない。

  • ビデオファイルは管理上、ムービー、テレビ番組、ミュージックビデオの3種類のどれかに限定され、そのどれもが中途半端な管理体系に見える。

  • ミュージックビデオに属したビデオファイルは、ビデオファイルとしての管理を離れ、音楽ファイルの管理下に入ってしまう。iTunes 上のムービーやテレビ番組といった映像系ライブラリには出てこず、音楽ファイルの一部として扱われるし、利用者も意識する必要がある(iPod 上ではビデオの項目にもミュージックビデオが出てくるから、ややこしい!)。

  • テレビ番組に属するビデオファイルは、シリーズ名やシーズン番号毎にカテゴライズされるが、同期する際の指定方法がかなり限定される。具体的にはテレビ番組シリーズの指定と、全テレビ番組に対してシリーグ毎に“最新追加X回分”もしくは“未視聴X回分”という指定しかできない。
    つまり、テレビ番組Aの○月X日分と番組Bの△月■日分という同期指定ができない。テレビ番組Aは第1話から3回分、番組Bは最新未視聴2話分という指定もできない。最初に書いたようにプレイリストでの同期もできないため、これらの同期を実現するにはチェックマークでの同期判定を行うようにして、チェックマークを自分の意図するようにいちいち付け外ししてやらねばならない。

  • ムービーに属するビデオファイルは、iTunes 上でも特にカテゴライズもできず単純リスト形式に近い。ムービーで登録したビデオファイルの数が多くなると見通しがかなり悪くなる。

  • iPod touch 上では、再生する際のコントロールが限定的。特に早送り、巻き戻しの操作が非常にやりにくい。録画したテレビ番組などでは CM飛ばしのために 15秒、30秒の早送りが欲しいが、これを iPod touch 上で行うのは極めて困難。

  • 細かいことでは、iPod で再生できるファイルフォーマット形式は MPEG4, H.264 でも限定されたフォーマットであること。画面解像度やビットレート制限はともかく、Profile が Basic Profile しか受け付けないことは、自分でエンコードをする時にハマりがち。そのあたりの制限を加味しないと、QuickTime や iTunes で再生できても iPod で再生できないファイルになる。


とにかく同期設定の指定を簡単にしようとして、枠にハメすぎている。Apple が考える枠にユーザーをハメたがるのは、Apple の常ではあるが、元々 iTunes & iPod において音楽の同期が簡単ながらも柔軟に指定できた分、

音楽でできることが、なぜビデオでできないのか?


というフラストレーションは溜まる。プレイリストによる同期ができないのは不可思議で仕方がない。今後のバージョンアップで実現されるのかどうかは判らないが、柔軟な同期指定ができないのは(チェックマーク指定による同期指定で回避できるにしても)面倒で仕方がない。

また、iPod touch のビデオ再生機能についても

ビデオ再生の特性を考慮せず、音楽再生のインターフェースを踏襲してしまっている


のは大きな不満だ。CMスキップ的な 15/30 秒スキップはともかく、ビデオ再生において可変速再生・サーチくらいはあってしかるべきだろうと思う。だいたい、タッチスクリーンを採用しているにも関わらず、早送り、巻き戻しボタンを押し続けるようなオールドタイプなインターフェースもないだろうと思う。

音楽再生時にタッチ1回で音量や早送り・巻き戻しのコントロールが表示され、タッチ2回目で再生バーが出たり、右上のミニジャケット・アイコンのタッチでレート表示がされることを感がレバ、ビデオではタッチ1回で現在のコントロールバーが表示され、その後に可変速バー表示による一時的な可変速再生コントロールが可能になっても、シンプルなコントロールが可能だと思うのだが…

こういった iTunes や iPod touch のビデオまわりにおける機能の不備に直面すると、

ビデオファイル管理・プレイヤーとしては、ちょっと我慢して使ってる感


を感じてしまう。アジア製の安いメディアプレイヤーのように、自分でフォルダ管理して、見たいビデオは USB マスストレージ機能でプレイヤーにコピーする方が簡単じゃね?と思う。

iTunes & iPod の良さは(少なくとも iTunes 登場からしばらくは他に秀でていた)その同期連携の簡単さにあったはずだ。それを感じられず、プレイヤーでの再生時にも不満を感じるようでは、ビデオプレイヤーとして iPod touch が他に秀でているとは思えない。音楽で感じられているメリットだけに、余計不満が出てしまう。

ただ、このあたりを冷静に考えていくと、Mac がそうであるように

iTunes & iPod のビデオ機能では
自分で映像を取り込むことは全く考慮されていない or 考慮する気もない


ことに気づく。要は

おまえら iTunes Store から映像を買え、買ったものだけ再生しとけ


という思想が伺える。ビデオのカテゴライズに、ムービー、テレビ番組、ミュージックビデオしかないのも、iTunes で配信されているものが基本的にそれらしかないことに基づくし、もちろん CM もないから、スキップなんか必要はない。テレビ番組も配信しているものを1話から順に見ていくだけだろ?という意識も伺える。

音楽では自ら CD や別途音楽ファイルから取り込んだものも柔軟に対応できるようにし、同期も柔軟であったのに、ビデオにはそれらがないというのも、そういったポリシーを貫いていれば判らなくもない。

しかし、それはあくまでメーカー側の論理であって、使い手側としては別問題だ。だいたい、

日本ではロクにビデオ配信されていないのだから
自分で映像ライブラリを構築するしかない


わけで、その条件下で iTunes と iPod touch をビデオファイル管理&プレイヤーとして使うと、決して納得できる使い勝手ではない。別のメディア管理ソフトに比べて大きく劣ることもないが、秀でてる面もない。音楽というメディアにおいて優れていた部分は、ことビデオにおいては皆無だ。

スピーカーが内蔵されていないことについても不満はなくはないが、これについてはスピーカーを内蔵すれば厚みは増さざるを得ないし、携帯電話のようなスピーカーがあっても正直微妙なので、ヘッドホンなり、外部ミニスピーカーで対応するというのは致命的な欠点とは思っていない。実際にミニスピーカーを付けてビデオを見ていて悪くないと思っているので、大きな不満にはなってない。先の不満に比べれば、些細なものに感じている。



メディアプレイヤーとしては音楽、ビデオが2大メディアではあるが、加えて写真についても iPod touch ならではの不満を感じることはある。他の iPod に比べると断然大きな液晶画面、解像度ゆえに、写真ビューワーとしても悪くない。Apple も iPod touch の特徴として、音楽、ビデオと並んで写真閲覧機能も取り上げている。

問題は iPod touch が過去の iPod と違って、革新的なマルチタップによる画像の拡大縮小が簡単に行えることに対して、何のフォローもないことだ。

過去の iPod の写真閲覧機能は、単純に液晶画面の解像度に合わせた写真を見せられるだけだった。小さな画面で写真を見せることに、どれほどの意味があるかどうかは別としても、それはそれで(音楽プレイヤーのオプション的な機能として)問題なかった。予め iTunes との同期時に、それぞれの iPod の液晶画面に応じた解像度に縮小して同期するのも、過去の iPod の小さな画面で見せることを考えれば、理に適ったものだと思う。

ただ、iPod touch では簡単に写真の拡大縮小閲覧ができる。なのに、

マルチタップでサクッと写真を拡大したら、
単純に拡大しただけでボンヤリ画像が表示される


というのは、あまりに芸がなさ過ぎる。というか、ガッカリだ。

先にも書いたように、iTunes が同期する iPod の液晶画面解像度に応じて縮小画像を作って同期させることは悪くない。ただ、拡大されることも考慮して、例えば

iPod touch の液晶解像度の縦横2倍サイズの写真を同期するオプション


といったものがあっても良かったのではないかと思う。縦横2倍なら多少の拡大にも耐えられるだろう。別に4倍でも何でもいいが、縦横2倍でも必要容量は3〜4倍になるので一つの目安と思って提示してみたが、そういうオプションはあって欲しかった。

8GB と 16GB しかない現状では、フォトストレージのようにオリジナル画像を全部持ち込んで、オリジナル画像の等倍画像も表示できるようにすべき、とまでは言わないが(表示する際の速度もかなり低下するだろうし)、iPod touch では他の iPod と違ってオリジナル画像をストレージエリアに入れることもできないのだから、縮小画像とともにオリジナル画像表示モードもあって良かったかもしれない。

過去の iPod でも写真を同期させていたが、自分でも他人にもほとんど写真を見せるようなことはほとんどなかった。ただ、iPod touch は“それなりに写真を見る・見せられる機器”であるだけに、そのあたりは非常に残念。

付け加えて言えば、iPod シリーズの伝統として音楽では On-The-Go 機能でプレイリストを作ることも可能なのだし、写真も iPhoto のアルバム(Mac の場合)や My Photo フォルダのサブフォルダ(Windows の場合)のプレイリストを取り込むだけではなく、自分で iPod touch 上でアルバムを作って同期できるような機能があれば良いのに、と思う(欲を言えばアルバムの中の写真を削除もできれば完璧)。

そういったことができて初めて、iTunes および iPod が、音楽だけでなく各種メディアに対しても良い管理ツール&プレイヤーになれると思う。


現状では iTunes も iPod touch も、まだまだ音楽と比べてビデオや写真も含めた総合メディア管理ソフト、プレイヤーとして未成熟であり、決して使いよいものとは思えない。今まで色々あったメディアプレイヤーから何も変わってない。

iPod touch が音楽も聴ける別の“何か”として、その“何か”がビデオや写真だとしても高く評価はできないし、中途半端なままだとしか、私には思えない。